ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第429話『アー。ハイハイ。キラ様、キラ様』

 月面都市コペルニクスで食料や日用品を買いあさったキラ達は、ストライクフリーダムを運搬する用の小型シャトルにそれらを全て詰め込んで、コロニーメンデルを目指して航行していたのだが……。

 その道中で非常に面倒な目に遭っていた。

 

『ここを通るのなら通行料を払って貰おうかぁ!? ここは俺たちの縄張りだからな!』

「はぁ……縄張りと言われましても。ここは特にどこかの国家の勢力下というワケでは無いと思うのですが」

『うるせー! 国なんか知るかよ! ここは俺達、傭兵団『ハウメアの剣』が支配するエリアだ! 通りたければ通行料を出しな!』

「傭兵ねぇ」

 

 キラはシャトルの操縦桿を握りながら、ハァとため息を吐いた。

 何度も起きた大戦争のせいで元地球連合軍もZAFTも衰退し、世界は荒れていると聞いていたが。

 まさか、宇宙に山賊まがいの連中が出るとは思ってもみなかったのだ。

 いや、宇宙だから、宙賊か?

 

「酸素の無駄だ。全員殺せば良いだろう」

「そういうワケにはいかないでしょ? 戦闘なんかして、ZAFTとか大西洋連邦に嗅ぎつかれても嫌だしさ」

「別にお前なら、ZAFTやら大西洋連邦やらの部隊を全滅させられるだろう。問題はない」

「問題しかないよ……まったく」

 

 キラはクリスタの投げやりな言葉に呆れを返しつつ、操縦席の隣でふて寝を初めてしまったクリスタに苦笑する。

 

「あー、えっと、申し訳ないんですけど傭兵の方々? 僕たちはあんまり大金持ってませんので、通らせていただきますね」

『んな理屈が通るか!』

「いや、ほら。ハウメアの剣ってお名前なのはオーブの関係者なんですよね。オーブの代表首長であらせられるカガリ様は、こんな横暴望んでないと思うんですよね」

『カガリ様だぁ!?』

 

 キラが呟いた言葉に、何故か傭兵団の団長だという男が強い怒りを露にする。

 そのあんまりにも突然な怒りにキラは驚き言葉を失ってしまった。

 

『カガリ・ユラ・アスハの名を俺の前で出しやがったな!? この野郎!』

『マズい! 団長を止めろぉー!』

『おい、お前! 謝るのなら急いだほうがいいぞ!』

 

「謝る? 何をですか」

『決まってんだろうが! 俺はカガリ・ユラ・アスハなんか認めねぇ! アイツは! あの女は!! キラ様を騙し、代表の座を奪い取った女なんだぞ!!』

「はぁ」

 

 何の話なんだ? とキラはどこか呆れた様な様子で彼らの話に耳を傾けた。

 特に聞く価値は感じなかったけれども。

 

『俺達がハウメアの剣を名乗っているのはな! キラ様の為だ! 断じてカガリ・ユラ・アスハの為じゃねぇ!』

「ナルホド」

『良いか!? キラ様はな! それはそれは偉大な方なんだ! 俺はな。かつて地球連合軍とZAFTの間で行われた大戦争に地球連合軍の軍人として参加していた! そして、クソッたれコーディネイター共のモビルスーツ共に追い回され、生きるか死ぬかって地獄をさ迷っていたんだ! そんな中! あの御方は俺たちの為にクソッたれコーディネイター共と戦う為のモビルスーツを作って下さり! そして自らもストライクという蒼と白の輝く機体に乗られ、コーディネイター共から地球に住まう俺達を護ってくれていたんだ』

「ハァ」

『しかも、キラ様はコーディネイター共に殺されかけ、それでも平和の為にって、またモビルスーツに乗って戦った居られる素晴らしいお方なんだ! いい加減な気持ちで名前を呼べる相手じゃねぇんだぞ! この野郎』

「ソウデシタカ」

『しかも、ちょっと前の戦争じゃあ、コーディネイター共に利用されたセナ様と戦うことになってしまい……今はお心を痛めて、表舞台から姿を消してしまったという話なんだ……なんという、何という悲劇!! うぉぉおおお!!』

 

 通信の向こうで男泣きをしている傭兵の声に、キラはもはや言葉もないと目を閉じて小さく息を吐いた。

 どうにもなりません。

 重症です。助かりません。と、医者が患者に伝えている様な顔をして、キラは隣に座るクリスタを見た。

 が、クリスタは我関せずという様な顔で、腕を組んで目を閉じているのだった。

 

「えと……では、そのキラを慕う方々が、どうして? こんな所に?」

『キラ様! だ!! 間違えてんじゃねぇよ!』

「アー。ハイハイ。キラ様、キラ様」

『何故俺らがここに居るか、だと!? そんなの決まっているだろうが! ここいらの宙域に最近妙な連中が出るって話でな。俺たちは独自にこの辺りの宙域を調査しているってワケよ。オラ! 分かったら、さっさと通行料を払いな!』

「いや……前半と後半で文章が繋がってないんだよね」

『あん?』

「どうして、調査する事と、通行料を払う事が繋がるのか分からないって話ですよ」

『そらお前。何するにしても金がかかるからに決まってるだろう?』

「なら、軍人として働けば良いんじゃないですか? コンパスっていう部隊をキラ様が作ったみたいですし」

『バカ野郎! コンパスなんてのは、コーディネイター共にキラ様が騙されて参加しただけのもんだろうが』

「いや、なんで……」

『そうでなきゃ! キラ様がずっとお姿を見せないのはおかしい! 子供だって分かる理屈だぜ!』

 

 結局。

 キラはこれ以上の交渉は無理だと判断して、クリスタに短く出撃すると告げた。

 

「だから言っただろう。最初からそうすれば良かったと」

「ハァ……まったく嫌になるよ」

 

 キラは愚痴を言いながらもストライクフリーダムのコックピットへと乗り込んで、シャトルの上部を開放しながら外へと飛び出した。

 そして、傭兵にビームライフルを向けながら一応警告をする。

 

「あー。こちらフリーダム。素直に立ち去るのなら、何もしませんが、もし抵抗するのなら、殲滅します」

『ば、バカな!? フリーダム!?』

『って、事は! まさか! 本物のキラ様って事か!?』

『なんてこった! 総員撤退!』

 

「もうこんな事しちゃだめだよー!」

 

 逃げてゆく傭兵団にキラは言葉を掛けながら再びシャトルへと戻って操縦席に座る。

 

「殺した方が早かったんじゃないか?」

「さっきも言ったでしょ。面倒を起こすと、次から次に面倒が押し寄せて来るんだよ。だから、嫌な事でも最初に綺麗に片付けるのが大事なの」

「そういう物か」

「はい。そんなモノです」

 

 

 それから。

 キラとクリスタは再び宇宙を静かに進んでゆき、遂にL4宙域にあるコロニーメンデルへと到着した。

 キラは到着して早々にストライクフリーダムを隠してシステムをロックする。

 

 そして、クリスタと共に大荷物を持ちながらコロニーメンデルの内部奥深くを目指して進むのだった。

 向かう先は、少し前にキラの遺伝子上の母親であるヴィア・ヒビキと会った場所だ。

 

 しかし、非常に残念ながらかつてヴィアが居た部屋には誰もおらず、彼女の私物と思われる物は何も残っていないのであった。

 

「なるほど。ここがメンデルか。少しざわつく物があるな」

「気分悪い?」

「いや、そういうワケでは無い。落ち着かないだけだ」

「あれなら、別の場所に移動するけど」

「その必要はない。セナを探すのであればこれ以上ない場所だ。ここにしよう」

「……ありがとう」

「礼を言われる様な事じゃない」

 

 クリスタはどこかそっけなく、キラの言葉を流して、自分のPCをリュックから取り出し、埃のない綺麗なテーブルの上に置いた。

 キラはそんなクリスタの動きを微笑ましく見ていたのだが……そこでおかしな事に気づく。

 

 この場所は、おそらくヴィアが居なくなってからそれなりに時間が経っているだろうに。埃があまりにも少なすぎるのだ。

 まるで、つい先日まで誰かが居たかの様に……。

 

「クリスタ! ここは」

「あらあら。やっぱりお二人はここに居らっしゃいましたわね」

「っ! 君は……!」

「貴様……!」

 

「ふふ。ふふふ。(わたくし)の勘も捨てたものではありませんわね」

「ラクスの……クローン」

「えぇえぇ。その通りですわ。キラ。それにクリスタ様。お久しぶりと言うのが正しいかしら。(わたくし)はラクス・クライン。その様に呼ばれていた者ですわ」

 

 やや手狭な研究室の一つしかない入り口に立ちながら、中に居るキラとクリスタに微笑む少女は……悪意に満ちた微笑みを浮かべているラクス・クラインにそっくりな少女は、二人の動揺に微笑みながら自己紹介をする。

 そのあまりにも堂々とした立ち姿に、キラもクリスタも警戒しながら武器などを探していた。

 しかし、そんなキラとセナにラクスはニコリと本物の様な笑みを浮かべて語り掛ける。

 

「それほど警戒されましても。(わたくし)は何もしませんわ」

「それを信じられると思う?」

「えぇ。無論。そうであると信じておりますわ。だって、キラもクリスタ様も、人を傷つける事が出来ないお方でしょう?」

 

 クスクスとバカにした様に笑うラクスに、キラはクリスタを護る為ならばと銃を手に取った。

 しかし、その銃が構えられるよりも前にラクスは続く言葉をキラに向ける。

 

「それに。(わたくし)が居ると便利ですわよ」

「……例えば?」

「このお部屋のお掃除! これを行ったのは(わたくし)ですし。(わたくし)はお料理も出来ますから。お二人はお二人の役目に集中できるかと思いますが」

「……食事に毒を盛るかもしれないじゃない」

「え? (わたくし)が? 何故?」

 

 キラの言葉に、本気で意味が分からないという様な顔で首を傾げたラクスに、キラはハァとため息を吐いてクリスタを見やった。

 クリスタは心底嫌そうな顔をしていたが、キラの疑問に肯定を返す。

 

「この女の言うコトは真実だ。頭のおかしい女である事は確かだが、こちらを害する意思はない」

「なるほど」

「まぁ、しかし、傍に置いておくメリットも無いから、このまま排除した方が精神の安定を図れる事は確かだ」

「そんな……! クリスタ様……! あれほど誠心誠意お仕えしていたというのに……!」

「やめろ。近づくな。すり寄るな。声を出すな。気持ちが悪い」

 

 クリスタは声だけでなく、体もクリスタにすり寄るラクスに小さな手で抵抗しようとしていたが、ラクスの方が力が強い様で、うまく弾く事が出来ないのであった。

 しかし、クリスタ自身、そこまで本気で抵抗しているワケでは無いようで、何だかんだ仲が良いのかもなとキラは銃を収めるのだった。

 何かあったらその時に対処しようと考えて。

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