ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第215話『PHASE-36『アスラン脱走2』

 ミネルバがジブラルタル基地に到着してからも、次々とZAFTの艦が到着し。

 ZAFT艦以外にも地球連合軍の艦もチラホラとその姿を見せるようになっていた。

 

「しかし凄いものですねえ。こんなに連合側の軍が参集してくるとは」

「ええ。でもなんかこう……落ち着かないわね」

「そうですね。もうあれは敵と刷り込まれている感じで……確かに」

 

 アーサーとタリアはミネルバのブリッジから見える景色を見つつ言葉を交わす。

 現状、ミネルバが行うべき事はなく、作戦開始の時をただ静かに待っているだけの状態である。

 

「ほんと、これで一斉に裏切られたらジブラルタルはお終いですね。はっはっはっ……あ、あれ?」

「もう馬鹿なこと言わないの! アーサー! そうでなくとも作戦前でみんなピリピリしてるのに」

「すすすみません!」

「でも、これでヘブンズベースを討ち、逃げ込んだロゴスを討っても問題はそのあとね。本当にこれでロゴスを滅ぼすことが出来るのかしら……」

 

 暗いミネルバの空気を吹き飛ばす様に、軽口を叩いて見ても……少し落ち着けばまた不安が押し寄せて来てしまう。

 タリアはどうも落ち込む事が増えて来たなと思いながらも、明るい空気を保とうと再び口を開く。

 

「まぁ、悩んでいても仕方ないわね。やるべき事をやらなきゃ」

「そうですね……ロゴスを討てば、ヤマト隊長も戻ってくるかもしれないですし」

「アーサー……あなた」

「え? どうしたんですか?」

 

 アーサーが首を傾げながら問いかけた言葉に、そういえばアーサーはキラが死んだことを知らなかったのかと思い出し、タリアは続く言葉を飲み込んだ。

 そして、なるべく明るい表情を作りながらアーサーに言葉を返すした。

 

「そうね。きっと。あの子が世界を平和にしてくれるわ」

「えぇ。ヤマト隊長ならきっと。そうですねぇ」

 

 ありもしない希望を語りながら、タリアはアーサーと共にとりとめのない話をするのだった。

 

 

 そして、タリアとアーサーが言葉を交わしている頃。

 ミネルバの所属であるレイ・ザ・バレルは、デュランダル議長からの出頭命令があり、彼の居る執務室へと向かっていた。

 

「ミネルバ所属レイ・ザ・バレル、出頭いたしました」

「やぁ。来たか。レイ」

「はい。議長」

「うん。あー。すまない。これから重要な話がある。少し席を外してくれ」

 

 デュランダルはレイが敬礼したのを確認してから、部屋に居た者達を追い出し、レイをソファーへと導いた。

 そして、今度はプラント最高評議会議長としてではなく、親友の弟へ向ける男の顔をしながら口を開いた。

 

「レイ。久しいな」

「えぇ。こうして、立場を気にせずに話をするのは本当に、いつ以来か。ラウ兄さんは元気にしてますか?」

「無論だとも。今はプラントを離れているがね」

「なるほど。ではオペレーション・ラグナロクで合流を?」

「いや、どうだろうな。私はラウの動きを把握していなくてね……まぁ、ラウがセナの邪魔をするとは思わないが」

「でしょうね。ラウ兄さんはキラさんとセナを愛していますから」

「ふむ。ではやはり最大の障害は、エターナルとラクス・クラインか」

「そうなるでしょうね」

 

 デュランダルの呟きにレイは頷き、肯定を返す。

 

「アスラン・ザラはどうかな」

「本物は、アークエンジェルと共に沈みました。シンがやってくれました。偽物は所詮偽物ですからね。気にされる事は無いかと」

「シン……シン・アスカ君か。彼はどうかな」

「シンは……純粋です。そして、強い。必ずやセナの作る理想の世界を守ってくれます」

「そうか」

「デスティニープランは……俺が居なくなった後も、シンが居る。シンなら必ずセナを守り抜いてくれるでしょう」

「運命の守護者。うん。セナはあの機体に良い名前を付けたね。デスティニー。まさにセナの目指す世界平和(デスティニープラン)の守護者として相応しい」

「えぇ」

 

「ならば残る障害はジブリール氏だけか」

「ジブラルタル基地に集められている戦力ならば十分に捕縛……または殺害が可能です」

「例の巨大モビルアーマー、デストロイはどうかな?」

「デスティニーとレジェンドであれば問題ありません」

「そうか。それは頼もしいね。だが……うん。ジブリール氏に関してだが……彼は逃がして欲しい」

「……よろしいのですか?」

「あぁ。彼にはまだ仕事があるからね」

「仕事……ですか?」

 

「そう。ジブリール氏にはオーブへと逃げてもらい。それを理由にオーブを討つ」

「お、オーブを……!」

「おや? レイはオーブを討ちたくない理由があるのかな? セナが作る世界を、かの国は否定するだろう。そうなれば、いずれ敵となる国だよ?」

「いえ……理想の為に必要なのは、分かります」

「うん」

「しかし……オーブには、シンの家族が居ます。家族を失えば、シンが敵となる可能性も……!」

「レイ」

「っ! は、はい」

 

 怯えた様子のレイにデュランダルはフッと笑みを浮かべると、レイを安心させる様に優しく口を開いた。

 

「我々は無慈悲な侵略者ではない。無論避難勧告はするし。民間人の非難が確認されてから攻撃を開始するつもりだ。あくまで狙いは行政府だからね」

「ですが! シンの両親はモルゲンレーテの!」

「であれば、モルゲンレーテには攻撃しない様にと命令をしよう。徹底させる。それで良いかい?」

「……」

 

 レイは非常に珍しく冷や汗を流しながら視線をさ迷わせていた。

 まるで本心では嫌だと叫びたい子供の様に。

 

 それを見て、デュランダルはふむと息を零した。

 

「分かった。オーブを攻撃するのはあまり良くないようだね。キラやセナの問題もあるし。オーブを攻撃しない方向で進めよう。行政府を制圧し、本土への攻撃は最小限。これで良いかな?」

「……ありがとうございます」

「良いさ。ラウの弟という事は、私にとっても弟の様なものだ。君の願いを踏みにじる気はないよ」

「はい」

「そして、オーブを追い詰め、ジブリール氏には宇宙へと逃げて貰う。そして……レクイエムを撃たせる。無論、この攻撃は建造途中のプラントへと逸らす予定だ。これ以上、地球連合へと憎悪を向けても意味は無いからね」

「……はい」

「だが、危うく命が失われるかもしれない。という恐怖は、プラント市民や、親プラント派の者達の強い反発を生むだろう。これで、ムルタ・アズラエルが何をしようと、彼の策は全て失敗だ。世論は我々のものとなる。まぁ、そのような事をしなくてもセナが居れば何も問題は無いだろうけどね」

「……ギル」

「うん?」

 

「キラさんは……」

「あぁ、そういえばレイには伝えていなかったかな? キラはヘブンズベースでデストロイに挑み、殺された、との事だ」

「っ! 本当に! 死んだのでしょうか」

「うん?」

「もし、キラさんが亡くなっているのなら、ジブリールはそれを利用する筈です。しかし、それがない。という事は……うまく逃げる事が出来たのではないでしょうか!」

「可能性としては無いわけではないが……うむ」

 

 デュランダルはレイの言葉に少しばかり考え、腕を組みながら目を閉じる。

 そして、万が一に備える為に一つの作戦を立てる。

 

「キラが万が一生きていて、計画を邪魔しに来た場合か……その場合は仕方ないが、メサイアのジェネシスで……」

「ギル!!」

「……どうしたね? レイ」

「キラさんは、俺が、俺が! 必ず説得する。だから……キラさんを殺さないで欲しい」

「それはシン・アスカ君の問題かな?」

「それも、そうだけど……俺も! 俺も……キラさんには生きていて欲しいんだ」

「彼女がデスティニープランを破壊する可能性があるとしても、かい?」

「それでも……! 俺は、俺は……!」

 

 レイはギュッと胸の前で服を掴み、必死な顔でデュランダルに訴えた。

 

「姉さんには、生きていて欲しいんだ……」

「……」

「ギル……!」

 

「分かった。そんなに悲しい顔をしないでくれ。レイ。キラに関しては彼に頼り時間稼ぎをするとしよう。なに。デミスシルエットが動き始めれば全てが終わる。セナが世界を掌握するまで、守りきれば良い。それだけの話だ」

「ありがとう……ギル」

「良いさ」

 

 デュランダルはレイに笑みを返しながら計画を頭の中で組み上げるのだった。

 そして、仕事の話も終わり食事でもしながら話をしようとデュランダルが口にしようとした瞬間、基地全体に響く様なアラートが鳴り響いた。

 

「何事だ!?」

「議長! お話し中失礼いたします!」

「どうした! 何があった!」

 

「それが、ハンガーでメンテナンス中だったジャスティスが何者かに強奪されました!」

「なんだと!? アレは核動力機だぞ!」

「は、はい!」

「すぐに部隊を動かせ! 奪還か、それが難しい場合撃墜しろ!」

「……議長。では私もレジェンドで出撃します。またシンにはデスティニーを」

「頼む」

「ハッ!」

 

 レイはデュランダルに敬礼をしながら部屋を飛び出し、通信機でシンに繋げながら走る。

 

「シン!」

『どうしたんだよ。レイ。なんか今、警報が鳴ってて』

「ジャスティスが奪われた!」

『えぇ!?』

「アレがジブリールに奪われたら最悪だ。奪還か、難しい場合撃墜しろ! との命令だ!」

『わ、分かった! えと、機体は……!』

「今、そこにあるだろう?」

『そこに……って!? デスティニーもレジェンドもまだ動かして無いんだぞ!?』

「だがやるしかない。相手は核動力の機体なんだ。こんな事で! 俺たちが作ろうとしている平和が、壊されてたまるか!」

『……! 分かった! すぐに準備する!』

「頼む!」

 

 レイはホテルを飛び出すと、議長によって用意されていた車に飛び乗って、そのままデスティニーとレジェンドがあるハンガーを目指し、走るのだった。

 そんな中、上空を赤い機体が飛び去り、それがジャスティスであると把握して舌打ちをする。

 時間の猶予は一瞬たりとも無い。

 

 

 そして、飛び去ってゆくジャスティスの中で、アスランはため息を吐きながら銃を握る少女を見やる。

 

「もう後戻りは出来ないぞ」

「構いません。これが正しい事とは思ってませんけど。必要な事だとは思っていますから」

「……君はもう少し、大人しい方だと思っていたんだがな」

「残念ですけど。私は昔から問題児だってお姉ちゃんとかキラさんに言われて来たんで。今さらですよ」

「問題児。まぁ、問題児か。確かにな……俺に付いてきても良い事なんか何も無いだろうに」

「でも、貴方に付いていけば、キラさんの所に行けます」

「キラになら、ミネルバに居れば」

「ZAFTは……! いえ。デュランダル議長は、キラさんを殺すつもり、でしょう?」

「……よく知っているじゃないか」

 

「だからこそ、このままでは居られない。私は私の出来る事をします!」

「ハァ」

 

 アスランは迎撃の為に出撃してきたモビルスーツをビームサーベルで破壊しながら深いため息を吐いた。

 そして、銃を向ける赤髪の少女に再び視線を向ける。

 

「君の覚悟は理解した。ならば行くぞ。メイリン・ホーク!」

「はい!」

 

 アスランの言葉と共に、ジャスティスは雷雲の中を飛んで行くのだった。

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