ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第182話『PHASE-19『見えない真実1』』

 無事、ガルナハンでの作戦も成功し、キラとシンは大歓迎の中で住民に迎えられた。

 ゆっくりと町の真ん中にセイバーとインパルスを降下させ、歓喜に踊る住人達へと話しかける。

 

「ご無事ですか?」

「えぇ! えぇ! ありがとうございます! キラ様!」

「キラ様のお陰で、我々は生きてゆけます!」

 

「まぁ、僕というか……ミネルバやラドル隊の皆さんのお陰ですよ」

 

 キラは住民に笑顔を向けながら、その向こうで行われている凶行に目を細めた。

 ガルナハンの基地が崩壊し、そこから逃げた連合兵を捕らえた住民たちが、彼らを処刑しているその光景を。

 

 彼らの行いを止めたい気持ちはある。

 だが、連合兵によって住人達も殺されているのだ。

 今、彼らの行いを否定すれば……それは連合兵の凶行を認める事になり、虐げられてきた彼らの気持ちを踏みにじる事になる。

 

 憎しみの連鎖を断ち切る事が平和へと繋がる道なのだと分かっていても、現実に出来る事はそれほどなく。

 キラはただ、敵を撃つ事しか出来ていないのが現状で会った。

 

 世界からジブリールの勢力を削り、彼を裁いて、この世界から争いを消す。

 

 言葉にすれば簡単であるが、それはあまりにも遠い道の様に思えた。

 キラの中にあるのは、アスランならこの状況でどうしただろうか、カガリなら、セナなら……。

 ラクスなら、彼らにどんな言葉を掛けただろうか。という事だけだ。

 

「まったく……嫌になるね」

 

 喜びの感情を全身から示しながら踊り叫ぶ彼らを見て、キラは誰にも届かない言葉を呟いた。

 

 そして、コニールを始めとする子供達に囲まれて、彼らと同じ様に満面の笑みで笑っているシンに声をかけて、ミネルバへと帰投するのだった。

 この街で終わりではない。

 まだ、ジブリールが起こした戦争によって苦しんでいる人々は居るのだ。

 

 行かねばならない。

 平和を作るために。

 

 そして、キラとシンがミネルバへと帰投し、ミネルバの損傷が問題ない事を確認してから、タリアはミネルバを次なる目的地へと向かわせるのだった。

 

 

『こちらディオキアポートコントロール。ミネルバ、アプローチそのまま。貴艦の入港を歓迎する』

「ありがとう、コントロール」

 

 ガルナハンを落とした後、戦闘らしい戦闘もないままミネルバは進行し、ジブラルタルより進軍したザフト軍によって解放された黒海沿岸都市の一つ、ディオキアへと入港していた。

 そのブリッジでアーサーはタリアに語り掛ける。

 

「ディオキアかぁ。綺麗な街ですよね。なんだかずいぶんと久しぶりですよ、こういう所は」

「海だの基地だの山の中だのばかり来たものね。少しゆっくりできたらみんなも喜ぶわね。でも……何かしら。随分と騒がしいわね」

「確かに。何でしょうねぇ。これは……」

 

 ミネルバのブリッジからでも分かる街の様子は、戦時中とは思えない程に浮かれた物であり、タリアとアーサーは思わず顔を見合わせてしまうのだった。

 そして、軽く混乱しているブリッジに隊長であるキラも足を踏み入れて、状況を聞く。

 

「タリアさん。どうですか? ディオキアの様子は」

「どうもこうも。何かお祭りをやっているみたいね」

「お祭りですか?」

 

 キラはオペレーター席へと移動すると、メイリンに外部カメラの映像を出してもらい、首を傾げた。

 確かにタリアが言うように、外はお祭り騒ぎという様な状況である。

 

 出店は立ち並び、大勢の人々が笑顔で大通りを行き交っていた。

 

「何かイベントですかね?」

「かもしれないわね。クルーには休息を出すから、あまりはしゃぎ過ぎない様にとと伝えて」

「ハッ!」

「キラはどうするの?」

「僕はオーブで沢山休暇を貰いましたし。今回は基本的にミネルバの中で過ごしますよ」

「良いの?」

「えぇ。誰か居た方が皆さんも安心でしょ?」

「それは……そうだけど。それじゃガッカリする子も結構いるかもね」

「そういう子とは艦内デートを楽しみますから」

「そう。まぁ、貴女がそれで良いのなら私からはこれ以上言わないわ。でも、少しくらいは息抜きして来なさい」

「はい。ありがとうございます」

 

 キラはタリアの優しさに笑顔で微笑んで、不満そうな顔をしているメイリンの背中を軽く叩いた。

 そして、ブリッジを出て行こうとしたのだが……。

 

「っ! 艦長。ディオキア基地より緊急秘匿回線です」

「繋いで!」

 

 メイリンの緊迫した声がブリッジに響き、タリアはまさか地球軍かと気を引き締めて通信を繋げる。

 

『やぁ。ミネルバの諸君。久しぶりだね』

「ギ……デュランダル議長……!」

『グラディス艦長も元気そうで何よりだ。キラ君もね』

「えぇ。本当に。というか、議長は何をしてらっしゃるのですか?」

『ちょうど地球に降りてきていてね。ミネルバもディオキアに来るというし。久しぶりに顔を見たいと思ったんだ』

「顔なら、この前通信で見せたでしょう?」

『直接会う喜びという物もあるんだよ。キラ』

「はぁ。なるほど」

『というワケだ。せっかくだし。どうだろうか? グラディス艦長にヤマト隊長。三人で食事などは』

「僕は構いませんけど」

 

 キラはデュランダルに言葉を返しながらタリアを見て、タリアがため息を吐きながら頷いたのを確認した。

 一切、気乗りはしていないが、仕方なく頷いた。という様な様子である。

 

『では21時頃。迎えの者を送ろう。詳しくは現地で』

「えぇ。分かりました」

 

 通信が切れる最後まで笑顔であったデュランダルに、タリアは再びため息を吐いて帽子を深く被る。

 そんなタリアに苦笑しながらキラは言葉を掛けるのだった。

 

「ほら。タリアさん。そんな怖い顔しないで下さいよ」

「貴女は気楽で良いわね。キラ」

「まぁ、考え込んでもしょうがないですからね。なる様になるの精神でいきましょうよ」

「ハァ」

「ほら。こんな綺麗な海辺の町なんだし。きっと美味しい物が食べられますよ?」

「そうね。せっかくだし、楽しむ事にするわ。貴女も一緒にだしね」

 

 タリアは微かに笑みを浮かべてキラを見上げ、キラも微笑みを返す。

 そんな二人の様子にアーサーはよく分からないという様な顔をしながら問いかけた。

 

「えっと、お二人は、議長からのお誘いが嬉しくは無いのですか?」

「えぇ、そうね。嬉しく無いのよ。アーサー」

「ちょっ、タリアさん。そんなにハッキリ……!」

 

「えぇー!? で、でも議長の覚えが良いというのは良い事では無いですか!」

「それはそうかもしれないけど。議長と食事に行って、それから私の良い辞令が出たら貴方はどう思うかしら」

「え? いや、流石は艦長だなとしか」

 

「貴方は本当に……」

「良い人ですねぇ」

「えぇ!? えぇー!?」

 

「艦長。我らは艦長の優秀さを存じております。だからこそ命を預ける事が出来る。ミネルバに下らない邪推をする者など居ませんよ」

「ありがとう。バート。そう言ってくれると嬉しいわ」

「流石はグラディス艦長……! まぁー。僕はコネをコネコネしに行く感じですけどね」

「冗談。貴女とデュランダル議長が会って、貴女が昇格しても、デュランダル議長が媚びを売ったとしか思われないわよ」

 

 場の空気を和ませようとキラが放った言葉に、タリアが返し、ミネルバのブリッジは笑いに包まれるのだった。

 そして、後は各自行動開始という事で解散となり、キラは休暇に入るメイリンと共に廊下を歩いていたのだが……通路の向こうからドタバタと騒がしい声や音が聞こえ、キラは何事かと通路の先に目を向ける。

 

「ですから! 勝手な行動は困るんですよ!」

「あら。議長から許可が出てますから。少しくらいは良いじゃないの」

「そういう訳にはいかないんですって!」

 

「お姉ちゃんの声ですね」

「みたいだね。何かトラブルかな」

 

 キラはメイリンと視線を交わし、言葉を交わしてからルナマリアの様な人の声がする方へと向けて歩き……酷く懐かしいピンク色の長い髪の少女の姿を見つけるのだった。

 

「え!? ラクス!?」

「っ! キラ!」

 

 ピンク色の髪の少女は通路の先に居たキラの元へルナマリアの制止を振り切って走り出し、キラに勢いよく抱き着いた。

 キラは少女を容易く抱きとめると、すぐに少女の正体を看破し、耳元で囁く。

 

「……何やってるの。ミーア」

「あれ。もう分かっちゃった?」

「当然だよ」

 

 そして、抱き合う二人をジト目で見ているルナマリアとメイリンの視線に気づき、咳ばらいをしてからキラはミーアを引き離した。

 

「コホン。ラクス。少し離れてね」

「えー。別にいいじゃないの」

「良いから。ここは軍艦の中なんだから。規律は大事なんだよ」

 

 キラは真面目な隊長です。という顔でミーアを引き離そうとしたが、失敗し、ミーアはキラの腕に抱き着いたまま離れない。

 そんなミーアの様子に、ルナマリアとメイリンの視線は重く、鋭くなるばかりで……キラはこのままではマズいとミーアを連れて離脱するのだった。

 

 わたわたと慌てて通路を走っていくキラとミーアに、ルナマリアは冷めた目をその背中に送っていた。

 

「恋人って噂、本当だったんだね」

「そうみたいね」

「でも、あの感じじゃ長続きしないんじゃない?」

「アンタ……そういうのは人の居る所で言うんじゃないわよ」

「別に~。ただの感想だもん」

「刺されても知らないわよ」

 

 ルナマリアはキシシと悪い顔をして笑っているメイリンに忠告をしてから通路を歩いて食堂の方へと向かっていくのだった。

 今はシンやレイの様に、祭りの中で食事をする気にはなれないと。

 

「どこに行くの? お姉ちゃん」

「ご飯」

「外で食べるの?」

「面倒だからミネルバで食べるの」

「そうなんだ。じゃあ、私も行こうかな!」

 

 

 それからルナマリアとメイリンはズンズンと食堂へと向かい、ミーアを連れて通路を急いでいたキラは自室にミーアを招いて大きなため息を吐いた。

 

「どういうつもり? ミーア」

「だってー。キラが来てるって聞いたから我慢出来なくて」

 

 キラの部屋に入り、無邪気にソファーへと座りながら笑うミーアに、キラは額に手を当てながら深いため息を吐いた。

 ミーアらしい無邪気な姿ではあるが、ラクスとしては減点だ。

 こんな事をラクスはしない。

 

「まったく」

「ねーねー。キラ。一緒にお祭りに行きましょうよー」

「悪いけど、僕は当分艦内待機なの。外へは行きません」

「えー。面白くないの―」

 

「今は戦時中だからね。終わるまではダーメ」

「ちぇー。つまんないなぁ」

「ハイハイ。というか。君はラクスとしてここに来てるんだから、護衛の人とか居るんじゃないの? どうしたの」

「あー。それはね?」

「それは?」

「てへ。撒いてきちゃった」

「ハァー。君は、もう」

 

 キラは急いでディオキアの基地へ連絡して、ラクスがミネルバに居る事を告げるのだった。

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