ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第190話『PHASE-23『戦火の蔭2』

 ダーダネルス海峡での戦闘も終わり、タリアに正式な許可を貰ってミネルバを離れようとしていたキラであったが、部屋で準備をしていた所、来客を告げる音が部屋に鳴り響いた。

 誰が来たのかと扉を開けてみれば、そこに立っていたのはアスランであった。

 

「あら。アスラン。どうしたの?」

「グラディス艦長から聞いた」

「うん」

「ミネルバを離れるのか?」

「まぁ、離れるって言っても精々二、三日って所かな。すぐに戻ってくるよ」

 

「お前はモビルスーツ隊の隊長だろう?」

「そりゃそうだけど。でもミネルバは損傷が酷いし。修理しないといけない状況でしょ? それにディオキアの基地まで地球連合軍が攻めて来る事はないよ。彼らだってかなり被害を受けてる。この状況で突っ込む理由は無いでしょ」

「だが、可能性はゼロじゃない」

「なら、何かあった時には君が隊長としてみんなを引っ張ってよ。シュラ君だって強いし。シン君もレイ君もルナも強いから。何も問題はないよ」

「キラ!」

 

 話は終わりだと扉を閉めようとしたキラだったが、アスランがキラの手首を掴んだ為、出来ずに固まってしまう。

 部屋の出入り口でジッと見つめ合う二人。

 

「なに?」

「アイツは偽物だ」

「何の話さ。アイツって誰のこと?」

「分かっているんだろう! キラ! あのムラサメのパイロットだ! アイツは違う! 俺が、俺こそが本物なんだ!」

「いっ……!」

 

 感情的になりながらキラの手首を強く握りしめるアスランに、キラは鈍い痛みを感じて顔をしかめた。

 しかし、それでもアスランは手を離そうとしない。

 ただ、キラに強く訴えるだけだ。

 

「キラ! 俺を見ろ! 俺は……!」

「貴様! 何をやっている! アスラン・ザラ!」

「……っ! シュラ君」

 

 キラの手を強く握っていたアスランは不意に通路の向こうから走って来たシュラに殴られ、キラの手を話しながら通路に倒れる。

 そして、シュラはキラを護る様にアスランを睨みながらキラの前に立ち手を横に広げた。

 

「どういうつもりだ。貴様」

「……お前には、関係ないだろう」

「俺はキラ姫様の騎士だ。姫様に手を出す者を赦すわけにはいかない」

「……フン。騎士か。何も知らない奴は呑気で良い」

「何?」

「お前も、所詮は利用されているだけだ。与えられた役割の中でごっこ遊びをしているだけ。そんなお前が偉そうに語るな」

「貴様!!」

 

「シュラ君! アスラン! もう止めて!」

「姫様……!」

「キラ」

 

「とりあえず、シュラ君は助けてくれてありがとう。でも、喧嘩は駄目。ここは軍艦だ。私闘は許されない。分かるよね?」

「……はい」

「そして、アスラン。何を気にしているか分からないけど、少し落ち着いて。戦闘が終わってすぐで気持ちが収まらないのは分かるけど。僕は今、忙しいの。理解して」

「キラ! 俺は」

「アスラン!」

「っ!」

「お願いだから。今はそっとしておいて」

「……わかった。すまない。キラ」

「良いよ。でも、帰ってきたら、いつものアスランに戻ってると、良いな」

 

 キラはそれだけ言って部屋の扉を閉めた。

 硬く閉ざされた扉に、シュラは鼻を鳴らし、無様に通路で倒れている藍色の髪の男を見やる。

 

 情けない姿だ。

 ファウンデーション王国でキラを華麗に救出した男と同一人物とは思えない。

 が、第一印象のままでいる人間の方が少ないのだ。

 長く付き合う事で良くも悪くも、その人間に対する印象は変わる。

 

 アスランもまた、実際に会えばこの程度という事かとシュラは納得し、さっさとキラの部屋を後にするのだった。

 

 そして、残されたアスランもキラの部屋に繋がる扉を見ながらため息を一つ吐く。

 あまりにも焦り過ぎていたと。

 

 キラのセイバーとあの男のムラサメが息を合わせながら戦う姿を見て、感情を押さえておくことが出来なかった。

 自分を押さえつけておく事が出来なかった。

 植え付けられた『アスラン・ザラの記憶』から、アレが本物である事を理解して、吐き気がする。

 

 キラの最も近くで、いつでも彼女に手を伸ばす事が出来たのに、ラクス・クラインへと譲り渡してしまった愚か者。

 そんな奴と同じ顔をして、同じ記憶を持っている事が、彼にとっては何よりも不快だった。

 

「俺が、アスラン・ザラだ。俺こそが……アスラン・ザラなんだ。俺はお前とは違う。キラは……俺の」

 

 男は幽鬼の様にふらりと立ち上がると、もう一度キラの部屋に手を伸ばそうとしたが、これ以上は駄目かと手を下げる。

 そして、フラフラとキラの部屋を去っていくのだった。

 

 二人の気配が完全に無くなった事を確認したキラは扉に背を付けたままズルズルと滑り落ちる。

 床に座りながら目を伏せてアスランに強く握りしめられた右手首を左手で軽く撫でながら小さく呟いた。

 

「……いたい、なぁ」

 

 前髪が目元まで隠している為、その表情は見えないがキラの声は僅かに震えていた。

 

「ホント、勘弁してよ……」

 

 弱り切った声でキラは小さく呟き、そのまま唇をキュッと強く締めるのだった。

 

 

 そして、しばらく扉に寄り掛かったまま俯いていたキラだったが、また部屋に来客を知らせる合図がして、僅かに体を揺らす。

 しかしキラはその合図に出るつもりはなく、ただ静かに俯いていたのだが、外から通信で聞こえる声にパッと顔を上げた。

 

『あれー? もうキラさん出ちゃったのかなぁ』

『いや、セイバーはまだ格納庫だ。それは無いだろう』

『なら、食堂とか?』

『かもしれないな。今日のメニューは何だったか』

『ハンバーグカレーだな』

『なるほど。では食堂の可能性が高いか……では』

 

「コラコラ。君たち。僕を食いしん坊か何かだと思っていないか?」

 

 キラは外から聞こえる二人の声に気持ちを一気に取り戻して扉を開ける。

 やや間の抜けた顔をしながら腕を組んでいたシンと、いつも通り冷静な顔をしているが、やはり間の抜けた考えを披露していたレイがそこには立っていた。

 

 オーブに居る時から変わらない。

 キラの可愛い弟分たちだ。

 

「あ、キラさん。部屋に居たんすね」

「うん。ちょっと寝ててね。それで? どうしたの? 二人とも」

「艦長から、キラさんの護衛をする様にと命令を受けました」

 

「なるほど。別に僕は護衛とか要らないけど」

「であれば、自分たちは見えない所からキラさんの後に付いていきます」

「うーん。それはちょっと面倒だね。分かった。じゃあ一緒に行こうか」

「よろしいのですか?」

「良いよ。ちょっとアークエンジェルのみんなに会うだけだし。君たちが居た方が話も早いだろうしね」

「承知いたしました。ではご同行させていただきます」

「うむ。よろしく頼むよ」

 

 キラは腰に手を当てながらクスリと笑って二人に微笑んだ。

 そして、二人を連れて格納庫へと向かい、機体を見上げながら考える。

 

「はてさて。どうしたものかな」

「どうしたんすか? キラさん」

「いや、機体はどうしようかなって。個人用のヘリもあるけど、セイバーの速度に追いつくのは無理だし」

「あぁ、俺はインパルスで行くんで! 大丈夫っすよ! レイは、どうする?」

「コアスプレンダーのコックピットは狭い。俺はキラさんと一緒にセイバーで行こう」

「なっ! おい! ズルいぞ! レイ!」

「仕方ないだろう。俺のザクは空を飛べないんだ」

「グゥルがあるだろうが! グゥルが!」

「さて、どうだったかな」

「今すぐ用意しようか!?」

 

「やめておけ。今整備員たちは忙しいんだ。無用な仕事を増やすべきじゃない」

「あー言えばこう言う!」

「まぁまぁ。今度シン君も一緒にセイバーに乗ろう。それで、今回は収めてね」

「……まぁ、キラさんが言うのなら、良いっすけど」

 

 シンは不承不承という感じで頷き、ひとまずシンはインパルスで、キラとレイはセイバーでミネルバから出撃する事となった。

 そして、キラは十分にミネルバと距離を取ってから、まずは通信を送る。

 

「しかし」

「うん?」

「どうやってアークエンジェルと連絡を取るのですか? キラさんは常に位置を把握している、とか?」

「いやいや。流石にそれは出来ないよ。向こうも動いてるしね。それに新型のジャミング装置を付けてるからレーダーで見つけるのは無理だし」

 

『あ、分かった! ミヤビ様経由で通信を繋げるんだ!』

「半分正解です」

『えぇー、半分かよー』

「ふふ。正解は、アークエンジェルとODRの通信回線から逆探知する。です」

「なるほど。ODRとアークエンジェルは常に通信をしていると」

「そういうコト。ODRが集めた情報と、アークエンジェルが集めた情報を共有する必要があるし。ODRはオーブとも繋がってるから、安全に情報をオーブ本国にも伝えられるってワケだね」

 

『でもそれだとODRが危険じゃないっスか?』

「それはそうなんだけど、エクリプスに追いつける機体は現状世界のどこにも無いからね。イザとなればササっと逃げられるってワケ」

「なるほど。しかし、この情報がZAFTや連合に流れた場合、彼らが危険ですね」

「そのとおーり。だからシン君もレイ君もうっかり誰かに話しちゃ駄目だよ」

「承知いたしました」

『わ、分かってますよ! 大丈夫です!』

「大丈夫か? シン」

『大丈夫だって! 俺、口はスゲー硬いから!』

 

「うん。分かってるよ。シン君もレイ君も。ずっと秘密で動いてるもんね。僕も信頼してる。ふふ。良い子良い子」

『子供扱いしないで下さい!』

「そういうつもりは無かったけど。まぁ、良いか。うん。見つけた。コレがODRとアークエンジェルを繋いでる回線。ここからアークエンジェル側を特定すれば……ね。繋がった」

 

『あー。こちらアークエンジェル。そちらは』

「僕です。キラです」

『キラちゃん! もうこっちを見つけたのね。相変わらず仕事が早いわ!』

「こういうのは得意ですからね。マリューさんも、助けて下さってありがとうございます」

『良いのよ。ミネルバは攻撃されちゃってたし。ちょっと到着が遅かったけど』

「いえいえ。詳しい話は合流してからにしましょう。アークエンジェルに直接行くのは問題がありますし。どこか人の居なそうな場所で」

『分かったわ。じゃあ良い場所を探して知らせるわね』

「お願いします」

 

 キラはマリューからの言葉に頷いて、示された地点をインパルスにも共有しつつ、その場所を目指すのだった。

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