ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第220話『PHASE-39『天空のキラ1』』

 戦う方針。進むべき方角が決まったキラ達は、地上へ降りる為の作戦を開始する。

 

「大事な事は、エターナルの存在を彼らに認知させる事です。ラクスという存在はプラントにとってとても大きい」

「んー。言いたいことは分かるがね。それで、なんでメンデルに行こう。という話になるのかな。それが、僕には分からないけど」

「メンデルに行くのはついで、ですね」

「ついで?」

「えぇ。そろそろ表舞台に戻って貰いたいと思っていたんですよ。セナを止めるのなら、あの人以上に都合が良い人は居ませんから」

 

 バルトフェルドに向けられたキラの言葉にクルーゼはなるほど、と頷いた。

 キラのいう『あの人』の正体が分かったのだ。

 

「しかし、それは危険な賭けじゃないのか? キラ。あの子の傷は、そもそもあの女から始まっているんだぞ」

「えぇ。よく分かってます。でも、だからこそ。セナがこんな事になっちゃった責任を取って貰わなきゃ。それに……あの人の事は、今も愛しているんですよ。セナは」

「……だろうな」

 

「誰の話だ?」

「カガリさんはご存じ無いのですね」

「ラクスは分かるのか」

「えぇ……。メンデルにいらっしゃるのは……セナさんとキラのお母様ですわ」

「お母様って……いや、カリダさんはオーブに居る筈だが」

「カリダ様ではなく、血縁上の、お母様ですわね」

「血縁上の……って、まさか!」

 

 ラクスの言葉にカガリは、キラから聞かされていた自分の出生の話を思い出す。

 メンデルで行われた実験と、それにより特別なコーディネイターとして生み出されたキラとセナの話。

 そして、自分とキラ……セナの遺伝子上の繋がりを持った親。ヒビキ夫妻の話だ。

 

「なるほど。そうか。メンデルに居るのか。それは、それは。私も是非一度会ってみたいと思っていたんだ」

「……カガリ。言っておくけど。暴力的な事は止めてよ? ただでさえ面倒な状態なんだから」

「別に恨みとか、憎しみ、とかじゃない。妹たちが傷つけられたんだ。一発くらい殴ってやらなきゃ私の気が収まらん!」

「いや。だからそれを止めてって言ってるんだよ。君がヴィアさんを傷つけても、セナが泣くだけだよ」

 

「しかし。それが必要な事なら構わないと私も思うがね」

「ラウ兄さんまで……」

「罪は償わなければならない。当然の話だな」

 

「おぉ。まさか同じ意見だとは思わなかったな。ラウ・ル・クルーゼ」

「妹の幸せを願う者なら同じ結論に至る。当然の事だ」

「嫌な同盟が出来たなぁ。とにかく! 駄目ったら駄目だからね!」

 

 ハァー。と極大のため息を吐きながらキラは飽きれた様な目を二人の困った姉と兄に向け、ゲラゲラと笑っているムウに視線を向ける。

 

「じゃあ、二人の事はお願いしますね。ムウさん」

「はぁ!? なんで俺なんだよ!」

「いや、だって。余裕ありそうだから」

 

 ムスッとしながら言ったキラの言葉に、ムウは仕方ねぇなぁ。等と言いながら兄貴面をするが。

 そんな事を見逃すはずもなく、たった今結成されたばかりの兄姉同盟は、ムウを次なるターゲットに決めて、口を開く。

 

「ほぅ。また私の前に立ちふさがるか。お前はいつでも邪魔だな。ムウ・ラ・フラガ」

「フラガ一佐。一つ警告だ。国家元首たる私が見逃してやっているだけで、貴様が経費として上げた親睦会とやらの領収書は、いつでも貴様の給料から引ける事を忘れるな」

「すまん! キラ! 俺じゃ勝てねぇ!」

「ちょっとー! ムウさーん!?」

 

 一瞬で敗北したムウにキラは情けない声を上げ、ハァと再びため息を吐く。

 厄介だ。

 とんでもなく厄介な二人が手を組んだものだ。

 

 キラはそう考え、未来に残る不安を見ない様にしつつ、エターナルのブリッジでため息を吐く。

 が、それはそれ。

 これからの事は、その時になったら考えるという事で、キラはエターナルの艦長であるバルトフェルドに声をかけた。

 

「というワケでエターナルでメンデルに向かいたい訳なんですけど。全員で動くと流石に目立ちますし。あまり警戒もされたくないんですよね」

「なら、少数精鋭か」

「はい。ついでに言うのなら、ラウ兄さんが僕の味方になってくれた。というのも内緒にしたいので。あ、ムウさんには地上に降りる準備をして欲しいですし。カガリも、アカツキの調整があって、ラクスもジャスティスを動かす練習を……」

「おいおいちょっと待ってくれ。それじゃ戦力が全然足りないだろう?」

「大丈夫です! 僕が行くので! 後はミーアにラクスのフリをして貰おうかなと、練習もかねて。いーい? ミーア」

「はぁーい。何かあったらキラが守ってくれるんでしょう?」

「当然。エターナルには傷一つ付けないよ」

「わぉ! 格好いい!」

 

 嬉しそうにぴょんと跳ねるミーアに、大丈夫なのか? という様な不安を見せながらバルトフェルドがキラを見るが、キラは微笑むばかりだ。

 しかし、逆に言えば、ここまでキラが自信を持っているんだし。大丈夫だろうとバルトフェルドは頷く。

 

「まぁ、イザとなれば、僕やアイシャが出撃すれば戦力としては十分だろうしね」

「ありがとうございます! バルトフェルドさん!」

「うむ。では、エターナルの発進準備を! 目標メンデル。各員行動開始!」

「「はい!」」

 

「じゃあ、僕は格納庫の方に。フリーダムの最終調整をしますので」

「あ、キラ! 待って!」

「ん? どしたの? ミーア」

「エターナルで行くのなら、例の服。着なきゃ駄目だよね? 陣羽織だっけ?」

「あー。確かに、ラクスはエターナルだといつも着てた……かな?」

 

 キラは無重力の中で飛び込んできたミーアを受け止めながらラクスへと視線を向ける。

 何故かいつもと変わらないラクスの笑顔に、少し恐怖を感じたが、ラクスに問いかけた。

 

「えぇ。確かに。着ておりましたわね」

「アレ。放送で見たことがあるんだけど、結構ピッタリだったでしょ? でも、そうなると私じゃ苦しいかなって」

「苦しいって……」

「分かるでしょ?」

 

 ミーアがあえて胸を押し付けてきた為、ミーアの言いたいことを理解して、キラはあー、と呟いたがそれ以上言葉を紡ぐのは危険だと本能が判断し、口を噤む。

 思ったままに喋る事の危険性をキラはよく理解していたのだ。

 

「えーっと。ま、まぁ……ラクスとミーアはよく似てるようで身長とかもちょっと違うしね。うん。だから、サイズを直すのも必要なんじゃないかな」

「そうなの! だから、私用に直した後、ちゃんと出来てるかキラに確認して欲しくてぇ」

「わ、分かった。分かったから。一度離れて。ミーア。分かったから」

「でもー」

 

「ミーアさん」

「っ!」

「あら。どうしました? ラクス様」

 

 いつの間にかキラのすぐ傍まで来ていたラクスがキラの手を握り、ミーアを見ながらやや低い声を向ける。

 その声には間違いなく威圧的な意志が込められていた。

 

「キラはこれから出撃の準備がありますし。お忙しいでしょうから。(わたくし)が! 合っているか確認して差し上げますわ」

「そんなそんな。ラクス様にその様な事をお願いするのは申し訳ないですよぉー。これは。私と! キラの! 問題ですから」

「いえいえ。お気になさらず。というよりも。『無理に』キラと恋人らしく振舞わなくても大丈夫ですわ。確かに(わたくし)とキラは恋人同士ですが、そこまで同じにされなくても、問題ありませんわ」

「えぇー。いえいえ。私はただ、私が! キラの事が好きなので、こうしているだけで、平和の象徴として恋人のフリをされているラクス様とはまた違った意味ですから」

 

 バチッと二人の間に火花が散り、キラは二人に掴まれたまま動けなくなってしまった。

 ミーアもラクスも笑顔である。

 笑顔のまま闘争をしていた。

 

 譲れない愛の戦いである。

 

「キラ。私は別にお前が何人恋人を連れてこようが構わないが、たまには膝枕で耳かきをしろよ。私のストレス解消に付き合え。代表の地位はストレスが溜まるんだ」

「ちょっ!? カガリ!?」

「愛とは偉大だな。キラ」

「それっぽい事言って逃げないでよ! 兄さん!」

 

「あー。なんだ。大抵の事は土下座をすれば許してくれるぜ!」

「ムウさん!? そのアドバイス本当に今、必要ですか!?」

 

 ブリッジに集まった者達はいくつかの言葉をキラに残し、そのまま去っていった。

 エターナルのクルーは最初から見て見ぬふりをしており、キラを助ける者は居なかったのである。

 

「キラ?」

「キラー?」

「話し合いをしましょう! 話し合いをー!!」

 

 キラはラクスとミーアに挟まれたまま、叫び声をあげるのだった。

 しかし、そのSOSはどこにも届かず、結局彼女は地獄の選択をする事となった。

 

 

 それから。

 ギリギリまでラクスとミーアに挟まれていたキラであったが、いよいよメンデルへ向かう準備が出来たという事で、二人の間から何とか離脱する事に成功した。

 そして道中なんらトラブルもなくメンデルへと到着し……エターナルには隠れていて欲しいと言い残して自らの機体でメンデルへと向かうのだった。

 

 前大戦の時に使用したドックから内部へと侵入し、メンデル内部のシステムに侵入する事で、何者かが生活している痕跡のある地区へと向かう。

 

「……」

 

 機体を降りてから銃を手に、メンデルの内部を進み、廃墟と化した研究所の奥で光が僅かに漏れている扉の前に立った。

 そして、ゆっくりと音を立てない様に扉を開けながら、中に向かって銃を構える。

 

「っ!? 誰!?」

「……久しぶり、って言った方が良いのかな」

「あ……貴女は」

 

 キラは真っすぐに、小さな部屋の中でパソコンの前に向かっていた長い髪の女性に銃を向ける。

 その女性は、キラとよく似た容姿をしており、将来的にキラがこの様な姿になるのだろうと予想される姿をしていた。

 

「ヴィアさん。本当は貴女にもう会うつもりはありませんでした。でも……」

「セナの事、ね?」

「はい。あの子を止める為には貴女が必要です。セナの母親である……貴女が」

 

 キラの言葉にヴィアは目を伏せながら、拳をキュッと強く握りしめる。

 どこか迷う様な姿を見せているヴィアに、キラは鋭く……強い目を向け続けるのだった。

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