オルフェの指示により月のダイダロス基地から超巨大ビーム砲が放たれ、いくつかの中継点を経て、地球から宇宙へと打ち上げられている艦隊を焼き払った。
その一撃は、艦隊だけでなく艦隊を打ち上げていた基地も全て焼き尽くし、その場にいた人間を全て抹殺する。
『以前にも言った事をもう一度言おう』
『我々は悪である! 世界を支配する存在だ!』
『そんな我らを疎ましく思う存在が居るのは当然だ。それを攻撃しようとするのは当然だろう』
『しかし、我らの上にはセナ様が居る。セナ様の理想とする世界がある!』
『我らは悪であるが故、セナ様の理想を阻む者達を実力にて排除する!』
『以前行われた地球軌道上の戦いは諸君も見ただろう!』
『セナ様が理想を胸に、世界へと言葉を向けてもそれは阻まれた!』
『他ならぬキラ様の手で、だ!』
『しかし、考えて貰いたい! 果たしてキラ様が、あの平和を願い言葉を世界に向けて来たキラ様が平和を願うセナ様を攻撃するだろうか!』
『その意思を止めようとするだろうか!』
『否! 否である!! 彼女はセナ様を排除しようと目論む者たちに排除されたのだ!』
『かつてギルバート・デュランダルは、この世界に住まう人の意志が争いを呼んでいると言った!』
『私はその考えは正しいと思う! この状況! 世界の全てを見て、正しいと考える!』
『何故なら、我らはセナ様の理想とする世界を作ると宣言しただけだ!』
『だというのに、ユーラシア連邦は我らに艦隊を差し向け、実力行使にて、セナ様へと危害を加えようとしたのだ!』
『これは許される事ではない!!』
オルフェの言葉に、宣告もなく艦隊を撃たれたユーラシア連邦は異論をそれぞれの場所で唱えるが、ファウンデーション王国が支配する放送ネットワークは奪うことが出来ず、言葉は彼らだけに独占されていた。
そして、言葉が奪われるという事は一切の反論が許されず、彼らの横暴を許す事になる。
無論、話し合いの場などを持つ事は出来るが、デスティニープランの信奉者、セナの信奉者たちは国家などという枠組みは必要ないと考えており、世界は神たるセナに委ねるべきだと考えているのだ。
『世界に住まう力なき者達よ! 我らは貴君らを攻撃はしない!』
『世界は一つになるべきだ。セナ様を神として、争いばかりを繰り返す我らを、セナ様の御力で御導きいただこうではないか!』
『これはお願いではない。宣告だ! 我らはセナ様の考えに従っている。セナ様の理想の殉じている』
『我らの行動を武力にて阻もうとする者は、例え誰であろうと容赦はしない!!』
オルフェは高らかに宣言してから通信を切って、再び世界の情勢をオペレーターに確認しようとした。
しかし、オルフェが確認するよりも早く、事態は動き出していた。
「オーブ連合首長国に動きあり! 海中より浮上した戦艦、ミレニアムがオーブの護衛艦に守られながら加速し、大気圏へ向かっています!」
「なに!? レクイエムは!」
「チャージは始めていますが、未だチャージは不十分です!」
「チッ……これを狙って、ユーラシア連邦が撃たれた直後に動き始めたか……!」
「さらに、大西洋連邦より幾多の宇宙艦がマスドライバーによって宇宙へと向かっています。月でも動きが!」
「なるほど。タイミングを合わせて来たか。カガリ・ユラ・アスハめ。いや、ムルタ・アズラエルか」
オルフェは今、存在する敵へ向けて言葉を放つ。
その言葉はどこかに届くという様な事は無いが、彼の言葉に対応した様にカガリとアズラエルは通信を繋げながら言葉を交わし合っていた。
『月から艦隊を出した。狙いはダイダロス基地だ』
『あぁ。こちらも月から部隊を発進させている。合流はダイダロス基地の目前だな』
『レクイエム防衛にはプラントからも部隊を出している様だ。つまり敵はコーディネーター共って事だね』
『コーディネーター共ではなく、アコードの作戦に加担するコーディネーターだ』
『はいはい。分かってますよ。別にプラントを総攻撃しようって訳じゃないんだ』
『お前のやり口は分かっているつもりだがな。プラントを狙おうとするのは止めろ。あの国はもう戦争を望んじゃ居ないんだ』
『……まぁ、そうだろうね』
『アズラエル?』
『キラのやってきた事にも意味があったって事だろうさ。プラントはもうナチュラルを憎んで戦争をする事はない。だからこそ、一部の過激派がアコードと手を組んで動き始めたんだろう』
『あぁ』
『撃つのは過激派だけ。分かっているよ。プラントを巻き込むと、君やキラが煩いからね』
『分かっていればいい』
カガリは短く言葉を向けながらアズラエルの思考を読もうとしたが、アズラエルはどこか達観した様な顔をしたまま大西洋連邦に指示を出しているのだった。
その姿に、カガリはひとまずの安心を得て、オーブ艦隊の状況を確認する。
カガリとアズラエルの指揮により、ダイダロス基地へと向けられた大西洋連邦とオーブの艦隊であるが、動きとしてはファウンデーション王国の方が遥かに早かった。
オーブや大西洋連邦の艦隊を無視して、オルフェはいきなり本命を狙い撃とうとする。
「オーブ、大西洋連邦艦隊! 近づいています! レクイエムチャージ100%! いつでも撃てます!」
「狙いはオーブ連合首長国! 首都! オロファト!」
「なっ! か、艦隊を無視して、オーブを撃つというのですか!?」
「そうだ。艦隊と言っても所詮はナチュラルの集まり、ジャガンナート中佐の部隊が十分に抑えられるだろう。それに、シヴァが数機ダイダロス基地に配備されている。次の発射までは十分に持たせられる筈だ。その時に、艦隊か、または別の目標を撃てばいい。今はオーブ! かの国家はセナ様に反逆する者達の巣窟だ。あの国を撃てば反乱軍も動きを止める!」
「ハッ! はい! 了解しました!」
オルフェはレクイエムの照準がオーブに向けられることに笑みを浮かべた。
キラを排除し、セナを敵とした国が消えることに限りのない喜びがあふれる。
「コロニー全機配備完了!」
「レクイエム発射カウントダウン開始します! 10、9……」
「いよいよ終わりの時だ。オーブ。カガリ・ユラ・アスハ!」
「っ! これは!?」
「なんだ!?」
急遽指令室に響いた声に、オルフェは急いで状況を確認するべくそちらへと視線を向ける。
だが、届いた報告は信じられない様な物であった。
「レクイエム! 射線上にモビルスーツ!!」
「なに!? モビルスーツが何をしようっていうんだ!」
「レクイエム! 発射されます!!」
ファウンデーション王国が躊躇いなくレクイエムを発射し、オーブは破滅の光にて焼き払われるかと思われた。
しかし、レクイエムの直上に現れたモビルスーツ『アカツキ』は黄金に輝くシールドを構えながらレクイエムの超巨大ビームを受け止める。
その光は本来モビルスーツなどは飲み込んで目標を破壊する筈が、アカツキは全身がヤタノカガミと呼ばれる特殊な対ビームコーティングで覆われており、レクイエムはそのビームをアカツキから四方に散らされて、さらに収束されたビーム砲が逆にレクイエム本体へと向けられる。
レクイエム自身がレクイエムのビームを受ける事で、レクイエム内部は爆発を起こしながら破損し、さらにはアカツキが反射したビームによって四方にあった戦艦は傷つき、火を噴きながら月面へと落ちて行った。
『作戦成功だ! マリュー!』
「……ムウ! 良かった……」
「艦長!」
「えぇ。いきましょう! 全砲門開け! ガーティ・ルー戦闘を開始します! モビルスーツ隊! 全機発進!!」
マリューの合図で、何も無かった空間から灰色の戦艦が現れ、各砲を展開しながら前方のカタパルトが開かれてゆく。
『ラウ・ル・クルーゼだ! プロヴィデンス! 出るぞ!』
『ネオ・ロアノーク! リュニック出撃する!』
『スウェン・カル・バヤン。ストライクノワール。出る!』
『ミューディー・ホルクロフト! ブルデュエル出るわ!』
『シャムス・コーザだ! ヴェルデバスター! 出撃する!』
『スターゲイザーを出すよ! 行こう、セレーネ!』
『えぇ! 行きましょう!』
「スターゲイザーは本艦の護衛を! クルーゼさんとネオさんはオーブ艦隊と、スウェンさん、ミューディーさん、シャムスさんは大西洋連邦の艦隊と動きを合わせて下さい!」
『『了解!』』
「ムウは一度帰投して! アカツキは整備に回すわ! ムラサメ改で再度出撃!」
『了解した! アカツキ! 帰還する!』
何の前触れもなく現れたガーティ・ルーからは複数のモビルスーツが発進され、それぞれがダイダロス基地の防衛を行っていたモビルスーツを圧倒的な力で倒してゆく。
まるで考えていなかった戦力が増えた事にオルフェは怒りを机に叩きつけながら一つの命令をオペレーターへと行う。
「シヴァを投入しろ!」
「ハッ!」
「ブラックナイトスコードシヴァ。全機発進」
「目標はガーティ・ルーと搭載モビルスーツだ!」
「了解。全機へ。目標はガーティ・ルー。及びその搭載モビルスーツ!」
オルフェからの指示は即座にダイダロス基地へと送られ、複数のブラックナイトスコードシヴァがクルーゼ達の元へと武器を構えて飛び込んでいった。
途中に居たオーブや大西洋連邦のモビルスーツは容易く切り裂かれ、クルーゼは漆黒の機体が接近してきている事を知る。
『なんだ、これは。敵のエース機か!』
クルーゼは咄嗟にドラグーンシステムを展開し、ブラックナイトスコードシヴァを狙い撃つが、シヴァにビーム攻撃は効かない。
シュラは多数のビーム攻撃を受けながらも真っすぐにプロヴィデンスへと向かい、所持していたVIG-E3/M 近接対装甲刀「ディス・パテール」でプロヴィデンスを切り裂こうとした。
しかし、プロヴィデンスへと突っ込んだ、シヴァの前に一機のモビルスーツが現れる。
『隊長……! 下がってください! コイツは俺が!』
『スウェン! 君か!』
『コイツはビームを弾きます! プロヴィデンスでは相性が最悪だ! この機体の相手は! ノワールが!』
『邪魔をするな!』
『ちぃっ!』
シュラに蹴り飛ばされ、スウェンはシヴァから距離をとるが、構えていたビームブレイドを真っすぐに構えて「ディス・パテール」を構えたシヴァを見つめるのだった。