ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第200話『PHASE-28『残る命 散る命2』

 何が起きたのか分からないが、地球連合軍の艦隊の前に展開していたZAFTの部隊は消失し、さらには陸上部隊の半数が消え失せた。

 このチャンスにネオ・ロアノークはすぐに指示をだした。

 

「艦を動かせ! この隙に離脱する! 私はリュニックで出る!」

「であれば姫様を!」

「彼女が居なくなれば、艦が沈む! 必ず迎えに来る。今は待て!」

 

 ネオは、言外に生きる事を諦めるなとブリッジに言い残しながらリュニックで外へと飛び出した。

 戦場は酷い混乱状態であるが、それでも道は開けている。

 後は押し通るだけだと、迫りくるZAFTの部隊を一機、また一機と撃墜してゆくのだった。

 

 しかし、そんなネオの前に怒りに染まったシンが駆るインパルスが迫ってきた。

 

「あの機体は……!」

『アンタが隊長機だな!? キラさんはどこにいる!』

「言う訳が無いだろうが!」

 

 シンの言葉を弾き返しながら、ネオはインパルスも言葉同様に弾き飛ばす。

 だが、それで諦める様な事はなく、インパルスは再びリュニックへと迫るのだった。

 

「しつこい奴だ!」

『キラさんを、お前たちの好きにさせてたまるか!』

「散々好きに使ってきたお前たちに言われてもな!」

『なに!?』

「ギルバート・デュランダル。まさか、あいつに正義があるとは思ってないだろう?」

『なら、ジブリールが正しいっていうのか!』

「まさか! あの臆病者の引きこもりに正しさなど無いさ!」

『なら、何が正しいっていうんだ!』

 

「決まっているだろう!!」

 

 リュニックはインパルスを蹴りつけ、距離を取ってからビームサーベルを抜いて構える。

 そして、叫びながらインパルスへ向かって突き進んだ。

 

「キラ様とセナ様だ! お二人以外に、正しいものなど無い!」

『はっ!? はぁ!?』

「正しさとはお二方が望まれる世界だ。それ以外にある筈が無かろう! 自らの事しか考えられぬ愚か者に! 導ける世界などない!」

『な、なら! なんで……! なんで二人を傷つける様な真似をするんだ!』

「お前たちが戦いを仕掛けてくるからだ! お前たちが戦いを仕掛けなければ、争いは生まれなかった!」

『ふ、ふざけるな! 戦いを始めたのはお前たちじゃないか!』

 

「起こしたのは愚かなる者達だ。我々ではない。私ではない!!」

『そんな言い訳! 通用するもんかぁあああ!!』

 

 シンは怒りのままにリュニックへと突っ込み、シールドでインパルスのビームサーベルを防いだリュニックをそのままの勢いで押し込んでゆく。

 しかし、リュニックは無防備なインパルスの腹部を足で蹴ると、ビームライフルを抜いてインパルスを狙撃するのだった。

 

『くっ!』

「さぁ、避けられるかな!?」

 

 そして、インパルスが怯んだ一瞬の間に、大型ビーム砲をリュニックは放ち、インパルスは咄嗟にそれを避けるがシールドと左腕を失ってしまった。

 さらに、その一撃はJ.P.ジョーンズに迫ろうとしていたZAFTのモビルスーツを複数巻き込んで爆発させた。

 

『このっ! まだ!』

「フン。騒がしい小僧だ……。だが、道は開いたぞ! 行け! サディアス!」

『了解しました!』

 

 ネオは眼下に居るJ.P.ジョーンズに通信で呼びかけ、かの艦は全速で動きながらエーゲ海へ抜けようと加速を始める。

 それに気づいたシンが止めようとインパルスを動かすが、リュニックがその行く手に立ちふさがるのだった。

 

「どこへ行く! 君の相手は私だろう!」

『ふざけ……! クソ!』

 

 シンは咄嗟にビームライフルに持ち替えようとしたが、ネオがそんなシンに言葉を向ける。

 

「あの艦には姫様が乗っている! 撃てば姫様が死ぬぞ!」

『卑怯な!』

「撃たなければ良いだけの話だ! 別に人質としているワケじゃない!」

『ふざけるな!』

 

 怒りに染まった言葉を向けるシンであったが、現状で出来ることはない。

 インパルスでは破壊する以外の方法で艦を止められないのだ。

 

 いや、止められはするが、それをリュニックは許さない。

 だから……出来ない。

 酷く簡単で、酷く悲しい図式であった。

 

 そして、そうしている間にも、艦はどんどん遠くへと進んで行ってしまう。

 ここまでシンを送り出してくれたレイやルナマリアも、途中に現れたカオスやアビスの相手でこちらへ来る事は出来ない。

 

 終わり。

 任務失敗。

 

 そんな言葉がシンの頭に溢れた時、一つの声がシンに届いた。

 

『諦めるな!! シン・アスカ!』

 

 

 上空でリュニックとインパルスが戦闘を始めた頃、オーブ国防軍大型航空母艦タケミカヅチのブリッジで、ユウナは一つの覚悟を決めていた。

 そして、命令を下すべく口を開こうとしたのだがその前に、自身の斜め前に立っていたトダカ一佐が口を開く。

 

「機関最大! 本艦が地球連合軍艦の前に出る!」

「な、何をやっている!? トダカ! 僕はそんな命令を出していないぞ!」

「フンッ!」

「うわぁっ!? はぁ!? なぁ!? お、お前……! 何を……!」

 

 トダカは指令席に座っていたユウナの胸倉を掴み床に叩き落すと、そのまま上から見下ろした。

 そして厳しい顔をしたまま口を開く。

 

「あの艦には、キラ様が乗っている。このまま逃がせば! 我々がここに来た、意味がない!!」

「分かっている、だからこそ……!」

「ですが! 地球連合軍に刃を向ける命を下すのは、貴方ではない!」

「バカを言うな! 僕以外に誰が……!」

 

「全ての責は、私が負いましょう! これは、オーブ軍の将校が、暴走した結果起きた事件! ただ、それだけの話なのです!」

「それを、そんな言い訳を地球連合軍が受け入れるワケが無いだろう!」

「キラ様が! 目の前で傷つけられる事態に、我慢が出来なかった、政治の出来ない軍人が……! 愚かにも反逆をしたのです。ユウナ様。その言葉は例え、ジブリールが納得しなかったとしても、世界の者達は受け入れます」

「……」

「そして、ジブリールがどれほどの力を持っていようとも、動かせる兵が居なければ……何も出来ないのです。今の貴方の様に」

「ふ、ふざけるな! 僕はこの様な事を認めないぞ! 僕が、ここは僕の戦場だ!!」

 

「違います!!」

「っ!」

 

「戦場で命を懸けるのは、軍人の仕事だ! 貴方の仕事ではない!!」

「だ、だが……」

「責任を取らねばならぬというのであれば、また別の機会もありましょう。だが、それは今ではない。失ってはならぬ者も居るのです」

「トダカ……!」

「連れて行け! そして、モビルスーツ全機に打電! インパルスを……! シン・アスカを援護しろ!」

 

 多くの兵に拘束され、ユウナはブリッジより脱出艇まで運び出された。

 そして、残った兵はトダカの命令に従って、リュニックに追い詰められているインパルスの元へと飛んで行く。

 

 さらに、タケミカヅチはその巨大な船体を加速させ、エーゲ海へ逃げようとするJ.P.ジョーンズの前に立ちふさがるのだった。

 

「J.P.ジョーンズ止まりません!」

「機関最大! 構わん! ぶつけろ!」

「側面! 衝撃! 来ます!!」

「ぐっ……! どうだ!?」

 

「J.P.ジョーンズの停止を確認!」

 

 

 ネオはインパルスの救援に来たと思われるムラサメ部隊を見ながら舌打ちをし、眼下で衝突している二つの艦を見やった。

 やはりというべきか。

 最悪のタイミングで裏切ってきた物である。

 

 しかし、その気持ちもよく分かる為、ネオはそこに苛立ちなどは感じなかった。

 命を掛けた男の覚悟だ。賞賛する以外には何もない。

 

 だが、艦が攻撃出来ない様にと、キラをJ.P.ジョーンズに残してきてしまった為、タケミカヅチから乗り込んできた兵士によって白兵戦が始まってしまう。

 これでは最悪キラが奪われてしまう事になるだろう。

 

「サディアス!」

『大佐! 艦はまだ動きます! ですが、現在オーブ軍と交戦中!』

「姫様は!」

『未だそこまで進行はされておりません! こちらで何とか押し返してみせます!』

「すまんが、頼む!」

 

 そして、ネオはJ.P.ジョーンズに言葉を残して、艦や自分に迫ろうとするモビルスーツを次から次へと撃墜してゆくのだった。

 だが、余裕は一切ない。

 キラをリュニックに乗せているのであれば、ある程度の余裕もあったが、ここに来て、自分の甘さが。

 

 ここまで共に戦ってきた仲間を一人でも多く助けたいという甘さが……最悪の事態を招いていた。

 どうにかしたいが、どうにも出来ない。

 

 ネオはゆっくりと真綿で首を締められている様な感覚のまま戦う事になってしまった。

 

 

 そんなネオとは違い、危機的状況を脱したシンは懐かしい声に歓喜しながら気持ちを立て直していた。

 

「ババさん!」

『お前らしくもない! どれだけ痛めつけられても、噛みついて来たお前はどこに行ったんだ!』

「ごめんなさい! 俺、キラさんが奪われて、それで……!」

『弱音を吐くな。まだ戦えるんだろう?』

「っ! はい! やれます!」

『なら付いてこい! 上がったお前の腕前! 見せてもらうぞ!』

「分かりました!」

 

 シンはかつてオーブで訓練していた時の気持ちを思い出しながらムラサメ部隊と共に戦場を駆ける。

 ネオを助ける為に地球連合軍の部隊が来るが、関係ない。

 

 彼らは強い人たちだ。

 自分も負けないくらい強くなった。

 

 ウィンダムの部隊も倒して、救援に来たカオスも連携プレーで戦闘不能にして……その奥にいる、黒い、キラを攫った機体へ……今、手が届く。

 が。

 

「シン!」

「え?」

 

『前にも言っただろう? 攻撃をする時こそ、もっとも警戒しなくてはいけない瞬間だ。と』

 

 シンはインパルスに強い衝撃を感じた。

 機体が近くにあった岩壁まで飛ばされ、強く打ち付けられてしまう。

 そして、少し前に自分が居た場所を見てみれば、そこに居たのは胴体をガンダムのビームサーベルで貫かれているムラサメの姿だった。

 すぐに爆発する事は無いようだが……いつ誘爆してもおかしくない姿である。

 

「あ……あぁ……」

『まったく時間をかけ過ぎだ。ネオ・ロアノーク。さっさと、そいつを排除しろ。僕のガンダムでは火力が足りない』

『……了解した』

 

 通信から聞こえて来た声は冷たく、黒い機体は真っすぐに地球連合軍の艦の前にあったオーブの艦へと向かっている。

 その艦は……。

 その艦に乗っているのは……!

 

「動け! インパルス! 動いてくれ! アレは! タケミカヅチには!!」

 

 必死な想いでシンはインパルスを動かして、満身創痍のインパルスを再起動させ、タケミカヅチへと向かうリュニックに向かって飛ぶ……。

 しかし……既に何もかもが遅かった。

 

「……あ」

 

 リュニックの持っていた最大火力の火器が容赦なく、上空からタケミカヅチのブリッジを吹き飛ばしていたのだ。

 そして、その瞬間を、シンはインパルスのモニターで見てしまう。

 

 インパルスを見つけたのだろう。

 穏やかな顔をしながらシンを見つめるトダカの顔を。

 そして、シンに敬礼をしながら爆炎の中に消えて行く……トダカの姿を。

 

「あぁぁあああああ!!! お前はぁああ!!」

 

 シンは頭の中で何かが弾ける感覚のままリュニックへと迫り、シールドを構えた腕ごと切り落とす。

 今、シンの体を巡る力が目を覚ましていた。

 怒りが炎の様に燃え滾り、リュニックを落とせと、殺せと叫んでいる。

 

『シン・アスカ! 後は、頼む!』

 

 そして、そんなシンの後押しをする様に、ババのムラサメは、ガンダムを掴んだまま地球連合軍の艦J.P.ジョーンズへと特攻を仕掛けるのだった。

 

『うぉぉおおおおお!!!』

『この、離せっ!』

 

 リボンズは抵抗する様にビームサーベルを再度ムラサメに突き刺すが、今更止まらない。

 その勢いのままJ.P.ジョーンズのブリッジを押しつぶしながら大爆発を引き起こした。

 

「ババさん!! キラさん!?」

 

 シンはババの事もそうだが、キラの無事を気にして叫ぶ。

 だが、そんなシンを今までにない程の力で海へ叩き落したリュニックは急いでJ.P.ジョーンズへと向かい、医務室のある壁を破壊し、中から気絶したキラを回収するのだった。

 そして、そのままミラージュコロイドを使用して遥か彼方へと飛び去って行く。

 

 それを見て……。

 結局、何も為す事が出来なかったシンは、海底に落ちてゆくインパルスの中で静かに涙を流し、目を閉じるのだった。

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