ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第234話『PHASE-46『真実の歌2』』

 セナがコペルニクスにやってきた。

 という話は光の速さでキラの元へと伝わった。

 しかし、だからと言って喜び、飛び出していける状況でもない。

 

 セナとは衝突こそしていないが、これから敵対する運命なのだ。

 

「キラさん……」

 

 だからこそ、どの様な対応をするべきかとエターナルのブリッジで話し合っていたのだが。

 皆が良い案を出せない中、オーブ軍人の制服に着替えたシンが、手を上げながら口を開く。

 

「シン君! 何かいいアイデアがあるのかな?」

「はい。あの……セナを攫いに行きませんか!?」

「バカを言うな!」

「アスランは黙ってろよ! 俺は今、キラさんに提案してるんだからさ!」

「キラ。分かっていると思うが、セナに手を出したらそれこそ戦争になるぞ!」

「いや、セナはオーブの姫様だろ!? なんでオーブに来るのが戦争になるんだよ!」

「状況的に考えれば分かるだろう! セナは今プラントの人間として活動しているんだ! 生まれはどうであれ、世論はプラントの人間だと見ている! 少し考えれば分かるだろう!?」

「なにを!?」

 

「はいはい! 落ち着いて。二人とも」

「キラ……!」

「キラさんなら分かるっすよね!?」

 

 キラはいつもの様に始まってしまったアスランとシンの争いを止めつつ、ふむと腕を組む。

 そして、しばし考えると一つの答えを出した。

 

「うん。シンのアイデア。良いかもね」

「キラ!?」

「大丈夫だよ。アスラン。攫うって言ってもさ。コペルニクスから外に出るつもりは無いし」

「……どういう事だ?」

「つまり、アレだ。陽動、って奴?」

「「陽動?」」

 

 キラの言葉の意味がよく分からず、アスランとシンは首を傾げたが、キラはふふんと笑いながら艦長席でアスラン達同様首を傾げているミーアと、オペレーター席に座っているメイリンを連れてブリッジから出て行った。

 最後に、アスランとシンには護衛をお願いねー。なんて言い残しながら。

 

 

 そして。

 あれよあれよという間に、キラ達はエターナルを飛び出して、街へと繰り出した。

 そのまま、セナが居ると思われる場所までエレカを飛ばし、ピンク色の髪の少女と共に歩いているセナを発見する。

 

「よーし! ターゲット発見! シン君! パッと、行って、パッ! だよ」

「は、はい!」

「アスランは、セナをシン君が捕まえて、エレカに飛び乗ったら全力で走らせてね」

「……」

「アースーラーン?」

「分かっている。作戦は大丈夫だ」

「ならオッケー。ラクス。準備はいーい?」

「えぇ。問題ありませんわ」

 

 運転席のアスラン。助手席のラクス。

 後部座席に座るキラとシン。

 それぞれの位置を確認して、キラはゴー! と大きな声で言った。

 その瞬間、エレカは勢いよく走り出し、歩道へと勢いよく突っ込んだ。

 

 そして、エレカが止まった瞬間に、エレカが突っ込んできた衝撃からか身を硬くしていたセナを後部座席から飛び出してきたシンが捕まえてそのまま後部座席に放り込む。

 中ではキラがセナを受け止めていて、シンが後部座席に飛び乗った瞬間にエレカは逆走しながら再び走り出した。

 

 一人残されたラクスは少しの間呆然としていたが、すぐに自分を取り戻すと、セナ様が誘拐された! とZAFT兵を呼び出すのだった。

 

 

「それで? どういうつもりだ。キラ」

「あら。今はクリスタだったんだね。久しぶり」

「久しぶり。じゃない! おい! シン・アスカ! どこに触っている! 貴様……! セナにも手を出すつもりか!?」

「は!? いや、ちょ! 違いますよ!? キラさん!」

「大丈夫。分かってるよ。はい。じゃあ、我儘クリスタちゃんは僕が抱えてあげましょうねー」

「ふざけるな! 貴様! 放せ!」

 

 ジタバタと暴れるクリスタをキラは人形の様に後ろから抱きしめる。

 幼少の頃に受けた傷が影響し、キラと同じ時間を生きていてもなお小さな体は簡単に抑え込まれてしまい、キラの腕の中から逃げる事が出来なくなってしまうのだった。

 

「それで? 私に何の用だ。キラ。シン・アスカ。アスラン・ザラ……それに、ミーア・キャンベル」

「あら。バレてたのね」

「当然だ。私を誰だと思っている」

「可愛い可愛い僕の妹、クリスタちゃんだよねー」

「やめろ! ふざけた呼び方をするのは! 私はクリスタ様だ!」

「へー。クリスタサマかー。で? なんで今はクリスタサマなんだ?」

「貴様、シン・アスカ! 敬語という物を知らんのか? 取って付けた様にサマ等と呼びよって」

「いや、クリスタサマが呼べって言ったんじゃん」

 

「だから!! チッ……! もう良い。それで? 貴様らは私に何の用だ。それともセナに用事か?」

「んー。個人的にはどっちでも良いんだけど」

「おい」

「僕は妹の自主性を重んじるタイプだから、クリスタちゃんの時はクリスタちゃんとお話したいかな?」

「……話?」

「そう。お話。例えばー。もうデスティニープランは止めてみない? とか?」

「断る」

「あー。だよね。アハハ」

 

「まぁ。このまま貴様らが私を連れ去ればデスティニープランは崩壊し、オーブとプラントの全面戦争……そして、地球を巻き込んだ最終戦争が始まるだろうがな」

「そうだろうねぇ」

「それが分かっているのならさっさと私を解放しろ」

「んー。やだ☆」

「貴様……!」

 

「んじゃ、アスラン! 予定してた場所に向かってー! ゴー! ゴー!」

「貴様、どこへ……きゃああ!!」

 

 それからエレカはドリフトしながらカーブを曲がり、あちらこちらへと爆走してから、ある静かな路地裏に止まった。

 そして、ぐったりとしているクリスタを抱きかかえたままキラはラクスと共に小さな喫茶店の中に入る。

 

「じゃ。後は僕とラクスだけでお話するから。シン君とアスランは外で見張りをお願いねー?」

「いや、待て! キラ! ここは駄目だ! 見ろ! 狙撃可能ポイントが三か所もある!」

「大丈夫。大丈夫。僕らを狙撃する様な人なんて居ないよ」

「バカを言うな! おい! キラ!」

 

 キラははいはい。とアスランの心配そうな声を無視してそのままクリスタと共に店に入り、いくつか注文をしてから席に座る。

 キラ達が座った場所は小さな建物の屋上にあるテーブルとイスを置いただけの場所で、確かに周囲を見ればここより高い場所があり、狙撃は可能な様に見えた。

 

「アスラン・ザラの忠告は聞いた方が良いぞ。ここは危険だ」

「大丈夫だよ」

「キラ。セナが撃たれでもしたら……」

「だから大丈夫だって。この喫茶店はオーブの店でね。目には見えないけど。特殊なシールドを展開してるから。狙撃は出来ない」

「……なるほどな」

 

 クリスタは納得したのか、椅子に深く座って息を吐く。

 その様子にキラは不思議な物を見る様な顔をして首を傾げるのだった。

 

「クリスタは何に怯えてるの?」

「セナが傷つけられる事だ」

「でも、セナを撃とうなんて人、誰も居ないよ」

「貴様は忘れたのか? セナは月で……このコペルニクスで、一度撃たれている」

「忘れた事なんて無いよ。でも、もうブルーコスモスだってセナを狙ってない。他に誰がセナを殺そうなんて考えるって言うのさ」

「ヴィア・ヒビキ」

「あり得ないよ」

「だが! 奴は一度セナに銃を向けた!!」

「あの人もその件は反省してる。だから、大丈夫だよ。それに、もし君が撃たれそうになっても僕が守るから。何も心配は要らない」

「そこまでして……何を話そうって言うんだ」

 

「うーん。なんだろうね。遺言、とか?」

「なに?」

「キラ……?」

 

 クリスタとミーアに見つめられたまま、キラはポツリポツリと語り始めた。

 しかし、その顔はテーブルを向いており、言葉は虚空に向けて放たれている。

 

「正直な所さ。僕も、いつまで生きられるか分からないんだよね」

「どういう意味だ」

「サイコフレーム。フリーダムにも搭載されてるの。知ってるでしょ? しかもそれはデスティニーやレジェンドみたいな新型機とは比べ物にならない程、多い」

「……だとしても、サイコフレームが直接寿命を削るという話は聞いたことがない」

「それはそうでしょ。そもそも乗ってる人が少ないんだからさ」

「……」

「セナがずっと寝てるのだって、サイコフレームの影響でしょ?」

「っ! 知って、いたのか……!」

「前も言ったでしょ。僕は君たちのお姉ちゃんなんだよ。クリスタ。君やセナの事なら何でも分かるの」

 

 キラはジッとクリスタを見つめながら言葉を紡いでゆく。

 その言葉に、クリスタは悲し気に瞳を揺らした。

 

「結局……デスティニープランが成功しても、セナやキラは……死ぬのか?」

「分からないけど。その可能性はあるよ」

「だが……なら、私はどうすれば良いんだ。私は……!」

 

「ならさ、一緒に考えようよ。セナは無茶ばっかりするけど。僕らで一緒に。セナが無茶をしない方法を考えるんだ」

「……キラ」

 

 クリスタが救いを求める様にキラを見上げた時、ちょうど店員が飲み物をもってキラ達が居る屋上に上がって来た所で。

 それを何となく見ていたミーアは、その店員が……長いピンク色の髪を靡かせた女性が、懐から銃を取り出したのを見た。

 

 そして、テーブルを押しのけるようにしながら立ち上がり、キラとクリスタの前に立って両手を広げる。

 

「っ!!」

 

 キラがミーアの行動に驚き顔を上げた瞬間には全てが終わっていた。

 周囲に響き渡る様な銃声が三発鳴り響き、ミーアは胸から血を吹き出してキラの腕の中に落ちて来る所だった。

 

 そんなミーアをキラは抱きかかえ、その名を叫ぼうとしたが。

 ミーアがキラの手を握り、首を横に振る。

 

「――! ラクス……!」

「もう、しわけ……ございません、キラ……(わたくし)は」

「どうして、こんな! なんで、僕らを庇って……!」

「おふ、たりは……きぼう……です、から」

 

 ミーアの言葉に、キラはポロポロと涙を流しながら、その手をギュッと握りしめる。

 そして、クリスタもまた、自身の胸を強く押さえながら苦しそうに呻いていた。

 撃たれたワケではない。

 眠っている筈のセナが、ミーアの死に苦しんでいるのだ。

 悲しみに、胸を痛めている。

 

「き、さま……! 何故、撃った……!」

「あら。クリスタ様。(わたくし)はクリスタ様にも、キラにも当てるつもりはありませんでしたわ。狙ったのは初めから『ラクス・クライン』。御身の邪魔となる存在を排除しただけでございます」

「~~! だから! 何故それを! 貴様!!! セナを苦しめるなど……! 万死に値する!!!」

「あらあら。今のクリスタ様は冷静な判断が出来ていないご様子。そろそろここも危ないですし。撤退としましょうか」

「っ! 離せ! 私は!」

「では、キラ。次もまた貴女の大切な物を壊して差し上げますわね。楽しみにしていて下さいまし」

「……君は!!」

 

 怒りに染まった顔でキラはラクスを見上げた。

 しかし、ラクスは、ドンドンと破壊されそうになっている扉へと一瞬視線を送ってからそのまま屋上より飛び降りるのだった。

 残されたのは、目を閉じて動かなくなったミーアを抱きしめるキラと、蹴破った扉の向こうから飛び込んできたアスランとシンだけであった。

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