ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第217話『PHASE-37『雷鳴の闇2』

 嵐の収まらないジブラルタル基地の海底で、一つの潜水艦が音もたてず、静かに潜行していた。

 そして、その機体から出撃した機体が、海中へと落ちてゆく一機の赤いモビルスーツを捕まえて、海上に向けて大型の爆弾を放ち、赤い機体を捕まえたままシールドを構えて、爆発の影響を受けながらより深海へと落ちてゆく。

 

 勢いよく深海へ向かったその機体は潜水艦のハッチへと向かうと、そこに赤い機体を押し込んで、自らも飛び込んでゆくのだった。

 

「艦長。収容。完了しました」

『了解した。機関始動。現海域を離脱』

 

 艦長の指示で動き始めたボズゴロフ級大型潜水空母『ボズゴロフ』は前大戦の時から変わらぬ慎重さで、ジブラルタル基地を静かに離れてゆくのだった。

 

 そして、そんなボズゴロフの中で赤い機体を救出する為に動いていたグーンのパイロットが、コックピットから出て深く息を吐く。

 

「ふー。やっぱり基地の近くで活動する時は緊張しますね」

「そう言う割には、結構大胆な動きだったけどな?」

「知ってますか? ディアッカ。隠密とは時に大胆な行動も必要なのです」

「ふぅん。そういうモンかね」

 

 パイロットスーツを着たままニコリと笑う若草色の髪の青年ニコル・アマルフィに褐色金髪の青年ディアッカ・エルスマンはヘッと笑いながら応えた。

 やや嫌味な言いぐさも、長く付き合っている友であれば普段の会話と何も変わらない。

 

 それに、ディアッカの関心は今……赤い機体、ジャスティスの中にあった。

 

「しかし、ジブラルタル基地から脱走とは……アスランはやっぱりアスランって事かぁ?」

「そうみたいですね。クローンであっても、抱く正義感は同じ。という事かもしれません」

「何が正義感だ。奴はキラの元へ行く為に脱走したと聞いたがな」

「「イザーク!」」

「クルーゼ隊長はなんだって?」

「このままオーブへ向かえ。とさ」

「となると……やっぱり議長の狙いはオーブかぁ」

「平和、平和と言いながら。結局変わりませんねぇ。プラントも」

 

「そう言うな。ギルバート・デュランダルがクライン派であったのは確かだ。その行動が平和に向かっていると思うのはおかしな事じゃない」

 

 イザークがため息と共に吐いた言葉に、二コルとディアッカも同じ様にため息を吐きながら応える。

 そして、そんな彼らの前に、ジャスティスから一人の青年と一人の少女が降りて来た事で、彼らはそちらへと顔を向けた。

 

「君たちは……。それに、ここは……?」

「チッ。よく似てやがる」

「まぁまぁ。落ち着いて下さい。イザーク」

「そうそう。見た目だけなんだから」

 

 戸惑いながら藍色の髪の青年、アスラン・ザラが言葉を発した事でイザークの気分は一気に最悪の悪まで落ち込んだが、二コルとディアッカにフォローされ、何とかジュール隊の隊長としての役目を思い出す事に成功した。

 そして、やや離れていた所に待機していたジュール隊唯一の女性兵士であるシホ・ハーネンフースを呼ぶと、シホにアスランと同じ様に戸惑った顔をしているメイリンに声をかけ、そのまま格納庫から離れた場所へと連れて行く様に指示するのだった。

 

「メイリン・ホークさんですね。こちらへ」

「え? あ、でも……私は」

「大丈夫ですよ。貴女に危害を加える事はありません。この艦は現在、ラクス様とキラ様のご意思で動いていますから」

「キラさんの!?」

 

「キラのだと!?」

「おっと! アスラン! お前はあっちに行く前に、やる事がある」

「やる事……?」

 

 格納庫から内部へと向かって行ったメイリンを見送りながら、アスランは睨みつける様な視線を送ってくる三人を見やった。

 植え付けられた記憶にある彼らは、かつて前大戦の時、本物のアスラン・ザラと共に戦っていた同じ隊の人間だと認識しているが……。

 

「当然! 貴様を殴りつける事だッ……!」

「っ!」

 

「違いますよ。イザーク」

「そろそろ大人になれよ。お前もさ」

「何ィ!? お前らは、腹が立っていないのか!?」

 

「そりゃ。戦友の名前奪ってやりたい放題してる奴がいるって聞きゃ、嫌な気持ちにもなるけどな」

「暴力で解決する事など何も無いですからね。僕らはそういう事を前大戦で学んだ筈ですよ。イザーク」

 

 二人に冷静な言葉を向けられ、イザークは悔しさに歯を食いしばりながら、自分の感情を抑制する。

 両手を強く握りしめて、苛立ちを何とか自分の中で飲み込もうとしていた。

 

「こりゃ落ち着くまで時間がかかりそうだな」

「では、まず僕らから対話を試みてみましょうか。えー。はじめまして。で良いんですかね? アスランのクローンさん」

「あぁ。そうだな。俺から見れば、初めてではないが……これは『アスラン・ザラの記憶』がそうさせているだけだ。俺個人としては初めて。という事になる」

「ふむ」

「しっかし、こうして見てもよく似てるな。流石はクローンって感じか?」

 

「身体的な相違点は無い。記憶も同じだ。ならば俺はアスラン・ザラという事になる」

「違う!!」

「っ」

「貴様は断じてアスラン・ザラではない!」

「……イザーク」

 

「俺もイザークの意見に賛成だ。いくら外見が似てようが、記憶が同じだろうが。お前はアスラン・ザラじゃないさ。情報と感情は違う。お前は確かにアイツの記憶を持っているんだろうが、アイツがどれだけ苦しんで、今を手に入れたか。知らないんだろ?」

「それは……確かに。アスラン・ザラがどの様な感情を抱いていたか。その情報は……ない」

 

 ディアッカの言葉に、アスランは目を伏せながら同意した。

 そんなアスランに二コルがディアッカに続いて声を掛ける。

 

「でも、僕らにとって……貴方がどういう存在か。それはどうでも良いんです。ただ一つ。たった一つ。確認出来れば」

「……確認?」

「えぇ。僕らにとって重要な事。それは、貴方がキラさんやラクス様の味方となるのか。という点です」

「……」

「あー。嘘ついてスパイやろう。みたいのは考えない方が良いぜ。こっちにはニュータイプっていう嘘発見器があるからよ。隠し事も無駄だぞ」

「……そうか。ならば素直に本音で話せるな」

 

 アスランはディアッカの脅しを受けて、フッと笑う。

 そして、まるでしがらみから解放された様な顔でハッキリと告げた。

 

「俺はキラを愛している」

「は?」

「はい?」

 

「デュランダルの計画も、毒婦の企みも関係ない。俺はキラの輝きを守りたい。この命に代えても。それが俺の真実だ」

 

 突如放たれた告白に、先ほどまでシリアスな顔をしていたイザークと二コルは呆気に取られてしまい、ディアッカは少ししてから腹を抱えて大笑いし始めた。

 

「ワハハハハ! なんだ、本当にそっくりじゃねぇか。アスランとよ!」

「ディアッカ! 笑っている場合か!」

「いやー。性格はやはり遺伝子が形作る物なんですかね。研究機関に一つの証拠として持って行きたいですね」

 

「何がおかしいんだ」

「そりゃおかしいさ。ったく。心配して損したぜ。じゃあ、一応聞くけどな。何で本物に敵意むき出しだったんだよ」

「奴がキラを傷つけたからだ。前大戦の時、彼女は奴に殺されかけた。許せる事ではない」

「あー」

「それに関しては僕らも何とも言えませんね」

「アレはキラが悪いだろう。まさか、アークエンジェルに密航するとは、信じられん事をする」

「それは、そう」

 

「ですが、罪は罪。そして、その罪をアスランも……貴方も持ち続けているという事ですか。まったく。本当に、まったくですね」

「……二コル」

「良いでしょう。一応オーブで嘘発見器さん達に貴方の事を伺う事はしますが、僕個人としては貴方を信用します」

「良いのか?」

「えぇ。人を信じる。平和への第一歩はそうやって作ると僕はキラさんに教わりましたから」

「そうか……そうだな」

 

 アスランは二コルが差し出して来た手を握り、十分な感情を乗せながら頷いた。

 そして、空を見上げ、口を開く。

 

「だからこそ……計画は止めなくてはいけない」

「計画、というと? 例のデスティニープランという奴ですか?」

「あぁ」

 

「しかし、その計画って奴もキラやラクス様が反対したら終わりだろ。いくらセナちゃんがミネルバに居るって言っても、二人の言葉には」

「違う」

「え?」

 

「デスティニープランは実行させた時点で終わりだ。世界は、完全なる秩序が支配するものとなる」

 

 深刻な顔で計画を語るアスランに、イザーク、ディアッカ、二コルの顔がこわばった。

 そして、緊張した様子のままイザークがアスランへと言葉を向ける。

 

「貴様。何を知っている」

「デミスシルエット」

「デミス……?」

「シルエット?」

 

「前大戦の時、セナが使用した機体。ホープの新装備だ。その全身にはサイコフレームが使われ、『搭乗者の意志を影響範囲に浸透させる』事が出来る」

「どういう意味だ」

「使用した瞬間に、ホープの搭乗者の意志と同じ意志になる。よほど強固な意志を持っていれば別だが、少しでも彼女の話に心を寄せてしまえば終わりだ。個人の意志など塗りつぶされ、彼女が理想とする平和に同調する事になる」

 

「洗脳、みたいな事ですかね」

「いや! でもよ。こっちにはキラと姫さんが居るんだぜ!? そんなどこの誰とも知らない奴の意見に耳を貸す奴なんて居るのかよ!」

「……確かにな」

「デュランダル議長も、それなりに優秀な人物ではありますが、お二人に比べると……どうしても難しい所がありますね」

 

「お前たちは何を言っているんだ」

「え?」

 

 互いに意見をぶつけ合わせている二コル達を見て、アスランは不思議そうな顔をしながら言葉を向けた。

 知らないのか? とでも言う様な瞳に。

 真っすぐに向けられる感情に。

 

 二コルはゴクリと唾を飲み込みながら、キラの言っていた最悪の想像を頭の中に蘇らせていた。

 

「ちょっと待ってください。もしかして……キラさんとラクス様の敵は……」

「は? いや、待てよ。そんな事。あるのか?」

 

「ホープは生み出されてから長く誰も動かせない機体だった。たった一人を除いて」

 

「なに……? っ! まさか!」

 

「デミスシルエットはホープ専用の新装備。そして、ホープに乗れる人物はただ一人」

「そう。デスティニープランの主。キラとラクスの敵対者は……」

 

 二コルが自らの考えを口にし、その答えに肯定を返しながらアスランは彼らにとっての衝撃を口にした。

 

「キラの妹。セナ・ユラ・アスハだ」

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