ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第223話『PHASE-40『黄金の意志2』』

 開戦の時を、今か今かと待っていたミネルバへと向けられたのは、オーブ連合首長国代表首長ユウナ・ロマ・セイランの言葉であった。

 

「あー。オーブ政府を代表して通告に対し回答しようじゃないか。貴官等が引き渡しを要求するロード・ジブリールなる人物は我が国内には存在しなぁい」

「そちらの勘違いでは無いだろうか?」

「また、このような武力を以ての恫喝は一主権国家としての我が国の尊厳を著しく侵害する行為として大変遺憾に思う」

「紅茶を用意するので、是非とも武力ではなく、話し合いで解決したい物だね。何せ。我が国は僕と! 平和を愛するキラ・ユラ・アスハの国なのだから」

 

 流石。

 というべきだろうか。

 

 ユウナの挑発じみた言葉は……対ロゴス同盟軍の怒りを誘い、総攻撃という手段へと踏み切らせた。

 地球におけるキラの人気を考えれば、それを独占しようとするユウナが全ての悪に見えたのだろう。

 その攻撃には何の躊躇いもなく、驚きに包まれたミネルバのブリッジでもその報告がされた。

 

「ち、地球連合軍艦! 攻撃を開始しました!」

「議長! 止めなくては!」

「いや。良い。このままこちらも攻撃を開始してくれ」

「よろしいのですか!?」

「あぁ。向こうの時間稼ぎに付き合う必要はない。ロード・ジブリールをオーブから引きずり出せ!」

 

 デュランダルの命令によりZAFTも動き始め、各部隊が行動開始した。

 

『オペレーション・フューリー開封承認。コンディションレッド発令。コンディションレッド発令。砲撃目標点確認。オーブ本島セイラン家、国防本部、オーブ行政府』

『ファゾン隊アッシュ、イール隊グーン、発進準備よろし。全機オールウェポンズフリー』

『目標はロード・ジブリールだが、ロゴスに組みするオーブ政府にも遠慮することはない。速やかにこれを排除、あるいは捕獲せよ。市街地、民間人への被害は最小限にとどめるよう努力』

 

 そして、連合及びZAFTが動き始めた事はすぐにオーブ軍司令部へと報告が届き、既に用意していた部隊が動き始める。

 

「敵モビルスーツ群展開。数40。侵攻してきます」

「護衛艦軍出動! 迎撃開始! モビルスーツ隊発進! 奴等の侵攻を許すな!」

「ハッ! 第一、第二護衛艦軍出動。侵攻する敵脅威を速やかに排除せよ」

「モビルスーツ隊発進開始。第一から第四小隊、イザナギ海岸防衛線へ」

 

「しかし……」

「うん?」

「ユウナ様も人気者ですなぁ」

「まるで嬉しくはないけどね。どうせならキラやセナに迫られたい物だよ」

「それが実現した時は、我らからも鉛玉をプレゼントいたしますので、どうか受け取っていただきたいですな」

「気軽にクーデターの話をするんじゃない」

 

 ユウナは隣に立つソガに文句を言いながら情勢を見据える。

 だが、敵の侵攻は想像よりも早く、そして確実にオーブの防衛線を突破しつつあった。

 そして、一つの危険な報告がユウナ達の元へ入った。

 

「上空に大型輸送機! オーブ本島へ向かっています!」

「チッ! 直接降りる気か!」

「迎撃出来る部隊は!?」

「少し待ってください……!」

 

『そいつは俺達に任せろ!』

 

「来たか……!」

 

 司令部に入った声に、ユウナは笑みを空へ向けた。

 

 そして、モビルスーツ単機での大気圏突入を果たしたムラサメ改部隊は遥か上空から完全に油断していた大型輸送機へとビーム砲を放ち、内部のモビルスーツごと爆散させる。

 迎撃の為にと輸送機からモビルスーツを発進させるも、地上戦用の機体ばかりでは空中戦が得意なムラサメ改に勝てる筈もなく、ムウ・ラ・フラガ率いるムラサメ部隊によって、一機、また一機と破壊され、輸送機も全て撃破されてしまうのだった。

 

 

 オーブの本島へと向かわせた大型輸送機が全て撃破されたという報告はミネルバのデュランダルの元へすぐに届けられる事になり、デュランダルは難しい顔をしながら次なる一手を考えていた。

 

「いや……まさか全て撃破されてしまうとは」

「オーブ。これほどか」

 

 ミネルバを作戦室としている為、他の高官たちの声も聞こえているが、デュランダルの思考はあくまで自分の中だけで完結している。

 故に。

 彼は己が最も信頼している切り札を切る事にした。

 

「タリア」

「はっ!? なんでしょうか!?」

「モビルスーツ全機、発進させてくれ」

「……しかし」

「何かあるのか?」

「いえ……それは」

 

 タリアがデュランダルの問いに言い淀んでいると、タリアよりも前方に立っていたアーサーが振り返りながら口を開く。

 

「恐れながら! デュランダル議長! シンとレイはオーブの出身であり、ルナマリアはシンとレイの友であります! ここで出撃というのは」

「確かにね。その情報は私も聞いている。だが、彼らは軍人であるし。ロード・ジブリールを匿うオーブに何を思うというのかね」

「そ、それは……」

「オーブはロード・ジブリールの手先となろうとしているのだ。むしろ、彼らの敬愛する姫がそんな事を望むわけがない!」

「……!」

 

「アビー。ブリーフィングルームへ通信を繋げて」

「はい」

 

 タリアは言い争う二人を見て少しだけ冷静さを取り戻すと、メイリンに変わってオペレーターとなったアビー・ウィンザーに穏やかな声で命令を出す。

 そして、正面のモニターに映ったシンとレイに視線を向けた。

 

『艦長? 出撃ですか?』

「えぇ……出来ればお願いしたいのだけれど」

『なら。俺が出ますよ』

「……! シン! 良いのか!?」

「シン……!」

 

 明るく応えたシンにアーサーとタリアが驚きを示すが、ブリッジに居た高官たちは皆、一様に安心した様な顔をする。

 シン・アスカの戦績は彼らも良く知っている。

 そして、デスティニーの性能も。

 

 それを考えれば、彼が参戦してくれるだけで情勢が一気に変わるだろうと考えたからだ。

 

『でも、行くなら俺一人で大丈夫です。レイとルナマリア、副隊長とイングリットさんは何かあった時の要員って事で』

「それは……」

 

 タリアは後ろに振り向きながらデュランダルへと視線を向ける。

 デュランダルはその視線の意味を正確に受け取って笑顔で頷いた。

 

「あぁ。君になら任せられる。シン・アスカ君。レジェンドとインパルス、ブラックナイトスコードは状況が動くまで待機で良い」

『ありがとうございます!』

 

 シンはデュランダルの言葉に敬礼を返して、通信をそのままに格納庫へと駆けて行った。

 

 そして、デスティニーに乗り込むべく格納庫を走っていたのだが、途中で仲のいい整備員の友人であるヨウラン・ケントに腕を掴まれてしまった。

 

「おっと……なんだよ。ヨウラン」

「いや、お前……出るって本当なのか?」

「そうだよ! 今戦ってるのはオーブなんだぜ!?」

「あぁ。知ってるよ」

 

 あっけらかんと言い放つシンに、ヨウランと、ヴィーノ・デュプレは言葉を詰まらせてしまった。

 彼らはシンと同期であり、友人である。

 シンがオーブの出身である事は知っていたし。オーブとの戦争に喜んで出撃するとは思えなかったからだ。

 

 しかし、シンは落ち着いた様子でヨウランの手を離すと、笑顔で口を開く。

 

「でもさ。世界を平和にするためには必要な事なんだよ」

「平和って……」

「だからさ。じゃあな!」

 

 シンはヨウランの手を外し、そのままデスティニーへと駆けて行った。

 そして、アビーの指示に従って、カタパルトでデスティニーの出撃を行う。

 

『デスティニー発進スタンバイ。全システムの起動を確認しました。発進シークエンスを開始します。ハッチ開放。カタパルトオンライン。針路クリアー。デスティニー発進どうぞ!』

「シン・アスカ、デスティニー、行きます!」

 

 そして、デスティニーは戦場へと光の翼を広げながら突入し、防衛線を突破して内部へと侵入するのだった。

 

 

 デスティニーが出撃する少し前。

 宇宙ステーション『アメノミハシラ』より地上へ向けて射出された小型のシャトルには二機のモビルスーツが搭載されており、その中で二人の少女が出撃前に言葉を交わしていた。

 

「なぁ。ラクス」

『どうしました? カガリさん』

「私は、キラやセナにとって良い姉だったのだろうか」

『……』

「お父様は素晴らしい人だ。あの混迷の時代にオーブを支えた偉人だ。そして、キラとセナはそんなお父様をも超える様な人間だ。私はそんな二人の姉として……相応しい人間だったのだろか」

 

 カガリは今日まで抱え続けた不安と苦しみを、ラクスに打ち明ける。

 おそらくは、親友と呼べるくらいには言葉と想いを交わし合った相手に。

 

『ハッキリと、言わせていただくのであれば……!』

「っ! あ、あぁ……」

『この世界のどこにも、カガリさん以上のお姉さんは居ないでしょう。キラやセナさんにとって』

「……へ?」

『キラは、少々意地っ張りな所がありますから、自分が姉だと言っておりますが……(わたくし)と二人きりの時はカガリさんの事を姉さん。なんて呼んでいるんですよ』

「ほ、本当なのか!?」

『えぇ。ですが、(わたくし)が言った事は内緒にして下さいね。キラに怒られてしまいますから』

「あぁ……無論だ」

『キラも、セナさんも、カガリさんがお姉さんとして、国を守って立ってくださっているからこそ、無茶が出来るのだと思います。お二人はカガリさんに甘えるのが大好きですからね』

「……そうか」

『ですが、もし……カガリさんが負担だというお話でしたら、(わたくし)が』

 

「いや! いくらラクスでも、コレばかりは譲れない」

『……』

「そうだ。私はキラとセナの姉だ。姉として在ろうと決めたのだ! 私はすっかり、それを忘れてしまっていた様だ」

 

 覇気を取り戻した様な顔で、カガリは笑う。

 ずっと、思うように動けなかった少女は。

 託されるばかりで、何も出来なかった少女は……かつて太陽の様だと称された笑みを浮かべて、グッと操縦桿を強く握りしめた。

 

 ようやく。己の出番が来たのだと。

 例え、ほぼ戦いに参加しない士気を向上させる為だけの出撃であったとしても……!

 カガリには何よりも重要な出撃となった。

 

『ORB-01 アカツキ、システム起動。発進どうぞ』

「カガリ・ユラ・アスハ……! アカツキ! 発進する!」

 

『ふふ。本当に羨ましいですね。ラクス・クライン。行きます!』

 

 シャトルより飛び出した二機のモビルスーツは、地上の部隊に迎えられながら、それぞれの配置へと向かった。

 これから反撃の一手を打つ為に。

 

 だが……。

 そんな強い意志を秘めたカガリの元へ一機のモビルスーツが急速に接近しつつあった。

 

『なんだっ!?』

『カガリ様! お気をつけください! ザフトの新手が!』

『突破された!? あの機体を止めろ!』

 

「なんだ……!? あの機体は……!」

 

 その真紅の怒りを纏った機体は光の翼を展開しながらオーブ軍の攻撃を全て回避し、真っすぐにカガリの駆る黄金のモビルスーツ……アカツキへと向かう。

 そして、カガリが放ったビームをもかわして、右手をアカツキのコックピットへと押し付けた。

 

「ぐっ……!?」

『指揮官機だな!? 今すぐ、軍本部に繋げろ!』

「なにを……!」

 

『オーブ軍第一護衛艦隊タケミカズチ級タケミカズチ搭載の第一モビルスーツ部隊! 所属!! シン・アスカ!』

「……!」

『プラントへの潜入任務を行っていたが! 母国の危機に!! 独断ながら! 任務を放棄!! オーブ軍へと帰還する!!』

「……シン」

 

『カガリ様は帰還しているんだろう!? 伝えてくれ! 俺はもう二度と!! 大切な人を失いたくないんだ!!』

 

『キラさんや! カガリさんが! 愛した、この国を! 護るために……! 俺は!! 帰って来た!!!』

 

 シンの叫びに、カガリは一筋の涙を流し、遠く宇宙の彼方に居るキラへと想いを向けた。

 私達が弟だと、まだまだ子供だと思っていた子が……強くなって帰って来たよ、と。

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