ヴィアによる一部の人間にしか分からない告白が行われ、セナがヴィアを慰め、クリスタがフンと鼻を鳴らし、ユーレンとギルバートが抱き合うヴィアとセナの親子を穏やかな目で見つめていたのだが、どこか悲し気な、嬉しさの混じる様な空気を壊したのは、感動の中心に居たセナであった。
「色々な事情がありましたが、こうして無事、自分の体として復活する事が出来たという訳です」
「そうなのか……」
「はい。そして、ここにシン君達を呼び、多くの人を集めた事には理由があります」
セナは先ほどまでの感動を振り払って酷く真剣な顔でシン達に重要な出来事を告げる。
「正確な時間が分かりました。後、三年の後、世界は滅亡します」
「は……?」
「マリューさん達が『彼ら』に接近していただけたため、正確な情報を整理する事が出来ました」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ! セナ! 彼らって、彼らって、誰なんだ!」
「エビデンス
「……!」
「かつてジョージ・グレンさんが木星へ旅たち、エウロパ付近の隕石の中から発見された、通称宇宙クジラと呼ばれる存在です」
「宇宙クジラが、地球を滅ぼす?」
「はい。正確には宇宙クジラの体を構成しているナノサイズのナノマシンが、ですが」
「じゃ、じゃあ、プラントにある、宇宙クジラは」
「あれは既に死しています。動く事は無いでしょう。これより来るのは生きたエビデンス01。何度も行われたコズミック・イラの歴史を滅ぼして来た、最後の敵です」
セナはハッキリとシンに敵の正体を告げ、更にはそれが最も強大な存在である事も告げる。
「かつて、私とセナが居た世界は、ナノマシンの大群と戦い、地球を捨てる事となった。私達が作り出されるよりも前だがな。人類は、アレに勝てなかった」
「そんなに強いのか?」
「あぁ。無論、個々の強さは大したものでは無いが、アレは集合すると一つの惑星と同等か、それ以上の大きさとなる存在だ。何兆、何京居るか分からないが、少なくとも人の数とアレの数では比べ物にならない。まともにぶつかれば人は敗北するだろう」
「そんなの、どうやって……」
「分からん」
「っ!」
「アレと戦う事になった地球は、プラントに逃れる事の出来た物を除いて全滅している。何度も、何度も、何度も繰り返された歴史の中で、人類はアレに敗北し続けて来た。どうやってかは知らないが、それをヴェーダも知っている」
「……」
「だからこそ、ヴェーダは今回こそ世界を変えると、ユーレン・ヒビキとヴィア・ヒビキの研究に干渉し、キラを女性として生み出したのだ。私やセナをこの世界に呼んだのも偶然では無いだろう。セナが居て、キラが居たからこそ、世界は一つとまとまった!!」
クリスタは手を上げて、皆に聞こえる様に声を上げる。
「かつて存在したコズミック・イラの世界は敗北した! 私達が生み出されたのは敗戦処理だ。敗者となってしまった人類を生かす為の延命処理でしかない! しかし、ここには私がいる。セナが居る」
「パトリック・ザラとシーゲル・クラインは過去の戦いで死んだ。メイア・シヴァも、ジゼル・クラインも、レノア・ザラも彼らが起こした争いに巻き込まれて死んだ!」
「早くからセナが介入する事で、不干渉の聖域となったDSSDは、ファントムペインの襲撃を受けて、職員の大半を失っている」
「キラと接触する事でオーブと深い関わりを持ったジャンク屋、サーペントテールは独自の道を進み、キラ達と道が交わる事はない」
「かつての世界でキラと呼ばれていた者は、その存在が世界に明かされ、世界から排除され、ラクス・クラインと共に命を消した」
「シン・アスカ、ルナマリア・ホーク、レイ・ザ・バレル、アグネス・ギーベンラートはキラが撃たれた後にコンパスが世界と敵対した為、撃たれた」
「マリュー・ラミアスも、ムウ・ラ・フラガも、ナタル・バジルールも、ラウ・ル・クルーゼも、ネオ・ロアノークも。コンパスの戦闘要員は誰も、アレとは戦えなかった」
「ここにいる我らは、誰も! アレとは戦う事すら出来なかったのだ! 故に、戦いの結果がどうなるかは分からない」
クリスタは集まった面々を見ながら言葉を向ける。
彼らの名を呼びながら、かつての事情を語る。
「我らは戦わずして敗者となったのだ! この様な事が許せるはずがない。我らはまだ負けていないのだ!」
「無論、この戦いが絶望的である事は皆も分かっている事だろう。故に、未知の敵が攻めて来る事項はプラントのワルター・ド・ラメント。大西洋連邦のムルタ・アズラエルには告げており、彼らも『避難船』の製造を行っている。だが、これでも三年後に全ての人類を避難させる為の移民船を完成させる事は出来ないだろう。人類の選別が必要だ……とは言っても、この辺りはキラに一任している為、どうなるかは私にも分からない」
「だが、世界がどうなろうと、我らの役目は何も変わらない」
「勝て」
「戦わずして敗者となった屈辱を晴らせ」
「人類の英知があれば、どのような苦難であっても世界は開けると、世界に示せ」
「それが、諸君をこの場所に呼んだ私の意志である」
「ヴィア・ヒビキが率いる研究者の面々はサイコフレームの研究を続けて欲しい」
「パトリック・ザラ率いる政治家面々は、これから訪れる危機を世界から隠し、人材の調整を行って欲しい」
「ロウ・ギュール率いる技術屋面々は、連中に有効な兵器の開発と、既存兵器の調整、開発、試験製造を行ってくれ」
「そして、シン・アスカ」
「……はい!」
「お前が、パイロット面々のリーダーとなる。これはキラとセナが決めた事柄だ。受けてくれると嬉しい」
クリスタはどこか救いを求める様な顔でシンを見やり、シンはそんなか細い少女の瞳に強く頷いて、自分の意志を示した。
「それが俺の役目なら! やります!!」
「ありがとう。シン。お前には、新しいデスティニーと共に戦って欲しい。シンの他にもパイロット面々には新しい機体、新しい武装が日々渡される事だろう。それを試し、忌憚のない意見を開発部へと戻してほしい」
「はい!!」
「……感謝する」
「最後に、アレクセイ・コノエを始めとする艦隊の艦長、指揮官クラスの人間は、人類が生き残る為の防衛線と戦力、武装の配置を話し合ってくれ」
「私からは以上だ」
「詳細は各チームへと連絡する」
「だが、疑問があればすぐに私へ、関係部署へと送ってくれ」
クリスタは一度頭を下げてから、再び頭を上げて、クリスタの話を聞いている面々へと言葉を向ける。
「私は、生まれた時より敗者の中で生きて来た物だ。セナも苦しい時代の中で、したくもない選択をしてきた過去を持つ」
「だが、そんな未来はまっぴらだ。私は、輝かしき未来の世界で生きたい」
「ようやく母と娘が、抱きしめ合う事が出来る世界が来たのだ」
「私はこの世界こそ。現在の状態こそ最良だと考える」
「この面々なら負ける気がしない」
「必ず勝とう」
「私は諸君らと共に、未来へと歩むことを願う」
クリスタは最後まで語り終えて、多くの拍手と歓声に見送られながら場を締めた。
そして、モビルスーツ部隊のリーダーとなってしまったシンは、緊張もどこへやら決意を込めた瞳のまま、彼の周りへと集まる面々へと言葉をかけてゆく。
「やったわね。シン!」
「あぁ」
「アンタがリーダーなんて気に入らないけど、キラさんの決めた事なら文句は無いわ」
「ありがとう。アグネス」
「これが最後の戦いだ。必ず勝って終わらせるぞ」
「あぁ! そうだな! レイ!」
シンはレイと拳をぶつけ合いながら笑っていたのだが、そんなシンの元へ二人の青年がサングラスで顔の半分を隠したまま近づいて来た。
その姿にシンは微妙な顔を向けるが、二人は気にしない。
「ハジメマシテ。というべきかな。俺の事は知っているかい? シン・アスカ」
「知っているか。って、どこの誰なんです?」
「俺はかつてキラにモビルスーツの戦い方を教えていた人間だよ」
「っ! キラさんに!?」
「とは言っても、今の実力があるのは彼女の努力のお陰だ。だから、必ずしも君も強くなるわけじゃない。それでも私達に戦い方を教わるか? シン・アスカ」
「はい!! 強くなる為に必要なら!」
「ふっ、若いな」
「キラの時と同じさ。若い力は時として強い力を発揮する」
「その様だ」
二人の男性は笑みを零しながら笑みを向け合い、シンへと再び笑みを返しながらサングラスを取った。
そして、シンと話していたセナと同じく、虹色の光彩を瞳に浮かべながら微笑みかける。
「俺はアムロ・レイ」
「私はクワトロ……」
「おい!」
「っ! わ、私はシャア・アズナブルだ。シン君」
「俺達がひとまず君を鍛える。新機体に耐えられる様にね」
「新機体って……」
「デスティニーの発展強化機体。フルアーマーデスティニーだよ。とりあえずブースター周りを強化して、武装も増やすつもりだ」
「フルアーマーデスティニー……!」
「デスティニー本体だけじゃなく、ブラックナイトスコードカルラのドラグーンシステム、ジグラートを利用して、状況に特化した兵器も多く携帯させる予定だ。その過程で、デスティニーは複座式となるが……君はステラと共に戦う覚悟はあるかい?」
「ステラと!?」
シンは驚きながら、自分の斜め後ろにいる少女を見やった。
ステラはやや驚いた様な顔をしてアムロの言葉に反応していたが、特に嫌がった様子はなく。
シンの視線に頷きながら自分も力になりたいとシンに返すのだった。
「はい! 一緒に戦います!」
「良い覚悟だ。ではステラも肉体を得て、シンと共に訓練をしてくれ。三年とはいえ、時はそう多くはない。皆も協力を頼むぞ」
「「「はい!」」」
アムロの言葉に返事をする面々に頷きながら、アムロは早速彼らの実力を見るべく大型シミュレーターへと彼らと共に向かった。
そして、彼らはキラに戦い方を教えたという男の実力を知るのであった。