ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第222話『PHASE-40『黄金の意志1』』

 ヘブンズベース基地がセナに一人によって陥落した後、対ロゴス同盟軍はヘブンズベース基地へと足を踏み入れ、基地の制圧を行っていた。

 無論、制圧といっても、戦う意思のないヘブンズベース基地の兵士たちは既に降伏の準備を行っていたし。

 戦う意思があっても、モビルスーツ相手に出来る事などなく、銃を向けられれば大人しく降伏してゆく者達ばかりであった。

 

 だが……。

 

「なに? ジブリール氏が居ない?」

「はい。他のロゴスメンバーは皆捕らえたのですが、ロード・ジブリールは基地が陥落する前に脱出した様で」

「ううむ。そうか……しかし、本当に困ったお人だ。これ以上何をしようというのかね」

「はぁ」

「ともかく、彼を捕まえないことには話にならない。パナマかビクトリアか、また面倒なところへ逃げ込まれていないといいがね」

 

 デュランダルは逃亡先を特定する様に命令を出し、ジブリールの捜索が開始される事となった

 

 

 それから三日ほど経った日の事。

 デュランダルの元に一つの報告書が極秘裏に届けられた。

 

「月で……エターナルとフリーダムに酷似した機体を発見。交戦するも、艦隊は壊滅状態……か」

「キラですわね」

「だろうね。艦隊は壊滅状態だというのに、死傷者が一人もいない」

「ではエターナルには」

「ラクス・クラインが居るだろう。まず間違いなくね」

 

 デュランダルはラクス・クラインと言葉を交わしながらふむと顎に手を当てて考える。

 彼が趣味としているチェス盤を頭の中にイメージしながら。

 

「これは、チャンスかな」

「では、オーブを?」

「うん。そうだね。キラがどれほど強くても、所詮は個人だ。軍隊には勝てない。なら、ここで決定的な一手を打つというのも良いかもしれない。レイもキラの事を気にしていたしね」

「ふふ。人気者ですわね」

「そうだね。それに、指導者も特別な戦力も無いオーブなら穏便に制圧できるはずだ。無論、氏族には消えて貰うけどね」

「こうして傀儡国家の誕生。あぁ、キラは悲しむのかしら。怒るのかしら」

「どちらにせよ、出来る事は無いさ」

 

 デュランダルは用意しておいたジブリールがオーブのセイランと話をしている画像をパソコンに映し出しながら笑う。

 

「これで、チェックメイト……かな? キラ」

 

 そして、デュランダルより全部隊へ、ジブリールがオーブで発見さえたという知らせが巡り、対ロゴス同盟軍は次なる目標をオーブ連合首長国として動き始めるのだった・

 

 

「次の目標はオーブか」

「でもまさか、まさかって感じよね。前大戦の時は連合とZAFTの争いを止める為に戦ってた国が。ジブリールを匿ってるだなんてさ」

「変わるものだ。人も、国も。オーブもまたその一つだった。という事だろう」

 

 オーブ連合首長国へ向けて突き進んでいるミネルバの中で、レイとルナマリアは艦長であるタリアと、部隊の総責任者として立っているデュランダルから作戦を聞かされ、通路を歩きながら愚痴を零していた。

 そして、シンは無言のまま二人の後ろを付いて歩いている。

 

「シン?」

「……」

「シーン! シン!」

「っ! わぁっ! どうしたんだ? ルナ」

「ハァー。どうしたんだ。じゃないわよ。シン。この間から変よ?」

「いや。何でもないよ」

「何でもないって顔じゃないでしょ」

 

 ルナマリアはシンの頬をつまみ、左右に伸ばしながら問いかける。

 が、シンはそれを振り払って、ため息を吐いた。

 

「本当に何でもないんだって」

「フーン」

「シン。何か悩みがあるのなら聞くぞ。俺たちは仲間なんだ」

「……レイ」

「それとも俺達には話せない事か?」

「いや。そうじゃない。から……そうだよな。ちょっと聞いてもらっても良いか?」

 

「ホント、レイには素直なのよねー。シンって」

「何か言ったか?」

「別にぃー! 何でもありませんよぉー!」

 

 シンとレイのやり取りにルナマリアは面白くないという様な顔で文句を言うが、シンからの追及にふわりふわりと逃げる。

 そして、ため息と共に喋り始めたシンに意識を向けるのだった。

 

「俺さ。ヘブンズベースでの戦いでセナを護るんだって気合入れてたんだけど。結局何も出来なかっただろ?」

「まぁーそうね。シンだけじゃなくて私達もだけど」

「うん。それでさ。俺に何が出来るのかなって考えてたら、ちょっとな」

「ふーん。意外とシンって繊細なのよねぇ」

「意外って何だよ。意外って」

「そのまんまの意味よ!」

「なにぃー!?」

 

 シンはルナマリアの言葉に両手を上げながら怒ったフリをし、ルナマリアもキャー。と遊びの様な悲鳴をあげる。

 アカデミー時代ではよくあった光景であり、ミネルバでも、少し前まではよく見る光景だった。

 

 そんな二人のじゃれ合いを見ながら、レイはフッと笑う。

 

「レイ?」

「いや。すまない。俺も少し気になっていたんだ」

「セナのこと?」

「いや、シンの事だ。考えすぎて妙な暴走をしないか、とな」

「……」

「シン。俺たちが居る意味はある。セナの力は万能の力の様に思えるが、無敵というワケでは無いんだ。彼女のハッキングに対抗できる者はいる。そうなれば、そういう相手を排除する事が俺たちの役目となるだろう」

「そんな人居るの?」

「世界は広い。そういう人間も居るだろうさ」

「そう? 私はイマイチ分からないけどね」

 

 ルナマリアとレイのやり取りを見て、シンは少しだけ思考した。

 グルグルと頭の中で渦巻いていた悩みの答えを探す様に。

 

 そして、一つの答えを見つけ、心を落ち着かせる様に息を吐く。

 

「そうだな。じゃあ俺も頑張らなきゃな。守るべき者の為に……さ」

 

 そして、シンは二人に背を向けて呑気な姿で通路を歩き始めた。

 もう悩みは全て解消された。とでもいう様に。

 

 

 ZAFTと連合の部隊によって結成された対ロゴス同盟軍はオーブ連合首長国へと部隊を集結させつつある。

 その知らせを聞いたカガリ・ユラ・アスハはオーブの遥か上空。衛星軌道上にある宇宙ステーション『アメノミハシラ』にて落ち着かない様子でウロウロと動き回っていた。

 

「少しは落ち着かんか。貴様」

「落ち着けるワケが無いだろう! この状況で!」

「貴様が決断した事だ。オーブを囮とするのは。そして我らもそれに頷いた。唯一反対していたキラも貴様が説得しただろう」

「それは、そうなんだが……! 実際にこうして狙われると、落ち着かないんだ!」

「まったく」

 

 子供の様に叫ぶカガリに、外交の時の姿はどうしたのかとロンド・ギナ・サハクは舌打ちをする。

 しかし、それでどうにかなる事もなく、カガリはやはり落ち着かない様子で動き回り、窓の向こうに見える蒼い地球を覗き見るのだった。

 

「あらあら。カガリさんはキラが居ないと子供の様になってしまいますわね」

「……! ラクス!」

「ラクス・クラインか。そちらの準備はどうだ」

「えぇ。問題ありませんわ。第一波のムラサメ隊。第二派の(わたくし)とカガリさん。そして第三派のヒルダさん達。皆、それぞれの準備は完了しております」

「うむ。では、後はセイランからの報告を待つばかりだが……」

 

 ギナが呟いた瞬間、指令室からロンド・ミナ・サハクが通信を繋げて来た。

 そして、彼女はそのまま地上の軍本部と通信を繋げる。

 

『すまない。待たせたね』

「いや。主となる戦場は地上だ。そちらの方が慌ただしくなるのは必然だろう」

『まぁ、そうだね。しかし、状況は最悪だよ。連中……とんでもない数を用意してきた』

 

 ユウナが冷や汗を流しながら言葉と共に送って来た映像には海を埋め尽くす様な艦隊が映っており、モビルスーツに至っては空を埋め尽くす様な数が存在していた。

 それはオーブという小さな島国ではどう考えても抗えない数であり、オーブという国が今日滅ぶという事を世界に教えている様でもあった。

 

「奴らめ。どうあってもオーブを地上から消したい様だな」

『そうみたいだ』

「ユウナ。民はどうなっている」

『もう少ししたら最後のシャトルが出るよ。流石に前大戦の経験があるからね。みんな迅速な動きだった。流石はオーブ国民って感じかな』

「民は全て『カグツチ』へ?」

『うん。だけど、今から上がる奴はアメノミハシラに行く。乗っているのはモルゲンレーテの職員達だからね』

「分かった。受け入れよう」

 

 淡々と準備を進めて、何がどうなっても良い様にと、彼らは地獄へ向けて進んでゆく。

 最低限の事だけを護って。

 自らの命すらも犠牲として、世界を正しき方向へ……導くために。

 

『ユウナ様! デュランダルより通告が』

『さて。どうやら始まる様だ。最悪の場合は……頼むよ』

「例の隕石落としか? 断ると言った筈だ」

『ギナ……!』

「ユウナ。オーブという美しき国。そして、その国を守ろうとする強く意志を持った戦士たち。それを隕石ごときで押しつぶす事を良い事と我は思わん」

『だが、連中の戦力の大半を消せる。どの道、今のオーブに残っているのは地上から動けない部隊ばかりだ……! これ以上の戦果は無い!』

「下らん」

『っ!』

「有象無象の操り人形共と、貴様らが同価値だと思うか。ふざけるなよ。ユウナ・ロマ・セイラン。釣り合わん。釣り合う訳がない! 大損だ」

『でも、僕には……責任がある。タケミカヅチを失って、生き恥を晒して……! それで……』

「責任があるというのなら!! 生きて果たせ!!」

『……!』

「生き恥が何か! 貴様が無駄死にをして、泣き喚く小娘共を見れば満足か? これまでの戦いを見れば分かるだろう。小娘共は、能力ばかり高くとも、頭がまるで足りんのだ。騙され、奪われ、泣き喚きながら国に返ってくる様な愚か者だ」

 

「何ぃ!? 小娘とは私の事か! ロンド・ギナ・サハクぅ!!」

「カガリさん。大事なお話をされていますから」

 

「チッ。やかましい事だ。ユウナ・ロマ・セイラン。まさかコレの御守を我らに押し付ける気では無いだろうな。許さんぞ」

『……ギナ』

「我らも支援する。必ず生きろ。より多くの勇猛なオーブの民を生かせ。それが貴様の役目だ。最後の瞬間まで抗い続けろ。オーブという国のあり方を連中に見せつけてやれ」

『あぁ……そうだね。すまなかった』

「期待している。ユウナ」

 

 ユウナはギナに敬礼をして、そのまま通信を切った。

 そしてギナもまた、ユウナと同じ強い意志を瞳に宿しながら、モニターに映る対ロゴス同盟の艦隊を見据える。

 

「ギルバート・デュランダル。貴様の思う様にはさせんぞ。オーブも。世界も」

 

 その胸に、黄金に輝く意志を宿しながら。

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