ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第278話『落ち着いている人が暴れる事は無いのですよ』

 ダイダロス基地付近で戦いが繰り広げられている頃。

 地球から大気圏を抜けて宇宙へと上がったミレニアムは、地球からそれなりに離れている場所に展開しているファウンデーション王国の艦隊を見やる。

 そして、まずは言葉での接触を始めた。

 

「あー。こちら、ミレニアム。こちらは世界平和監視機構コンパスである。旗艦が大量破壊兵器レクイエムを使用したのは既に把握している。武器を捨て、投降せよ!」

 

 コノエは全周波通信でファウンデーション王国の艦隊に言葉を向けながらその動きを待った。

 しかし、ファウンデーション王国からの回答はなく、各戦艦から順次モビルスーツが展開されてゆく。

 

「返答はなし。か……モビルスーツ隊を発進させてくれ」

「はい! カタパルト接続。全システムオンライン……!」

 

 順次モビルスーツが発進されてゆく状況を見ながらコノエは冷静に戦場を見やった。

 敵の狙いは何か。

 どうして月でもなく、どこかに隠れるでもなく、この場に留まっているのか。

 

 モビルスーツが回り込む様にファウンデーション王国の艦隊へと向かうのを見ながら、コノエは静かに戦場を見つめていたのだが。

 

「っ! 敵旗艦! 主砲発射体勢! 本艦が狙われています」

「回避行動……! 及び、回り込みながら主砲照準敵艦隊」

「艦長。よける必要はありません。正面へと進みましょう!」

「なに? どういう事かね。ハインライン大尉」

「我に新兵器あり! 耐熱耐衝撃結晶装甲展開!」

 

 コノエが敵の行動を見やって回避を行おうとした瞬間、ハインラインがミレニアム全体を覆うように防御ジュエルを展開し、コノエはハインラインの言う新兵器の威力を信じて、回避ではなく進行を選択した。

 そして、その意志に応える様に向けられた主砲、各種ビーム砲は全て弾き、ミサイルは全てミレニアムの速さで置き去りにしてしまった。

 

 ミレニアムは艦隊戦の中で、通常ではありえない加速を始め、戦艦同士の戦いとしては考えられない高速戦闘を戦艦で実現してしまう。

 それにファウンデーション王国の者達は艦隊では対抗できないとモビルスーツの主力、ブラックナイトスコードを展開してゆくのだった。

 

『死にぞこないが、また挑みに来るなんてね』

『きゃはは! 今度こそ潰しちゃお!』

『油断するなよ。リデル。嘘でもキラ様が選んだ逸材だ』

『それでも、キラ様以外は数合わせだ。あんな神技ポンポン出来るものじゃない』

 

 彼らはそれぞれ思いを口にしながら戦場へと向かう。

 それに相対してアスラン達も、戦いの為に向かおうとしたのだが、流星の様な勢いで突っ込んできた機体が一機あり、アスランは咄嗟にビームシールドを構えて、その機体の突撃を食い止めた。

 

『インフィニットジャスティス! 誰が乗っている!』

「あの時と、同じ機体……! また量産型か!」

『その声! アスラン・ザラか! 死んだと聞いていたが! ふっは、ははは! これは運がいい! 俺が相手だ!』

「所詮はまがい物! 恐れる事はない!」

『なめるな!! 俺はシュラ・サーペンタイン! 劣化コピーとは違う! オリジナルだ!!』

 

 アスランはシュラの攻撃を受け止めたまま高速戦闘を始めつつ月の方へと流れて行った。

 そんなアスランを助けに行こうとしたが、ルナマリア達の前には四機のルドラが襲い掛かっており、その相手に意識を割かれてしまう。

 レイとルナマリアとアグネス。

 それに、リデラード、ダニエル、リュー、グリフィンの入り乱れる戦闘は始まり、戦闘は混戦状態となった。

 

 彼らの戦いは膠着状態……というよりは数の不利もあって、少しずつレイ達が押されてゆく。

 数居る量産機に関してはヒルダ達がゲルググを用いて一機ずつ落としているが、エース機同士での戦いはどうしてもレイ達が不利であった。

 

 しかし、それでも彼らは負ける理由にはならないと戦いを続ける。

 それが何かに繋がるのではないかと考えて。

 

 

 レイ達が戦闘を始めた頃。

 地球からも月からも少し離れた軍事要塞アルテミスでは、一人の女性が部屋の中で怒りを示していた。

 

「こんな所に連れてきて! どういうつもりさ!」

「き、キラ様。どうか落ち着いてください」

「僕は落ち着いてるよ! 落ち着いたまま暴れてるの!」

「そんな……!」

 

 オロオロとキラの周囲に立っていた侍女たちは慌てた様子でキラの状態を止めるでもなく、触れる事なく自由にさせていたが、両手両足が拘束されているキラに出来る事はなく、ただ文句を言うばかりであった。

 そして、そんなキラの部屋に一人の客人が入ってくる。

 

「落ち着いている人が暴れる事は無いのですよ」

「っ! 貴女は」

「私が監視します。あなた達は他の仕事を」

「はい!」

 

 キラの部屋に入って来た女性、イングリットはどこか冷静な顔をしながらキラを見据え、近くにいた侍女たちを別の部屋に向かわせる。

 その後で、言い聞かせる様な口調でキラに語り始めた。

 

「流石。という言い方は好きではありませんが。貴女の行動には驚かされます」

「……なにが」

「貴女が注意を引いて、その間にラクス・クラインが脱出する為の行動を始める。彼女の心の声が聞こえなければ防ぐ事は出来なかったと思います」

「っ! ラクスは!?」

「殺してはいません。彼女の利用価値はこれからの時代に必要な物です。貴女も」

「君たちは……何が目的なの!? セナを利用するだけじゃないんでしょ!」

「セナ様の理想を叶える為に行動している事は真実です。しかし、確かにキラ様が仰る通り、私達にはデスティニープランのその先があります」

「先……!?」

「はい。それは自由。誰にも、何にも囚われずに生きる自由です」

「それは……!」

「キラ様の理想。私達はキラ様の敵ではありません。デスティニープランを施行した後は、自由な世界が待って言うのです」

「なにが! デスティニープランで自由を奪っておいて! なにが自由だよ! どこにも自由なんか無いだろ!」

「あります」

「……!」

 

 確信を込めた様なイングリットの言葉に、キラはグッと息を飲み込んだ。

 そして、反論する様に言葉を向ける。

 

「僕とセナの考え方は相反するものだ。どちらも共存する事はない。人々はデスティニープランに自由を奪われる」

「えぇ。それは間違いありません」

「なら……!」

「ですが、世界を争いへ導いて来た者達がデスティニープランに囚われても、キラ様やセナ様が運命に囚われる事はありません。お二人は争いのない世界で自由に生きるべきです」

「な、に……!?」

「お二人の戦いは、我らもずっと見て来ました。コーディネーターとナチュラルの戦争。ロゴスが起こした戦争。そして、それらの戦争が起きる前の時代から、キラ様とセナ様は平和の為に戦って来ました。デスティニープランが施行された後は、平和の為に活動する必要はありません。お二人は自由なまま生きて良いのです」

「バカな……!」

 

 キラはイングリットが当たり前の様に言った言葉に食らいついた。

 それはおかしいと。それは間違えていると。

 

「僕らだけが自由になって、何の意味があるんだ!」

「これまで戦ってきた成果です。恨む者は居ませんよ。これから世界はデスティニープランによって支配されるのですから」

「っ! 世界の人が肯定したとしても! 僕は否定する!!」

 

 キラが叫んだ言葉に、イングリットは母の様な顔で、キラの言葉を否定した。

 

「キラ様。貴女自身が知っているでしょう。個人の力など些細な物だと。これまで世界と戦ってきた貴女なら知っている筈です。世界は誰かの意志を受け入れる者じゃない」

「それでも……!」

 

「それでも、諦める理由にはなりませんわ」

「っ!? 何者!」

 

 キラとイングリットしか居ない部屋に、突如として響いた声に、イングリットはキラから入り口の方へと顔を向けて、驚きに固まった。

 あり得ない。

 彼女は先ほどまで厳重に監視して、奥に閉じ込めていた筈である。

 監視の人間だっているのだ。

 

 なのに、どうして、ここに居るのか。

 

「ラクス・クライン!?」

「えぇ。初めまして。でしょうか。イングリットさん。キラは返していただきますわ」

「っ! 近づかないで!」

 

 イングリットは咄嗟にキラの首筋にナイフを突きつけて人質にしようとした。

 しかし、ラクスの後ろから放たれた銃弾の様に走って来た男がイングリットの持っていたナイフを蹴り上げて、逆に持っていたナイフをイングリットの首筋に突きつける。

 

「アスラン!?」

「違う。俺は、アレックス。アレックス・ディノだ」

 

 キラの驚きに冷静な返答を返して、アレックスは冷静にイングリットを見やる。

 イングリットは形成が逆転してもキラを離す事はなく、キラを強く抱き寄せながらアレックスを睨みつけていた。

 その姿に仕方ないかとナイフを突き刺そうとしたのだが。

 

「アレックスさん。それ以上はいけません」

「っ! ラクス・クライン!」

「人を殺める姿をキラに見せるおつもりですか?」

「それは……!」

「それに、彼女を説得するのなら、貴方ではなく、もっと相応しい人がいる。そうですよね? オルフェさん」

「オルフェ!?」

 

 ラクスの言葉に、パイロットスーツを着たまま部屋の中に入って来たオルフェは冷静な目でイングリットを見つめてから言葉を向ける。

 

「イングリット。彼女を離せ。キラを縛るな」

「あなた……! 貴方は! オルフェの偽物! 役目を放棄して、逃げ出した者!」

「ぐっ」

「キラ!!」

 

 激しい怒りを向けられて、イングリットは強くキラを抱き寄せながら壁際に寄った。

 そして、ジッと部屋に入って来たオルフェを睨みつけて言葉を向ける。

 

「今さら! のうのうと私の前に良くも顔を出せた物ね! 裏切者の癖に!」

「私は、裏切者ではない」

「よく言うわ! 前のイングリットはそうやって騙せたかもしれないけどね! 私は、感情では揺れない様に調整されているのよ!」

「イングリットは感情のままに行動しているんじゃないんだ。彼女なりの考え方が」

「うるさい! 私は!」

 

 イングリットが叫ぼうとした瞬間、どこからともなく銃弾が放たれ、腕を撃たれたイングリットよりキラは解放される。

 キラが自由になった瞬間、アスランはキラを抱えてオルフェの後ろへと向かい、手足を縛っている拘束を外すのだった。

 そして、このまま脱出しようとしたのだが。

 

「ぐっ、このっ!」

 

 腕を銃弾がかすめ、赤い血を流していたイングリットは持っていた端末から基地内に警報を鳴らし、状況を他の者達へも伝えるのだった。

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