ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第213話『PHASE-35『混沌の先に2』

 軍本部の命令通りにアークエンジェルを討ったミネルバは、ジブラルタル基地へと帰艦するべく静かな海を航行していた。

 しかし、艦内の空気は重く……息をする事すら億劫になる様な状態であった。

 そして、それはブリッジでも同じである。

 

「……フゥー」

「お疲れですね。艦長」

「あぁ、ごめんなさい。アーサー。そんなつもりは無かったの」

「いえ! 艦長の責務を考えれば、お疲れなのは仕方のない事かと思います!」

「そう言ってくれるのは嬉しいけどね。あまり良くはないわ。艦長……ならね」

 

 タリアは心の中で溜息を吐きながらどこまでも穏やかな海を見つめる。

 アークエンジェルとの戦闘以降、地球上で軍事的な戦闘行為が行われた場所は少ない。

 各地を追いやられた地球軍はヘブンズベース基地へと集まり、部隊の立て直しを行っているからだ。

 

「しかし……世界はどうなってしまうのでしょうか」

「アーサー?」

「議長の演説以降。地球では民間人によるテロ行為が続いていると聞きます。ロゴスを討つという議長の言葉に触発され、議長がロゴスだと示した者達を襲っているのだとか」

「これじゃ、議長がそう扇動した。という風にも見えるわね」

「あ、いえ!? 自分はそんなつもりは!」

「分かってるわ。でも、そうも見えるっていう話よ。実際。民間人を不安で煽って、敵を示したら、こんな事になるって分からない人では無いでしょうし。そこに違和感を覚えるのは普通の事よ」

 

 タリアはどこまでも広がる海を見ながら目を細め、思考を巡らせる。

 

「艦長は、これが議長の作戦か何かだとお考えなのでしょうか?」

「そこまでは言わないわ。バート。でもね。ロゴスと示された者達は地球の経済を支えている存在でもある。そして、政治的に……かなり重要な位置に居たわ。そんな者達が突然殺されて、地球はどうなってしまうのかしら」

「それは……まぁ、大混乱でしょうね。国や企業がまともに動かなくなれば、かなりの数の死者が出るのではないでしょうか」

「そうでしょうね。でも、もしそうなったとしても……オーブが居れば、国連を通して世界を良い形で安定させる事は出来たでしょう。でも、キラは行方不明。代表は……アークエンジェルと共に沈んだわ」

「「……」」

 

「議長は、本当に何を考えているのかしら」

 

 タリアは呟きながらため息を零した。

 その様子に、ブリッジにいた者達も皆、言葉もなくただ俯いてしまうのだった。

 

 彼らはただ平和を求めていた。

 それは共に戦っていたキラの理想と同じく。

 

 だが、今の彼らが行っている事は、世界に混乱を引き起こし、多くの死者を出す手伝いをしている。

 溜息が出てしまうのは仕方のない事であった。

 

 

 そして、ミネルバがジブラルタル基地へ向けて航行を続けている頃。

 ジブラルタル基地に一つのシャトルが着陸し、そこから二人の重要な人物が地上に降り立っていた。

 

「ああ分かった。それでいい。今後もそうした申し入れは基本的にはどんどん受けてくれたまえ」

「ご報告。ありがとうございます」

 

「しかし、この様な情勢の時に、議長とラクス様が地球へ降りられるとは……! 指示はプラントからでも十分にお出しになれるでしょうに」

「そういう問題ではないよ。旗だけ振ってあとは後ろに隠れているような奴に、人は誰も付いては来ないだろ? 実際、前大戦ではラクス嬢もそうしてエターナルに乗り込んだのだ」

「えぇ、そうですわね。ですから、此度もまた」

「そ、それは……ありがたいお話であります」

 

「それで、ミネルバはどうなっているのかな?」

「ミネルバは現在ジブラルタルへ向けて航行中とのことですが……予定よりも遅れていますね。急ぐようにと指示を出しましょうか」

「いや、そこまではしなくても良い。連戦で突かれているのだろう。かなり酷い戦いが続いたからね」

「……そうですね」

「地上部隊には苦労をかける。ミネルバもそうだが、駐留部隊もね」

「ありがとうございます」

 

 そして、デュランダルは基地の者と軽く言葉を交わしながら指令室へと向かうのだった。

 

 

 議長が到着してから半日ほど経過し、遂にミネルバがジブラルタル基地へと到着した。

 

『こちらジブラルタルポートコントロール。LHM-BB01、ミネルバの到着を歓迎する』

『これより貴艦を二番プラットホームに誘導する。ビーコン確認をどうぞ』

「こちらミネルバ。了解。ビーコンを確認する」

 

 予定よりもだいぶ遅れての到着となった為、タリアはいくつか言い訳を考えていたのだが……そこを突かれる様な事はなく、入港はいつも通りの形式上の物だけだった。

 そして、アーサーはジブラルタル基地に停泊している多くの艦を見ながら声を上げた。

 

「いや、しかし……凄いですねぇ。付近の全軍に集結命令が出ているのは知っていましたが、こうして見ると壮観です」

「そうね。もしかしたらこれから行われる戦いが、地球での最後の戦いかしら」

「そうなると良いですね」

「えぇ。本当に」

 

 そして、アーサーと軽く言葉を交わしていたタリアはメイリンからの言葉に顔をそちらに向けた。

 

「艦長」

「どうしたの? メイリン」

「基地指令からシン・アスカとアスラン・ザラ、レイ・ザ・バレルに出頭命令です」

「え?」

 

 メイリンの言葉に戸惑いつつも、タリアは三人に命令を伝える様に指示し、ミネルバの今後について話すべく基地へと通信を繋げるのだった。

 

 

 そして。

 基地司令からの命令でジブラルタル基地にあるモビルスーツハンガーに来ていた三人は、暗いハンガーの中に足を踏み入れた。

 

「失礼します! シン・アスカ、アスラン・ザラ、レイ・ザ・バレルを連れて参りました」

「うん」

 

 暗いハンガーの中に立っていたデュランダルはやってきた三人に笑顔を向けながら軽く挨拶をする。

 

「やぁ、急に呼び出してすまなかったね」

「いえ! ご命令とあれば!」

 

「まぁ、そう固くならないでくれ。今日は色々と話がしたくて呼んだだけなんだ」

「ハッ!」

 

「もう。アスランってば、固いですわよ」

「ラクス……」

「フェイスなのですから。もう少し柔軟にされては、いかが?」

「そういうワケにはいきません。自分は軍人ですから」

「まぁ、アナタは変わりませんわね」

 

 ラクスとアスランの会話を横目で見ながら、シンは議長を見据える。

 

「議長。先日のメッセージ。ミネルバで拝見させていただきました」

「あぁ、そうか。それは嬉しいね」

「ロゴスを討つ。という議長のお言葉。難しい事も多いかと思いますが……自分に出来る事を頑張りたいです」

「それは嬉しい言葉だ。何せ、私は君たちの様なモビルスーツでの戦闘技能などは持っていなくてね。どうしても戦いは君達の様な強い戦士に頼まなくてはいけない」

「……はい」

「だが、私もただ見ているばかりというワケにはいかないからね……こうして、君たちに新しい剣を用意しようと思ったのさ。まぁ、まずは見てくれたまえ。もう先ほどから目もそちらにばかり行ってしまっているだろう?」

 

 デュランダルがそう言いながらハンガーの中を照らし、ハンガーの奥に会った二機のモビルスーツをシン達に見せる。

 

「ZGMF-X42S、デスティニー。ZGMF-X666S、レジェンド。どちらも従来のものを遙かに上回る性能を持った最新鋭の機体だ。詳細は後ほど見てもらうが、おそらくはこれがこれからの戦いの主役になるだろう」

「デスティニー……」

「うむ。やはり君はそちらを選んだか」

「え?」

 

 シンが何かに惹かれる様にデスティニーと呼ばれた機体を見ていると、デュランダルが納得した様に呟いた。

 その言葉にシンは反応し、顔を上げる。

 

「デスティニーとレジェンドは今回の戦争が始まる前からプラントで開発されていた機体なのだが……インパルスに乗る君を見てね。キラとセナがいずれ君が乗る事になると言っていたんだよ」

「キラさんとセナが……」

「あぁ。そして、デスティニーという名もセナが名付けてね。彼女たちの意志を乗せたまま、最新の君のデータも反映し、こうして持ってきたワケだが……そうか。まさに君たちの出会いは運命だった。という事かもしれないね」

「運命……俺とデスティニー。キラさんとセナが、俺に託した物」

 

 シンはデスティニーを見上げながら拳をグッと握りしめた。

 心の中に灯った火は変わらず燃えている。

 やるべき事は既に決まっている。

 

 そして、求めていた力は……思わぬ形でシンの前にやってきた。

 運命の様に。

 

「では、レジェンドはレイ。君に任せよう」

「ハッ。承知いたしました。ご期待に応えてみせます」

「うん。期待しているよ」

 

 レイの返事にデュランダルは満足げに微笑んで頷いた。

 そして、シン達のやり取りを静かに聞いていたアスランへも視線を向ける。

 

「アスラン」

「はい」

「実は君の新型機も用意していたんだがね……恥ずかしい事にまだ開発が完全に終わってはいなくてね」

「……はい」

「オペレーション・ラグナロクまでには用意したいと考えているのだが……」

「いえ。気にしないで下さい。俺にはジャスティスがありますから」

「うん。まぁ、君がそういうのなら大丈夫なのだろう。ジャスティスも良い機体だからね」

「はい」

 

 デュランダルの言葉に、アスランは真っすぐにデュランダルへと視線を返しながら頷いた。

 そして、そんなアスランの様子にラクスはクスリと笑みを零し、レイは冷たい目をアスランへと向けていた。

 

「さて。私から伝えたかった話は以上だ。君達から何か聞く事はあるかな」

「私はありません」

「自分も……」

 

「議長」

「うん? どうしたね。シン君」

 

 デュランダルからの問いかけに、レイとアスランが首を振る中、シンだけは静かにデュランダルを見据えながら口を開く。

 

「セナはこれからどうなるのでしょうか」

「うん。セナか。難しいね」

「……」

「彼女の事は多くの人間が狙っている。その力、名声を利用しようとね」

「はい」

「だが、私は彼女に……何かを願う事は無いんだ。キラからの願いもあるし。私自身の願いもあり、静かに、平和な場所で生きて欲しいとは考えている」

「では……セナをオーブへ連れて行く事は、可能でしょうか」

「ふむ。オーブか」

 

 シンの言葉に、デュランダルは興味深そうにシンを見つめた。

 

「しかし、何故オーブなのかな。かの国は今は連合だろう?」

「それでも、セナの故郷です」

「ふむ」

「故郷なら……」

 

「俺は反対だ。シン」

「……レイ」

「確かにオーブはセナの故郷だろう。だが、今のオーブにセナを守り切れるだけの力はない」

「……」

「冷静になれ。シン。不安になる気持ちは分かる。だが、遠い場所に置いたからと言って、セナが安全という保証はないんだ」

「それは……」

 

「大丈夫だ。今度は俺も力になれる。レジェンドは兄さんの意志を継いだ機体だ。今度こそ、俺とお前で守ろう。セナを……。世界を……!」

 

 レイがシンの肩を掴みながら訴えた言葉に、シンは静かに目を伏せてから、いつもの様に少しだけ気を抜いた状態で笑みを浮かべた。

 

「……悪い。レイ。俺、ちょっと臆病になってた」

「良いんだ。そういう時は誰にでもある」

「あぁ」

「ルナマリアもきっと俺たちの力になってくれる。ミネルバに危害を加えられる奴なんて誰もいないんだ。そうだろう?」

「あぁ、確かに。そうだよな」

 

 シンはレイの言葉に大きく頷き、デュランダルへと頭を下げた。

 純粋な少年らしい顔で。

 

「申し訳ございません議長!」

「いや良いさ。確かに故郷は特別だからね。そういう気持ちになるのも理解は出来る。それに、私もシン君と同じ気持ちだ。気にしないでくれ」

「はい! ありがとうございます!」

 

「うむ。では話は終わりかな。これからの未来を頼むよ」

 

 そして、この場はデュランダルの言葉で終わりを迎え、シンは新しい剣……デスティニーの元へと向かうのだった。

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