ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第203話『PHASE-30『刹那の夢2』

 ヘブンズベース

 それは、北大西洋のアイスランドの一島に所在する地球連合軍の最高司令部所在基地であり。

 ヘブンズベースは前大戦で失われたJOSH-A(アラスカ統合最高司令部)に代わり、新しく設立された基地である。

 

 各種防衛施設、生産施設を完備する地球連合軍の一大拠点であり、その強固さは地球のZAFT部隊全てを相手にしても落ちない……という話にはなっているが、ジブリールもその言葉をそのまま受ける様な事はなく、多くある拠点の一つとして受け止めていた。

 

 そして、普段は自身の隠れ家に居るジブリールが何故ヘブンズベースに来ているのかと言えば……。

 

「それで? まだなんですか? キラは」

「まだ何も連絡はありません」

「ネオめ……。どうなっているのか。まさか失敗したワケでは無いでしょうね」

 

「エーゲ海でZAFTの大部隊と交戦したという報告も入ってきています。キラ様が奪われたという可能性も……」

「まさか。それこそ、まさかですよ。あの目立ちたがりのデュランダルが! キラを奪い取れば何かしら動きを見せるでしょう。しかし、それも無いのでしょう?」

「えぇ。エーゲ海には多くのZAFT部隊が留まっておりますからな」

「おそらくはキラの行方を捜している筈……。つまり、まだキラはこちらの手の内にあるというコト……」

 

「司令! ネオ・ロアノーク大佐より通信が入っております」

「おぉ……無事だったか」

「早く通信を繋げなさい」

 

 ジブリールは急かす様に通信を繋ぐ様に指示を出し、モニターに映ったネオとキラに喜びの色を顔に出した。

 

『ご報告が遅れ、申し訳ございません。艦隊は一部の者を除き全滅し……』

「その様な報告は後で良い! それよりも、キラをこちらへ」

『では基地の中へ着艦許可を』

 

 キラの姿を見て喜びを示していたジブリールであったが、ネオから向けられた言葉に冷静さを取り戻した。

 ジブリールの中で、ネオはそれなりに使えるが信用が出来ない男であったのだ。

 故に、この様な状況であっても直接での対面は避ける。

 

「ジブリール様」

「迎えの者を出せ。ネオ。貴様は基地の外部でキラを受け渡し、そのまま待機。良いな?」

『……えぇ。承知いたしました』

 

 素直にネオが頷いた事でジブリールは安心し、キラを迎えに行く為のウィンダムが向かっているのを見ながらフンと鼻を鳴らす。

 考えすぎであったのか。

 

 いや、今重要なのはそれではない。

 今、何よりも重要なのはキラが手に入ったという事なのだ。

 これで全て思うままに動かせると、ジブリールは邪悪な笑みを浮かべながらネオの元へ向かうウィンダムを見据える。

 

 

 そして。

 『予定通り』基地の中へ入る事が出来なかったネオは島の端にリュニックを降ろして、キラを迎えに飛んでくるウィンダムを見ていた。

 

「ではキラ様。手筈通りに」

「……はい」

「その様な、不安そうな顔はされないで下さい。キラ様の居る場所は戦場にしませんから」

「僕は……」

「お願いします。キラ様。どうか、私の最期の願いをお聞きください」

 

 ネオの真剣な言葉と眼差しに、キラはため息を吐きながら小さく頷いた。

 そして、コックピットの外へ……リュニックの手の上にキラが飛び移る。

 

 外の風は強く冷たい為、キラは僅かに身を震わせながらリュニックの手にしがみついて、降りて来るウィンダムを見据えた。

 ウィンダムのジェットストライカー装備。

 高い機動力と飛行能力により、地球連合軍の地球における戦力をグンと引き上げた名機だ。

 

『キラ様ですね』

「はい!」

『お迎えにあがりました!』

 

 そして、そのウィンダムは周囲の雪を吹き飛ばしながらリュニックの前に降り立ち、手をリュニック上に立っているキラへと向けた。

 キラは一瞬リュニックに顔を向けてから、ウィンダムの手に飛び移る。

 

『では……』

「あの!」

『は……あ、はい! 何でしょうか!?』

「ここ! 凄く寒いんですけど!」

『で、ではすぐに……』

「コックピットに、入れてくれないんですか?」

 

『いや! キラ様をコックピットに招き入れるなど……!』

「あ! もしかして、僕のコト、汚いって思ってます?」

『その様な事はございません!!! 断じて!!』

「じゃあ、入れてくれますよね? もう、寒くて死んじゃいそうなんです!」

『しょ、承知いたしました。ではすぐに……!』

 

 キラはウィンダムのパイロットに我儘を言って、コックピットに向かって近づいていく手の上で笑う。

 これも全て、ネオに頼まれた……敵の隙を作る為の行動であり……。

 

「お、お待たせいたしました。キラ様……少々狭いですが」

「いえ」

『た、隊長!? ファントムペインの機体が!』

「なに!?」

 

「ごめんなさい!!」

「え!?」

 

 キラがウィンダムを奪う為の計画でもあった。

 

 キラは、ウィンダムのパイロットがコックピットから外に出た隙にコックピットの中へと飛び込んで、パイロットを先ほどまで自分が居た場所へと蹴りだす。

 そして、コックピットハッチを閉めると、丁寧にパイロットを雪の上に降ろしてから既に基地の方へと向かったリュニックをレーダーと目で追いかける。

 

『な!? き、キラ様!? 危険です!』

「ごめんなさい! コレ、借ります!」

『借りる!?』

『隊長!? 何が!』

「こちら、キラ・ユラ・アスハ。ウィンダムをお借りしております。パイロットの方は雪の上におりますから、救出をお願いします!」

『え、えぇー!?』

 

 ウィンダム部隊のパイロット達の悲鳴を聞きながらキラは雪の上より飛び立ち、既にヘブンズベースから迎撃されているリュニックの援護に向かった。

 

「ネオさん!」

『っ!? き、キラ様!? 何を!』

「援護します! 僕もそれなりに戦えますから!」

『バカな!』

 

 キラは、ウィンダムのビームを放ち、リュニックへと迫る機体を一機、また一機と戦闘不能にしてゆく。

 例え、地球連合軍の量産機であろうと、キラが乗り込んだウィンダムの力は圧倒的であり、一気に基地の内部への道を作り出すのだった。

 

「どうです? 自暴自棄になって突っ込むよりも、効率が良いでしょう?」

『……貴女という人は』

「これが僕ですよ。敵として戦ってたとしても、手を取り合う事は出来る。そういう理想を持って、生きている。夢見がちな、ただの人間なんですよ! だから、一緒に戦わせて下さい」

 

 キラがネオに必死な想いを訴えながら、向かってくるモビルスーツを撃墜し、ネオを見据える。

 ネオの答えを聞く為に。

 

 そして、ネオは……。

 キラの真っすぐな想いを受けて、今にも泣きだしてしまいそうな声で笑った。

 お人好しで、考え知らずだとは思っていたが……まさか、ここまでとは! と思いながら。

 

『まったく。本当に困ったお姫様だ』

「嫌なら、騎士を止めても良いんですよ」

『まさか! それこそまさかですよ!! そんな貴女だからこそ、そんな貴女方だからこそ!! 私は共にありたいと願ったのですから!』

 

 ネオはビームサーベルを抜きながら、近づいて来た地球連合軍の巨大モビルアーマーを撃墜し、さらにその随伴モビルスーツへと襲い掛かる。

 接近戦を仕掛けるリュニックに、地球連合軍のモビルスーツ部隊はビームライフルを向けるが、それが放たれる前に、キラのウィンダムがビームライフルを狙撃し、さらに飛行能力も奪っていく為、何ら抵抗が出来ぬまま戦力が削られてゆくのだった。

 

 あまりにも圧倒的な二人の実力に、ヘブンズベースは少しずつ追い詰められてゆくが……その深部へと向かう前に一つの異変が二人の前で起ころうとしていた。

 

「……なに?」

『キラ様?』

「何かが来る! 何か……! いや、これは」

『地面が動いている……? 違う! これは、地下か! キラ様!』

 

 ネオが叫び、キラのウィンダムを庇う様に突進した瞬間、キラが居た場所を一筋のビームが地面から空へと放たれた。

 そして、次の瞬間、地面が動き出して地下から一つの巨大なモビルアーマーが姿を現した。

 

 そのモビルアーマーは前大戦で実験的に投入された機体であり……キラもネオもよく知る物であった。

 

「これは、デストロイ……!」

『こんなモノまで隠していたか!』

 

 ネオは舌打ちをしながらデストロイへと向かうが、キラはそんなネオに向かって叫んだ。

 

「駄目だ! ネオさん! その機体には! その機体に乗っているのは、ステラだ!」

『っ!? ステラ!?』

 

 驚き止まるネオにも、何も気にした様子を見せないままデストロイは全身の火器をリュニックへと向ける。

 それをギリギリでかわしながら、ネオはデストロイへと通信を繋げようと計器を叩いた。

 

『くっ……ステラ、ステラ!』

『……』

『ステラ! 私だ。ネオだ! 攻撃を止めろ!』

『はぁぁあああああ!!』

 

『話を聞け! ステラ!』

 

 ネオが必死に声を掛けるが、ステラは一切話を聞く事はなく、ただ、ただデストロイの砲を向けるばかりだ。

 それでも諦めずにネオは声を掛けようとするが、そんなネオを嘲笑う様に、デストロイは両手を本体から切り離し、リュニックを取り囲む様に両手のビームも放つのだった。

 

 ネオはステラとの対話に意識を割いており、その攻撃を避けきる事が出来ず、左腕と右足を撃ち抜かれ、地面に叩きつけられてしまう。

 

「ネオさん!」

 

 キラはネオが撃墜されたと思い、周囲のウィンダムを蹴散らしながらネオの元へ向かうが、その前に立ちふさがったのはデストロイであった。

 

「くっ!? ステラ……!」

『対象発見。捕獲する』

「ステラ! 僕が分からないの!?」

『すばしっこい……! 逃げるな……』

 

 動き回るウィンダムにデストロイはリュニックにもやった様に両手を切り離して、本体と一緒に多くの火砲でキラを攻めるのだった。

 雨の様なビームを向けられてなお、キラは撃墜されない様にとかわし続けたが、キラがどれだけ強くとも、ウィンダムには限界があり、ジェットストライカーの装備が負荷に耐えられず黒煙を吹き、使用不能になってしまう。

 

 

 リュニックに続き、ウィンダムも撃墜された事で、指令室で戦いを見ていたジブリールはホッとしたという様な気持ちで深く息を吐いていた。

 が、周囲にはそうと悟られない様に声を出す。

 

「ようやく終わりましたか。では、早くキラの確保を」

「ハッ! ウィンダム部隊を向かわせます」

「まったく無駄な抵抗という奴だ。しかし、これで……」

 

「多数の熱源接近! これはミサイルです!」

「迎撃しろ!」

 

 通信士の叫びと共に戦場へと降り注いだミサイルは、本部への直撃は全て迎撃されたが、デストロイやその周囲に向けられた物は迎撃される事なく、着弾してしまう。

 そして、その影響で降り積もっていた雪が舞い上がるが、デストロイには傷一つ付ける事が出来ないまま終わってしまうのだった。

 

 それから。

 それ以上の攻撃が無い事を確認し、キラを迎えに行く為に複数の部隊が出撃するが、結局その姿を見つける事は出来なかった。

 その報告を受け、ジブリールは怒りながら周囲を徹底的に探す様指示を出すのだった。

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