ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第239話『PHASE-49『レイ1』』

 偽物のラクス・クラインが既にセナは地球に居ると明かした事で、メサイア正面の戦場にはやや冷めた空気が漂っていた。

 彼女がいう様に。セナがここに居ない以上、ここで争っても意味がないとオーブ、地球連合軍艦隊は考えていたからだ。

 それに、偽物のラクス・クラインとの会話の中でギルバート・デュランダルが味方である可能性も生まれた為、彼らの主導者であるカガリ・ユラ・アスハや通信をクサナギに繋げて来たムルタ・アズラエルに迷いが生じていたというコトもある。

 

『どうしますか? 代表サン。確かに、ここで争う理由は無い。まぁ、ジェネシスは放置出来ませんケドね。でも、今それを破壊する必要もない』

「確かにな……ギルバート・デュランダルがこちらの味方であるなら……」

「いえ」

「ラクス?」

 

「残念ながら。彼はあくまで彼女を排除する事を目的に動いていたというだけで、デスティニープラン事態の否定はしておりません」

「それは……」

「なるほど。確かに。そこのお姫サマの言う通りかもしれませんね」

「どういう意味だ。アズラエル」

『あの偽物を排除してもなお、要塞メサイアは武装を解除していない。という事ですよ。陽電子リフレクターも使用したままだ』

「っ! ならば!」

 

 

 ラクスの予測と、アズラエルの気づき、そしてカガリの理解が正しいと証明する様に。

 要塞メサイアはギルバート・デュランダルの下、静かに動き出していた。

 

「議長! セナ様より通信! デスティニープラン開始との事です!」

「そうか。ではシステムを起動させろ。デスティニープランを開始する」

 

 議長の言葉を合図としてメサイア内部に設置された数多のサーバーが赤く点灯しながら起動を始め、全地球圏で異常が発生する。

 

 

「カガリ様! システムに異常発生! 何者かに侵入されています!」

「始まりましたわね」

「嫌な予感ほど当たるモノだな。キラの用意したカウンタープログラムを使用しろ!」

「ハッ!」

「全艦に通達! システムの侵入を阻止しろ!」

『やれやれ。どうやらあちらはやる気の様だ。モビルスーツ全機! 発進だ! フォビドゥン、レイダー、カラミティ! 仕事だ! あの要塞を破壊しろ!』

 

 真っ赤に染まったモニターにカガリは冷静に指示を出し、アズラエルは少し怒りを滲ませながら収容されたモビルスーツへと出撃命令を出し、同時に地球連合軍艦隊にも戦闘開始を合図する。

 交渉はもう意味がない。

 何故なら向こうは既に『攻撃』を始めてしまったのだから。

 

 

 そして、攻撃命令が出た事で、デスティニーに乗っていたシンは閉じられていたまぶたを開きデスティニープランと表示されたモニターを見て、ため息を吐いていた。

 こうならない様にと願っていた事ではあるが、こうなってしまった以上は戦うしかない。

 

 戦うしかない以上……シンがやるべき事はまずミネルバを探す事である。

 

 シンは戦闘開始の合図から少しして、デスティニーを暗い宇宙の中で加速させ、動揺しているのか動きが悪いZAFTのモビルスーツの武装を破壊しつつ、奥へ、奥へと進み続けた。

 そして、メサイアのすぐ近くでシンは目的の艦を見つける。

 

「ミネルバ! ここで止める!」

 

『シン! 危ない!』

「っ!」

 

 ビームライフルを構えながら宇宙空間に浮かぶミネルバへと向かうデスティニーであったが、不意に少女の声が聞こえたコトでシンは機体を急制動させて、縦に回転しながら前方に網の様に置かれたビームをかわす。

 

「……! ドラグーンシステム! レイか!」

『シン!!』

『ちょっとシン! いきなりミネルバ狙いは無いんじゃないの!?』

「ルナに、副隊長も……!」

 

『勘違いするな。シン。俺の相手はお前ではない……! っ! 来たか! 行くぞぉ! イングリット!』

『はい』

 

『シン・アスカ。シュラの相手は俺がする。こちらへの介入は不要だ』

「はい!」

 

 そして、ミネルバを護る様に現れた三機のモビルスーツの内、一機はオルフェがガンダムでぶつかりながら遠く別の戦場へと駆けてゆき、残されたシンは油断なくレジェンドとインパルスを見据えた。

 戦う為の準備は出来ている。

 覚悟も、武器も。

 全てここに揃っている。

 

 だから……。

 

「俺は、メサイアを破壊する。ジェネシスも、デスティニープランも、この世界には必要ない!」

『シン……! デスティニープランは、必要な物だ!』

「どこにも!! 必要な理由なんかない!」

 

 シンは叫びながらデスティニーを高速移動させ、ビームライフルをレジェンドに向けて放つ。

 だが、レジェンドもデスティニーが動き出すのと同時に動き出しており、デスティニーのビームライフルをかわしながらドラグーンシステムを展開した。

 そして、デスティニーの動きを制限する様に四方からビームを放つ。

 

 しかし、デスティニーは分身を生み出しながらドラグーンによるビームをかわしつつ、レジェンドへとビームライフルを放つのだった。

 

『デスティニープランは、世界を平和にする為のモノだ! この憎しみと絶望が満ちる世界で! デスティニープランだけが、世界の希望なんだ!』

「人の未来を、自由を奪っておいて! 何が希望だ! 与えられた役目の中だけで生きる世界の、どこに希望がある!」

『人が自由を与えられ、今日まで何を生み出してきた! 争いだけだ! 憎しみだけだ! 絶望だけじゃないか! 今、仮初の平和を手に入れても! また人は争いを始める! そして、その争いは!! また、キラさんを! セナを殺すんだ!! 何故それが分からない! シン!』

「そうさせない為に! 俺は強さを求めたんだ! お前もそうだった筈だろう!? レイ!」

『……!』

「俺達で護れば良い! キラさんの代わりに剣を握って!! セナを守る為の盾となれば良いじゃないか! そうじゃないのか! レイ!」

『俺は……もう、それは出来ないんだ』

「っ!」

 

 レイが呟いた言葉にシンは一瞬動きを止め、その隙にレジェンドのビームがいくつかデスティニーへと向かう。

 咄嗟にシンはシールドを構えるが、ビーム砲を受けた影響でデスティニーは弾き飛ばされてしまった。

 

『シン。俺はな。もう死ぬんだ! アル・ダ・フラガという傲慢な男が生み出した呪いは! 俺の体に残されている! 俺は……もう五年も生きられない! だから! この命が残っている間に! 世界を平和にしなきゃいけない!! そうしなきゃ! 護れないから!!』

「レイ……!」

 

 泣き叫ぶ様なレイの言葉に、シンはようやく親友の真の姿を見た様な気がしていた。

 いつも冷静で、穏やかで、一歩引いた様な位置からシンやキラを見ていたレイ。

 その姿は……レイの真実の姿は……世界の理不尽に苦しむ、年相応の子供であったのだ。

 

「なら、余計にデスティニープランなんて……認められない!」

『っ! シン!!』

「だって! そうだろう!?」

 

 シンはステラの力を借りながらレイが操るドラグーンを先読みし、ビームを何もない空間に放ち、移動してきたドラグーンを正確に撃ち抜く。

 

『ぐっ!? なんだ、この力は……!』

「レイ! 分からないのか!? デスティニープランがキラさんにどんな役目を負わせるか! 本当に分からないのか!?」

『な、なにを……!』

「俺はレイみたいに頭が良い訳じゃない。でも!! キラさんの事をずっと見てたから分かる! あの人は、争いなんか望んでない! 本当は、本当の本当は! 家族と一緒に、静かな場所で、生きていたいだけじゃないのか!? それをずっと願っていたんじゃないのか!? セナだって!」

『分かっている! だから……! 俺は!』

「なら、分かるだろう!! キラさんの才能は! キラさんの想いを無視して! 世界の為に、家族を捨てて、幸せを捨てて! 生きる事を強要する物だって! 分かるだろう!?」

『っ!』

「セナが、世界の為に! 平和の為にってデスティニープランを支えるだけの存在になって!! キラさんが、幸せと切り離された世界で! 機械みたいに生きるコトが正しいって! それが良い事だって! お前は言うのか!! レイ!! お前が死ぬ前に見る景色が! 二人の笑顔じゃなくて良いのか!? レイ!!」

 

 シンの中に生まれた感情。それは怒りであった。

 どうしようもない程に強い怒り。

 

 それは、地獄の様な世界へ大切な人を送ろうとする親友(レイ)への怒りであり、そんなコトすら分からない程に追い詰められていた親友(レイ)と、そんな親友(レイ)の状態に何も気づけなかった自分自身への強い怒りだった。

 かつて、前大戦の時、シンは学んだハズだった。

 大切な物は、ちょっとしたキッカケで失われてしまう。

 

 だから、失われない様に……消えてしまわない様に見て来たつもりだった。

 だが、シンは最も大切な親友(レイ)を見落とし続けてきたのだ。

 今日まで。

 

 それはシンにとって何よりも辛い事であり、悲しい事であった。

 だから。

 だからこそ。

 

 シンは、全てが終わり、後でレイに何を言われようと、されようと構わないという覚悟で意識の全てをレジェンドへと向ける。

 ステラの援護とシン自身の中に眠る力を目覚めさせて……シンはビームライフルをしまい、アロンダイトを構えた。

 

 そして、レジェンドへと分身を生み出しながら迫り、シンを止めようと迫るドラグーンを全て切り裂いて。

 時にビームブーメランを鼻って、ドラグーンを叩き通し。

 レジェンドの戦闘能力を奪いながら急接近して、真っすぐに、機体へとアロンダイトを突き刺した。

 

『ぐわぁぁああああ! し、シン……!』

「レイ! 俺はデスティニープランを止める! この選択の先に未来があるって信じているから」

『……!』

「だから、終わったらまた話をしよう。今度は五年。お前の傍に居るから」

『シン……』

 

 そして、シンは大破したレジェンドをそのままに、メサイアへと向かって行った。

 レイはデスティニーが描く光の線を追いながら、手を伸ばすがその手がデスティニーに届く事はない。

 

『行っちゃったわね。シン』

『……あぁ』

『泣いてるの? レイ』

『あぁ……』

『そっか。でも……ううん。なんでもないわ。また、全てが終わったら、シンと……キラさんと、また話しましょう。まだ時間は残されているんだから』

 

 ルナマリアは大破したレジェンドを支えながらミネルバの近くへと後退してゆく。

 メサイアの陽電子リフレクターが爆破しながら破壊されてゆくのを見ながら。

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