ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第3話『月面都市……だな』

 C.E.(コズミック・イラ)60年。

 ヴィアとセナの日常はラウが増えてからも変わらず、移動ばかりの日々であった。

 ユーラシア連邦の中で安全な場所を探し、何か事件やトラブルが起きればすぐに場所を変える。

 そんな日々はヴィアだけでなく、セナやラウにとっても負担の大きい物であった。

 

 しかも、とある情報屋から得た情報は、ヴィアをさらに悩ませる物であった。

 

「……子供達と一緒に国へ戻ったのね。アウラ。そうなると、ユーラシアに居続けるのは危険、か」

 

 ヴィアは誰も居ない部屋の中、PCで地球圏のあらゆる場所の情報を調べながら、どこへ移動するべきか考えていた。

 現在、世界中には様々な火種があり、どこへ移動するにしてもリスクは存在する状況だった。

 

 ヴィアは悩みながら各地の情報を集め、よりよい場所を探そうとPCを操作し続けていた。

 必死にPCに向かい続けていたヴィアは、扉をノックする音に気付かず、部屋の中に入ってきた男の呼びかけにようやく意識をPCから外へと向けた。

 

「ヴィア」

「わっ! な、なにかしら!?」

「そろそろ夕食の時間なのだが」

「あ、ごめんなさい。集中していて……」

「それは構わないが、どこかへ移動か?」

 

 ヴィアに声をかけたラウはヴィアが操作していたPCの画面を見て、目を細める。

 ユーラシアに居る間も、何かから隠れる様に生活していたヴィアとセナであったが、PCに映っていた画面はもっと遠い場所。

 コーディネーター達の住まうプラントという名のコロニーや、月面都市などが映し出されていた。

 

「あ、いや、これは……!」

「ヴィア」

「……は、はい」

「私はヴィアやセナの家族だ。まだ三年ではあるが、それなりに長く共にいたつもりだ」

「そう、ね」

「少しは頼ってくれると嬉しい。何か事情があるのなら、私は協力する」

 

 ラウの真剣な眼差しに、ヴィアは諦めた様な顔でため息を吐いた。

 そして、全てでは無いが、事情を話す。

 

「実は、ね。セナはある組織に狙われているの」

「組織か」

「そう。しかも最近は前よりも力を増やしてて、遂に国家単位になっちゃったの。だから、このままユーラシアに居たら危ないかなって」

「そうか……それは確かに難しいな」

「そうなのよ。それで、どうせ逃げるなら、地球から出ても良いのかなってプラントとか、月面都市を調べてたんだけど……」

「その追手はコーディネーターなのか?」

「違うわ」

「なら、プラントが一番良いだろう」

「それは、そうだけど……貴方はどうするの」

「まぁ、何とかするさ。幸い……というのかは微妙だが、私の体は色々と器用でね。死ぬ気で挑めば、コーディネーターの中に入り込む事も可能だろう」

「ラウ」

「コーディネーターとナチュラルの溝は、もはや修復不可能と思われる所まで来ている様に見える。このままではいずれ戦争になるだろう」

「……そうね」

「もし戦争となるなら。セナがコーディネーターである以上、プラントの方が良い筈だ。少なくともナチュラルの中に入って迫害される事はない」

 

 ラウの言葉にヴィアは悩みながら視線をPCに移した。

 プラントとは、地球と月を結ぶ半径を底辺とした正三角形の頂点から月の公転方向後方60度にあるラグランジュポイント5に位置する天秤型コロニーの事であり、コーディネーターと呼ばれる遺伝子操作された人類の住まう宇宙の拠点である。

 そして今の世界で蠢く、争いの根ともいえる場所でもあった。

 

「……プラントは、止めた方が良いわ」

「何故かな。理由が聞きたいな」

「一つはプラントがコーディネーターの住まう場所だからよ」

「だからこそセナが安全だという話では無いのか」

「確かにセナは安全かもしれないけど、私も貴方もナチュラルだもの。私たちに万が一があれば、きっとセナは悲しむわ」

「……それは、確かに」

「それに、プラントはこれからより危険な場所になる可能性が高い。理事国は圧力を強めるでしょうし。コーディネーターだって黙って従い続ける事は無くなるでしょう。そうなれば、争いの場となる可能性が高い」

「そうだな」

 

「後、セナの存在がプラントの過激派に見つかると厄介な事になるのよ」

「……あの子には何かしら利用価値があるという事か」

「そういうこと。知られたらもう、普通の子としては生きられない」

「分かった。では、取る選択肢は一つだな」

「そうね……貴方と話しながら、私もそこしかないと思ったわ」

 

「月面都市……だな」

「まぁ、そうなるわね。行くなら中立のコペルニクスかしら」

「良いのではないか? 私は賛成だ」

「ありがとう。じゃあチケットをさっさと取っちゃいましょうか」

「……それも良いが、その前に」

「うん?」

「セナが待っている。夕食を食べてからでも遅くは無いだろう」

 

 まだ作業を続けようとするヴィアに、ラウは眉に皺を寄せながらお小言を向け。

 ヴィアは分かりました。と両手を挙げて降参したというポーズを取りながらセナの所へ向かうのだった。

 

 しかし二人の行動は既に手遅れであり、お行儀よく椅子に座りながら待っていたセナは「せっかくのお料理が冷めてしまいました!」と二人に苦言を呈するのだった。

 

 そして、この二日後。

 ヴィアはセナやラウと共にシャトルで宇宙へと上がり、月面都市コペルニクスへ向けて引っ越しを行った。

 心配していた襲撃もなく、シャトルも無事に地球の重力を振り切って、宇宙へと飛び出して行く。

 

「ふわ、わわ……なんだか不思議な感じですね」

「そうだな。これが無重力の感覚という奴か」

「そっか。二人は宇宙が初めてだもんね。ほら。右手の窓から地球と宇宙が見えるわよ」

 

 ヴィアは宇宙空間という場所に大変興奮している二人に、更なる興奮情報を与えて微笑んだ。

 二人はシャトルの窓から見える青い地球と、どこまでも暗闇が広がる宇宙を見て、目を丸くする。

 

「凄いですね。ラウ兄さん」

「あぁ。このどこまでも広がる世界の感覚。素晴らしいな」

「はい。吸い込まれてしまいそうです」

 

 セナは窓に手を付けながら、目を細め、宇宙の向こう側を見ようとしていた。

 そして、何かひらめきを得たという様な顔をして、ラウやヴィアを見る。

 

「どうした? セナ」

「セナ?」

「あ、いえ。今、誰かの声が聞こえた様な気がして」

「声?」

 

 セナの言葉に、ヴィアはラウと初めて会った時の事を思い出しながら首を傾げる。

 もしかして、このシャトルの中にもラウの様な子が居るのか? と周囲を見ようとしたが、よくよく考えてみればシャトルに乗る程の金を支払える人間が、孤児である筈もなく。

 何かの聞き間違えかなと、座席にもたれかかりながら、ふぅっと小さく息を吐いた。

 

「まぁ、何かの気のせいじゃないかしら。もしくは、宇宙の向こうにいる宇宙人からの声とか」

「宇宙人、ですか!」

「そう。まだ人類が宇宙に殆ど行けなかった頃。西暦の時代にそういう話があったのよ。火星に住む火星人とか。木星に住む木星人とかね」

「はぁー、なるほど。火星に住む、火星人さんですか。会ってみたいですねぇ」

 

 セナはキラキラとした目を窓の外に向けながら、宇宙の光をいつまでも楽しんでいた。

 そんなセナを見て、ヴィアは安心した様に笑ってからPCを開いて仕事を始め、ラウは地球で買った本を開きながら読み始めるのだった。

 穏やかにそれぞれの時間を楽しんで、約二日間のシャトル時間を過ごす。

 

 そして、やはり何の問題もなく月面都市コペルニクスに到着したヴィアは、これからの拠点を探す為に、ひとまずエアポート近くのホテルを取ろうとしたのだが……ここで意外な人物に出会う事となった。

 

「あなた! もしかして!」

「……え?」

 

 酷く聞き覚えのある声にヴィアが振り返ってみれば、遠くから走り寄ってくる一人の女性が居た。

 その姿を見て、ヴィアの目が見開かれてゆく。

 

「カリダ!」

「ヴィア!」

 

 五年前。

 コロニー・メンデルが襲撃される前に、愛娘たちをお願いと託して、それ以来連絡が取れなかったヴィアの妹。

 カリダ・ヤマトの姿がそこにはあった。

 紫がかった藍色の髪に薄緑色の瞳を持つカリダは、見た目の特徴こそヴィアと似ていないが、涙を流しながら抱き合って笑う姿はよく似ており、二人が姉妹であるとよくわかる。

 

「生きていたのね! メンデルのニュースを見た時は、もう、駄目かと」

「何とか生き残れたわ。ユーレンのお陰で」

「っ、じゃあ、ユーレンさんは」

「たぶん」

 

 ヴィアはカリダの問いに首を振った。

 あれから、ヴィアも世界各地の情報を集めたが、ユーレンの事は何も分からなかった。

 生きているのか。死んでいるのかさえ。

 

「でも、まさか。月でヴィアに会えるなんて思わなかった。もう、大丈夫なの?」

「ううん。まだ逃げてるの」

「そんな……」

「だから、キラやカガリとは……」

「その事なんだけど、ヴィア」

「え?」

「実は、これからキラを月に連れて来るつもりなの。今、ハルマがオーブでキラを連れ出す準備をしてる」

「オーブで何かあったの?」

「詳しい話は家で話すわ。でも心配しないで。キラもカガリも元気よ」

「そう……」

 

 ヴィアは伝え聞いた良い話にひとまず安堵の息を漏らした。

 そして、ハッと思い出した事を伝える為にラウ達の方へと視線を向ける。

 

「そうだ。カリダ。紹介するわね。私の子供達。ラウとセナよ」

「あら。そうなの? はじめまして。私はカリダ。ヴィアの妹よ」

「あぁ、私はラウだ。あー、その、一応ヴィアの子供という事になっている」

「なっている?」

 

 ラウの微妙な言い方にカリダが疑問をヴィアに向けるが、ヴィアは軽く笑うと、照れてるのよと返した。

 カリダはそういう物かと頷き、次にラウと手を繋いでいる少女、セナへと視線を向ける。

 

「セナです。よろしくお願いします。4歳です」

「あら。丁寧にありがとう。私はカリダ。年はいっぱいよ」

「ママの妹さんだから、ママのちょっと下ですね。分かりました!」

「頭良いのねぇ」

「まぁ、私の子供だから」

「はいはい。変わらないわね。そういう所」

 

 ヴィアの冗談に笑いながら、カリダはセナやラウと握手を交わし、家に移動しましょうかとヴィアに提案した。

 特に断る理由も無かった為、ヴィアはカリダと共に、月面のヤマト家へと向かうのだった。

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