ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第201話『PHASE-29『FATES』

 エーゲ海を目前とした海域で行われた地球連合軍、ZAFT、オーブ軍の戦いは、地球連合軍の壊滅という形で決着した。

 無論、突如として空から降り注いだ超兵器により、ZAFTも壊滅的な被害を受けては居るが、一応部隊は残っている。

 だが、結果から見れば、この戦いはZAFTの敗北であった。

 

 元よりキラの奪還を目的として始められた戦いであった為、混戦の中キラが地球連合軍の機体に乗せられて飛び去ったという報告で戦いの意味は失われてしまったのである。

 軌道上から、逃げた機体を追っていたが、機体は突如としてミラージュコロイドを展開し、軌道上からでは姿を観測する事は出来なかった。

 

 その為、ZAFTは逃げた機体の行方を追うと共に、戦いに参加した兵たちの回収と、治療、修復へと入るのだった。

 

 

「ミネルバの状況は?」

「かなり酷いですね。正直、動いている事が不思議なくらいですよ」

「そう……なら、ジブラルタルまで来れた事に感謝するべきね」

「そうですね。しかし……」

「どうしたの? アーサー」

「いえ……少々問題が発生しておりまして」

「問題?」

 

 タリアは副長であるアーサーの言葉に首を傾げて問うた。

 その姿に、アーサーはどこか言いづらそうにしながら、先ほど艦で起こった事件を語る。

 

「それが、ですね。ジブラルタルへの航行中に食堂で問題が発生しまして。っ! か、艦長への報告が遅れた件につきましては……!」

「良いわ。私を気遣ってくれたんでしょ? 私も落ち着いて話を聞く余裕は無かった物ね。感謝こそすれ、貴方を責める事は無いわ。アーサー」

「……ありがとうございます」

 

 そう。

 タリア自身も言っているが、ミネルバがジブラルタルにたどり着くまで、タリアはミネルバを動かす事で、いっぱいいっぱいだったのだ。

 ルナマリアはアビスとの交戦中に黒いストライクに襲われ、機体を大破。

 ルナマリア自身もその際に大けがをしている。当分は戦闘が出来ない状態だ。

 

 レイとシュラも機体を中破させ、修理の為にザクもブラックナイトスコードも使用が出来ない状態。

 ジャスティスは殆どダメージは無いが、帰還してからアスランの精神が危うく、苛立っているのかまともに話も出来ない状態だ。

 

 そして、シンは……。

 投降してきたオーブ軍のムラサメによってミネルバまで運ばれてきたが、インパルスは大破。シンも茫然自失という様な状態で、レイやシュラの呼びかけにも反応出来ない様な状態であった。

 唯一インパルスだけは機体特性によって新品同然で戦う事が出来るが、シンはとてもじゃないが戦場に出せる状態では無かった。

 

 だから、ミネルバがジブラルタルへ向かうまでの間。

 万が一戦闘になった場合は、シュラがインパルスで、イングリットがセイバーで戦うという事になっていたが、慣れない機体。

 しかも二人とて完全に無傷というワケではない。

 

 そんな状態で戦闘などすればミネルバは沈んでしまうだろう。

 だからこそ、タリアは飛ぶ事すら限界寸前という様な状態のミネルバを動かし、ジブラルタルまで移動してきたのだ。

 その航路でかかった心労は、察するに余りある。

 

 故に。

 そんなタリアにこれ以上の負担を掛けまいと、アーサーが独自に処理したのは彼なりの優しさであり。

 例え後で処分されたとしても、艦の安全を第一に考えたその行動は、褒められる事はあっても責められる事では無かった。

 

「それで、何が起きたのかしら」

「それが……例の少女が食堂にシンの食事を取りに行った際に、他のクルーから暴行されたという事で」

「えぇ……? 本当なの?」

「はい。その現場を見ていたというレイ・ザ・バレルからも証言を得ています。確かな事かと」

「なんでまた。そんな事を」

 

「それが……ヤマト隊長が連合に奪われて、なんで連合のお前がここに居るんだ。と少女に突っかかった所から始まった様で」

「……そう」

 

 タリアは例の少女……ステラがある程度自由に行動できる様にと許可した事を後悔した。

 その結果、キラが取り戻せず、心を痛めていたクルーが暴走する結果を生んでしまった。

 

 あり得ない話ではあるが、もし仮にキラがミネルバに居ればやんわりと争いを諫めただろう。

 もしかしたら起こる前に何かしらの対策をしていたかもしれない。

 キラはそういう心遣いが出来る子だった。

 

 もしくは、シンが万全で食堂にも自分で行ける様な状態であれば……。

 

 いや、考えるだけ無駄な話である。

 どちらもあり得ない話なのだから。

 

「それで……どの様に処分を?」

「あ、はい。クルーには謹慎を。そして、少女にはレイかルナマリアと共に行動する様にと」

「ありがとう。適切な対応だわ。あの二人なら、あの子に当たる様な事はしないでしょうしね」

「そうですね……あの子に当たっても、しょうがないのに」

 

 アーサーがため息を吐きながら呟いた言葉に、タリアは「そうね」と小さく呟きながら艦長席に深くもたれかかった。

 帽子で目元を隠し、今は居ない少女の事を想う。

 

 タリアは自分が優秀だと思った事など一度もない。

 いつだって誰かの手を借りながら生きて来た。

 そして、ミネルバの艦長を任された時も、キラが、アーサーが、バートが、メイリンが。

 多くの人に支えられ、艦長という重い責務を背負ってきたのだ。

 

 しかし、キラが一人居なくなっただけで、この名前も、この椅子も、この役目も。

 何もかもが重い。

 

「……キラに、頼り過ぎたわね」

「そうですね」

 

 別にタリアの心を読んだワケでは無いだろうが、アーサーはタリアの言葉に頷き、バートも、メイリンも心の中で二人に同意するのだった。

 

 失った人は、あまりにも大きい。

 

 

 そして、ブリッジが重苦しい空気に包まれている頃。

 シンの部屋では、穏やかな時間が流れていた。

 

「はい。お食事ですよー」

「うん……ありがとう。セナ」

「シン。まだ痛い?」

「大丈夫だよ。ステラ。もう、大丈夫」

 

 明らかに無理をしていると分かるシンの言葉にセナとステラは互いに視線を交わし合いながら、看病を頑張ろうと気合を入れる。

 そんな姿を、レイとルナマリアは苦笑しながら見ていた。

 

「せっかくだ。この機会に休んでおけ。またいつ戦いが始まるか分からないんだ」

「そうそう。私も食事の時は二人に食べさせてもらってるもんね。アンタも甘えておきなさいよ」

「いや、ルナマリアは一人で食べられるだろう?」

「いや! アンタ! この怪我見えてる!? 腕! 痛くて動かせないんですけどね!?」

「ルナマリア。俺はお前を信じている」

「ふざけた事言ってるとはったおすわよ!?」

 

 ルナマリアは自身の包帯がまかれた腕を見せ、レイにアピールするが、レイはフッと鼻で笑うばかりだった。

 憎たらしい笑みである。

 

 しかし、怒りに染まるルナマリアに、シンの隣に座っていたセナが手を上げた。

 

「はい! ルナマリアさんのお世話も私がやります!」

「ステラも!」

 

「あぁ……! なんていい子達なの。どこかの冷血漢とは違って、天使みたい」

「セナ。ステラ。騙されるなよ。ルナマリアはアカデミー時代に腕を骨折した後で、十人を絞め殺した女だ。この程度は何でもない」

 

「えぇ~?」

「ひえ……ルナマリア、こわい」

 

「ちょっ!? レイ!? 嘘教えるんじゃないわよ! 別に殺して無いでしょ!?」

「しかし病院送りとなり、アカデミーも退学となっただろう」

「そ! れ! は! アイツ等が、シャワー室を覗こうとしてたからでしょ! 普通に犯罪よ! は! ん! ざ! い!」

「まぁ、確かにな。しかし、骨折した後にそれをしたのは事実だ」

 

「ひぇー」

「る、ルナマリアさん……?」

 

「ち、違うのよぉ~? 怖くない。怖くないからねぇ~」

 

 ニコニコとルナマリアは微笑んで、怖がる二人に声を掛けるが。

 恐ろしい話を聞いた後では、その笑顔も何かをされる前の行動にしか見えないのだった。

 

 結果。

 二人は怯えたままシンに抱き着き、恐怖(ルナマリア)から逃げようとする。

 

 その姿にルナマリアは酷くショックを受け、シンのベッドの向かいにあるレイのベッドに座りながら左腕一本で例の首を締めるのだった。

 

「……! ルナマリア! 締まっているぞ!」

「締めてんのよ」

 

「ステラ。セナ。大丈夫だよ。ルナは怖くないから。優しい女の子なんだ」

「ほんと?」

「でも、そうですね。ルナマリアさんは、いつも優しかったです」

「うん。そう。ルナは優しいんだ」

 

「シン……! シン……! 救援だ。その優しいと称されるモンスターに襲われている」

「誰がモンスターか。誰が」

「きゅ、救援を……! ガクッ」

「ふっ、悪は去ったわ」

 

 ルナは鼻で笑いながらグッタリとしたレイをベッドに投げ捨て、戻って来た恐怖に震えている少女二人に再び笑いかけるのだった。

 しかし、やはりというべきか。

 それは逆効果であり、二人はひゃーと言いながらシンの背中に隠れる。

 

「ルナ。レイも。あんまり二人で遊ぶなよ」

「あー。ごめんごめん。なんか面白くなってきちゃって」

 

「すまないな」

 

 レイはすくっと何でもない事の様に座り直し、いつものクールな顔で二人を見やる。

 

「しかし……セナは以前よりも、どこか幼くなったな」

「うん。記憶操作をされた事が切っ掛けじゃないかって言ってた。記憶が混濁してるって。メンデル仮面が」

「「メンデル仮面」」

 

「あの男、信用出来るの?」

「分からない。けど、あの人しか、セナとステラの事が分かる人はいないから」

「難しい問題だな」

 

「……うん。でも……」

 

 シンは自分の拳を強く握りしめ、それを見つめながら言葉を零す。

 難しい問題。

 

 そう、難しい問題なのだ。

 

「シン」

「……レイ?」

「俺は、その状態をどうにかする方法は一つしか知らん」

 

 拳を震わせながら、自らの無力に震えているシンに、レイはいつかの時と同じ顔で、同じ言葉を送る。

 

「強くなれ。シン」

「レイ」

「何も奪われたくないのなら、強くなるしかない」

「強く、か」

「そうだ。俺たちが強くあれば、またキラさんを助ける機会も来る」

「……そうだな」

 

「その時は私も頑張らなきゃね」

「私も、頑張ります!」

「ステラもー!」

 

 ルナマリアに続いて手を上げた二人にレイもルナマリアも笑みを浮かべ。

 シンも、二人を穏やかな目で見つめながら、今度こそと心に誓う。

 

 セナも、ステラも護る。

 ミネルバも……レイもルナマリアも。

 そして、必ずキラを取り戻してみせると、シンは強く自分を奮い立たせるのだった。

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