ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第208話『PHASE-33『示される世界1』

 崩れ落ちたデストロイ。

 そして、焼き払われたベルリン。

 生存者は殆どおらず、まさに地獄という様な言葉が最も似合うベルリンで、ミネルバの救援要請を受けて到着したZAFTの部隊が現地で救援作業を行っていた。

 

「新しい穴を掘ってくれ!」

「身元が分からない死体は焼却だ!」

 

「う……うぅ」

「もう大丈夫だぞ」

「さ、おいで。怖かったな」

 

「消毒薬を撒かないと大変なことになるぞ」

「重機は駄目だ! 壁が崩れる!」

「誰か! この子の親を知りませんか!」

「まだ息がある! 手を貸してくれ!」

 

 行き交う人々の顔に喜びなどはなく、あるのは地上に現れた地獄の中で、一人でも多くの人を助けようと願う意思だけだった。

 そして、それは救援要請で来たZAFT兵の願いでもあり、現地で傷ついた人々の相手をしていたセナも同じである。

 

「あぁ……セナ様」

「私達は、これからどうすれば」

「子供が、見つからないんです……!」

 

「はい。順番にお話を聞かせて下さい。私に出来る事であれば、何でもさせていただきますから」

 

 必死に、神に救いを求めるかの様に殺到する人々へ、セナは穏やかな笑みを浮かべたまま言葉を向ける。

 何も恐れる事は無いのだと。

 自分が居る限り、これ以上怖い物は何もないと、言う様に。

 

「……酷いもんね」

「そうだな」

「何考えてるのかしら。地球軍」

「そうだな」

「……私の話。聞いてる?」

「そうだな」

 

「……ハァ」

 

 空虚な目をセナに向けながら、同じ言葉を繰り返すレイに、ルナマリアは大きなため息を吐いた。

 あの時、タリアの命令でミネルバを発艦したレイの目の前でガイアはデストロイの攻撃を受け、爆散した。

 パイロットが脱出した様子はない。

 

 ステラは……あの笑顔が眩しい純粋な少女は、シンを助ける為に死んだのだ。

 

 それを目の前で見てしまったレイは、あの日から心を閉ざしてしまったかの様に空っぽとなってしまった。

 無表情ながら、シンやレイ、ルナマリアに懐いていたステラに、レイもまた愛情を向けていたのだろう。

 それが、失われてしまった。

 

 これで、地球軍が彼女を殺した等であれば、憎しみという形で体を動かす事も出来ただろうが。

 彼女は確かに地球軍の攻撃によって命を落としたが……地球軍が直接殺したワケではない。

 ステラがステラの意志で……シンやミネルバを守る為に戦い……死んだのだ。

 

 恨みを、憎しみを、怒りを燃やす事は難しかった。

 

「嫌になるわ……ホント」

 

 そして、ルナマリアはレイと同じ様に、あの日から抜け殻の様になってしまった少年を想う。

 ミネルバの自室で、ステラに貰ったネックレスを握りしめながら、ふさぎ込んでいる少年を。

 

「何か……何でも良いから。何かあれば良いんだろうけどね」

 

 ルナマリアは誰に聞かせるでもなく、一人呟きながら、今日も涙を、悲しみを心の内にしまい込んで、笑顔を向けている少女に再び視線を向ける。

 姉も友も失い。

 それでも誰かの為にと動いているセナは、酷く悲しい姿をしていたが、それでも止める事は誰にも出来なかった。

 

 

 そんなひたすら落ちてゆくばかりのベルリンを見ながら、ミネルバのブリッジでタリアは重く深いため息を吐いていた。

 

「しかし、酷いものだわ。無茶苦茶ね。地球軍は……」

「そうですね」

「誰も彼もが失っただけ。何の意味も無いわ。こんな戦い」

「はい……。正直、こんな戦闘ばかりを繰り返して、どうなるのかという思いはありますね。先の大戦の轍は踏むまい、ナチュラルとはあくまで融和をとする議長のお考えも良いですが……。でも、討つべきものはさっさと討ってしまった方がいいのではないでしょうか? でないといつになっても終わらないと思います。この戦争」

「そうね。本当に……私もそう思うわ」

 

 タリアは深くため息を吐いてから、今日までの日々を想う。

 本当に、戦争が始まってからは失うばかりだ。

 

 キラを失い。助けた筈の少女を失い。助けようとした街も全て焦土と化した。

 自分達も相手を殺すばかりで、何かをすくい上げた様な実感も無い。

 

 ただただ、この地獄の様な戦争に加担している様な気持ちになっていた。

 

「甘えた考えだという事は分かっているけれど……キラが居てくれればと思ってしまうわね」

「本当ですね。ヤマト隊長が居てくれれば、何か、光明を作ってくれた様な気もします」

 

 苦笑するアーサーに、タリアはそうね。と短く返して帽子を深く被る。

 弱音ばかり吐いてしまうのは、今が闇に覆われている様な感覚がするからか。

 何か、救いが欲しいと思ってしまう自分の弱い心がタリアには不快だった。

 

 

 しかし。

 そんなタリアの不快感……いや、不安は意外な形で一つの答えを得る事になる。

 

 そう、それは……プラントから発せられた一つの放送であった。

 

「では議長、よろしいですか?」

「ああ頼む。始めよう」

「3、2……」

 

 放送スタッフの合図で、全世界へ向けた放送に顔を出したデュランダル議長は、いつもの冷静な顔と言葉を世界に向ける。

 

『皆さん、私はプラント最高評議会議長ギルバート・デュランダルです。我等プラントと地球の方々との戦争状態が解決しておらぬ中、突然このようなメッセージをお送りすることをお許しください。ですがお願いです。どうか聞いていただきたいのです』

 

 その放送はミネルバでも……。

 

「艦長! デュランダル議長がプラントから緊急メッセージを!」

「え?」

「あらゆるメディアを通し、全世界へ向けられています」

「えぇ!?」

「正面モニターに映してちょうだい。そして、艦内に流して。各員可能な限り聞くようにと」

「はい!」

 

 そして、深海で身を隠しているアークエンジェルでも。

 

「何? どういうことなの?」

「何を始めるつもりなんだ? デュランダル議長は」

「とにかく。聞いてみるしかないだろう」

 

 また、宇宙に居るエターナルでも、かの放送を聞いていた。

 

「さてさて。何を言うつもりかな」

「そりゃ。聞いてみれば分かるさ。な? 姫様」

「えぇ。彼らが行おうとしている事も。見えてくるかもしれません」

 

 

『私は今こそ皆さんに知っていただきたい』

『こうして未だ戦火の収まらぬワケ。そもそも、またもこのような戦争状態に陥ってしまった本当のワケを』

『各国の政策に基づく情報の有無により、未だご存知ない方も多くいらっしゃるでしょう』

 

 デュランダルは、自らを映している映像に、先日ベルリンで起こった大虐殺事件を映し、その残酷さを世界中に知らしめる。

 そのあまりにも非道な光景に、見ていた誰もが口を塞ぎ……その行為のおぞましさに声を上げた。

 

『これは過日、ユーラシア中央から西側地域の都市へ向け、連合の新型巨大兵器が侵攻したときの様子です』

 

 そして、デュランダルの放送を見ていた、ロゴスの一員であるロード・ジブリールは慌てた様子で部下に叫んでいた。

 この様な放送を許してはならないと。

 

「なんだこれは!? 止めろ! 放送を遮断するんだ! 早くしろ!」

 

 しかし、そんな言葉も虚しく放送は何の障害も無くただただ淡々と流され続けるのだった。

 

『この巨大破壊兵器は何の勧告もなしに突如攻撃を始め、逃げる間もない住民ごと3都市を焼き払い、尚も侵攻しました』

『我々はすぐさまこれの阻止と防衛戦を行いましたが、残念ながら多くの犠牲を出す結果となりました』

 

『侵攻したのは地球軍、されたのは地球の都市です。何故こんなことになったのか』

『連合側の目的はザフトの支配からの地域の解放ということですが、これが解放なのでしょうか?』

『こうして住民を都市ごと焼き払うことが!』

 

『確かに我々の軍は連合のやり方に異を唱え、その同盟国であるユーラシアからの分離、独立を果たそうとする人々を人道的な立場からも支援してきました。こんな得るもののないただ戦うばかりの日々に終わりを告げ自分たちの平和な暮らしを取り戻したいと!』

『戦場になど行かず、ただ愛する者達とありたいと。そう願う人々を我々は支援しました!』

 

 デュランダルの言葉は徐々に熱を持って行き、その叫びに地球に住まう者達の心も少しずつデュランダルが想う方へと向けられてゆく。

 その怒りの矛先を。

 その憎しみが向かうべき場所を。

 

『ママー! ママは!?』

『あの連合の化け物が何もかも焼き払っていったのよ!』

『敵は連合だ! ZAFTは助けてくれた! 嘘だと思うなら見に来てくれ!』

 

 そして、苦しむ人々を映した映像の中には、被災者に寄り添うセナの様子も映されており、それは言葉にせずとも、『正義』がどちらにあるのかをハッキリと世界に見せつける物だった。

 彼女はずっと変わらない。

 正しき者達と共におり、平和を求めて歩み続けているのだから。

 

『なのに和平を望む我々の手をはねのけ、我々と手を取り合い、憎しみで討ち合う世界よりも対話による平和への道を選ぼうとしたユーラシア西側の人々を連合は裏切りとして有無を言わさず焼き払ったのです! 子供まで!』

 

 

 ジブリールは必死に、焦りながら言葉を並べる。

 だが、その言葉に意味は無く、ただ叫んだ声が家の中で反響するだけだ。

 

 そして、そんなジブリールの元へ、他のロゴスのメンバーからも通信が入る。

 

「止めろ! 何をやってる! 早くやめさせるんだ! あれを!!」

『ジブリール! どういうことだねこれは!』

『これは君の責任問題だな!』

『何をしようというのかねデュランダルは』

『セナ様まで向こうの支持をしているとなると……マズいぞ。これは』

『君はどう責任を取るつもりかね』

 

「そんな悠長な事を言っている状況ですか!! コレが!」

 

 この期に及んで、未だ責任だなんだと言っている者達に、ジブリールは叫んだ。

 

 そう。

 少し考えれば分かることだ。

 何故、デュランダルがこのタイミングでこんな放送をしたのか。という事は。

 

『何故ですか? 何故こんなことをするのです! 平和など許さぬと! 戦わねばならないと! 誰が! 何故言うのです! 何故我々は手を取り合ってはいけないのですか!?』

 

(わたくし)たちはもう、これ以上争う必要は無いのです。戦うべきではない相手と』

 

 デュランダルの言葉に応える様に、画面の外から現れたラクスはデュランダルの言葉に同調しながら言葉を重ねる。

 その考えを、その行動を支持すると。

 そういう様に。

 

(わたくし)達は、キラ様やセナ様と共に、此度の争いが始まる以前より、私達を争わせようとする存在を調べてまいりました。そして、遂に、(わたくし)たちはその存在を見つけ出したのです!』

 

 ラクスは強く、画面の向こうに居るであるジブリール達を糾弾してからデュランダルへと視線を向ける。

 

『古の昔から。自分たちの利益のために戦えと、戦えと! 戦わない者は臆病だ、従わない者は裏切りだ、そう叫んで常に我等に武器を持たせ敵を創り上げて、討てと指し示してきた者達。平和な世界にだけはさせまいとする者達。このユーラシア西側の惨劇も彼等の仕業であることは明らかです!』

 

 

「やめさせろ! 今すぐあれをやめさせるんだ! 何故出来ない!!」

『ジブリール!!』

 

 

『間違った危険な存在と、コーディネイターを忌み嫌うあのブルーコスモスも、彼等の創り上げたものに過ぎないことを皆さんは御存じでしょうか?』

『その背後にいる彼等、そうして常に敵を創り上げ、常に世界に戦争をもたらそうとする軍需産業複合体、死の商人、ロゴス! 彼等こそが平和を望む私達全ての、真の敵です!』

 

「くっ……ぐぅう……デュランダル……!」

 

『私が心から願うのはもう二度と戦争など起きない平和な世界です。よってそれを阻害せんとする者、世界の真の敵、ロゴスこそを滅ぼさんと戦うことを私はここに宣言します!』

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