ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第29話『全ては不幸な事故。という奴です』

 C.E.(コズミック・イラ)68年

 遂に、世界は大きく動き始めた。

 

 プラント最高評議会議長にシーゲル・クラインが選出された事を切っ掛けとして、理事国とプラントの関係はより悪化し、理事会とのプラント運営会議においては遂に正面から衝突する事となった。

 クライン議長はプラントの自治獲得と貿易自主権獲得を最優先する事を運営会議で表明し、理事国はこれに大反発。

 理事国は武力による示威行動に出るが、プラント側も軍備拡張で応じ、両者睨み合いとなった。

 

 更に、地球では『ブルーコスモス』が拡大化し、末端の『自称』まで含めるとその数は数十万人にまで膨れ上がっていた。

 そして、勢力を増やしたブルーコスモスは地球在住のコーディネイターへの迫害を激化させ、結果として多くのコーディネーター達が地球を離れ、プラントへ移住する事になった。

 

 そんな中、一つの事件がプラントと理事国の間で発生した。

 『マンデルブロー号事件』と呼ばれる事件である。

 

 事の始まりは、クライン議長が極秘裏に南アメリカ合衆国、大洋州連合と取引し、プラントと両国間で、食料輸入及び、工業製品輸出が取り決められた事であった。

 これに対し理事国側は、クライン議長の解任と議会の解体及び、プラントの自治権完全放棄を要求するも、プラント側はこれに反発。

 それに対する報復として、理事国側はプラントへの食料輸出の制限を行ったが、プラントが理事国に従わなかった為、理事国が南アメリカから食料輸入を行おうとしたプラント籍の貨物船団を撃沈したのだ。

 

 この『マンデルブロー号事件』を切っ掛けとして、政治結社だった『ZAFT』はパトリック指導のもと解体・再編成され、プラント内の警察的保安組織と合併、モビルスーツを装備した軍事的組織である『ZAFT』へと再度組織化された。

 かつて始まりのモビルスーツ『ジン』をキラたちが開発した事で、『黄道同盟』は名前を『自由条約黄道同盟:ZAFT』に変えた。

 その時から、こうなる事は決まっていた事だったのかもしれない。

 

 『ZAFT』はより強硬な姿勢を崩さないまま、理事国と睨み合い、その意思を強く世界に示していた。

 真なる自由と正義。

 コーディネーターがコーディネーターとして生きていける世界への祈りと願いを。

 

 

「どうにかならないんですか!? アズラエルさん!」

「無理だね。連中がこうも勝手な事を繰り返すのなら、こっちも意見は変えないよ」

「でも!」

「良いかい? キラ。人間ってのは傲慢なんだ。一つ譲歩すれば、次から次へと要求してくるのが人間なんだよ。連中の自治権なんて認めたら、次は月を寄越せ、地球を寄越せと言ってくるだろうさ」

「そんな事ありえませんよ!」

「本当にそう言い切れるのかい? 君が連中の何を知っているっていうんだ」

「だって、コーディネーターはみんなプラントで生活しているんですよ? なら、月や地球を欲しがる理由は無いじゃないですか」

「やれやれ。君は本当に何も知らないんだね」

 

 アズラエル家の客間で叫ぶキラに、アズラエルは肩をすくめながら、キラに分かりやすく彼の理屈を語る。

 キラを見る目には幾分か親しみが込められているが、宇宙に住まうコーディネーターを語る声はどこまでも冷ややかであった。

 

「そもそも、だ。連中が本当に進化した人類を自称し、地球など必要ないのだと語るなら、何故いつまでも地球圏に留まっているんだ? 宇宙で暮らせるのだから火星でも木星でも好きな場所へ行けば良いだろう?」

「それは」

「理由は簡単。連中が地球を離れがたいと感じているからさ。母なる星を離れる事が出来ないからだ。魂が重力に縛られているとでも言えば良いのかな」

「……!」

「まぁ? 連中が進化した人類ではなく、ただ意味もなく遺伝子を弄った改造人間だったという話なら、分からなくはない。けれど、彼らは自分達を進化した人類だと自称し、古き時代から世界を守り、導いてきた我々から傲慢にも在りもしない権利を要求しているというのが現状だ。認める事が出来ないのは、当たり前だろう?」

「でも、それでも。交渉は出来る筈です。お願いします。アズラエルさん! どうか、話し合いを!」

「やれやれ。君も強情だね」

「それが私の為すべき事ですから!」

「そうかい。分かった。なら、他の理事国にも交渉してみれば良い。他の理事国が考えを改めるのなら、僕らも流れに従おうじゃないか」

「本当ですか!?」

「あぁ。ただし、交渉は自分でやるんだね。まぁ、橋渡しくらいはするけどさ」

「ありがとうございます!!」

 

 キラはアズラエルからの許可を貰い、セナと共に、大西洋連邦、ユーラシア連邦、東アジア共和国の代表たちに会い、技術的な協力をしながら、根気強く交渉を続けた。

 戦争を回避するために。

 少しでも平和な未来を手繰り寄せる為に。

 

 しかし、そんなキラやセナの努力を嘲笑うかの様に、プラントは強硬な姿勢を崩さないまま新たな声明を発表した。

 

 

 C.E.(コズミック・イラ)69年3月7日

 

 クライン議長はプラント内での食料生産を開始し、ユニウス市の7~10区を穀物生産プラントに改装した。

 更に、多数の軍艦をプラント周辺の宙域に展開し、理事国の軍艦の周辺に威嚇攻撃をし始めた。

 

 これに対し、理事国側はプラントへ挑発的行動を控える様に勧告したが、プラント側は理事国の軍艦を撃沈。

 武力を行使してプラント周辺宙域からの撤退を理事国へ要求したのである。

 

『もはやこれ以上の我慢は出来ぬ!』

『連中に思い知らせてやらねば!』

「皆さん! どうか、落ち着いてください! 私達はまだ、話し合う事が出来ます!」

『キラ譲の言いたい事も分かるがね。もはやそんな状況では無いのだ』

『交渉するにしても、まずは一戦交える事も必要でしょう』

『異議なし』

『我が国も同じ意見です』

「皆さん!」

『では、プラントへは我が宇宙軍を向かわせましょう。大西洋連邦宇宙軍第4艦隊で連中の未熟な軍隊を粉砕してみせましょう』

『おぉ! では我が国は支援を』

『我が国も』

 

 そして、キラの訴えも空しく、大西洋連邦はユーラシア連邦、東アジア共和国の支援を受けながら、艦隊をプラントがあるL5宙域へと向かわせた。

 この時、キラとセナを除いた全ての人間が、第4艦隊によるプラント戦力の殲滅を予見していたが、その予測は大きく外れる事となる。

 

 L5宙域へと向かう第4艦隊を待ち受けていたのは、噂程度でしか知らなかったモビルスーツという名前の人型機動兵器であった。

 そんなモビルスーツの存在に驚きながらも、その数を見て、容易く殲滅出来ると考えた大西洋連邦宇宙軍第4艦隊はプラント側が出撃させたモビルスーツの数倍のモビルアーマーを出撃させ、これを殲滅しようとした。

 しかし、モビルスーツの機動性も装甲も、モビルアーマーの比ではなく、第四艦隊は搭載していたモビルアーマーの多数を撃破され、撤退する事になってしまったのである。

 

 この戦闘の勝利を以て、クライン議長は完全自治権の獲得及び対等貿易を理事国側に要求し、さらに、この要求に対する回答がC.E.(コズミック・イラ)70年1月1日までにされない場合、プラント側は地球への資源輸出を停止する事を理事国に通告した。

 この声明により、理事国はこれまでにない程追い詰められる事となった。

 

 プラントの要求を受け入れれば、理事国の既得権益は失われ、理事国は大きな打撃を受ける事になる。

 しかし、プラントの要求を拒否し、資源輸出が停止されれば、それもまた理事国への大打撃となる。

 

 進んでも、戻っても、理事国には得が無かった。

 

 さらにキラとセナが理事国だけでなく非理事国でも平和を訴え、地球に住む者たちも少しずつだが、プラントを受け入れようとしている事も問題であった。

 

『まさか、こんな事になるとは』

『連中を叩き潰す事は出来んのか!』

『今動かせる戦力では第四艦隊と同じ様な結果になるだけだ。プラントを叩くにはもっと大きな戦力がいる』

『しかし、キラ嬢とセナ嬢がこうも反戦を訴えている状況では、大きな軍事行動は起こせん。大衆は彼女たちの味方なのだ』

『しかも、国連が動いている。連中め。キラ嬢に感化されて平和だなんだと言いながら、宇宙利権を手に入れるつもりだ』

『自分勝手な連中だ。宇宙開発のリスクも背負わず、利益だけを奪おうとするとは』

『世界を救うヒーローにでもなったつもりか!』

 

 モニターの中で、現状を訴える各国の代表に、大西洋連邦国防産業連合理事のムルタ・アズラエルは、フッと笑った。

 そして皮肉気に口を歪ませながら立ち上がり、短い金色の髪を揺らしながらモニターの前にいる者たちへ『妙案』を授ける。

 

「なら、お望み通り、彼女たちのヒーローにして差し上げれば良いのではないですか?」

『なに!?』

『どういう意味だ。アズラエル! プラントの要求を呑むとでも言うつもりか!?』

「いえいえ。その様な事は出来ませんよ。アズラエル家だって、リスクを飲み込んで宇宙開発に投資してきたのですから。今更権利がどうのと言われても困ります」

『ならば、どうしようと言うのかね』

「なに。簡単な事です。キラの声に応えた国連事務総長は僕らとプラントに交渉をする様に呼びかけるでしょう。しかし、コーディネーターなどを信じてしまった国連首脳陣は、プラントが仕掛けたテロによって、その尊い命を落としてしまうのです」

『……なるほどな』

『しかし、どうやってプラント側の責任にするのだ』

「そんなモノ。簡単ですよ。プラント側の代表だけ助かれば良い。そうなれば、世界は自然と犯人を見つけますよ」

 

 アズラエルの悪意に満ちた笑みに、理事国の代表たちは小さく笑みを作りながら頷いた。

 戦争さえ起こせればこちらの物だと考えながら。

 

「全ては不幸な事故。という奴です。国連無き後は、我ら理事国が手を取り合い一つとなって世界の敵と戦いましょう」

『……これからも我らの世界を続けてゆく為に』

「はい。そして我らの母なる星を守る巨大な組織、地球連合を結成するのです」

 

 アズラエルの演説に理事国代表は、みな拍手を送り、アズラエルは満足してから再び椅子に座った。

 

「キラ。セナ。世界とはこうやって動かすんだよ。君たちの様な甘い考えでは……何も変えられない」

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