キラとファウンデーション王国との戦闘は様々な者達に届き、キラがセナと戦う意志がある事を世界に示した。
それにより人々はデスティニープランは正しくないのではないか。
キラの願う、自由な未来こそが素晴らしい未来なのでは無いかと考え始めた。
そして、当然ではあるが、キラの戦いはオーブでも観測しており、カガリは決意を込めた様な顔でコンパスの面々へと通信を繋ぐ。
『少し前の戦いはお前たちも見たと思う』
「あぁ」
「はい!」
『キラは敗北し、敵に囚われてしまった。しかし、彼女の奮闘により必ずしもセナの願う未来が正しいワケではないという事は民衆も理解しただろう』
「まー。意見をコロコロ変えてて、愚民って感じだけどね」
「ちょっと、アグネス……!」
「何よ。ホントの事でしょ?」
不貞腐れた様な顔をして言い放つアグネスに、ルナマリアは軽く突っ込みを言いながらその発言を撃つ。
しかし、カガリはアグネスの言葉にどこか同調しながら言葉を渡すのだった。
『確かに、アグネスの言いたい事もよく分かる』
「……代表?」
『しかし、幾度も戦争があって、争いも、平和も、戦いも、望む未来へとたどり着けないと知った時、自分たちの手では滅びゆく世界を止められないと知った時、人々は超常の存在に手を伸ばすのだ。自分ではたどり着けない所に居る……キラとセナにな』
『下らん話だ』
『ギナ……』
『何が超常か。キラもセナも、真っすぐなだけで何も考えていない愚か者ではないか。力は強い。カリスマ性はあるだろう。しかし、一人はファウンデーション王国なぞに利用され、もう一人は無意味な特攻を仕掛けている。これのどこに信仰する要素がある』
「それは違います」
『アスラン……?』
「あの時と、あの軌道上の戦いと同じです。セナは自分を討つ事でデスティニープランは不完全だという事を世界に示そうとしている。キラも、そんなセナを倒す事で、自由を世界に見せようとした。同じことなんですよ。これは……!」
アスランは拳をギュッと握りしめながらカガリの後ろに居た男、ロンド・ギナ・サハクへと言葉を向けた。
そして、どこか決意を込めた様な顔のまま言葉を続ける。
「だから、俺はもう一度同じことを繰り返したいとは思いません。キラがセナを討てば、世界に自由を示せば戦いは終わる。前と同じ様に。今度こそ世界はキラを神として、コンパスの代表として、世界を導く存在になってほしいと願うでしょう。しかし、それでは駄目だ! 世界は救われても、キラは救われない!」
『ならばお前はどうしたい。アスラン・ザラ』
「俺達が解決します。キラは介入させない。セナも殺さない。ただ、ファウンデーション王国を撃って、世界の行く末は、キラでもセナでもなくて、自分達で考える様にします。考えられる様にします。彼女たちは神じゃない!」
『……そうか。アスラン以外はどうだ?』
ギナはアスランの話を聞いてから、周囲の者達へと視線を向けた。
それに応えてルナマリア達が口を開く。
「私はアスランさんの意見に賛成」
「私も。キラさんには自由が似合うよ」
「俺も賛成です。そして、ここにはいませんが、シンも賛成だと思います」
ルナマリア、アグネス、レイの言葉にギナはゆっくりと頷いて、その奥に居る者達へも視線を向けた。
「半分は賛成しよう」
「え? アレックスさん?」
「アスラン・ザラの言う事は正しいが、キラを助けない理由にはならない。俺はキラを救出しに行く」
「あ、そういう事ですか。それなら、僕とアレックスさんでキラさんの救出に向かいましょう」
「なら、彼女と合流して行動して貰えるか? 向こうと息を合わせる方が良いと思う」
「……タイミングも人員も俺が決める」
「アレックスさん……!」
「……フン。良いだろう。現在、メンデルに居るであろう彼女と連絡を取って行動する。これで良いんだろう?」
「あぁ」
「ハァ。ホント、仲が悪いんですから」
二コルは深いため息を吐いて、睨み合うアスランとアレックスを見やった。
そして、少し離れた所から見ていた彼らのサポートをしているメイリン・ホークは笑顔のまま頷いて、二コルの肩をポンポンと叩く。
その酷く嬉しそうな顔に、二コルはさらに深いため息を吐くのだった。
ルナマリアは、最近会わない妹が妙な趣味を楽しんでいるなと思いながらも話にはださず、作戦の方へと集中してゆく。
「まずは部隊を三つに分けよう。一つはファウンデーション王国の本隊を叩く。これは俺達でやる」
「はい」
「そして、次にキラとラクスの救出だ」
「任せろ」
「最後に、これは予測になるが、連中はレクイエムを修復し、自分たちの物としている可能性が高い。これはカガリたちに任せたい」
『あぁ。既に月艦隊を動かしてダイダロス基地を偵察させている。おそらくは最悪な情報が帰ってくると思うがな』
「助かる。作戦は非常にシンプルだが、現場は面倒な事象ばかりだ。臨機応変に、必要であれば別部隊の救援も行ってくれ」
アスランは短く参加する者達へと言葉を残し、強く声を掛けた。
「必ず作戦を遂行し、生きて帰ろう!」
「「「了解!!」」」
アスランの声に、作戦に参加する者達は声を大きく合わせ、それぞれの作戦に向けて行動を始めるのだった。
そして、アスラン達が動き出す少し前。
かつて戦闘があったファウンデーション王国の外れでは、一つのシャトルをシンが準備していた。
「助かるよ。シン君」
「いえ。こういうのは得意ですから」
「でも、私も戦場へ向かうというのは迷惑だったでしょ?」
「俺としては移動手段を貸していただけるだけありがたいです。その行き先がエターナルでもオーブでも、俺がやることは変わりませんから」
「……シン君」
シンは黙々とシャトルの準備をしながら、彼を見据えるジゼルに言葉を向ける。
そんなシンにジゼルはどこか言い淀んだ様な顔をしながら口を開こうとして、止めてしまう。
しかし、そんなジゼルにシンはふぅと疲れを吐き出してから言葉を向けた。
「気にしないで下さい」
「っ! シン君」
「母親であるジゼルさんが、娘のラクス様を気にするのは当然の事です。だから、戦場へと向かおうとする気持ちも、よくわかります」
「……あぁ」
「それに、ラクス様の幸せを思うのであれば、平和の為に、ラクス様やキラさんの事を象徴とするべきじゃない。それは俺にも分かります」
「君は、良いの?」
「えぇ。勿論。俺は、この道を自分で選んだんです。戦う道を」
ギュッと自分の拳を握りしめて言うシンに、ジゼルはどこか困ったような顔を向けた。
そして、そんなジゼルにシンは続く言葉を投げる。
「それに、結構良いんですよ。給料」
「……給料?」
「えぇ。民間で働くよりも、コンパスでエースやってる方がお金がいっぱい貰えて。今度、マユも良い学校に進学出来るんです。まぁ、殆どはマユの努力だと思うんですけど」
「……うん」
「けれど、マユが進学で悩む必要はないくらいにいっぱいお金が貰えてて、多分、三十台になる頃にはもう働かなくても良いんじゃないかなってくらい、お金が溜まりそうなんですよね。だから、俺は自分の選択を後悔はしていないんです」
「そっか」
「はい。どんな選択にも、良い所と悪い所があって、俺のこの選択だって、いつ死ぬか分からない。逃げられないっていうデメリットはありますけど、それでも、俺が選んだ選択なんです。この道を突き進む覚悟もあります」
シンは強くジゼルに対して言葉を向けた。
その言葉に、ジゼルはどこか納得を自分の中で得ながら静かに自分の中で頷くのであった。
それから。
シンやオーブの動きは知らぬまま、宇宙にあるグルヴェイグの中でオルフェは静かに行動を開始していた。
「オーブの動きはどうか!」
「未だ動き在りません」
「大西洋連邦は?」
「地上は何も動いておりませんが、月にて部隊を動かしている様です」
「フン。コソコソと戦いの準備か。アズラエルめ」
「っ! ユーラシア連邦に動きがあります!」
「なに!?」
「地上より、大部隊が打ち上げられています! 彼らはこちらに戦闘を仕掛ける可能性があります!」
「まぁ、地球圏で争いを始めたのは我らだけだからな。よし、レクイエムを準備しろ!」
「ハッ!」
オルフェの合図で月にあるダイダロス基地のレクイエムは発射する為の準備が始まってゆく。
照準の為のコロニーは小型化され、更にミラージュコロイドによって隠され、撃たれる瞬間までは誰にも分からない。
レクイエムを撃とうとしているファウンデーション王国の者達以外は。
「ダイダロス基地より通信が入りました!」
「なんだ」
「レクイエム発射に気づいた者たちが発射を阻止しようとしたようですが、ジャガンナート中佐の部隊により制圧。無事レクイエムのコントロールを奪取した様です」
「そうか。コーディネーターにしてはやるじゃないか。では、予定通り、ジャガンナート中佐旗下の部隊はレクイエムの防衛に当たられたし!」
「了解です!」
オルフェは薄暗いブリッジの指令室に座りながら、モニターに映る地球圏を見やった。
オルフェ達以外は誰も気づいていない、既に地球圏がレクイエムによってオルフェ達の手の中に落ちている事に。
「いよいよか。キラの介入さえなければ全て順調だったんだが」
「それは仕方ない。まさか、ビームが主体のストライクフリーダムでルドラたちを撃つとは、私も予測は出来なかった」
「確かにな。俺でも、アレは真似出来ん。アコードだコーディネーターだという前に、キラはいよいよ人間離れしてきているな」
「だからこそだ。彼女をいつまでも神の座には置いてはおけない」
「そうだな」
「この戦いを経て、我らは人類を支配する。そして、彼女たちを解放するのだ」
オルフェは力強くシュラに言葉を返してから、椅子より立ち上がり、エネルギーがチャージされているレクイエムを見やった。
「レクイエム。チャージ完了」
「……では、我らの戦いを始めよう」
オルフェは静かに言葉を零してから、レーダーを見やった。
そして……。
「レクイエム! 発射だ!!」
オルフェの指示により、レクイエムは巨大なビームを吐き出し、特殊なコロニーによって向きを変えながら、今まさに地球から打ち上げられているユーラシア連邦の艦体へと突き刺さるのだった。