ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第187話『PHASE-22『蒼天の剣1』

 思い通りにならない現状に、ジブリールは強い苛立ちを感じたまま通信相手の大西洋連邦大統領に怒鳴っていた。

 自分の手の中にあると思っていた世界は、ジブリールの願いを無視して好き勝手に動き回っている。

 それは、ジブリールが世界の支配者ではないと言っている様で……。

 ジブリールは頭に過った不安をかき消す様に、ただ声を荒げ、叫ぶのだった。

 

「一体どうなっているのです!」

『それは君だって知っているだろう。プランの準備がまだ完全に整っていなかった所へ、あの被害。それでも君の言うとおり強引に開戦してみれば、こちらの攻撃は全て躱され、あっという間に手詰まりだ。これではあちこちで民衆が跳ねっ返り、ごり押しで結んだ同盟が綻び始めるのも無理はないさ』

「私はそんな話が聞きたいのではない!」

『……』

「私はそんな現状に対して、あなた方がどんな手を打ってらっしゃるのかを聞いているのです! コーディネイターを倒せ、滅ぼせ、やっつけろと、あれだけ盛り上げて差し上げたのに! その火を消してしまうおつもりですか!」

『ジブリール……』

「弱い者はどうせ最後には力の強い方に付くんです。勝つ者が正義なんですよ! ユーラシア西側のような現状をいつまでも許しておくから、あちこちで跳ねっ返りが出るんです!」

 

『だが我等とて手一杯なのだ。だいたい君のファントムペインだって大した成果は挙げられていないじゃないか。それでよく偉そうな事が言えたものだ』

「それは……!」

『それに、キラ様が向こうに付いている以上……民衆が向こうを支持するのは当然の事だろう? それの対応は君の仕事だったと記憶しているがね。セナ様は未だ我らを支持してくれないのかい?』

「アレの使い時は今ではない!」

『だとするなら、現状を変えるのは難しいだろう。キラ様やセナ様くらいの求心力があれば良かったんだが……』

「求心力……そう! そうですよ! オーブが居るではないですか!」

『オーブ?』

 

「あの国は今は我々の陣営だ。そしてその戦力はなかなかなもののはず! さらに、かの国はキラの母国という事でそれなりに求心力もあるでしょう!」

『まぁ……確かに』

「黒海には彼等に行ってもらえばいいんですよ。同盟国の責務としてザフトを追っ払いに。もはやあの国にNOは言えますまい。キラをこちらへ渡す事もなく逃がしてしまった責任もありますし。精々働いて貰おうじゃないですか!」

 

 良い案を思いついたと、ジブリールは笑みを浮かべながら手に持っていたワインを一口飲んだ。

 流石のキラもオーブ軍が相手となれば、まともに戦闘する事は出来ない筈。

 そうなればキラを確保できるし。キラが確保できれば、民衆の支持は集まる。

 

 まさに完璧な作戦であった。

 

 

 というワケで、ジブリールはオーブへと命令を下し、その命令を受けたウナト・エマ・セイランはため息と共にユウナを見やった。

 その視線の意味に、ユウナは即座に気づき頷く。

 

「どうやらジブリールが動いたようだね」

「ユウナ」

「やれやれ。ようやく僕の出番か。長かった様で、短い休暇だったよ」

「やはり……私が行くべきではないか?」

「まさか! 父上じゃあ艦隊指揮は出来ないでしょ? それに、オーブを外敵から守る役割が父上にはあるんだからさ」

「……あぁ」

「まぁ、そんなに心配しなくても、時間稼ぎはするし。その間に何か良い方向に転がるかもしれないしね」

「そうだな」

 

 その様な事はあり得ないと理解しつつも、ユウナは軽く微笑みかけてウナトの私室を出て行った。

 そして、そのまま軍本部へと向かうと、オーブ国防軍大型航空母艦タケミカヅチの艦長であるトダカ一佐を呼び出し、命令を下す。

 

「同盟国たる大西洋連邦より命令が来た。黒海のZAFT軍を撃て、との事だ。随分と遠くへと向かわされるモノだねぇ」

「承知いたしました」

「うむ。では艦及び、人員の確保は君に一任するよ。トダカ一佐」

「ハッ。既に全て完了しております。出撃はいつでも可能です」

「そうか……では、出撃は三日後。1200。そして出撃する全ての人員に特別休暇と特別手当を用意しよう。急な事であるが……受領忘れのない様に」

「承知いたしました!」

 

 トダカ一佐は帽子を深く被ったまま敬礼をし、ユウナの命令をすぐさま部下であるアマギへと伝えた。

 アマギはその命令を受けて各員に命令を伝えるべく指令室から駆けて行く。

 しかし、トダカは命令をアマギに伝え終わった後も、指令室を動かずユウナをジッと見ていた。

 

 その姿があまりにも奇妙でユウナは首を傾げながらトダカへと言葉を向ける。

 

「どうした? 貴様も休暇だ。家族の元へ行き、最後の時間を過ごしてくると良い」

「ユウナ様は」

「うん?」

「ユウナ様も出撃されるのですか?」

「当然だろう? 僕はオーブの代表だ。カガリがそうであった様に。僕も自らの責任をもって、戦場へ向かわねばならない。それが国を率いる者の役目だよ。王は誰よりも前に立たねばならない。ウズミ様も、そうであっただろう?」

 

 椅子にもたれかかりながら、両手を組んでユウナはゆっくりと語る。

 オーブという国の代表の役割を。

 その苛烈な考え方を。

 

 しかし……。

 

「貴方は代表ではない」

「分かっている。あくまで対外的な話だ。貴様らの代表は、今でもカガリ。それは僕も同じだ」

「であるならば! 貴方が死にに行く必要は無いでしょう!」

「あるさ」

「……!」

「言っただろう? オーブの代表は、高潔でなければいけないんだ。例え、カガリからその地位を簒奪した者であっても。キラを手にする為に策を弄した者であっても。それは変わらない。そうでなくては、オーブという国は汚れてしまう」

「キラ様やセナ様が悲しまれるでしょう。そう見せずとも、カガリ様も」

「あぁ。キラには泣かれたし。カガリも考え直せと何度も言われたよ」

「ならば……!」

「でもね。僕も男なんだよ。トダカ一佐。好きな子には、格好いい所を見せたいだろう? それに、笑顔が見たいのさ。好きな子の、笑顔をね」

「ユウナ様……」

「だから。気にするな。トダカ一佐。無駄死にをするんじゃない。僕はオーブの代表として、あの子達を守る為に行くんだ。そこには後悔も悲しみもない。これが僕の役割なんだとハッキリ言える」

 

 ユウナの強い目と言葉に、トダカは帽子を深く被りながら小さく息を吐いた。

 そして、指令室で彼らの話を聞いていた者達も、気分が落ちる。

 

 キラやカガリやセナが、オーブの守るべき宝なら……ユウナは今日という日まで共に戦ってきた戦友だ。

 その戦友が、オーブという国と民を護るために、全ての汚名を背負って死のうとしている。

 それは酷く心が痛めつけられる事であった。

 

「しかし……だ。僕もただ死にに行くんじゃない。チャンスがあれば生きる為の選択をするさ」

「……はい」

「それに、もう一個チャンスがある。アークエンジェルからの報告では、黒海に向かう部隊の中には……セナを捕まえた連中がいるらしい。我が国の至宝を取り戻すチャンスだ」

「ハッ」

「いつまでも、連中の好きにはさせないさ。ODRにも連絡したし。新型ジャマ―とミラージュコロイドを搭載したムラサメも持って行く。必ずとりもどすよ。セナを」

「承知いたしました」

 

 トダカの力強い返事にユウナは満足し、椅子に深くもたれかかって天井を見上げた。

 黒海へ向かう、我らにどうか女神の加護を……と、心に想いながら。

 

 

 そして、オーブ軍が黒海へ向かうという連絡は遠く離れたアークエンジェルへも届けられ、カガリは顔をしかめながらその報告を受ける。

 

「まったく。私はいつでも無力だな」

「カガリさん……」

「大切なものが奪われるのを、ただ眺めている事しか出来ないとは」

「ならば、行きましょう」

「なに?」

(わたくし)達には出来る事があります。それに、キラへとアピールする事も大切でしょう? 戦場へ私達が出て来れば、何かあったのかとキラはこちらを気にしてくれるでしょうから」

「そして、うまい事戦闘を中断させれば……オーブ艦隊も守れるかもしれない。ですか?」

「えぇ。その通りですわ。皆さまでしたら、可能でしょう? その様な戦いも」

 

「まったく簡単に言ってくれますね。ラクス様は」

「でも、頼られてるっていうのは嬉しい物よね」

「……否定はしません」

 

 ラクスの『ワガママ』に、ナタルはため息を吐き、マリューは苦笑する。

 そして、アスランはキュッと拳を握りしめながらラクスとカガリを見やった。

 

「それに、(わたくし)達が出て来れば、彼らも動き始めるでしょう」

「俺たちの偽物、だな?」

「はい」

「しかし、本当に出て来るのか?」

「あぁ。間違いない。今朝方、ディオキアにジブラルタル基地から輸送機が来た。積まれていたのは『ジャスティス』だ」

「ジャスティスって……あれは核動力の機体だろう? それをZAFTが使うっていうのか?」

「既にプラントは核攻撃をされておりますから。これを批判する事が出来る人は居ないでしょう」

「それに……前大戦で自由と正義は並び立っていたからな。キラがミネルバに居る以上……そこに『アスラン』と『ジャスティス』が配備されるのは、正しく見えるさ」

「……私は、そうは思わないがな。初戦は偽物だろ」

「カガリがそう思っても、世界はそう思わないだろうな」

 

 アスランはどこか寂しそうな顔で呟き、ラクスも目を伏せる。

 二人の心境は複雑だろう。

 

 キラと育んできた絆が、何者かによって利用されている状況なのだから。

 嫌な気持ちにもなるという物だ。

 

 しかし、だからこそ……カガリはいつもと変わらない笑みを浮かべ、明るく言うのだ。

 

「問題はない」

「……カガリ?」

「キラだってバカじゃない。もうとっくに偽物だって気づいているだろう。間違いない」

「そうだと、良いですわね」

 

 ラクスは僅かな不安を胸に抱きながら、カガリに頷いた。

 キラの事を信じてはいる。

 信じているが……不安は拭えないのだ。

 

 向こうだって、中途半端な偽物でキラを騙せるとは思っていないだろう。

 ならば、この手には何かしら意味がある筈だとラクスは考え、遠くミネルバにいるキラの無事を願うのだった。

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