ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第235話『PHASE-47『ミーア1』』

「陽動作戦だよ」

「さっきも言ってたけど、その陽動作戦って何の事?」

「つまりさ。敵の目をこっちに引きつけている間に、本命の作戦を通すってこと」

 

 キラは軽い言葉を重ねながら、連れて来たミーアとメイリンに笑いかける。

 どこか気楽な様子のキラに、二人は少し呆れた様な表情をしながら頷く。

 

「だから、その本命の作戦が何なのって話なんだけど」

「ヴェーダへのアクセス。そして、ヴェーダから世界中のコンピューターへ繋げる為の前準備をする」

 

 キラがメイリンを見つめながら言った言葉に、メイリンはゴクリと唾を飲み込んだ。

 

「で、でも……! ヴェーダのある遺跡って、ZAFTの部隊が居るんですよね?」

「うん。でも、別に現地に行く必要は無いから。コペルニクスの空き家からアクセスして、作業が終わったら端末を破壊して撤退って感じ」

「それ……私がやるんですか?」

「まぁ、僕でも良いけど。そうなるとセナの相手をする人が居なくなっちゃうからなぁ」

「うぅ~。分かりました! 私がやれば良いんでしょう!?」

「そういうこと。頼むよ。メイリン。護衛として彼を付けるからさ」

「彼って……アスランさんのクローンさんですか?」

「そ。彼、結構強いから。安心して大丈夫だよ」

「あんまり安心出来ませんけど……わかりました」

 

 メイリンは渋々頷いて。

 キラ達が出かけるよりも早くエターナルをアスランと共に飛び出して……街の向こう側で騒ぎが起こっているのを確認しつつ、仕事を完遂した。

 そして指示通りパソコンを破壊し、アスランと共にかなり遠回りをしながらエターナルへと戻って来たのだが……

 

 戻って来た時には……一人の女性が暗い部屋の中、彼女の体がちょうど入る大きさの箱の中で横になっていた。

 

「え」

「……おかえり。メイリン」

「えと? ミーアさん。どうされたんですか? こんな、寝にくそうな場所で……横になっちゃって」

「撃たれたんだ。ここに戻って来た時にはもう手遅れだった」

「じょ、冗談……ですよね」

「残念だけど、これは冗談じゃない」

 

 キラはメイリンを静かに見つめながらそう呟いた。

 その瞳には真剣な色しか見えず、また目が赤くなっている所からも、キラが泣いていたという事がよく分かる物だった。

 

「でも、コペルニクスでやる事も終わったから。僕も行かなきゃいけない。ミーアには悪いけど、コペルニクスの人たちに預けていくから。メイリンも最後にお別れをして」

「え……おわ、かれって……え?」

 

 メイリンは上手く現実が受け入れられないまま、キラに言われるままミーアに別れを告げて、ミーアはそのままエターナルから運び出され、コペルニクスにいるオーブの軍人へと引き渡された。

 キラは彼らに敬礼をして、ミーアの事を任せる。

 

「では、ラクスの事をお願いします」

「承知いたしました。キラ様もお気をつけて」

「ラクス様の事は我らが必ずやお守りいたします」

「ありがとうございます」

 

 そして、キラはエターナルへと帰還し、エターナルはガーティ・ルーと共に月面都市コペルニクスを離れてゆくのだった。

 

 

 それからミーアは迅速にオーブ軍の管理する施設へと運ばれて……。

 

「ミーア様。ここは我らの領域。起きても構いません」

 

 ゆっくりと、目を覚ました。

 

「キラ達は?」

「既にコペルニクスを離れました」

「承知いたしました。では、私達はこのままメサイアへ向かいましょう」

 

 ミーアは赤く汚れた服を脱ぎ、胸を押さえ付けていた防弾チョッキをも脱いで、血糊の入った小さな小袋も一緒に捨てる。

 

「あの女……三発も撃つなんて……ホントに死ぬかと思ったわ」

「怪我は大丈夫ですか?」

「撃たれた時は涙が出るほど痛かったけど、今は大丈夫ですよ」

「それは良かったです。が、一応私が状態を確認しましょうか?」

「お時間は大丈夫ですか?」

「えぇ。これから小型シャトルでメサイアへと向かいますが、ミラージュコロイドでのサイレントランですから。時間はもう十分に」

「承知いたしました。それなら、ゆっくりとさせて貰いましょうかね」

 

 ミーアはふぅと息を吐くと、オーブの女性士官と共にシャトルへと向かい、まずはシャトルの中でシャワーを浴びて、着替える事にした。

 そして、先ほども話した女性士官の元へと向かう。

 

「凄いですわね。シャトルの中にシャワーがあるなんて」

「えぇ。こちらのシャトルはキラ様やセナ様がご利用されていたモノですから」

「あぁ。それで。ミラージュコロイド」

「はい。お二人の安全を第一に考えておりますから」

「オーブらしいですわね」

「カガリ様、キラ様、セナ様がお乗りになる物は全て、お三方の安全を最大限に考慮するべきだと我々は考えております。また、これは世界的な基準になるべき物かと」

 

「本当に、オーブらしいですわね」

 

 ミーアは目の前に座っているニコニコと微笑む一般的オーブ軍人を見ながら、呆れた様な息を吐いた。

 彼女たちの国は……まぁ、何というか自国の代表や姫に対して異様に過保護なのだ。

 どれだけ資材をかけようが、予算をかけようが構わない。全ては代表と姫様の為に。という精神で生きている。

 一般的なオーブ国民であった。

 

「そこまで拘るのなら、フェイズシフト装甲でも採用すれば良かったと思いますけれど」

「既に搭載しております」

「……」

「また、ビーム兵器に対する対策として、ビームシールドを展開出来るようになっておりますし、連合の陽電子リフレクターも現在解析して、試験運用中ですので、いずれ姫様方のお乗り物には搭載されるかと」

「オーブって……」

「姫様方の輝きを失わない為です。必要な措置と我らは考えております」

「そうですか……」

 

 これ以上突っ込みを入れる事は疲れると、ミーアは暗い宇宙の向こうを見つめた。

 そこには何もないが、まぁ何かがあった所でこの世界一安全なシャトルをどうこうする事は出来ないだろう。

 

 これで、メサイアへと行き、あの女を仕留める。

 それこそが、ミーアが自ら臨んだ行うべき事。

 例え、そこで相打ちとなり、死ぬとしても……この世界からあの女を排除しなくてはいけない。

 

「ミーア様」

「……なんでしょうか」

「キラ様は、ミーア様と共に居る時間をとても楽しんでおります」

「……」

「ですから。必ずや無事お戻り下さい。それをキラ様も望んでおられます」

「私は……それほど価値のある人間では無いですよ。やってきた事も、ラクス様の影武者ってだけで。私自身は……全然」

「その様な事はございません」

 

 ミーアは女性士官の言葉に少しだけ驚いて目を見開いた。

 

「ミーア様と接している時のキラ様は自然体で、とても安らいで見えます。不要な人間などと。その様な事はございません」

「……ありがとうございます」

「いえ。私はただ、事実をお伝えしただけですから」

 

 彼女は、ごく自然な仕草で小さく笑みを浮かべたまま頭を下げた。

 その様子に、オーブという国は本当に凄いなとミーアは感心してしまうのだった。

 が……。

 

「そして、ミーア様」

「なんでしょうか?」

「どうかご帰還されてからは、キラ様と共にオーブで心安らかに過ごしていただけましたら、と」

「はい?」

「キラ様はラクス様と恋人関係でありますが……ラクス様はキラ様をオーブからプラントへと連れて行こうとしております!!」

「は、はい……!」

「ですが、ミーア様! ミーア様がオーブで、オーブで! キラ様とお過ごしになられるという事であれば!! 我々オーブ軍。全力をもって、ミーア様のサポートをさせていただきますので、なにとぞ……! よろしくお願いいたします」

「「「よろしくお願いいたします!!」」」

 

 いつの間にか。

 目の前に座っていた女性士官以外にも、オーブの軍服を着た女性軍人たちが近くに立っており、満面の笑みでミーアに敬礼をしていた。

 

 その、圧迫感を覚える光景に、ミーアは、ハハハと苦笑しながら「分かりましたわ」と頷く事しか出来ないのだった。

 ここで、無理です。なんて言おうものなら、頷くまで拷問をされそうな空気であった為だ。

 

 この瞬間、ミーアは悟った。

 ここは確かに世界で一番安全なシャトルかもしれないが、同時に世界で一番危険な檻の中であるというコトを。

 

「あーはは。ち、ちなみに。なんですけれども。皆さんはキラが結婚とかをする場合、どの様な……」

「キラ様が!!? ご結婚!!!??」

「ひぃっ! な、なんでも……! なんでもありませんから……!」

「既にミーア様はその様なご予定が!?」

「急いでオロファト中央総合病院のVIP室を確保しろ! 出産まで24時間体勢で健康状態を確認するんだ! 急げ!」

「ハッ!」

「二佐!」

「なんだ!」

「出産はキラ様が行うのでしょうか。もしくはミーア様が? それにより、対応もまた少し変わるかと」

「確かにな」

 

 ミーアの止める間も無いまま、話はゴロゴロと凄い勢いで転がって行き、ミーアの前に座る女性士官が部下と話していた時の厳しい顔から一転して、柔らかい笑顔になるとミーアにとんでもない事を尋ねて来た。

 

「ミーア様。出産はキラ様とミーア様、どちらがされるのでしょうか? 無論、我らはキラ様にミーア様が負担をかける様な真似はしないと確信しているワケですが……一応確認させていただければと」

「あの。申し訳ないんですけれども。今はそういう予定はなくて」

「予定がない? 何故?」

「いや、何故というか。まだ子供はちょっと、というか」

 

「キラ様によく似たお子様が!!!! 要らない!!!??」

「どういう事だ」

「まるで理解出来ない。なんだ? 何が起きているんだ」

「分からない。キラ様のお子様だぞ。愛らしく凛々しく、美しい。世界の宝になる事は確実ではないか」

「――! 二佐! 自分は理解しました!」

「なんだ! 言ってみろ!」

「自信が……無いのでは、無いでしょうか。完璧で究極の存在であるキラ様のお子様を……! 育てる自信が……無い!」

「ハッ! そ、それは……!」

「不敬ながら!! 自分もキラ様との間に子をなした時の事を考えました!!! そして!! 浮かぶのは!! 自分が無力であるという事です!!! キラ様のお子様をお育てするには……この手は、あまりにも……! 無力」

「そ、そうか。確かに。それは……当然の事か。オーブを照らす女神を我らただの人間が導くなど……あまりにも遠い……! ミーア様!!」

「は、はひぃっ!」

 

「申し訳ございませんでした!!! 急いた真似を!! お二人の覚悟も、知らぬまま!!! 申し訳ございません!!!」

「いえ、誤解はそこでは無くて、ですね?」

 

 ミーアは虚無を身にまといながら、何とか誤解を解こうと言葉を並べた。

 そして、遠い宇宙を見ながら、無邪気に笑うキラを思い出して、会いたいなと口にするのだった。

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