ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第23話『お父様。僕は、戦争を止めます。多くの命が失われる前に』

 プラントを脱出し、オーブへと帰還したキラはカガリと軽く話をした後、キラはカガリにセナを預け、一人ウズミ・ナラ・アスハの元へと報告に向かった。

 ウズミ・ナラ・アスハとは、オーブ連合首長国代表首長であり、『オーブの獅子』と呼ばれる世界的にも影響力の大きい人物であり、まだ幼いキラとカガリを引き取った養父でもあった。

 

 そんな彼は今、キラの話を聞きながら深く眉間に皺を寄せて、両手を組みながら思い悩んでいた。

 世界を渦巻く憎しみは、遂に現実の力を持ち始めたのだ。

 平和を願い戦い続けてきた男には厳しい話であった。

 

「そうか。プラントは既にモビルスーツの開発に成功していたか」

「はい。申し訳ございません。お父様。私も、プラントを守る為の手段とはいえ……憎しみの手を増やす手伝いをしてしまいました」

「いや、状況を考えれば仕方のない事だろう。もし彼らの申し出を断れば、セナ君の命が危うかったかもしれぬ。お前は良い決断をした」

「……はい」

 

 強く、心を保ちながら今日まで戦っていたキラは養父であるウズミの言葉に身を震わせながら涙を流した。

 表面上は明るく振舞っていても、楽しそうに笑っていても、キラが兵器を好きになる事はない。

 かつてオーブで起こったテロは、ウズミの妻であり、キラの養母の命を奪った。

 最期の瞬間まで共に居たキラは深く傷ついて、カリダやハルマと共に月へと逃れたが、月でもセナがテロにより傷つけられ、命だけは助かったが、未だまともに歩けない状態だ。

 

 キラが製造に関わった『ジン』は、多くのナチュラルを殺すだろう。

 養母の様な人の命も奪う事になる。

 それは許しがたい事だ。

 

 だから……。

 

「お父様。僕は、戦争を止めます。多くの命が失われる前に」

「それは険しい道だぞ。お前が思う以上に、憎しみの根は深い」

「それでも……僕には出来る事が多くあります。そして、セナも、僕の考えに賛同してくれました。カガリは、ちょっと難しそうですが」

「そうか。ならば、私も出来る限りの支援をしよう」

「ありがとうございます。それで、早速お願いが三つありまして」

「何かな」

「一つは、セナの事なのですが、僕やカガリと同じ様に、正式に養女とする事は可能でしょうか? 立場がある方が動きやすい物で……」

「その事か。それならば問題はない。キラやセナ君、カガリの意見を聞いてから話をするつもりだったが、セナ君もアスハの家で引き取る様に話は進めているよ。既に一部の報道局はその様に発表しているしな」

「……ありがとうございます」

 

 ウズミの言葉にキラはホッと息を吐いて、安心した様に笑った。

 そして、もう一つ。

 先ほどの話よりも重要な事をウズミに願う。

 

「次に……モルゲンレーテ社でモビルスーツの開発を行っていただきたいのです」

「キラは良いのか?」

「無論、本心を言えば嫌です。兵器の開発など……しかし、これからの戦争。アレなしでは成り立ちません。最悪の事態を考えれば開発は必要です。オーブを守る為にも」

「……それほどか」

「はい。機体の性能もそうですが、何よりもプラントで開発中のニュートロンジャマーが実用化された場合、戦場で誘導兵器や火器管制装置は使えなくなります。そうなれば、戦場は有視界接近戦闘の時代に逆戻りし、人型兵器の独壇場となるでしょう。それに、ニュートロンジャマーには効果範囲内の核分裂を抑制する働きもありますので、核兵器等の大量破壊兵器も使用できません」

「ふむ。そうなれば、理事国も対抗してモビルスーツの開発を行う、か」

「はい。しかし、プラントとの戦いは厳しい物になるでしょう。そうなった時、もし理事国が所有しているマスドライバーを全て失った場合……!」

「宇宙への道を手に入れる為、オーブへと侵攻する可能性がある、と」

「可能性としては大いにあります。無論、そうならなければ良い。しかし、もしなってしまった時。力が無くて後悔する様な事は嫌なんです。だから、僕は……いえ、私は、お父様を何としても説得します」

 

 キラは強い目でウズミを見据えながらハッキリと言い放った。

 カガリと違い、キラはどこかおっとりとした子であり、元気な所もあるが、周りをよく見ている子であり、甘える時には甘えるが、場と状況はわきまえている控え目な子である。

 そんなキラが、ここは一歩たりとも引けないと、ウズミを見つめているのだ。

 

 ウズミはまだモビルスーツの脅威をそこまで理解していないが、キラの様子から、力を持たぬ事への危機は理解した。

 故に、ウズミは「分かった」と頷き、モルゲンレーテへの話は通しておこうとキラに伝えるのだった。

 

 キラは、改めてホッと息を吐いて、最後に残された話をウズミへ伝える。

 

「では、最後の話なのですが。セイラン家へ訪問の約束をしたいのですが、私からというよりはお父様からの方が良いかと思いますので、お願いできますか?」

「それは構わぬが、用事は聞いても構わぬか?」

「うーん」

「父にも話せぬ事か」

「まぁ、そうですね。話したくない事です」

「……そうか。分かった。お前も年頃だからな。そういう事もあるかもしれん」

「ん?」

「一応婚約という事も可能だ。話は通しておこう」

「お父様!?」

「何かな?」

 

 キラはウズミが突如として、婚約がどうのと言い始めてしまった為、動揺して椅子を跳ね飛ばす勢いで立ち上がったが。

 ウズミからスッと鋭い目線を向けられて、本当の事情を話す事も出来ず、「何でもありません。婚約のお話で大丈夫です」と返す事しか出来ないのだった。

 項垂れるキラに、ウズミは要望は全て理解したと返し、後日連絡するとキラに言って家に返すのだった。

 キラの幸せがまだ多く残されている家に。

 

「どうやら、だいぶ厄介な事になっている様ですな」

「プラントと理事国。コーディネーターとナチュラル。どうあっても世界は憎しみを捨てられぬ様だ」

「我らオーブも道を選ばねばなりますまい」

 

 そして、キラが出て行った後、別の扉からウズミの居る部屋に入ってきた五大氏族の者たちは、聞いていたキラとウズミの話を受けて、オーブが取るべき道を決める。

 これまでの様に。

 変わらず中立を貫く為に。

 

「先ほど話にあった。モルゲンレーテでのモビルスーツ開発に関しては、我らがサハク家が主導して行いましょう」

「承知した」

「キラ様やセナ様への協力要請は問題ないですかな」

「えぇ。本人たちも望んでいることですからな」

「分かりました。では急ぎ、我らの剣と盾を作りませんとな」

 

「問題はキラ様とセナ様の動きについてですか」

「おそらくは……理事国に接触しようとしているのでしょう。セイラン家を通して」

「それはまた厄介な事になりますな」

「オーブに火種を持ち込む可能性がある」

「無論それも承知の上でしょう。あの子は、おそらくイザとなれば自分を切り離してオーブを守るつもりだ」

「……まったく。キラ様にはいつも困った物ですな。テロ事件の時もそうですが、自己犠牲が前提の策など、作戦ですらないというのに」

「昔から変わらぬ。優しく強い子なのだ。だからこそ、我らがいる」

「そうですな。ふむ。ではキラ様がオーブを出る際にはキオウ家が動きましょう。カガリ様ほどではありませんが、ミヤビも活発な方ですからな。キラ様やセナ様の良い友人になれると思います」

「助かりますよ。では、またよろしくお願いします」

 

 ウズミの言葉を合図として、五大氏族の者たちは部屋を出て行った。

 オーブはこの日より、未来に起きる可能性の高い『戦争』という最悪に向けて静かに準備を始めた。

 

 

 そして、キラがウズミと会談した三日後。

 キラはセナと共にセイラン家へと向かう準備をしていた。

 

「しっかし、忙しい奴だな。キラも。プラントから帰ってきたばかりだっていうのに」

「やりたい事はいっぱいあるからね。動ける時に動かないと」

「うーむ。確かになぁ。しかし、そういう事なら! 私も動かねばならないか……!」

「カガリにはお勉強っていう仕事があるでしょ? ちゃんと国の事を学ばないと。お父様に言われてるんでしょ?」

「分かっているが! お父様の跡を継ぐのなら私よりもキラの方が相応しいだろう! キラの方が私よりも頭が良いし」

「僕には政治のあれやこれやなんて分からないよ」

「私だって分からない事だらけだ! なぁ、キラー。私がキラを守るから、キラがお父様の跡を継がないか? 私はな。これでも体を鍛えているから、その辺りの奴には負けないぞ!」

「ダーメ。この国には太陽が必要なんだから。頑張ってよ『太陽のお姫様』」

「月だって必要だと思わないか!?」

「月は太陽があるから輝くんだよ。はい。また一つ勉強になったね。じゃ、他のお勉強も頑張ってねー」

「キラァー!」

 

 キラはカガリの叫び声に手を振って別れを告げ、アスハの家をセナと共に出た。

 そして、セナの車イスを押しながら、セイラン家に向けて大きな通りを歩く。

 本来であれば、車で行く方が良いのだが、キラは久しぶりに歩きたい気分だと言って、こうして歩いているのだ。

 

「でも、良かったのでしょうか」

「何が?」

「カガリお姉様の事と、車を断ってしまった事です」

「カガリの事なら心配は要らないよ。アレで責任感は強い方だから。何だかんだ甘えても最後には投げ出さずに頑張れるんだ。だから、僕よりカガリの方が良いって僕は思う訳だけど」

「……なるほど」

「それと車の件はさ。まぁ、外の空気を吸いたいとか。たまにはセナと二人の時間も欲しいっていうのもあるんだけど。僕らがこうして街を歩いている姿を見せる事でみんな安心出来るからね。もうテロの心配は要らないんだって」

「……でも、もし。キラお姉ちゃんが銃で撃たれてしまったら」

「それこそ心配は要らないよ。周りにいる一般人っぽい人の中に護衛の人は結構混じってるし。あれから警察も軍も警戒を強化して、テロ事件は未然に防いでいるし。狙撃する場所もない。僕らの仕事は、そういう安全を分かりやすい形で国民に伝えるコト」

「よく分かりました。やっぱりお姉ちゃんは色々知ってて凄いですね!」

「まぁね。お姉ちゃんは立派なお姉ちゃんだから。エッヘン」

「わー。パチパチ」

 

 車イスに座ったまま笑顔で手を叩くセナと、朗らかに笑いながら歩くキラを、すれ違う国民は素晴らしい物を見たという様な顔で見た後、その喜びを携帯端末で親しい人間に。

 また、SNS等で多くの人に拡散してゆくのだった。

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