ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第233話『PHASE-46『真実の歌1』』

 倒すべき相手であるロゴスを討ち、世界に争いを振りまく存在は消えた。

 ブルーコスモスもロゴスを討った日から大きな活動をした記録はない。

 ならば、いつまでも続いている戦争状態を終わらせるべきではないだろうか。

 

 そんな想いが生まれるのは酷く当然な事で。

 最高評議会でデュランダル議長に地球連合軍との和平交渉を行うべきだという意見が出るのも、また当然の事であった。

 しかし、デュランダルはその意見を一蹴する。

 

「地球連合軍との和平はもう少し待ってくれるかな。今はまだ」

「今はまだ、と仰いますが、既にロゴスは居ない。ロード・ジブリールも討たれた。このまま睨み合いを続ける事にどんな意味があるというのですか!? 議長!」

「確かにロゴスは討ったが、完全に全ての争いが終わったというワケでは無いだろう? 世界にはまだ火種が残っている」

「それは……確かにそうですが。それこそ、オーブ連合首長国と協力し、世界国家連合を築いて解決してゆく問題であるべきです!」

「うん。確かにね」

 

 デュランダルは議員の言葉をふわりふわりとかわしながら、結論は出さず先延ばしにする。

 その緩慢な態度に、前大戦の時より過激派で知られているエザリア・ジュールが声を上げた。

 

「議長。よもやとは思いますが、前大戦の時の様に地球への総攻撃などを考えているのでは無いでしょうね?」

「まさか! その様な事をする意味が無いだろう」

「では! 月からさほど離れていない宙域で行っている実験はなんです! セナ様まで参加させて!」

「アレは……うん。まぁ、そうだね。伝えておかないというのは不義理になるか」

 

 デュランダルは笑みを浮かべたまま静かに口を開いた。

 

「今、セナ姫が行っているのはデミスシルエットの最終調整だよ。アレが終われば、世界は本当の意味で平和となる」

「……は?」

「デミスシルエットとは……! 議長」

「搭乗者がセナ姫である以上、アレが兵器ではない事は分かるだろう?」

「それは……まぁ」

「そう。アレはね。ゆりかごの様な物さ。世界を包む事が出来る。天使のゆりかご……かな」

 

 まるで要領を得ないデュランダルの言葉に皆疑問を浮かべるが、これ以上デュランダルが話すつもりは無いのだという事を察し、議員たちは独自に調査を始めるのだった。

 本来であれば、この場でデュランダルを問い詰めるべきであるが、デュランダルが穏健派である事と、セナが協力している事から、前大戦の時の様な事にはならないだろうと彼らは油断をする。

 油断した結果、その動きは緩慢な物となり、デュランダルの行動を止める事が出来る者は評議会から消えてしまうのだった。

 

 

 そして、評議会を終えたデュランダルはメサイアへと動く前に、最後の用事として面会を約束していた人物の元へ向かう。

 それは……今回の戦争が始まる前からデュランダルが……というよりもセナが通じていた人物であり、現在はプラント防衛軍に所属している人物でもあった。

 

「あぁ。すまない。待たせたかな」

「いや。時間通りだ。問題は無い」

「そうか。では、こちらも同じ言葉になってしまうが……時間通りだという事を君たちに伝えておこう。メイア・シヴァ」

「では?」

「あぁ。デミスシルエットの実験はほぼ全て終了した。後はセナの体調次第という所かな」

「体調……? どういう事だ」

「どうやらサイコフレームという奴は、体に大きな負担がある様でね。セナの頑張り過ぎかな」

「悪影響は無いんだろうな?」

「あぁ、無いと聞いているよ」

「なら良い。セナが苦しむ所など見たくは無いからな。キラにも申し訳が立たん」

「だが……そのキラに銃口を向けるのだろう?」

「しかし、平和の為だ。我ら……コーディネーターの平和の為だ。護るモノが消えれば、キラも納得するさ。泣くかもしれんがな」

 

 メイアが両手を組みながら、懺悔をする様に呟いた言葉にデュランダルは目を僅かに細める。

 それはこれから行う大虐殺に対する懺悔か……もしくは、自らを信じたキラへの懺悔か。

 まぁ、後者かとデュランダルは簡単に結論を出して、小さく息を吐く。

 

「こちらが動くタイミングは知らせるので、後の事は君に任せよう。メイア・シヴァ」

「……あぁ。私達は独自に動く。ZAFTの為に」

「うん。よろしく頼むよ」

 

 そして、デュランダルは話は終わりだと部屋を出て行き、メイアは同志たちへと即座に連絡をとった。

 

「作戦の最終承認は下りた。我らも動く。準備をしろ」

『ハッ』

「地を這うナチュラル共に見せつけてやろう。我らの……真のオペレーション・メテオをな」

 

 

 プラントで遂に悪意が動き始めた頃。

 プラントと月のちょうど中間に位置する宙域で、セナが疲れ切った顔で大きく息を吐いていた。

 顔色は青を通り越して、やや白い。

 かなり疲労を滲ませている様だった。

 

「セナ様……! これ以上のシステム起動は推奨出来ません……!」

「しかし……世界は今……不安で揺れています……急がなくては」

 

 ゼェゼェと呼吸を荒くしながらも、真っ青な顔でサイコフレームの研究員を見るセナの強い瞳に、彼はグッと言葉を飲み込んでしまった。

 しかし。

 

「はいはい。セナ様。そろそろ休憩にいたしましょうね」

「っ、ら、ラクスさん!?」

「皆さま。お疲れ様です。申し訳ございませんが、当分ホープの実験はございませんので」

「承知いたしました!」

「セナ様。ごゆるりと休養を!」

 

 ラクスが格納庫に飛び込んでくると、パイロットスーツを着たまま再びホープへ乗ろうとしていたセナを捕まえて、そのまま連れ去ってしまう。

 だが、セナの周りにいた研究員は喜んでセナを見送り、さっさと機材の電源を落としてしまうのだった。

 

 それを見て、セナはハァとため息を吐いてから大人しくラクスに従って無重力の海を泳いで行った。

 

 そして。

 セナはラクスに連れられて……何故か月に向かって移動をしていた。

 目指す場所は月面都市コペルニクスである。

 

「しかし。何故コペルニクスなんだ? ラクス」

「気分転換なのですから。人が居ない場所へ行きたいと思うのは当然ではありませんか? クリスタ様」

「フン。セナの身に何かがあったらどうするのだ」

「何もございませんよ。現在コペルニクスにはオーブ艦隊がおりますし。キラも居ますから」

「何ィ!? なんでわざわざ敵地に行くんだ! バカか! 貴様は!」

「あら。敵だなんて。セナ様が聞いたら悲しまれますよ。クリスタ様」

「っ! だ、大丈夫だ……セナは、今寝ている」

「そうですか」

 

 焦った様に自分の胸に手を当てて呟くクリスタを、ラクスは微笑ましい物を見る様な目で見ていた。

 しかし、そんなラクスの視線を感じたのか、クリスタはチッと舌打ちをしながら正面に座るラクスから視線を外し、窓の外に広がる宇宙へと顔を向けた。

 

「何か見えますか?」

「あぁ。ゴミ共が捨てたゴミが見えるな」

「あら。デブリ帯ですか? ここからは見えないかと思いましたが」

「デブリではない」

「デブリでは……ない?」

「まぁ、貴様らには見えないか」

「と、言いますと?」

「宇宙にはな。ここで死んだ奴らの怨念が漂ってるのさ。そして、そいつらは自分が死んだ事すら分からずに、救いを求めてさ迷ってるんだ。実に下らん話だ。自分達で望んで殺し合いを始めたんだろうに」

 

 クリスタは足を組んだままフンと鼻を鳴らす。

 その様子に、ラクスはクスリと笑ってから柔らかい声で問いかけた。

 

「クリスタ様は人間がお嫌いですか?」

「あぁ。嫌いだよ。なんでこんな奴らを救いたいと考えているのか。私には理解が出来ん」

「ふふ。であれば、希望を破壊してしまえば良いですのに。手段が無くなれば、セナ様も彼らを見捨てるでしょう?」

「出来ん」

「あら」

 

 窓の外を見ていたクリスタはラクスへと視線を送りながら静かに口を開く。

 

「理由は二つある。一つ、ホープを失ったセナはもっと過激な手段に出る可能性がある。そして、その場合は制御も出来ん。これは前大戦の時の事を考えれば容易く至る結論だ」

「……そうですわね」

「そしてもう一つ。ホープは『破壊できない機体』なのだ。アレは既に人の触れて良い領域を超えている」

「どういう、意味でしょうか?」

「ホープにはな。つなぎ目が無いんだ。ねじ穴も、接着跡も何もない。これが何を意味するか分かるか?」

「……いえ」

「つまり。ホープはどの様にして製造されたのか、誰も分からない機体という事だ。そして、製造する過程すら分からない物は解体する事も出来ん」

「であれば、爆弾で破壊するとか」

「前大戦が終わってからオーブで耐久実験を行ったそうだ。まぁ自国の姫が乗るのだから当然だな。そして、その結果……おそらく核兵器の直撃を受けても装甲にダメージを与える事すら出来ないだろう。という結論が出たらしい」

「……まさか」

「私もまさかとは思うがな。プラントにある設計図と照らし合わせても、見た目以外ない一つ合致しないと聞かされてしまえば、その様な話も信じざるを得ないだろう。アレは、人が作ってはならぬ機体であったのだ。いや、かの金属に手を出すべきでは無かった。という事かな」

 

「サイコフレーム……ですね」

「あぁ。アレは恐ろしい。どこのバカがあんなモノを作ろう等と考えたのか。私には分からんね」

「度重なる争いが、力を求め、結果至った物なのでしょうね」

「だろうな」

 

 クリスタは再び窓の向こうに広がる宇宙へと視線を向けて小さくため息を吐いた。

 

「人はどれだけ世界を繰り返しても変わらないという事だ。宇宙世紀とやらも、この世界とさほど変わらず、争いに満ちた世界だったんだろうよ」

「宇宙世紀……ですか」

「なんだ。貴様は知らんのか。てっきりリボンズの奴から聞かされていると思っていたがな」

「いえ。私もアスランも、特別な事は何も。よろしければお聞きしても?」

「まぁ……良いか。宇宙世紀というのは、一つの可能性だ」

「可能性……?」

「そう。無限に繰り返されてきた人の歴史の中で、もしかしたらあり得たかもしれない、もう一つの人類史だ。並行世界。パラレルワールドなんて言っても良いがな」

 

 クリスタはよどみなく情報を並べ、丁寧にラクスへと伝えてゆく。

 

「並行世界という奴は……まぁ、簡単に言えば歴史上に存在する『もしかしたら』の先の世界だ。その世界では私やセナが存在せず、キラが男である。みたいな事もあり得るのだ」

「まぁ……あまり想像は出来ませんわね」

「そうか? 私にとっては、こちらの方が身近なのだがな」

「……?」

「まぁ良い。それで、だ。そういう可能性の先の未来というのは、細かい違いがあるだけの世界もあれば、何もかもが違う世界もある。そして、その、何もかも違う世界というのが『宇宙世紀』だ。まぁ、モビルスーツという兵器で戦争をしているという点は変わらないがな」

「なるほど……」

「そして、この『宇宙世紀』からこの世界に流れてきたのが、サイコフレーム。というワケだ」

 

 ラクスは、なんだか初めて聞く話に頷きながら、もっともっとと話を、とせがんだが、クリスタは小さくため息をついて、後は自分で調べろと言い残し腕を組みながら寝てしまう。

 だが、こんな国家の上層部しか知らなそうな話を調べる様な術はなく、ラクスはプンプンと怒りながら、いつまでもクリスタに文句を言っているのだった。

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