ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第210話『PHASE-34『悪夢1』

 デストロイによって破壊されたベルリンで、民間人の支援活動をしていたミネルバへ軍本部から一つの命令が下された。

 それは……エーゲ海にて確認された地球連合軍の軍艦を撃て。という物である。

 

「敵艦は一機。宇宙艦だけど、大気圏内でも航行できる艦。そして、搭載モビルスーツは3機と想定されているわ」

「宇宙艦だけど、大気圏内でも航行できる艦……でありますかー?」

「ミネルバみたいな艦って事よ」

「あぁ、なるほど」

 

 シンはルナマリアから突っ込みを入れられ、なるほどと納得する。

 そして、続く作戦の詳細を聞くのだった。

 

「現在、該当の敵艦はいくつかの部隊で追い込んでいる状態よ。でも向こうもかなりの手練れでね。このままでは逃げられてしまう恐れがある。という事で本艦にも作戦に参加する様にと軍本部より命令が下りました」

「では、我らの役目はモビルスーツの撃破。でしょうか?」

「……えぇ。そうなるわね」

「了解しました。では、それぞれの機体で出撃。ということになるが……ジャスティスが勿体ないですか。レイかルナマリアかイングリットが……」

 

「いや。ジャスティスは俺が乗る」

「おや?」

「あなた。アスラン……! もう大丈夫なの?」

 

「えぇ。長い間申し訳ございませんでした」

「いえ……色々あったものね。それは良いのだけれど。大丈夫なの?」

「はい。もう大丈夫です。それに、今回の戦闘は……出なければいけませんから」

 

 どこか強い決意を秘めた様なアスランの様子に、シュラやシン達は不思議そうな顔をするが。

 まぁ、戦力が増える事で困ることは無いのだ。

 とりあえずは良いかと頷く。

 

 そして、アスランが参加する事である程度の余裕が出来たと考えるタリアはシンとレイに視線を向け、口を開いた。

 

「シンとレイは……出られる?」

「え? あ、はい! 俺はもう大丈夫ですよ!」

「自分も問題ありません」

「そう……それなら良いのだけれど」

 

 タリアはどこか申し訳なさそうな顔をして、目を伏せながら言葉を重ねた。

 その様子に、シンとレイは互いに視線を交わしながら首を傾げる。

 

 何とも奇妙な空気が満ちるブリッジであったが、作戦開始まで時間はそれほどないという事で、シン達はそれぞれのモビルスーツへと向かい。

 ミネルバは全速で作戦空域まで急いでいた。

 

 

 そして、遂にミネルバは目的の場所へと到着し、『エンジェルダウン作戦』が開始される。

 

 

「レイワックス006より入電。セクションスリー、ポイント一八三六にアンノウン、アークエンジェルです」

「やはり動いたか。司令部へ報告を。それとデータベースを直しておけ。あれは最早アンノウンではない。……エネミーだ」

 

 アークエンジェルが潜んでいると思われる海域を調査していたウィラード隊は、狙い通りにアークエンジェルが動いた事で急ぎ部隊を展開する。

 

「む!? アークエンジェルより熱源! ……あ、いえ、ロストしました」

「何をやっている!? ステルス機ではないのか!?」

「は、はい……! これは!? 海中よりモビルスーツ!! 熱紋照合! フリーダムです!」

「なに!?」

「アークエンジェルの前方に展開していた部隊へと向かってゆきます!」

 

「まさか、我らの動きを察知されていたというのか!? えぇい! 迎撃開始! セナ様を狙う者共を逃がすな!」

「いや、一度前面に置いた部隊を下がらせろ。そして、地形を利用しつつ側面から、フリーダムではなく、アークエンジェルを狙う様に伝えろ」

「は……? いや、しかし」

 

「フリーダムの全面に部隊を配置するなど自殺行為だ。早くしろ」

「は、はい!」

 

 ウィラード隊長の言葉に、やや熱くなっていた副官は冷静さを取り戻しながら命令を復唱する。

 そして、地図を見ながらふむと腕を組んでいるウィラードに進言をするのだった。

 

「隊長。このままでは逃げられます。やはりミネルバを待たずに我らで総攻撃を」

「やめておけ。そんな事をしても部隊の損害が増えるばかりだぞ」

「いや、しかし。敵はたかが戦艦一つとモビルスーツ3機ですよ!?」

「フン。そうは言うが、貴様はヤキン・ドゥーエの戦いを知らんのだろう?」

「は……?」

 

「キラ様とセナ様が支えていたとはいえ、あの艦もまた、あの激戦を生き残った艦だ。フリーダムも、幾多の伝説を残した機体である。油断は禁物だぞ」

「ですが、パイロットはキラ様では無いのでしょう?」

「あぁ。無論。だが、エーゲ海でも、ベルリンでも奴は十二分にフリーダムを操ってみせたのだろう? ならば、警戒をするべきだ。それが長く生き残るコツという奴だな」

「功を焦って任務を失敗し、死した者達はごまんと見て来た。どのみち、議長はミネルバにアレを撃たせたいのだ。ならば、それに従うのも重要な役割だぞ。あの艦にはセナ様が乗っているしな」

 

 ウィラード隊長は地図を見ながら細かい指示をモビルスーツ隊に出しつつ、まだ全てを理解した訳じゃない副官へと言葉を重ねる。

 

「あの艦は、前大戦でキラ様やセナ様と共に戦った。平和を望んでな。しかし、そんな艦を我らが沈めてしまえば、世界はどう見る? 正義はアークエンジェルではないか。地球連合ではないかと考える可能性がある。だからこそ、今、セナ様が居る正義の艦であるミネルバが落とす必要があるのだ」

「な、なるほど……」

「貴様も昇進を考えるのなら、政治も学んでおけ。平和な時代になれば、戦果は得られんからな」

「ハッ!」

 

 ウィラード隊長は小さく笑みを作りながら状況を見据え、ようやく来た報告に顔を上げた。

 

「隊長。ミネルバです」

「来たか……さて。主役のご登場だ。グラディスの手並み、とくと拝見させてもらおうか」

 

 

 

 遂に作戦域に突入したミネルバは雪が吹き荒れる中、ウィラード隊より送られた情報を元に、向かうべき場所へと向かってゆく。

 

「艦長、レイワックスからの信号を受信しました。間もなく作戦域です」

「分かったわ。ブリッジ遮蔽。コンディションレッド発令。対艦対モビルスーツ戦闘用意!」

 

「CIWS、トリスタン、イゾルデ起動。ランチャーワンからスリー、全門パルシファル装填」

 

「ポイントまで20。間もなく会敵します」

「ジャミング弾発射! モビルスーツ全機発進!!」

 

 そして、遂にミネルバはアークエンジェルと邂逅を果たし……。

 

「攻撃開始!」

「アークエンジェル捕捉。距離2000! イゾルデ、てぇ!」

 

 山々の入り乱れた場所の完全に死角となる場所から砲撃をアークエンジェルへ向けて放った。

 しかし、アークエンジェルはまるでそれを予測していたかの様に、かわしながらミネルバの上部を通過しそのままミネルバの背後へと通り過ぎてゆく。

 

「ま、まさか、今のをかわすとは……!」

 

 完全な死角からの不意の一撃。

 それをアッサリとかわされてしまい、アーサーは驚きに声を漏らした。

 

「やはり、一筋縄ではいかないわね。油断してるとこっちが沈められるわよ!」

 

 タリアの言葉に、ブリッジのクルーは気合を入れなおし、通り過ぎたアークエンジェルを追うのだった。

 

 しかし、出撃していたインパルスの……シンは、意味不明な状況に叫び声を上げていた。

 

「あ、アークエンジェル!? 何で!? それに、フリーダム! ムラサメ! ストライクルージュ!? 艦長! 敵は! 敵はどこにいるのでありますか!?」

『敵は、アークエンジェルとその搭載モビルスーツよ』

「っ! そんな! だって、オーブは!」

『オーブは今や地球連合軍! そしてこの作戦は軍本部から正式に命令が下っているの! 今更、戦わないという選択は取れません!』

「でも、でも!! あの艦には!」

 

 シンは迷いながら言葉を叫んだ。

 しかし、そんなシンの言葉にタリアは冷静な……真剣な瞳でシンを見つめて、口を開く。

 

『シン。この作戦が認められない。許せないというのであれば、アークエンジェルへ行きなさい』

『艦長!? ちょ、シン! 駄目よ! 敵前逃亡は死罪よ! 死罪!』

「艦長……!」

 

『私は、ミネルバを預かる艦長。皆の命を預かっている身として勝手な事は出来ないわ。例えどれほど理不尽な命令だとしても、それに従う義務がある。でも、私はそれを貴方に強要する事は出来ない。こんな事を言っては……艦長失格だけどね』

「艦長……」

『キラが居たら、きっと貴方にこう言ったわ。『心のままに、自由に行きなさい。シン』』

「……キラさん」

『直前まで黙っていたのはごめんなさい。でも、貴方とレイにミネルバの中で行動されたら困った事になっちゃうから。だから……後は自由に貴方が道を選びなさい。私は止めないわ』

「……俺は」

 

『シン』

「レイ……?」

 

『説得しよう』

「説得?」

 

『そうだ。グラディス艦長。アークエンジェルの撃破は絶対条件では無いんですよね? アレが地球連合軍の艦だという事は、投降する権利がある。そして、捕虜には危害を加えてはいけない』

『え、えぇ……それは、そうだけど』

『ならば、これしかない。シン。アークエンジェルに投降を促すんだ。それで、戦闘は回避できる。皆を、救うことが出来る』

「レイ……!」

 

 レイの言葉に、シンは一つの希望を見つけ、ジッとレーダーの中で動く、光を見つめた。

 キラを失い、トダカ達を失い、ステラを失った。

 

 そんなシンに……もう誰かを失う選択は選べなかった。

 全員を助ける。

 

 シンが憧れ、目標としたキラの様に。

 そんなキラの理想に命をかけて並び立ったアスランの様に。

 

 シンは……もうこれ以上何も失わずに済む選択を……選ぶのだ。

 

「レイ!」

『あぁ』

「ルナ!」

『はいはい』

 

「俺……! 何とかアスラン達を説得してみせる! だから、だから……!」

『やろう。シン』

『そうね。一応前に助けて貰ったし。このまま沈めるのは、あんまり好みじゃないわ』

「ありがとう……!」

『気にするな』

『そうそう。アンタらが居なくなったら、ミネルバも寂しくなるからね』

『ルナマリアは友人をミネルバに作るべきじゃないのか?』

『いるわよ!! 普通に! 居ますけどね!?』

『そうか……ルナマリアにも友が居たか……。これは涙が止まらないな』

『アンタ! 作戦が終わったら怖いわよ!』

 

 いつもの様に通信でふざけているルナマリアとレイの言葉を聞きながら、シンはクスリと笑う。

 大丈夫だ。

 例えどれほど世界が苦しくても、悲しみに満ちていても、絶望が襲ってきても。

 

 この仲間たちと一緒ならば……!

 

 キュッとシンは操縦桿を握りしめて、宣言する。

 

「艦長。俺! 行きます! アークエンジェルを説得します!」

『……わかったわ。こっちでも出来る限りの事はするから』

「はい! ありがとうございます! シン・アスカ! インパルス!! 行きます!!」

 

 そして、シンは暗雲の先にある希望を目指して飛ぶ。

 陰謀が渦巻く、世界の中心を目指して。

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