ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第193話『PHASE-25『罪の在処(ありか)1』

 ミネルバに戻ったキラは、帰還した事をタリアに報告したのだが……。

 

「戻ってすぐで悪いんだけど、また出撃して貰える?」

「それは構いませんけど……何かありましたか?」

「それが……本部からの命令なんだけど。探索任務の依頼が来てるのよ」

「探索任務ですかぁ」

 

「そう。ロドニアにね。連合の息の掛かった何やら不明な研究施設のようなものがあるみたいなの。今は静かみたいなんだけど……以前は車両や航空機、モビルスーツなども出入りしていたかなりの規模の施設らしくて……上はキラに調査を依頼したいって」

「なるほど……ロドニアのラボですか」

「その様子じゃあ、何か知ってるみたいね」

「えぇ。まぁ……正直あまり気分の良い場所では無いですよ。以前より少しは改善したと思いますけど」

 

「どういう事?」

「兵器の実験場と彼らは呼んでました」

「兵器……? 設計局みたいな」

「設計。まぁ、そうですね。設計するのは主に、改造兵士の設計ですけど」

「っ!」

 

 キラが淡々と言った言葉にタリアは息を飲んだ。

 そして、キラはそんなタリアに無表情のまま言葉を紡ぐ。

 

「僕とセナが初めて行った時は本当に酷い場所でした。口には出来ない程に。でも……色々言ったので、少しは改善されてましたね。今はまぁ……ちょっと分かりませんが」

「……なるほど。貴女に調査を依頼したいって言った上層部の考えが分かったわ」

「そうですね……でも、どうしましょう? 多分、施設はまだ生きてる可能性がありますが」

「そうね。貴女一人で行かせるつもりは無かったけど……サーペンタイン副隊長とアスラン・ザラを連れて行ってくれる? あの二人なら何があっても大丈夫でしょう」

「分かりました。あ、でも現地の調査もしたいので、イングリットさんも連れて行きますね」

「えぇ。よろしくお願い。戦力が無いのなら私達もミネルバで向かうから」

「了解です。では、現地でまた会いましょう」

 

 キラはタリアに礼をして、そのまま部屋を出て行った。

 そして、シュラとイングリット、それにアスランにも連絡をして、セイバー、ジャスティス、ブラックナイトスコードの三機で現地へと向かう。

 

 それほどせずに現地へ到着したキラは、ひとまずイングリットに周辺の調査をして貰った。

 

「どうかな?」

「熱源はありません。施設も……灯りは付いていない様ですね」

「了解。じゃあ内部の調査に行きますかー。シュラ君。アスラン。一緒に行くよ。イングリットさんは万が一に備えてモビルスーツで待機をお願い」

「了解です。姫様」

「あぁ」

「分かりました」

 

 三人の返事に頷いて、キラはサッとセイバーから飛び降りた。

 そして恐ろしい速さで、競うように合流してきたシュラとアスランに苦笑しつつ施設へと向かう。

 

 そんな三人を見送りながらイングリットはふぅと小さく息を吐いていたのだが……不意にブラックナイトスコードが何かをカメラで捕らえた。

 

「……なに?」

 

 何やら森の方で光が動いている事に気づいたイングリットはそれを拡大し、目を大きく見開いた。

 そして、キラに待機を命じられていたというのに、機体から飛び降りてその光の場所へと向かう。

 

「まさか。本当に来てくれるとは思わなかった」

「……オルフェ」

「イングリット」

 

 二人は静かに見つめ合い……そしてどちらともなく口を開いて、言葉を交わす。

 最初は何でもない話から、ゆっくりと彼らが胸の奥に秘めていたことへと。

 

「その……久しぶり、だな」

「うん」

「元気だったか?」

「えぇ。貴方は」

「この通りだ。何一つ不自由にはしていない」

「そう。良かった」

 

「でも……どうして、私に会いに来て、くれたの?」

「確かめたい事があったからだ」

 

 真っすぐにイングリットを見つめるオルフェの視線に、イングリットはトクンと胸の奥で鼓動が跳ねるのを感じた。

 そして、トクトクと早くなっていく心臓の音を感じながら胸の前で両手を組んで、オルフェに思いを返す。

 

「私も……オルフェにもう一度、会いたかった」

「そうか」

 

 イングリットの言葉に、オルフェは静かに頷いて、再び口を開くのだった。

 

 

 オルフェとイングリットが数年ぶりの邂逅を果たしている頃。

 キラはアスランとシュラを率いながら最悪な気分で施設の中を歩いていた。

 

 かつて自分達が見せられていた部分よりも奥深く。

 悪意と狂気が入り混じった地獄と言っても差支えが無い場所へ。

 

「これは酷いな」

「地球連合軍の改造兵士の生産工場という所か……旧人類め。キラ様、ご気分は」

「最悪だけど、別に歩けるから問題ないよ」

「承知いたしました。何かあればすぐこのシュラに」

「キラ。いつでも頼って良いからな」

 

 ピリッと空気が弾ける様な気配と共にシュラとアスランがキラを挟んで睨み合うが、キラは近づきすぎている二人を無理矢理引き離して奥へと進む。

 そして、施設の中で一台の無事なPCを見つけて、それを起動させた。

 

「まぁ、でも最初の時よりは幾分かマシにはなってるみたいだね」

「これで、ですか」

「これで。だよ。最初はもっと酷かった。メンデルといい勝負なんじゃないかな」

「メンデル……ですか」

 

「『ここは禁断の聖域。神を気取った愚か者達の夢の跡』なんて、兄さんも前に言ってたけどさ……変わらないんだ。人類は、コーディネーターもナチュラルも同じだ。そして昔も今も変わらない」

「……キラ」

「であれば、キラ様が導くというのは、如何でしょうか?」

「シュラ君?」

 

 キラはパソコンから目を離し、すぐ隣に立っていた男を見上げた。

 自信満々で自分は何も間違えた事を言っていないと、その表情から。全身から訴えている。

 

「冗談でしょ?」

「まさか。これ以上の平和はございません」

「僕にそんな器は無いよ」

「ですが、いずれキラ様は自らその座を求めるでしょう」

「それこそまさかだよ。僕の願いはみんなで静かに、穏やかに生きていける世界なんだから」

 

「ですが、もし! もし……セナ様がその座を世界に求められたら……貴女は無視できない」

「……どういう意味」

 

 シュラの言葉に、キラはやや怒気を滲ませながらシュラを見つめる。

 が、シュラの意志は少しも揺らがない。

 例え、どれほど睨まれようが、『事実』を淡々と語るだけだ。

 

「この争いばかりの世界で、人々はやがて救世主を求めるでしょう。精錬で潔白で、誰よりも民衆を愛する救世主を」

「それが、セナだって……?」

「えぇ。彼女の持つ神聖は、既に前大戦までの間に示されております。そして、その意志も、願いも、強さも」

「あんなに小さな子に、世界を背負わせるのが、正しいって……! そんなの、おかしいよ!」

「えぇ。だからこそ……貴女はそれが許せない」

「っ」

「そして、セナ様の代わりに自分がと、声を上げられるでしょう」

「……まるで見て来たみたいに言うんだね」

「えぇ。貴女様を知った日より、見ておりましたとも。貴女様のお考えと行動を」

 

 シュラの言葉に、キラは深くため息を吐いて椅子から立ち上った。

 そして、予定していた通り、ミネルバへと連絡を取って、内部に戦力と呼べるものはないと報告するのだった。

 

「じゃあ、帰ろうか」

「分かりました」

「……あと、一つだけ言っておくけど。もしセナがそうなったとしても、僕はそんな結末を認めない。セナと一緒に日常へ帰る」

「えぇ。無論、キラ様がそう選択されるのであれば、その様になるでしょう。苦しみ嘆く民を、キラ様が見捨てる事が出来るのであれば……ですが」

 

 あぁ言えば、こう言うとキラは心の中で舌打ちをしながら施設から外へ向かい歩き始めた。

 一応イングリットに施設の探索が終わった事を連絡しながら。

 

 

 オルフェと、とりとめのない話をしていたイングリットは、不意にキラからの連絡が入った事で顔を青くした。

 彼と話す時間はイングリットを十分に楽しませる事が出来たが……施設の中にはシュラがおり、シュラはオルフェを強く憎んでいるのだ。

 このままではいけない。

 

「オルフェ……! 逃げて」

「なに?」

「もうすぐシュラが来るの。だから……」

「君は……」

「え……?」

「やはり……イングリットなのだな」

 

 オルフェの意味不明な言葉に、イングリットは首を傾げるが、オルフェは優しい笑みを浮かべると、口を開いた。

 

「オルフェ……?」

「いつかまた。話をさせてくれ。君と、また……話がしたいんだ」

 

 縋る様な、謝罪する様な。

 不思議な感情で問いかけるオルフェに、イングリットはキュウと胸が締め付けられる様な気持ちのまま、小さく頷いた。

 そして、森の奥へと走ってゆくオルフェを静かに見送る。

 

 それからすぐにキラ達が施設から出てきて、イングリットはキラ達と共にミネルバの到着を待つのだった。

 

 

 キラが連絡をしてからそれなりに時間が経って、ラボに到着したミネルバからは多数の兵士が施設へ向けて飛び込んでいった。

 それを見送りながら、キラはアーサーやタリアに内部の状況を説明する。

 

「まぁ、正直な所。予想を下回ったって感じですね」

「そんなに酷いの?」

「えぇ。直視出来ないモノばかりです。精神の弱い人や子供は立ち入り禁止にして下さい」

「分かったわ」

「えぇぇええ!? そんなに酷いんですか!?」

「そうですね。アーサーさんは特に入らない方が良いかと」

「い、いや! 自分は軍人ですから! こう見えて、精神はそれなりに……!」

 

 キラの言葉に、アーサーは虚勢を張ったのだが、キラは苦笑して、そうではないと手を軽く横に振る。

 

「違うんですよ。アーサーさんは子供が好きでしょう?」

「え? えぇ、まぁ、そうですが」

「だからこそ、です」

 

 キラの言葉にアーサーはよく分からないと首を傾げたが、タリアはその言葉に隠された意味を理解し、なるほどねと帽子を深く被る。

 そして、どうやらアーサーだけでなく、自分も入らない方が良さそうだと、軍人としては情けないながらも、そう判断した。

 

 以前なら大丈夫だったかもしれないが、息子のウィリアムと交流を深めた今では、ウィリアムに施設の子供を重ねてしまうだろうと。

 

「ありがとう。キラ」

「良いですよ。このくらいは。何もかもが完璧な人は居ませんし。どんなモノにも負けない強い人も居ませんから」

「そうね」

 

 タリアは突入部隊が施設の中に入っていくのを見ながらキラと共に呟くのだった。

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