ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

20 / 252
第20話『第一回ジン改修案決定大会』

 第一回ジン改修案決定大会。

 と書かれた垂れ幕を見つめながらメイアは呆れた様な声を上げた。

 

「何故、第一回なんだ」

「気に入らなかったら、第二回、第三回と続いていくからですね」

「時間が無いという言葉を忘れたのか? キラ」

「あーあー。聞こえませーん」

「キラ! 時間の余裕は無いんだ! いつまでも遊べると思うなよ!」

「へ、へへーん! そんなに言うんなら、僕が最強だって事を証明して、第一回で終わらせてあげますよ!」

 

 自信満々という様な様子でアピールするキラに、メイアはこの生意気な子供を分からせてやると、セナやアスランが居る場所へと戻った。

 そして、最後の調整をしつつ、何故か大会の案内をしているラクスを見つめ、その横に並んでいる評議員達を見やった。

 

「どうしてこんな大事になってしまったんだ」

「皆さん、気になるみたいですね」

「お忙しい筈なんだがな」

「でしたら、楽しんでいただけると良いですね」

「はぁ……そうだな。それだけが私の願いだよ」

 

 疲れた様子で頷くメイアに、セナは頑張りましょうと声をかけて、既にシミュレーターの中で待機しているアスランへと声をかけた。

 

「調子はどうですか?」

「問題はない。勝てるさ」

「はい。信じています」

「任せろ」

 

 短い言葉だけを交わしt、セナとアスランは開始の時を待つ。

 これまでの傾向から考えて、キラの機体はキラが乗り、アルバートはAIによる自動操縦とアルバートからの細かい指示だしである。

 キラはかなり突っ込んでくるタイプであるし、アルバートもどちらかと言えば前のめりな戦いをする。

 しかし、アスランは慎重派であり、そこまで突っ込んだ戦いはしない。

 キラとアルバートの戦いを観察しながら、うまく勝ってくれるはずだ。

 セナはそう信じていた。

 

『では! 試合開始ですわー!』

 

 だが、そんなセナの予想は、意外な形で裏切られる事になる。

 

『いけいけー! スーパーライジングジンカスタムキラちゃん号!』

 

 秘密工場の中央に置かれた、皆が見る事の出来るモニターの中で、キラは元気よく叫びながら、とんでもない速度で宇宙を切り裂いて走っていた。

 前回よりもグンと速さが増しており、本来ならかなり強いGがキラへ実際の物と同じ様に掛かっているのだが、キラは平然と操縦を行っている。

 

『あれ? 誰も居なーい! 正々堂々勝負しろー!』

 

 宇宙空間の中で、キラのジンは右手にモビルスーツ専用のマシンガンを持ちながら器用に、あちらこちらへと動き回る。

 元気よく動き回る姿は、どこか子供らしく、評議員たちも微笑ましい物を見る様な目で見ていたが、次の瞬間、驚きでモニターから目を離せなくなるのだった。

 

 そう。突如として宇宙空間を切り裂いて撃たれた緑色の特火重粒子砲をキラが容易く機体を捻らせながら加速する事でかわしたからだ。

 影響は出ないギリギリのラインに、ジンを泳がせながら、一気にペダルを踏み込んで、ジンを加速させる。

 その圧倒的な推進力によりキラのジンは異常と言えるほどの速さで、宇宙空間を走り始めた。

 

『み! つ! け! たぁー!』

 

 キラはまさに流星の様な速さで宇宙を駆けて、特火重粒子砲を放ったジンに向かって飛び込み、腰から重斬刀を抜いて、ジンに向かって突き刺した。

 しかし、キラが突き刺したと思われる物は、ジンのダミーであり、暗く黒い色に塗装したジンがキラのジンに向かって重斬刀を突き出す。

 

 が、キラの動きは早く、腕を突き出して、黒いジンの腕を弾き飛ばすと、右手に持っていたマシンガンを放つのだった。

 

『甘いよ!』

『これを避けるなんて! 強いですね!』

『え!? 誰!?』

『ですが、僕の攻撃は……まだ終わってませんよ!?』

『っ!?』

 

 黒いジンが捨てたと思っていた特火重粒子砲はキラの方を向いており、それは黒いジンがワイヤーを引いた瞬間に緑色の光を放って、キラを狙う。

 黒いジンは特火重粒子砲を放った瞬間に、機敏な動きで、キラのジンの足を掴んで駄目押しとばかりに特火重粒子砲の前に投げた。

 

『うわっ!』

『さ、これで終わりです!』

『んー! なーめーるーなぁー!』

 

 キラは足を捕まれたまま無理矢理機体を加速させ、火線から機体を逃がす。

 タイミングがギリギリだった為、肩の装甲部が少し焼けてしまうが、その程度だ。

 

『なっ!?』

『これでぇ! 僕の勝ち!』

 

 キラは圧倒的な推進力で無理矢理黒いジンを引き離して、マシンガンを構えた。

 だが、次の瞬間にアラートが鳴り響き、直後に撃墜されてしまう。

 

『んにー!?』

『わっ! 僕も、ですか!』

 

 キラのジンと黒いジンに撃墜判定が出て、勝者が決まった。

 勝ったのは、平然とした顔でシミュレーターから出てきたアスラン・ザラであった。

 

 特にセナ達の作った機体の良いところを活かす事もなく、淡々と宇宙空間の中で息を潜めて、キラと黒いジンが隙を見せた瞬間にマシンガンで打ち落としたのだ。

 

「こらー!! アスラーン!! この卑怯者ー!!」

「何が卑怯なんだ? キラ。ちゃんとルール通りに戦っただろう」

「うっ、る、ルール通りかもしれないけど! けど!! 僕はまだ戦ってたじゃん! 後ろからなんてズルいよ!」

「戦いとはそういう物だろう。お前は派手に動き過ぎだ」

「なにー!?」

 

 キラは全身で怒りを示しながらアスランに噛みついていたが、少し離れた場所から落ち着いた声が聞こえてきた事で、キラはひとまずアスランへの怒りを抑える。

 

「いや、流石ですね。貴方の噂はよく聞いていますよ。アスラン・ザラ」

「君は」

「僕はニコル・アマルフィと言います。本日は、アルバート・ハインラインさんに依頼されまして、モビルスーツの評価実験に参加させていただきました」

「そうか。君がアマルフィ議員の」

「はい。父はユーリ・アマルフィといいます」

「挨拶が遅れた。僕はアスラン・ザラ。父はパトリック・ザラだ」

「よく存じています。そして、キラさん。でしたか。初めまして。とてもユニークな戦い方をするんですね」

「うー。君は、黒いジンの?」

「はい。キラさんに挑ませていただいたのですが、まるで歯が立ちませんでしたね。素晴らしい腕だ」

「いやー。まぁ、それほどでもあるけどね!」

 

 キラの返答に二コルは人が良いのか。笑顔を浮かべていたが、アスランは説教をしたそうな顔をしていた。

 アスランの表情に気づいたキラは、ハッとなってキョロキョロと周囲を見る。

 月でアスランの説教から逃れる時に、何か盾になる物は無いかと探す習性がまだ残っているのだ。

 

 しかし、残念ながらキラを助ける物はなく、代わりに敵なのか。味方なのか分からない物がキラの前に現れた。

 それは、ケラケラと楽しそうに笑っている金髪で色黒の少年と、アスランと同じ様に眉間に皺を寄せた銀髪でオカッパの少年である。

 

「しっかし、凄いねー。キミ。モビルスーツってのは、もうちょっと大人しいと思ってたケド。キミの機体は自由に飛び回ってて最高だったぜ」

「フン。あの様な機体。現実にあったらすぐにバラバラだ」

「あっはっは。違いない」

 

「む。何ですか。貴方たちは」

「あぁ、自己紹介が遅れたな。俺はディアッカ。ディアッカ・エルスマン」

「俺はイザーク・ジュールだ。覚えなくても良いぞ。お前の様な庶民と接する事はもう無いだろうからな」

「俺……? あぁ、なんだ。女の子かと思ったら男の子だったんだ」

「なぁ~にぃ~!?」

 

 どこか見下した様な雰囲気を出しながら、キラを挑発したイザークであったが、直後激しいカウンターをキラから受けて、額に青筋を浮かべながら怒りをあらわにする。

 全身から怒りが噴き出している様子に、キラの本能は危険信号を発して、この場で一番安全であるアスランの背後へと避難した。

 

「誰が女だと!? 言ってみろ!」

「やーい、銀髪オカッパガール!」

「貴様! 良い度胸だ! こっちにこい!」

「きゃー。アスラン。タスケテ―」

「ちっ! どけ! 貴様!」

「女の子に暴言や暴力はどうかと思うぞ。イザーク」

「馴れ馴れしく俺の名前を呼ぶな! 貴様!」

「悪いが、俺も評議員の子供だ。イザーク・ジュール」

「なぁにぃ!?」

「俺はアスラン・ザラ。ザラ議員の息子って、事は言わなくても分かるよな?」

「バカにしているのか!?」

「いや、その意思はない。ただ、家柄や性別にこだわっているみたいに見えたから」

「それくらいしか誇れるものが無いんだよ。可哀想だねー」

「貴様! 人の影に隠れて好き放題言いおって!」

「キャー、コワイヨー、オカッパの女が襲ってくるぅー」

「待て! 貴様! これ以上の愚弄は許さんぞ!!」

 

 キラはアスランを避けて回り込んできたイザークから逃げる様にアスランを中心にして走る。

 イザークはそんなキラを追いかけて、アスランの周りをクルクルと回るのだった。

 

 そんなバカバカしい喧嘩に、ディアッカは呼吸困難になりそうな程笑っており、アスランはため息。二コルは苦笑していた。

 

 評議員の子息たちを巻き込んで、いつもの調子でふざけているキラに、メイアの胃はキリキリと痛んでいたが、肝心の評議員は評議員で何やら言い争いをしている為、別の意味でも胃が痛くなってしまうメイアなのであった。

 

「なに!? あれほど居ない。知らないと言っていた『キラ』があの少女だというのか!? パトリック! シーゲル。我らをたばかったな!?」

「落ち着けエザリア。ジンの機密を守る為だったのだ」

「嘘を言うな! 彼女はプラントに来てからしばらくはどこかで生活をしていたハズだぞ!」

「さて、どうだったかな。ラクスが友達を連れてくるとは言っていたが……私は詳しく聞いてないのでね」

「おのれ! シーゲル! ラクス・クラインは女だろうが! キラも女だぞ!」

 

「残念だが、エザリア。プラントの技術は日々進歩している。同性同士で子が成せる日もそれほど遠くはないぞ。ラクスとキラは良い関係になると思わんか?」

「なに!? どういう事だ! シーゲル! アスランをキラ君の婚約者にするという話はお前も了承していただろう!?」

「了承した覚えはない。前向きに検討すると言っただけだ。キラ君にはラクスが相応しい!」

「おのれ! 謀ったな!? シーゲル! ならば、もはや条約は破棄だ! キラ君は渡さんぞ!」

「フン! もう手遅れだ! 全ては今更だ!」

「我らの英知を結集させれば不可能な事など無いわ!」

 

 かくして、水面下で行われていた評議員同士のキラ不可侵条約は破棄された。

 そして、評議員たちは戦乱の時代へ突入してゆく事になる。

 

 しかし、そんな事を少しも知らないキラたちは、先ほどまでと変わらず、子供の様に笑い、走り回っているのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。