ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第209話『PHASE-33『示される世界2』

 デュランダルの向けた言葉は波紋として世界に広がり、ミネルバでふさぎ込んでいたシンとレイの瞳にも炎が宿る。

 失ってばかりの自分達にも、まだ出来る事があるのだと。

 

 涙を流したままでも、瞳に灯した炎を力に変えて……少年たちは立ち上がった。

 『平和』

 それが仮初の言葉ではなく、現実として見えたから。

 討つべき敵が、世界の平和を邪魔する存在が示されたから。

 

 何も無ければ、自ら立ち上がる事は出来なかったから。

 

 シンとレイは放送を聞いて、自らの空腹に気づくとそのまま食堂へと向かう。

 そして、向かい合って座ると、バクバクと急いで食事を食べながら口を開いた。

 

「……強くなろう」

「あぁ」

 

「でなきゃ、何も……守れないから」

 

 手を動かして食事を口に運びながらも、涙を流し。

 流れ続ける涙を拭い、鼻をすすりながらも、シンは強くあろうと前に向かう決意をするのだった。

 

 そして、そんなシンを見て、シンと共に食事をするレイを見て。

 ルナマリアはホッとした顔をしながら、遠く宇宙の彼方に居るデュランダル議長へと感謝の想いを向けるのだった。

 例え、どの様な理由であろうと、二人を立ち上がらせてくれた事に感謝を、と。

 

 

 そして、少しずつだが暗い雰囲気から明るい雰囲気へと変わりつつあるミネルバとは違い、アークエンジェルではやや重い空気が流れていた。

 

「マズい事になったな」

「そうだな」

 

「しかし、ロゴスが戦争を起こしているのなら、そのロゴスを討つというのも間違いでは無いでしょう」

「でも、彼らを討てば、地球は大混乱よ。突然指導者を失う様なモノなんだから」

「ですが、そのタイミングでカガリ様がオーブへと戻り、世界が落ち着くまで国連を通じて導くという手もあるでしょう?」

「まぁ、な。というか、当初はその予定だった」

 

 カガリの言葉にナタルは首を傾げた。

 

「しかし、どうやらデュランダルは私をオーブへと戻すつもりは無いようだ」

 

 カガリは淡々とした言葉と共に、モニターへとODRから得た情報を映し出す。

 そこには現在アークエンジェルが居る位置からオーブへと向かう航路に配置されたZAFTの部隊がおり、これらをかわしながらオーブへ向かう事が難しい事を示していた。

 

「これは……」

「ミヤビ姉さんの話では、友好的な雰囲気は感じなかったそうだ。エンジェルダウン作戦。なんて言葉も拾ってな。先日の衛星兵器からの攻撃もそうだが……連中め。どうあっても私達を消したいらしい」

「バカな! カガリ様を殺して、ロゴスを消せば、地球は終わりですよ!?」

 

「きっとそれが狙いなのよ。指導者が消えれば、プラントの思うままに動かせる物ね。そこで例のデスティニープランを実行するつもりじゃないかしら?」

「そのような事! セナ様がお許しになる筈がない!」

「と、叫びたくても、あの子はミネルバ。既に議長の手の中だわ」

「くっ……」

 

「完全に先手を打たれたわね。さて、どうした物かしら」

「どうにかしてオーブへ戻る事は可能か? 艦長」

「出来ない事はありませんよ」

「そうなのか!?」

 

 マリューがモニターを見ながら、呟いた言葉にカガリは喜びを顔に浮かべたまま声を上げる。

 が、続くマリューの言葉に言葉を飲み込んでしまうのだった。

 

「えぇ。アークエンジェルで宇宙へと道を開き、カガリさんには小型のステルス戦闘機で宇宙へと離脱して貰い、アメノミハシラからオーブへと降りる作戦ね」

「しかし、それでは宇宙でZAFT艦体に狙われてしまう」

「そうさせない為に、私達が派手に暴れて、カガリさんの脱出を悟られない様にする。が確実かしらね? ナタル」

「えぇ。ですが、それだけでは不確定要素も増えますし。ストライクルージュで出撃するのも良いかと思います」

「そうねぇ。でも、そうなるとパイロットが居ないわ。アスラン君にはムラサメで出て欲しいし」

「あ。それなら俺が乗りますよ! オーブ軍人として! モビルスーツの戦闘訓練は積んでますから!」

「そう言えば、トール君はムラサメにも乗れるんだもんね」

「えぇ。任せて下さい!」

 

「駄目だ! 駄目だ! 駄目だ!」

「カガリ……」

「なんだ! アスラン! その顔は! お前たちを犠牲にして、私だけ生き残れと! そう言うのか!」

「あぁ」

「ふざけるな!! エーゲ海で、皆を失い! 私は! それでも、また同じ様に我慢しろと言うのか!」

「そう言っている」

「このバカ野郎!!」

 

 カガリは怒りのままにアスランの胸倉を掴んだ。

 しかし、アスランの覚悟は揺れない。揺らがない。

 

「私はな! キラやセナとは違う!」

「知っている」

「戦う事が出来るんだ!」

「あぁ。分かっている」

「だったら……!」

 

「だからこそ。お前は、戦わなきゃならないんだ。デュランダル議長や……キラとセナを狙う者達と……戦わなきゃならない」

「っ……!」

「お前の戦場はここじゃない。お前が向かうべき場所は……お前が戦うべき場所は、オーブだ」

「この、バカ野郎……! なんで私なんだ」

「カガリがキラとセナの姉だからだ」

 

「私の事、好きだって言っただろう!? プロポーズだって、したじゃないか!」

「あぁ。だから、申し訳なく思っている」

 

 アスランは変わらない表情でカガリにただ、言葉を向けていた。

 想いはある。

 それは変わらず消えていない。

 

 だが、だからこそ、アスランはカガリに生きていて欲しいと願っているのだ。

 

「カガリ。俺たちの願いは、一つ……お前が生き残ることなんだ」

「くっ……くそぅ……」

 

「オーブに戻り、キラやラクスと共に世界を守ってくれ。それがお前のやるべき事だ」

 

 アスランの言葉にカガリは大粒の涙を流しながら崩れ落ちた。

 その姿を笑う者などいない。

 誰もが申し訳なく思っている。

 

 こんな思いをカガリに背負わせてしまうことに。

 

「……アスラン、ラミアス艦長。バジルール副長」

「あぁ」

「えぇ」

「はい」

「皆の願いは、無駄にはしない。私が必ず、世界を平和にしてみせる……!」

 

「よろしくお願いね」

「トール・ケーニッヒ。ミリアリア・ハウ。二人は……」

「止めて下さいよ。代表。俺達、もう子供じゃないんですよ?」

「そうそう。ここで私達だけ逃げるなんて、そんな真似出来ませんって」

 

「あら。退艦するのなら、別に問題は無いけれど」

「ちょっと艦長。格好つけさせて下さいよ! それに、生き残る可能性はゼロじゃないんですから」

「そうそう。私だって、なーんにも諦めてませんから。伝説の不沈艦アークエンジェルの艦長さん」

「その名前。本当に辞めて欲しいわ……」

 

 ミリアリアの言葉にマリューは深いため息を吐きながら、言葉を返し、苦笑する。

 悲しみは無い。

 苦しみも、嘆きも、何もない。

 

 ただ、己のなすべき事の為に。

 世界の為、とか平和の為ではなく。

 

 ただ、己の役目に真っすぐな少女を生かす為に、マリューは笑うのだ。

 

「でも、今だけはその言葉にあやかりましょうか。カガリさん。私達は必ず生きてオーブへ戻る。だから、オーブで待っていてちょうだい」

「……あぁ。分かった」

「では、準備をお願いします」

「貴君らの武運を祈る!」

 

 カガリはマリューらに敬礼をして、そのままアスランと共にブリッジを出て行った。

 そして、彼らの姿が消えてからマリューはふぅーと息を吐いた。

 

「ホント、キラちゃんとよく似てるわ」

「頑固な所とか、ですか?」

「えぇ。それに、底抜けで優しい所も、かしらね」

「でも、なら、カガリ様もきっと泣くんでしょうね。誰にも見えない場所で」

 

「そうさせたくないなら、生き残れば良い」

「……オルフェ君」

「私にはまだやることがある。こんな場所で死ぬつもりはない」

「そうね。なら生き残らないといけないわね。私も、オルフェ君も、みんなも」

 

「そうですねぇ。生き残ったら、ミリィと結婚式挙げないと」

「あら。もう二人はそこまで進んでたの?」

「えぇ。今回は新婚旅行の下見でこっちに来てましたからね」

「それは邪魔しちゃって申し訳ない事をしたわね」

「良いんですよ。これで世界が駄目になっちゃったら、そっちの方が後悔しますって!」

 

 ケラケラと笑うトールに、ミリアリアもまたクスリと笑みを零す。

 そして、彼らは幸せの続きを見続ける為に、作戦を話し合うのだ。

 

「では、艦長。生き残りつつ囮としての任務を全うする上で一つ提案があります」

「提案?」

「はい。以前の様にローエングリンでカガリ様を送り出すと、衛星兵器に狙われる可能性もありますので、カガリ様には単独で大気圏を離脱して貰います」

「……まぁ、そうね」

「そして、我々は……ミネルバの元へ向かいます」

「ミネルバへ?」

 

 ナタルは、ベルリンにいるミネルバを映像に映しながらアークエンジェルの現在位置を地図上に示す。

 

「距離としては少々離れておりますが、ミネルバへと近づく事で、ギルバート・デュランダルは確実にミネルバへとアークエンジェルの撃沈命令を出すでしょう」

「それってやっぱり、ミネルバに箔を付けたいから、って話ですか?」

「それもある。だが、一番の理由はアスラン・ザラとオルフェ少年だ」

「……なるほど。我らも撃墜しなくてはならない以上、それ相応の腕を持ったパイロットが必要。という話か」

「うむ。そう考えた時、それだけのパイロットが居るのはミネルバという事になる」

 

「でも、ミネルバとぶつかったとして、どうやって逃げるつもり? いくらあの艦でも、上からの命令なら逆らえないわよ?」

「はい。ですから、賭けにはなりますが……アークエンジェルが撃沈した様に見せかけ、それを証言して貰います」

「乗ってくれるかしら」

「分かりません。なので賭けになります。ですが、艦長はあのミネルバの艦長と直接話をしたのでしょう?」

 

 ナタルの視線を受け、マリューは目を閉じ、タリアの事を思い出す。

 情に厚い女性であった。

 任務よりも、義理を重んじる様な……大切な物を自分で選べるような……そんな人だったと思う。

 

 マリューは分かったわと頷いて、決断を下す。

 

「カガリさんの準備が出来次第、アークエンジェルを浮上。カガリさんを射出後、私達はZAFTの防衛網に接触……! ミネルバとの戦いに向かいます!」

「ハッ!」

「正直、生き残る事が出来るか……それはかなり微妙な線だけど、最後の一瞬まで諦めずに戦いましょう!」

 

「「了解しました!」」

 

 そして、アークエンジェルは命がけの作戦に挑むのだった。

 生きて帰る事が出来る保証などは何もない。

 

 ただ、大切な物を守るために。

 大切な人との約束を守るために。

 

 彼らは征くのだ。

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