戦場へと舞い戻ったシンは、デスティニーの圧倒的な加速力で戦場を駆け、道中に居る敵艦や敵機を破壊しながら味方の居る場所に飛び込んだ。
機体は四方からの攻撃でボロボロとなっているが、シンの到着に皆が喜びの声を上げる。
「レイ! ルナ! アグネス! 無事か!?」
『シン……!』
『良かった。無事だったのね!』
『遅いのよ! シン!』
「遅くなってごめん。けれど、もうこれで終わりだから!」
シンは背負っていたMMI-714『アロンダイト ビームソード』を真っすぐに構えて、カメラアイを光らせる。
そして、デスティニーの全身に埋め込まれたサイコフレームを共鳴させて、シン自身の反応速度をより高めて行った。
サイコフレームは真紅の光をデスティニーの関節部で発し、シンは敵の姿を目にして、自分の中にある力を高めてゆく。
『学習能力ねえなあ。おまえごとき相手にならんと証明してやっただろうがァッ!!』
戦場に飛び込んできて、レイ達の前に立ってアロンダイトを構えたまま静かに精神を集中させているシンに、ブラックナイトスコードの一員であるグリフィン・アルバレストは自機、ルドラのOWC-QZ200『対モビルスーツ重斬刀』を引き抜いて、シンに迫る。
心を読みながらシンの行動の先読みをしようとするグリフィンに、レイ達同様、シンもすぐに直接的な戦闘では敗北してしまうと思われた。
だが……。
『な、なにぃ!?』
「ふっ……!」
シンは突っ込んできたルドラの一撃をギリギリでかわし、ルドラの腕をアロンダイトで斬り付ける。
咄嗟にグリフィンは回避行動をとった為、切り捨てられる事は無かったが、一瞬の攻防で、シンとグリフィンのどちらが強いかはハッキリと示された。
それに、グリフィン以外のブラックナイトスコードの面々は驚きの声を上げるが、そんな彼らの反応を待つ事はなく、レイ達は動き出していた。
効かないと分かっているが、持っていたビームライフルでルドラを狙撃し、ミサイルで行動を阻害する。
『くっ! がっ! こいつ等!』
『援護します!』
『負け犬が!』
『いい加減落ちなよ!』
レイ達が戦場に参加した事で、他のブラックナイトスコードの面々もすぐに戦場に飛び込んで、彼らを蹂躙しようとした。
しかし、先ほどまでの戦いとは違い、レイ達は一方的に攻撃を受ける様な事はなく、シンと同じ様に攻撃をかわしながら彼らに反撃をするのだった。
『な、なんで!』
『くぅ! コンビネーションアタックだ! 行きますよ!』
『『『おう!』』』
どれほど攻撃しても、レイ達はアッサリとその攻撃を見破って、かわしながら反撃を行ってくる。
それが有効打となる事は無かったが、彼らの行動を阻害する物で。
どこまで不快な物であった。
それに……。
『なん、だ! これは!?』
『見えない!?』
『思考していないのか!? いや、違う! あの金属が、サイコフレームが彼らの思念を読ませない様にしているのか!』
『そんな!』
ブラックナイトスコードの面々が叫ぶように、シン達の思考は、シンの駆るデスティニーのサイコフレームにより外部からの干渉を防いでおり、アコードの能力と言えど、彼らの思考を読む事は出来なかった。
だから、戦闘の最中でも余裕があり、軽口などを挟んでゆく。
『心を読まれなきゃ、こんなモンね!』
『所詮はアコードの力に溺れた連中だ。戦場を駆けて来た俺たちの敵じゃない』
『そういうこと!』
『いや、アグネスは戦闘始めたのは最近でしょ』
『ちょっと! ルナ! 今そう言う事言わないでよ! 私は悪く無いでしょ! パパがプラント防衛軍とかにするから! 私はキラさんの傍で戦いたかったのに!』
『あーはいはい。そういえば、アグネスって、そういう事情があったのよね』
『忘れないでよ! 私の意志じゃないんだからね!』
『なんだ、こいつ等! 遊んでいるのか!?』
『いや、っ! まずい! リデラード!!』
『え!?』
シン達に翻弄されている中、リデルは眼前に迫って来たデスティニーとレジェンドに、回避をして背後に抜けていく二機へと視線を向けた。
そして、機体も二機へと向き直っていたのだが、仲間からの警告に驚き、声を上げると同時に、通り抜けがてらビームサーベルでリデルの駆るルドラの両足を切り裂いてゆくインパルスに体勢を崩し。
『まずは! 一人!!』
いきなりの攻撃に行動が出来なかったリデルの前方より、ギャンシュトロームの大型サーベル、MA-MR ファルクスG7『ビームアックス』によって右肩より胴体の中心部を切り裂かれ、戦闘継続は出来なくなってしまった。
動く事はまだ出来るが、搭乗者であるリデルは機体が切り裂かれた衝撃で意識を失っており、ただ宇宙を機体に乗せられたまま戦闘不能となった。
『よくも! リデルを!』
『フン。単調な動きだ』
そして、リデルが敗北した事で怒りに身を任せたリューがリデルを攻撃したばかりのアグネスに攻撃を仕掛けるが。
それをレジェンドがビームシールドで受け止め……同時に全てのドラグーンシステムを展開する。
『っ! ドラグーン! だが、たかがビーム砲など! っ! バカな!? ダメージを受けている!?』
『ドラグーンのビームは効かないだろうな。だが、ドラグーンにも直接攻撃をする手段はある!』
レイは二つ用意されていた大型ドラグーンからビームスパイクを展開して、怒りのままに突撃していたリューのルドラの攻撃をビームシールドで受けたまま両腕、両足を破壊し、さらには所持している武装も徹底的に破壊した。
胴体しか残っていない機体に何かが出来るという様な事はなく、リューは呆然としたまま動く事すら出来ない機体の中で、モニターに移るレジェンドを見つめる事となる。
一瞬の攻防があって、仲間である二人を戦闘不能にされたダニエル・ハルパーは顔の半分をマスクで覆いながら、シン達の圧倒的な戦闘を目撃してしまう。
その不幸に、彼らは一時撤退を選ぶ事も出来たが、仲間想いである彼は、散っていった仲間の為にも、母であるアウラが作ろうとした理想の為にも、新しい世界を作ろうとしているセナの為にも、退く事は出来なかった。
向こうに隙は与えず、まずは一機と接近戦の格好をしたままインパルスに突っ込む。
この戦場にあって、いくら核で武装していようが、時代遅れの機体である。
敗北する理由は無いと。
『まずはお前だ!』
『もう飽きてんのよ!』
『落ちろ!』
『私一人なら勝てるって思われてるのは!』
ルナマリアは振り下ろして来たダニエルの近接武装をシールドで受け止めて、外部に弾きながらビームサーベルでルドラの右腕を切り落としながら、バルカンをルドラにぶつけ続ける。
それがダニエルに影響を与える事は無いが、動きは鈍り、次の行動に移る前に、ルナマリアはルドラに蹴りを入れて、背後に飛ばしながらビームサーベルを構えて突撃した。
そして、左肩に深くビームサーベルを突き立てて、バルカンでビームサーベルを爆破させ、ルドラから両腕を奪う。
『くっ……!』
『なめないで! 私だって赤なのよ!』
ルナマリアとダニエルの戦いはルナマリアの勝利で終わり、最後にはグリフィンだけが残る事となった。
しかし、ビームサーベルを失い近接攻撃手段を失っていたインパルスにグリフィンは接近戦を仕掛け、ダニエルにかわり、インパルスを仕留めようとした。
だが、そんなグリフィンのルドラをデスティニーが捕まえて、その加速力でインパルスから引き離す。
『シン!』
『ルナに近づくな!!』
『ぐ、くぅ……!』
『このまま!』
『やらせるか! 闇に、落ちろ!!』
グリフィンは自機を捕まえていたデスティニーから、サイコフレームの妨害をすり抜けて直接シンの精神をつかみ取ろうとした。
かつてファウンデーション王国で、シュラがアスランにやった様に。
シンの絶望を再起させて、幻覚を見せて、シンとレイ達を同士討ちさせようとしたのだ。
しかし……。
『戦いに勝てないからと言って、精神攻撃というのは気に入らないな』
『っ!? 男の、こえ!?』
『君たちは彼に敗北した。大人しく負けを認めたまえ』
『お前が言うのか? シャア』
『私だからこそ、言えることさ』
『戯れるな!!』
『そこだ!!』
グリフィンはデスティニーを突き飛ばして、サイコフレームの向こう側から流れて来た二人の男の思念を引き離す。
そして、体勢を整えようとしたのだが、シンが一瞬止まったグリフィンの隙を見逃す筈もなく。
シンはアロンダイトを構えたまま分身を出して、グリフィンを混乱させたまま右肩に突き刺す。
そして、アロンダイトが刺さった衝撃で動けなくなっているルドラに、両肩にあったRQM60F『フラッシュエッジ2 ビームブーメラン』を引き抜いて、両手に構えたままそれでルドラを切り裂き、行動不能にする。
結局グリフィンのルドラは破壊されずに済んだが、それでも彼が戦闘を継続する事は不可能なのであった。
そして、シンが介入したことによりレイ達が行っていた戦いは終わりを告げた。
しかし、これで戦いが終わった訳ではない。
何故なら、敗北したルドラのコックピットにあるモニターにはある人物が映っていて、声を発していたからだ。
「生きていますか?」
『せ、ナ……様。もうしわけ……』
「いえ。それだけ彼らの力が強かったという事ですから」
『しかし、ここまでは想定通りです』
セナは一人静かに呟くと、機体を起動させて暗い格納庫の上昇エレベーターの中、静かに一人呟く。
「理想を願う方々に依頼した実験は成功でした。シン・アスカさん。確かに脅威ですが、一人では出来ない事も多くあります」
上昇エレベーターにより、その漆黒の機体は月面上に姿を現す。
時間稼ぎの為にと用意したシュラとブラックナイトスコード シヴァの量産工場の前で、それを破壊していたシュラの前に、セナはその巨大なモビルスーツの姿を見せた。
『な、なんだ……! これは!』
「サイコガンダムMKⅡ。サイコフレームの記憶により得た知識と、サイコガンダムの実戦データを基にして出来上がった機体です。生半可な力では防ぐ事は出来ないでしょう」
『くっ!』
「抵抗は無駄です。そして……世界は生まれ変わる」
『セナ。こちらの準備は完了しておるぞ』
「ありがとうございます。ママ。では、撃ちましょう」
月面に現れたセナとサイコガンダムの背後にあるダイダロス基地のレクイエムが淡く光を発し、その力を一機に宇宙へと解き放った。
それは、誰も防ぐ事が出来ないまま第一中継点を抜けて、巨大ビームを屈曲させる。
「戦いとは虚しい物です。しかし、どれほど手足が強くとも、頭を砕かれてしまえば、人は戦う事が出来ません」
『レクイエム!? 目標は……! オーブか!?』
「はい。狙いはオーブ連合首長国首都。オロファト。この戦いを終わらせましょう」
セナは驚愕に顔を染めるシュラにそう宣言して、機体の両腕を静かに広げた。