ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第204話『PHASE-31『明けない夜1』

 ヘブンズベースで行われた、キラとネオの戦いはZAFTの諜報部隊によって監視され、そして、デュランダルへとその始終が報告された。

 キラが攫われたという報告を受けた際には慌てていたデュランダルも、この報告は冷静に聞いており、キラの捜索をするか? という言葉には否を返す。

 

「キラが居るとすればヘブンズベースの中だろう? 捜索するのは不可能だよ」

『しかし……!』

「オペレーション・ラグナロクの事もある。いたずらに戦力は割けないだろう?」

『ですが! キラ様は、生きている可能性があります!』

「君の言いたいことも分かるが、生きているのならば、地球軍が見つけるさ。どちらにせよ我々が出来る事は少ない」

『……』

「現状は待機だ」

『承知いたしました』

 

 不満があると顔に出しているZAFT兵からの通信を切りながらデュランダルは深いため息を吐いた。

 報告をしてきた者は、キラを救出しに行きたかったのだろうという事はデュランダルにもよく分かる。

 

 だが、そんな事をしても意味は無いし。先にも言った通り戦力を削るだけだ。

 今は動かない方が良いというのは間違いない話であった。

 

 まぁ、理屈では考えられない想いという物もあるのだろうとデュランダルは理解している。

 だがしかし……だ。

 

「これでようやく不安要素は消えたな」

 

 デュランダルにとってはキラが、ミサイルの雨によって命を落としたというのは、どちらかと言えば良い報告であった。

 どこから放たれたか分からないが……ミサイルを放った者に礼を言いたいくらいである。

 

「デスティニープランの……おそらく最大の障害は、君になっただろうからね。キラ」

 

 デュランダルは小さく息を吐きながらキラを想う。

 キラはすぐ近くにある悪意に気づいていても、その人が大切だからと動けない少女であった。

 しかし、彼女は必要を感じれば、どこまでも透き通った冷酷さでもって敵を殺しただろう。

 例え相手が誰であろうと……前大戦の時、兄であるクルーゼと戦った時の様に。

 

 

 デュランダルは手元の端末を操作し、藍色の髪の青年に通信を繋ぐ。

 

『ハッ。こちら、アスラン・ザラです』

「やぁ。アスラン。実は、少々困った事になったんだ」

『困った事?』

「あぁ。キラがね。地球軍に殺されたそうなんだ」

『は……?』

 

 アスランの驚き固まった姿に、デュランダルは少しだけ驚き、眉を動かす。

 だが、そんな僅かな変化に今のアスランは気づく事が出来ない。

 

「後で正式に命令も出すけどね。君の任務は変更だ。キラの奪還から、セナの護衛に……」

『本当に!』

「うん?」

『本当に、キラは死んだのですか!?』

「あぁ。そういう報告を受けている。ヘブンズベースでモビルスーツを奪い交戦するも、巨大モビルアーマーによって撃墜。とね」

『……』

「だから、彼女の事はもう忘れて良い。君の任務はセナの護衛に変更だ。コトが始まるまで、彼女の護衛を任せたよ」

 

 デュランダルは動きのないアスランに言葉を向け、反応を見る。

 が、アスランは少ししてから、ようやく錆びたロボットの様にぎこちなく体を動かして敬礼をするのだった。

 その姿に、デュランダルはキラという存在の恐ろしさを噛みしめながら通信を切った。

 

「いやはや。ほんの少し、短い時間を共にしただけで、あのアスランをも魅了するとは……まったく恐ろしいね。キラは」

「当然ですわ。(わたくし)のキラですもの」

「……あぁ。ラクス嬢か。何か用かな?」

「信じられない様な事を聞いたモノですから」

「やれやれ。君もかい? 困ったものだね」

「それだけキラが魅力的。という事ですわ」

「なるほど……」

「それに……あの子。(わたくし)の影も地球へ向かった様です」

「本当かい? それは困ったね」

「必要でしたら処分しますけれど」

「いや。騒ぎは困る。そのまま放っておいて良いさ」

「よろしいのですか?」

「あぁ。アレに出来る事は何もないよ。所詮はキラを油断させる為のコマさ」

 

 デュランダルは嘲る様に笑い、それにラクスは応えながらも……やはり目は鋭くデュランダルを見据えるのだった。

 キラはどうなっているのか。と問い詰める為に。

 

 

 プラントでラクスとデュランダルが言葉を交わしている頃。

 地上、ジブラルタル基地でアスランはミネルバの私室からふら付いた様子で出て来た。

 

 顔色は悪く、まるで死人の様でもある。

 

「……ラ」

 

 ブツブツと呟く姿は幽鬼の様でもあり、どこか近寄りがたい雰囲気を出していた。

 そんなアスランを偶然見つけたシュラは、フンと鼻を鳴らしながら彼に近づいてゆく。

 

「おい。通路をフラフラ歩いてると邪魔だ」

「……なんだ。お前か」

「なんだ……だと?」

 

 シュラは瞬間湯沸かし器の様に一瞬で怒りを沸騰させると、アスランの胸倉を掴んで壁に叩きつける。

 が、アスランからの反応は無く、本当に死体が動いているかの様な様子であった。

 

 だというのに、目だけはギラギラとシュラを……いや、その先にある何かを見ているのだ。

 それは酷く不気味な姿であった。

 

「くだらないな。俺も……お前も」

「貴様……何があった」

「……」

「おい!」

「キラが……死んだ」

「は……バカを言うな。キラ様が死ぬ? 理由が無いだろう!」

「あるさ。結局、キラは計画の邪魔者だったんだ。いつかは、こうなっていた。だから、俺は……」

「どういう意味だ」

「……」

「おい! チッ……話せないというのなら」

 

 シュラが怒りのままアスランの心を深く読もうとするが……それは叶わない。

 

「無駄だ。お前たちアコードは思考を読む事しか出来ない」

「我らの事を……!」

「知っているさ。お前たちの事は。だが、だとしても意味のない事だ。全ては……もう」

 

 アスランはシュラの手を払いのけてフラフラと再び歩き出した。

 その足がどこに向かっているのかシュラには分からないが、ただその背中を見つめる事しかシュラには出来ないのであった。

 

 

 そして、アスランがデュランダルより聞いた話は、それほどしないでミネルバの艦長であるタリアにも届けられた。

 極秘という事で、タリアは直接デュランダルより話を聞く。

 

「まさか、それは……確かな情報なのですか?」

『あぁ。残念だけどね。生存は絶望的。という事だ。しかし、彼女を失った以上。我々はこれ以上希望の灯を消すワケにはいかない。それは分かるね?』

「……セナの事、ですか?」

『あぁ。そうだ。彼女を巡り、争いはさらに激化される事だろう。先ほどアスランにも命令を下したが、ミネルバとしても彼女の保護を最優先にしてくれ』

「であるならば、あの子をプラントへ連れて行くべきなのではないですか?」

『いや。アーモリーワンでの一件もある。下手にこちらへ連れて来るよりはミネルバの方が安全だろう』

「本艦は軍艦ですよ!? 戦闘だってします!」

『だからこそ、だ。地球の傷ついた多くの人々は、セナの乗るミネルバを強く信頼する事だろう』

「……」

『君たちが地上で活躍すればするほどに、ジブリール氏の影響力は失われてゆく。これもまた重要な事なのだよ。分かってくれタリア』

「はい……」

『彼を捕らえる事さえ出来れば、このバカげた争いも終わるのだ。そして、世界は再び平和となる。あと少しだ。頑張ってくれ』

 

 タリアの敬礼を合図としてデュランダルとの通信は切れた。

 が、暗い画面を前にしてタリアは深い……深いため息を吐く。

 

 あんな、当たり前の様な会話を最期として戦友が……娘の様に、妹の様に想っていた子が死んだ。

 その事実を受け止めて、タリアは帽子を深く被りながら椅子にもたれかかった。

 

 あまりにも……厳しい状況だ。

 戦力的に。という事もあるが、それ以上にタリアは心の支えを失ってしまった事があまりにも辛かった。

 キラと過ごした日々の事を思い出して、目から零れ落ちる雫もある。

 それは、長いこと軍人として生活してきたとはいえ、簡単に割り切れる物でも無かった。

 

「……ウィリアムに、なんて言えば良いのよ。キラ」

 

 正義。

 平和。

 自由。

 

 戦う為に。

 敵へ銃を向ける為に。

 殺し合いをする為に。

 

 これまで多くの言い訳をタリアは自分にしてきた。

 だが、その手が止まってしまう程に、キラが失われたというニュースは酷くタリアの心を痛めつける物であった。

 

 故に。

 彼女は今しばらく。

 再び立ち上がる力を得る為に、座り心地の良い椅子に座ったまま、己の心と向き合う事にしたのであった。

 

 

 そして。

 ミネルバへと向けられる不審な通信を監視していた少女は……その通信を盗聴し、まさか。という声を上げた。

 

「キラさんが……死んだ?」

 

 ミネルバのオペレーターメイリンは、かつてキラに呆れられ、姉であるルナマリアに何度も怒られたハッキング技能を使い、あらゆる場所にハッキングを仕掛けて、情報を集めてゆく。

 キラが死んだ等という情報を信じたく無いから。

 

 メイリンにとってルナマリアとは違うタイプの……もう一人の姉として慕っていた少女が、こんな事で死ぬワケが無いと。

 ZAFT、連合、オーブと、あらゆる場所のあらゆる機密情報にアクセスして、キラが生きているという確信を探す為に、キラに駄目だと止められたラインをも超えて、ひたすらに情報を集め続けた。

 

 その執念が。

 愛が。

 

 彼女に、その人生を大きく変える様な『出会い』をもたらしてしまう。

 

「っ! まずっ……見つかった?」

「でも……!」

 

 メイリンはキーボードを拘束で叩きながら、メイリンのハッキングに対して逆探知を仕掛けようとしてきた相手と戦う。

 しかし、その相手はメイリン一人では太刀打ちが出来ない程に強く、メイリンは一気に追い詰められてしまった。

 

 だが、不思議な事に、その相手はメイリンの情報を特定する前に身を引いてしまう。

 

「え……? なんで……。でも、こんなに強いのは……まさか……まさか、キラさん? そこにいるの?」

 

 メイリンは半信半疑という様な様子で、正体不明のシステムへと侵入し……そこの管理人と思われるモノからメッセージを受け取った。

 

『君は何を求めている?』

「……キラさん。生きて、居るんですか?」

『キラ・ユラ・アスハの生存に関する質問。回答はイエス。彼女は生存している』

 

 その返答に、メイリンは飛び上がる様な喜びを覚えたが、メッセージには続きがあった。

 

『人類を変革させる為には、彼女たちの存在が必要不可欠だ』

「変革……? 彼女たちって、誰なの? あなたは誰?」

 

 メイリンは矢継ぎ早に質問を飛ばし、その回答と共に画面へ表示された文字を指でなぞりながら読んだ。

 

「……ヴェーダ」

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