ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第244話『FINAL PLUS『選ばれた未来2』』

 シン・アスカという少年は、ごく普通の少年であった。

 両親がモルゲンレーテの職員であるから、幼い頃より、キラやカガリと親交があり。

 マユという妹が居たから、小さなセナを妹の様に思ってきた。

 

 そんな少年の願いは……ZAFTのトップエースの一人と呼ばれる様になっても変わらない。

 

 ただ、平凡ながら、幸せであった日々を護りたいだけだ。

 

 オーブの軍人として働いて。

 自分が中退してしまった分、マユにはいい学校に行って欲しいからと、お金を貯めて。

 給料日には、キラやカガリに勧められた高級店に両親とマユを招待して。

 でも、テーブルマナーが何も分からず、困ってしまったと、キラやカガリに愚痴って。

 アスランにバカにされ、喧嘩をして。

 今度はマユに格好いい所を見せるぞと、レイと練習をしたりして。

 

 ルナマリアやレイとバカをやりながら、モビルスーツに乗って……キラやセナの願う平和って奴を見つける為に、戦って。

 

 それで……いつかは、オーブも静かになって。

 愛した人と結婚したり、子供を作ったりして。

 

 平凡で、でも、とても大切な。

 そんな日常を護りたい。ただそれだけであった。

 

 だから、そんな日常を護るために、シンは行くのだ。

 終わりのない戦いと、その果てに訪れたキラとセナの戦い。

 シンはセナの手を離して……キラの願う未来を選ぶ事にした。

 それはきっとセナを深く傷つけただろう。

 裏切者だと罵られるかもしれない。

 

 でも、それでも……シンは、セナがデスティニープランによる平和を求めている様には思えなかったのだ。

 あの小さな体で世界を背負おうとする少女は……ずっと『家族』を求めている様な気がしていた。

 きっと、誰よりも家族を大切にして、生きて来たシンだから、感じる想い。

 

『シン。あの虹色の光には気を付けろ。アレに触れると意識が持って行かれる。なるべく触れない様に進め』

 

 だから。

 シンは行く。

 

『ミネルバ前方に展開している無人機はこちらに任せろ。シンは真っすぐ、振り返らず、セナの元へ行け』

『そうそう。後ろは私達に任せてさ』

 

 一人で泣いている少女を助ける為に。

 シンは、行くのだ。

 

『お前は強い。必ず、未来を掴めるはずだ。姫様と共に、未来を掴め』

『宙域図をデスティニーに送りました。健闘を祈ります』

 

「……はい。アスラン。レイ。ルナ。シュラさん。イングリットさん。ありがとうございます」

 

 シンは閉じていた瞼を開き、カタパルトに乗ったデスティニーの正面ゲートが開くのを見つめる。

 そして、アビーの声を聴きながらデスティニーの操縦桿を強く握りしめた。

 

『デスティニー発進スタンバイ。全システムの起動を確認しました。発進シークエンスを開始します。ハッチ開放。カタパルトオンライン。針路クリアー。デスティニー発進どうぞ!』

 

「シン・アスカ! デスティニー、行きます!」

 

 

 ミネルバのカタパルトから勢いよく飛びだしたシンは、ミーティアでザクやグフの混じったZAFT部隊と戦うアスランのジャスティスを横目で見ながら真っすぐに虹色の光が満ちる戦場へとデスティニーを向かわせる。

 

 戦闘が行われている様な気配はない。

 既にキラが戦っているという事であったが、どうしてしまったのだろうかと、シンはデスティニーを走らせながら戦場を確認していたのだが。

 不意に、どこよりも色濃く虹色の光が満ちていた場所から蒼い光が一筋の軌跡を作りながら地球軌道上に向かおうとしているホープへと走った。

 

 遠くからでも分かる。

 蒼と白。そして、関節に輝く金色は……キラの機体。ストライクフリーダムである。

 

 そして、再び世界に虹色の光が放たれたかと思えば、キラの駆るストライクフリーダムがホープに追い込まれており。

 シンは急いでスラスターを吹かせて、キラの前でシールドを構えた。

 

「キラさん!! 遅れました!」

 

 咄嗟に、キラを助ける為に戦場へと突っ込んでしまったが。

 そういえば、アスランに虹色の光には気を付けろと言われていたなと思い出したシンは青い顔をするが、そんなシンに柔らかい声が届いた

 

『シン。大丈夫だよ。ステラが守るから』

「ステラ……?」

 

 シンの前に半透明のステラが微笑みながら現れ、手を前にかざすだけでデスティニーに襲い掛かる光は全て何処かへ霧散していった。

 

『これは、誰かの願い』

「願い?」

『そう。死にたくないとか。お母さんと一緒にいたいとか。そういう、願い』

「それが、ホープから溢れているのか?」

『うん……セナが、世界から人の願いを集めているから』

 

 シンは正面に立つホープをジッと見据える。

 デミスシルエットを装備しているからか、二倍か三倍の大きさになったホープは人型であるはずなのに、その輪郭がハッキリとしない。

 まるで何かフィルターが付けられたようにぼやけていた。

 おそらくは、集まり過ぎた人の願いが、ホープの姿を歪ませているのだ。

 

「セナは大丈夫なのか?」

『ううん。だめ』

「っ!?」

『願いはセナを苦しめてる。このままじゃ、死んじゃう』

「……なら!」

『うん。助けよう。シン』

 

 シンはステラと共に前を向いてアロンダイトを静かに構えた。

 そして、隣にスッと移動してきたフリーダムと共にホープへと突っ込むタイミングを見極める。

 

『シン』

「はい」

『セナを止めるには、デミスシルエットを破壊しないといけない』

「はい!」

『でも……アレには未来の僕や、アスランも力を貸してるみたいでね。僕一人じゃどうにも出来ないんだ』

「はい! ここからは、俺も戦います! セナを止めましょう!」

『うん! ありがとう! シン!』

 

 キラとシンは息を合わせて、一気にホープへと突撃した。

 しかし、ホープは巨大な体を細やかに動かして、二人の攻撃の隙間を動きながら被害を最小限に抑えて、鋭い反撃を飛ばしてきた。

 それはシンとキラの二人をもってしても容易く貫けるものではなく、ホープは殆ど傷を負う事もなく、二人を迎撃するのだった。

 

『全ては無駄な事です。諦めて下さい。お姉ちゃん。シン君』

『何が!』

『世界の意志は今、私に預けられています。願っているんです。平和を、デスティニープラン(運命)を。この戦いを見守っている全ての人が』

『それで! 君が犠牲となることを、世界が容認しているとでも言うつもり!?』

『はい。それが世界の意志です。デスティニープランの支持率は95%。殆どの人類が、私に世界を任せたいと願っている!』

『そんな……!』

 

「ふざけるなぁぁああ!!」

『っ!』

『……シン君』

 

「世界が見守っているって言ってたな! なら、俺の声も聞こえているんだろう!?」

 

 シンは、怒りを強くにじませながら叫んだ。

 

「何が運命だ! 何が平和だ!! 誰かに自分の苦しさを押し付けて! それで、生きていると言うつもりか! 言えるのか!!」

 

 シンの叫びに怯んだ、ホープへとシンは分身を作りながら接近し、アロンダイトを振り下ろして破損していた左腕を切り落とし、フリーダムの援護を受けながら離脱する。

 

「お前の人生だろう!? お前が、選んで生きていく世界だろう!? 誰かにその責任を負わせるな!」

「大切な人が傷つけられたのは悲しい!! 殺されたのは、苦しい!! でも……! それでも!! 俺たちが自分の意志を捨てちゃ駄目なんだよ!」

「戦いが終わらないのはロゴスのせい! コーディネーターのせい! ナチュラルのせい! ブルーコスモスのせい!! 違うだろう!? 俺たちが! この世界に生きる一人一人が! 戦わない道を選んで! その道に進んでいこうって決めれば! 世界は変わっていくんだ! 変えて行けるんだ!! 運命に頼らなくても!!」

 

 シンの叫びは、ホープを通して全世界へと届けられる。

 その声に、心に、覚えがある物は自らの行いを考え、地球軌道上で行われている戦いへと意識を向け……真っすぐにその戦いを見据えた。

 

『これは……! デスティニープランの支持率が落ちている? 皆さんが、シン君の言葉に、気持ちを……!』

『セナ! もう止めろ!』

『っ! お姉ちゃん……!』

『サイコフレームを通して、僕にも聞こえる! 世界の人の()が! みんな、君が犠牲になる事なんて望んでいない!』

『ですが、平和を求めている。この世界で、争いを完全に止める為には! デスティニープランが必要なんです!』

 

「そうやって、セナが作った揺りかごの中で! 生きていても!」

『っ! シン君!?』

 

 フリーダムとビームサーベルでぶつかり合っている中に落ちてきたデスティニーに、ホープは距離を取りながらビームライフルを構えるが、そのデスティニーは幻で。

 ハッとセナが気づいた時にはフリーダムが二丁のビームライフルを連結し、高威力のビームをホープに向けて放っていた。

 

 既に回避は間に合わないと判断したホープは右足を振り上げて、ビームを防ぎながらソレを切り離す事で本体への影響を最小限に抑える。

 

 だが、逃げようとするホープを逃がすハズがなく、デスティニーは右腕を振り上げながらデミスシルエットの中心部分へと右手を押し付けて、掌に搭載された武装『パルマフィオキーナ掌部ビーム砲』から高威力のビームをデミスシルエットの内部へと打ち込むのだった。

 

 これにより、デミスシルエットは機能を停止。

 ホープはデミスシルエットより離脱し、虹色の光を放ちながら油断なく、ビームサーベルを構えた。

 

 

「もはや、デスティニープランの支持率は30%にまで落ちてしまいましたか」

 

 セナは荒い呼吸を繰り返しながら、ジッとモニターに映る二機を見つめた。

 そして、小さく笑みを浮かべる。

 

「良かった」

「この世界の人たちは……運命に縛られることなく、生きていくことが出来るのですね」

 

 それは誰にも聞かせる事のない独白。

 そして、セナは最期の戦いを終わらせる為に、ビームサーベルを構えたままフリーダムとデスティニーへと向かった。

 

 既にデミスシルエットが失われている以上、過去に滅んだ世界のアスランやキラのアシストはない。

 セナの力ではどうやってもキラとシンに勝つことは出来ない。

 

 だが、それでも。

 それでも……セナには終わらせる義務があるのだ。

 デスティニープランを。

 

 人々を苦しめるだけの、救世計画を。

 だって、人は自由の中で生きてゆく物だから……!

 

『セナ! もう君の負けだ! 投降しろ!』

「例え、もう勝てないとしても……! 私は、信じてくれる方が居る限り……! 最期まで戦います!」

 

 デスティニープランの支持率はまだ0にはなっていない。

 

 セナは傷つきながらもホープで抗い続けた。

 しかし、それも長くは続かない。

 何故なら……デスティニープランの支持率が急速に落ちて行ったからだ。

 

 そして、その数値が0となった時、セナはビームサーベルを構えたまま動きを止めた。

 涙があふれる。

 

 それは未来を得た喜びか。

 それとも過去を否定された悲しみか。

 誰にも分からないが、セナは深く息を吐いて、天を仰ぎ、操縦桿から手を離した。

 

「……終わりですね」

 

 セナの呟きと共にホープは地球の引力にひかれて落ち始めた。

 大気との摩擦熱で焼かれながら、地上へと落ちてゆく。

 

『セナ!』

「……お姉ちゃん。シン君。クリスタさんの事を、お願いします」

 

 大気に焼かれながらも、虹色の光を放ちながら落ちてゆくホープをデスティニーとフリーダムは追い続ける。

 その姿を見ながら、セナはフッと安堵の笑みを零して、静かに目を閉じた。

 

 

 落ちてゆく。

 落ちてゆく世界の中で、セナは自分の意識の中に沈み、暗闇でうずくまっている少女の前にしゃがみ込んだ。

 

『クリスタさん』

「……! セナ!? 世界はどうなったんだ!? セナは!」

『世界は自由を選びました。ですから、クリスタさんも、もう自由です。世界に縛られることはありません。支配者になど、ならなくても良いんです』

「私の事などどうでも良い! セナは!」

『私は。もう十分です。十分に、世界を生きる事が出来ました』

 

「嘘を言うな! お前は……! お前の願いは!」

『元々、私には分不相応な願いだったのです。私はもう満足していますよ』

「そんな、泣き出しそうな顔で! 言う事か!」

『……私はもう、良いんです。ですから、後はクリスタさんに。任せます』

「セナ!!」

 

『さようなら。皆さん』

 

 

 C.E.(コズミック・イラ)74年12月11日

 約一年にわたる戦いは終わった。

 アーモリーワンの新型機強奪事件から始まった戦いは、地球軌道上で行われたデスティニープランをめぐる戦いをもって終結した。

 

 しかし、この戦いに勝者はなく。

 得た物は少なく、失ったものばかりの戦いであった。

 

 それでも……この戦いで深く傷ついたと発表されたセナの事や、シンの叫び、キラの想いを知り。

 人々は緩やかながら平和へと向かい歩み始めた。

 

 未だ未来は暗闇に包まれているが、希望(ホープ)が世界に見せた人の心の光を胸に宿して。

 誰かに言われた事ではなく、己の意志で。

 人々は、明確に世界の平和を考え……進み始めるのだった。

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