マハムール基地にて、ガルナハンを攻略する為の話し合いが行われ……部隊へと作戦を伝えるべくブリーフィングルームへとラドル隊とミネルバ隊のモビルスーツ部隊のパイロットが集められた。
そして、シンやルナマリアがヒソヒソとガルナハンについての話をしている時に、キラとアーサーが一人の少女を連れて部屋に入ってくる。
「けど、現地協力員て、つまりレジスタンス?」
「まあそういうことじゃない? だいぶ酷い状況らしいからね、ガルナハンの街は」
「キラさんと一緒に入って来た奴がそうなのかな? って、子供じゃん」
「着席。さあいよいよだぞ。ではこれよりラドル隊と合同で行う、ガルナハン・ローエングリンゲート突破作戦の詳細を説明する。だが知っての通り、この目標は難敵である。以前にもラドル隊が突破を試みたが……あー、結果は失敗に終わっている。そこで今回は、ヤマト隊長」
「え?」
「代わります。後は隊長から」
「えぇー? 副長のアーサーさんが説明する予定じゃあ?」
「いや。ヤマト隊長の方がよりモビルスーツ部隊への分かりやすい説明が出来るでしょう。よろしくお願いします!」
「もー。しょうがないなぁ。じゃあ、代わりました。キラ・ヤマトです。よろしく」
キラは苦笑しながらアーサーから役目を引き継ぎ、正面のモニターへと地理情報を映しながら説明を始める。
「えー、これがガルナハン・ローエングリンゲートと呼ばれる渓谷の状況。この断崖の向こうに街があり、その更に奥に火力プラントがある。こちら側からこの街にアプローチ可能なラインは、ここのみ。だけど、敵の陽電子砲台はこの高台に設置されており、渓谷全体をカバーしていて何処へ行こうが敵射程内に入り隠れられる場所はない。超長距離射撃で敵の砲台、もしくはその下の壁面を狙おうとしても、ここにはモビルスーツの他にも陽電子リフレクターを装備したモビルアーマーが配備されており、有効打撃は望めない。オーブ沖でミネルバが戦ったモビルアーマーの別タイプだね」
「アイツかぁ……」
「そ。なので、非常に厄介という訳です。なので、作戦としては如何にこのモビルアーマーを避けつつ、ローエングリンを破壊するか。っていう所なんだけど」
「キラさんがセイバーで超上空から舞い降りて破壊するとか……精密射撃するとか?」
「それも良いんだけど。降下部隊は敵も察知するだろうし、何かしら対策があると思うんだよね?」
「なるほど」
「でしたら正面から物量作戦で行くとか!」
「それも良いけど、被害が大きくなっちゃう。普通の人間じゃあローエングリンを避けるのも防ぐのも無理だからね」
「じゃあ、どうするんすか?」
「そこで、活躍するのがコニールちゃんです。コニールちゃん。説明をお願いします」
「こ、コニールちゃんは止めろよ!」
「じゃあコニール様の方が良かったですか?」
「なんでその二択なんだよ! じゃあ良いよ! コニールちゃんで! キラ様に様付けなんてされたら腹の奥がザワザワする!」
キラに紹介され前に出たコニールという少女が、キラと軽く言葉をぶつけ合ってから、一つのディスクを読み込ませてモニターに映し出した。
「ここに本当に地元の人もあまり知らない坑道があるんだ。中はそんなに広くないから、もちろんモビルスーツなんか通れない。でも、これはちょうど砲台の裏手……すぐ近くに出るから、そこから出て、背後からローエングリンを破壊する事は可能だと思う」
「という訳で。この役目はシン君にお願いしようかなって思ってるんだけど」
「お、俺ェ!? でありますか!?」
「えぇ!? こんな奴にやらせるのかよ! キラ様がやってくれるんじゃないのか!?」
「坑道は狭くて普通のモビルスーツは通れない。けど、戦闘機サイズなら通れるからインパルスの特性が活かせる。でも、僕はシン程インパルスの経験が無いからね。ここはシン君が一番良いと思うんだけど。無理かな?」
「いや! 無理なんて事は無いです! やれます!!」
「うん。ありがとう。シン君」
キラはシンに微笑んでから、コニールの前にしゃがみ込んで笑う。
「コニールちゃん。シン君はとっても凄い子なんだ。だから作戦は必ず成功させる。それでも心配だっていう話なら、大丈夫。もしもの時は僕が全て終わらせるよ」
「……キラ様」
キラの言葉の覚悟が理解出来なかった者は居ない。
やると言った以上はやる。例え、どの様な犠牲が出ようとも。
キラがここで命を落とすかもしれないとしても……言った以上、キラはやるのだ。
だから……。
「キラさん。俺は絶対に作戦を成功させますよ!」
「……アンタ。シンって言ったか?」
「あぁ」
「前にザフトが砲台を攻めた後、街は大変だったんだ。それと同時に街でも抵抗運動が起きたから」
「……」
「地球軍に逆らった人達は滅茶苦茶酷い目に遭わされた。殺された人だって沢山いる。今度だって失敗すればどんなことになるか判らない。だから、絶対やっつけて欲しいんだ! あの砲台を! 今度こそ!」
シンの頭の中で蘇るのは先日インド洋で起こった戦いでの事だ。
そして、その後でシュラに言われた言葉。
『誇れ。シン・アスカ。お前はあの場所に居た民間人にとって救世主だ』
「あぁ。俺がやってやるさ」
そして、作戦は遂に開始され……ミネルバはラドル隊と共にガルナハンへと向かう。
「間もなくポイントBです」
「インパルス発進!」
「はい!」
「インパルス発進スタンバイ。パイロットはコアスプレンダーへ。中央カタパルトオンライン。気密シャッターを閉鎖します。中央カタパルト、発進位置にリフトアップします。コアスプレンダー全システムオンライン」
「ブリッジ遮蔽。対モビルスーツ戦闘用意。インパルス発進後、ヘズモンド、ワグリーの前に出る!」
「CIWS、トリスタン、イゾルデ起動。ランチャーワン、セブン、1番から5番、全門パルシファル装填」
『シンが出てから僕らも続けて出ます』
「モビルスーツ隊の指揮はお願いね!」
『はい。タリアさん。ご無事で』
「そっちもね……!」
「発進シークエンスを開始します。ハッチ開放。射出システムのエンゲージを確認。カタパルト推力正常。進路クリアー。コアスプレンダー発進、どうぞ!」
『シン・アスカ、コアスプレンダー行きます!』
「カタパルトエンゲージ。チェストフライヤー射出、どうぞ。レッグフライヤー射出、どうぞ」
ミネルバから勢いよく飛び出したシンは、すぐさま貰っていた地図の通りに地下の坑道へとコアスプレンダーを向かわせる。
そして、コアスプレンダーに続いて、チェストフライヤー、レッグフライヤーも飛び込んでゆくのだった。
その様子をレーダーで確認しながらキラも覚悟を決めた。
『進路クリアー! セイバー発進、どうぞ!』
「キラ・ヤマト! セイバー! 行きます!」
ミネルバのカタパルトで勢いよく出撃したキラは出撃してすぐに『M106 アムフォルタス・プラズマ収束ビーム砲』を展開するとそれを地球軍のローエングリンへ向けて撃った。
あまりにも正確に撃たれたそのビーム砲に、あわてて地球連合軍のゲルスゲーはそのビーム砲を防ぎ、セイバーを危険な機体として認識した。
それゆえに、セイバーが変形しながらローエングリンの方へと向かったため、そちらへと移動を開始する。
地球連合軍のモビルアーマーを誘い出した形だ。
「シュラ君。コイツは僕が落とす! ローエングリンに気を付けながら他のモビルスーツをお願い!」
『承知した! あまり無茶はするなよ!』
「大丈夫だよ。ローエングリンの射角がとれなきゃ、こっちの方が安全だ!」
キラは笑いながらシュラにそう告げるが……現在ミネルバの方を向いているローエングリンが、いつセイバーへと向けられるか分からないのだ。
それほど笑っていられる様な状況でもない。
が、既にキラが戦闘を始めた以上シュラ達に出来る事はローエングリンを意識しながら敵モビルスーツを撃破する事だけだ。
そして、キラとシュラの会話を聞いていたミネルバのブリッジではアーサーが声を上げた。
「艦長! チャンスです! タンホイザーでローエングリンを!」
「出来る訳が無いでしょう!? 敵の砲台はこちらを狙っているのよ! それに敵モビルアーマーは砲台にすぐ戻れる位置よ!」
「艦長! 敵砲台、本艦に照準!」
「機関最大! 降下! 躱して!」
「はい!」
バート・ハイムからの報告にすぐさま反応したタリアはミネルバを急落下させ、地面を削りながらローエングリンをかわす選択をする。
その選択は正しく、ミネルバは艦底部を削りながらローエングリンをかわす事に成功するのだった。
しかし、うかうかしていては次の一撃が来るとミネルバを再浮上させる。
そして、ミネルバはうまく敵砲台を引きつけ、キラがゲルスゲーと睨み合い。
シュラがルナマリアやレイと共に敵のモビルスーツ部隊を削り、敵の意識が正面に集中していたまさにその時。
ローエングリンゲートの背後で突如として爆発が起こった。
そう。
インパルスが長い、長い坑道を抜けて、外へと飛び出した音だ。
奇襲の予定が、随分と派手な登場になってしまったなとキラは考えたのだが……。
その音は予想外の効果をもたらした。
ゲルスゲーの動きが一瞬、完全に停止したのだ。
その隙を見逃すキラではない。
陽電子リフレクターを使われる前にゲルスゲーへと接近し、陽電子リフレクター発生装置と武装を斬り落とし。
そのままローエングリンの方へと蹴り落としたのだ。
無論、そのまま落ちてはたまらないとスラスターを吹かせようとしたが、上空からセイバーに狙撃され、ゲルスゲーは落ちてゆく勢いを抑えられずそのままローエングリンの発射装置へと激突する。
更に、キラは駄目押しとばかりにローエングリンへ向けてセイバーの全武装を放ち、ローエングリンごとゲルスゲーを爆発炎上させるのだった。
これにより、基地に残っていた連合兵は皆逃げ出して……基地には意気揚々と飛び出してきて合体したインパルスだけが残された。
『あれ!? あれ!? 敵は!?』
「あー。ごめん。シン君。倒しちゃった!」
『えぇ~!? 俺の活躍は!?』
「大丈夫。大活躍だったよ」
キラは謝りながらシンに微笑み、そう言葉を掛けたのが、長く暗い坑道の中を地図だけを頼りにして抜けて来たシンがそれで納得出来る訳もなく、キラへと情けない声を上げ続けるのだった。