ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第205話『PHASE-31『明けない夜2』

 エーゲ海付近で行われた戦闘から命からがら脱出したスティング、アウルは、他の連合兵と共に何とかヘブンズベース基地へとたどり着き、ブリーフィングルームでため息を吐いていた。

 酷い戦いだった。

 多くの者が死に、生き残った者にも多くの傷が残っている。

 体だけではなく、心にも。

 

「……くそ。ネオの奴。僕らを置いて、先に死んじまうなんてよ」

「キラも、消息不明か……」

 

 項垂れ、辛そうな声を漏らす二人に、同じファントムペインの部隊として参加していたストライクノワールのパイロット、スウェン・カル・バヤンは静かな声で二人に語り掛けた。

 

「Missing in Action。戦闘中行方不明。通称MIAは……必ずしも、その人間が死んだと言う事を示す言葉ではない」

「突然何の話だよ。アンタ」

「ネオ・ロアノーク大佐の事だ。エーゲ海での戦いは、連合もZAFTもその詳細が把握できない程に混乱した戦場だった。帰還していないから。MIAだと判断しているという事もあり得る」

「あー。つまりだな。ガキ共。ロアノーク大佐は生きてる可能性もあるって、スウェンは言ってんだよ」

「相変わらずフォローが下手ねぇ」

 

 落ち込んでいるアウルとスティングに、無表情のまま言葉を向けるスウェンに、二人は意味が分からないと首を傾げたが、スウェンと共に戦っていたシャムス・コーザがフォローを入れ、ミューディー・ホルクロフトが呆れた様に笑みを零す。

 

 ファントムペインと言えば、誰もが目を逸らし耳を塞ぐ様なおぞましい仕事ばかりをしてきた部隊であるが、それでも人の情を完全に失ったワケでは無いのだ。

 泣いている同胞の子供が居るのならば、不器用ながらも慰めの言葉くらいは投げる。

 

「あー。悪いな。あからさまに落ち込んでて」

「……戦争で大切な者を失った者は多く居る。が、その嘆きはどれも、その当人にとっては重い物だ。無視していい理由にはならない」

「泣きたい時には泣けってよ」

「そうね。結局今の私たちに出来る事はそれくらいしかないわ……でも、泣き終わったら、ちゃんと殺しに行かないとね?」

「そうそう。宇宙の化け物共を、な」

 

「あぁ。分かってるさ」

「ステラも、ネオも、キラも、あいつらに殺されたんだ……! アイツ等、今度こそ僕が殺してやる」

 

 ミューディーの言葉に、アウルは憎しみの炎を瞳に宿らせて、暗い夜空の向こうを見据えた。

 そして、ちょうど待機していた五人に命令が下される。

 

 命令内容は……一機の巨大モビルアーマーを護れという物であった。

 

 

 スティング達が、新しい命令を受けた三日後。

 悪夢は、地上に舞い降りた。

 

 その悪夢の名は『デストロイ』

 デストロイとは、前大戦の際にプラントを攻撃する為に作られた試作巨大モビルアーマーの名であったが、現代において、遂にその機体が完成したのだ。

 その強さは……キラとネオの二人を相手にして一方的に勝利を収める程であり、その圧倒的な火力によって、ユーラシア連邦の西側地区は瞬く間に絶望と業火に焼かれ、死の街へと変えられてしまったのであった。

 

 大量破壊兵器が誕生した。

 という知らせはアークエンジェルに居たカガリの元へと届けられ、カガリはアークエンジェルと共に急ぎデストロイが暴れている場所へと向かう。

 

「これは……!」

「最大望遠! 画像出ます! 機種特定……! これはデストロイです!」

「デストロイ。前大戦の際に投入された機体でしたか。まだ当時は試作品でしたが」

「どうやら完成していたみたいね」

 

 ナタルの呟きにマリューが応え、ゆっくりと燃える街の中心を進む機体を見据えた。

 

 デストロイの黒い巨体の後ろには燃え盛る町と、破壊されたモビルスーツの残骸が無残に転がっており、デストロイが何をしたのかハッキリと分かるモノだった。

 

「生存者は……」

「どうかしら。居るとは思えないけど……でも、捜索は必要かしら」

「この状況でですか!?」

「まさか。流石にあの機体を制圧してからよ。代表のお願いでもね。すぐにってワケにはいかないわ」

「……あぁ。分かっている。我儘を言ったつもりは無いんだ。一応な。アレを制圧してから捜索もしてくれると助かる。というだけだ」

「はい。分かっております。ナタル」

「はい」

「そういうワケよ。まずはあの大量破壊兵器を破壊します!」

「了解! イーゲルシュテルン、バリアント起動! 艦尾ミサイル発射管全門装填! ゴッドフリート! 一番二番照準! 目標! 敵強大モビルアーマー! デストロイ!!」

 

 ナタルの指示でアークエンジェルは戦闘態勢に入り、そして、そのまま火砲が放たれた。

 まずはゴッドフリートがデストロイへと放たれるが……デストロイは迫りくるアークエンジェルの攻撃に対し、陽電子リフレクターを展開しその攻撃を受け止める。

 

「デストロイ! フィールドを展開! 損傷は……ありません! 無傷です!」

「ゴッドフリートでも効果が無いとなると……」

「ローエングリン? でも、おそらくあのフィールドは、ミネルバの陽電子砲を防いだものだわ。こちらのローエングリンも降下は薄いでしょう!」

「ならば……! ウォンバット! 全弾、デストロイの足元を狙え! そして、ゴッドフリートも同様に足元だ!」

 

「そっちは任せたわよ、ナタル! モビルスーツ隊、発進準備! ゴッドフリート発射後、すぐに出して!」

『艦長。敵は?』

「大型のモビルアーマーよ。アークエンジェルの火器ではダメージを与えられないわ。今、デストロイの視界を奪っているから、その隙に出撃。陽電子リフレクターの隙間か、展開する前の機体を叩いて貰えるかしら?」

『随分と無茶な要求だな』

「ごめんなさいね」

『構わない。前大戦の時から慣れている』

「ホント、オルフェ君とキラちゃんには無茶を沢山言ったわ。でも、申し訳ないけど……今回もお願いね?」

『了解した。オルフェ・ラム・タオ。フリーダム! 行くぞ!』

 

「アスラン君も、無茶はしないで」

『はい。何とかやってみせます。カガリの事、お願いしますね。アスラン・ザラ。ムラサメ出る!』

「では、艦長。私も出るぞ!」

「はい。代表は座っててください」

 

「何故だー! 戦力は一人でも多い方が良いだろうが!」

「そうかもしれないですけど。貴女を失ったらそれこそ世界は終わりだわ。お願いですから大人しくしてて下さいね」

「くそぅ! しかし、二人が危なくなったら私が出るからな!」

「そうですわね。そうなった際には……」

 

 マリューはカガリの我儘に苦笑しながら戦場を見据える。

 既にフリーダムとムラサメがデストロイに接近戦を仕掛けており、ビームサーベルで切り裂こうとしていた。

 だが、今まで隠れていたのか複数のモビルスーツが出現し、ジャスティスとムラサメの妨害に入る。

 

「艦長。多数の熱源出現。地球軍のモビルスーツです!」

「援護できる?」

「はい!」

 

「味方に当てるなよ! ゴッドフリート照準、てぇー!」

「アークエンジェルは現空域を維持。ベルリンに避難勧告」

「止められないか……」

「現状のままでは……そうですわね」

 

 マリューはアスランとオルフェが飛び回る戦場を見据えながら汗を流し、カガリの呆然とした様な言葉に震える声で返すのだった。

 

 

 そして、デストロイが順調にユーラシア連邦の西側地区を破壊しているのを見て、ジブリールは、久しぶりに歓喜の声を上げながらワイングラスを掲げていた。

 

「ふふふふはははははは! どうです? 圧倒的じゃないですか、デストロイは」

『確かにな。全て焦土と化して何も残らんわ』

『どこまで焼き払うつもりなんだこれで』

「そこにZAFTがいるかぎりどこまでもですよ。変に馴れ合う連中にもう一度はっきりと教えてやりませんとね。我等ナチュラルとコーディネイターは違うのだということを。それを裏切るような真似をすれば地獄に堕ちるのだということをね」

 

『しかし、この様な行為。オーブが黙って見ているとは到底思えんがな』

「何を仰います! オーブは既に連合の一部ですよ。今更批判も何もない」

『フン。その様なモノ。キラ姫やセナ姫が戻れば、すぐにひっくり返されるわ。カガリ・ユラ・アスハも妹の為ならいくらでも泥をかぶるだろうしな』

「そうなれば、その方が好都合というもの。姫君を正式に我らの元へ迎え入れ、絶対的な正義をもって、我らが世界を支配しているのだと知らしめれば良いのです!」

『そんな簡単にいくか』

『そもそもセナ姫はZAFTにいるんじゃろう? ならデュランダルが彼女を囲い込んだまま悲劇のヒロインをさせてくるぞ。それで我らは終わりだ』

 

 歓喜の声を上げている自分とは違い、どこか冷めたような心地で話をしているロゴスのメンバーに、ジブリールは舌打ちをしてため息を吐いた。

 まるで話にならない。

 

 あれが駄目。コレが駄目と古い物にばかりしがみついて、新しい世界に踏み出そうとしない。

 ジブリールから見て、彼らはいつまでも古いものにしがみついているだけの老害と同じであった。

 

 時代は先に進んでいるというのに、それを受け入れようとせず、己の利益ばかりを追い求める姿は、愚かという言葉以外には浮かばない程に愚かなモノであった。

 

「セナ姫の事が心配ならば、問題はありませんよ」

『なに?』

「彼女は今、ミネルバに居ます。そして、彼女を悲劇のヒロインとする為には、ミネルバでデストロイを破壊しなくてはいけない」

『それがどうした?』

「分かりませんか? チャンスが生まれるという事です。既にデストロイの護衛としてファントムペインの部隊を派遣しております。この部隊と、デストロイの力で、ミネルバを落とし、セナを確保するんですよ。そうなれば民衆など我らの思うままだ」

『そう思い通りに進めば良いがの』

 

「進めば。ではありません。進めるのです! その様に」

『……』

「デストロイの力は先の戦闘で立証されている。あのキラと! 核動力機に乗ったネオ・ロアノークが勝てなかった機体! それがデストロイなのです。何も心配は要りませんよ。今度こそね。ハハハ。ふははははははは!!!」

 

 ジブリールはモニターに映るデストロイを見ながらいつまでも高笑いを続けているのだった。

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