リボンズが選挙に出馬するという事で、まずはセナを通して立候補を行い、アカツキ島の家で最初の演説を撮る事になった。
だが……。
『ここって、キラ様の家じゃね?』
『オーブにある隠れ家でしょ?』
『え? 侵入したってこと?』
『犯罪者じゃん。すぐにオーブ行政府に通報しようぜ!』
何故か一部の人間からキラの住んでいる家の一つだと判明し、大炎上。
動画共有サイトでコーディネーター、ナチュラル差別などとは比べ物にならない程に激しく燃え上がった。
翌日にはリボンズの政見放送を使ったコラが大量に作られ、殺害予告、テロ予告、通報など様々な炎が噴き上がる。
「なんだこれは! 僕はまだ立候補しただけだぞ!」
「はー。面白い事になってるねぇ」
「何が面白いことか! 君はバカか!?」
キラの見ている画面で、器用にも歌ってみた動画にされたリボンズが酷い音程の歌を歌わされている。
謎の技術が大量に詰め込まれた結果であった。
「くっ! まさか、いきなりこんな苦難が待っているとは! これでは投票どころか明日には逮捕されるぞ!」
「プクク。かもね」
「何を笑っているかー! 貴様ー!」
リボンズに怒られながらも、キラは何とかこの事態を解決するべく打開策を打つ事にした。
単純明快。
リボンズがキラの家に侵入していると思われているのであれば、正当な方法でキラの家に居ると思わせれば良いのだ。
「皆さん。こんにちは。キラ・ユラ・アスハです。先日、僕の友人であるリボンズが政見放送を行った際に、誹謗中傷等が集まってしまったという話を聞いたのですが、リボンズが家にいる事は僕も容認しています。一緒に仲良く生活してますよー!」
キラはリボンズの炎上を消すべく、家の中の映像を撮影しながら、リボンズと仲良く肩を組んでピースをしている様子などを動画共有サイトに投稿し……炎上した。
「あれー? なんで?」
「なんでじゃない! 酷くなっているじゃないか!」
リボンズは先日よりも遥かに勢いよく燃え上がる世界の反応を見て首を傾げているキラに突っ込みを入れる。
だが、キラがリボンズが炎上している理由に気づく事はなく、世界は時間と共にドンドン酷い状態になっているのだった。
『純粋なキラ様を騙しやがって!!』
『お前を殺す』
『やっていい事とやっちゃいけない事の違いも分からんか?』
『初代大統領の役目はコイツの処刑だろ』
『世界の中心で串刺しにして欲しい』
『私も刺しに行くわ。一人一刺の刑にしよう』
『天才が居る』
「この世界には狂人しか居ないのか……」
「うーん。なんか、僕が脅されている事になっているね。うーん。どうしたもんか。はっ! 良い事を思いついたよ!?」
「嫌な予感がするな……」
リボンズはキラの呟きに汗を流しながら微妙な反応を示すが、キラは止まらない。
基本的に平和への願いだけで今の地位、世界で最も有名な姫にまでのし上がった存在だ。
人気取りの方法など知りはしないし、炎上の消し方も知らない。
故に……。
「はぁーい! キラです! 僕は騙されてなんかいません! リボンズと一緒の家に住んでるけど、お父さんもお母さんも知ってるんだよ? 子供だって居るんだから。そんなにみんなが心配する事ないよ」
爆発した。
炎上などというレベルではない。
動画共有サイトに投稿した次の日に、特殊部隊が家に来るレベルの炎上をしていた。
「手を上げて!! 地面に伏せろ!!」
「早くしろ!!!」
「キラ様に手を出すとは!! 不届き者め!!」
「お子様を作られていたとは」
「辛くありませんか? キラ様」
「すぐに世界一安全な病院を手配しますからね」
「え? え?」
「無実だー!! 僕は何もやっていない!!」
「黙れ! それ以上喋ってみろ! 二度と日の下で歩けない様にしてやる!!」
呑気に選挙情勢なんかを見ながらお茶をしていたキラとリボンズは、突如として完全装備に、自動小銃を構えた軍人たちが家に踏み込んできて、リボンズを押し倒しながら、不必要なくらい銃口を向けられる光景を見た。
キラには、軍服を着た女性が大き目なタオルなんかを持ってきて、以前着ていたワンピースの様な薄着を着たキラを包み込んでいる。
そして、投げられる言葉は慰めの言葉ばかりなのだが、当のキラには全く届いていなかった。
結局、特殊部隊突入事件は、キラの誤解だよ。という言葉ですぐに解散となり、散らかった部屋の中は複数の軍人により綺麗に整う事になる。
散々やりたい放題されていたリボンズは非常に不満げな様子であったが、ネットの言葉を失った獣共のコメントを見る限り、まだマシな方かと舌打ちをした。
「信じられない世界だ」
「ねー」
「同意するんじゃない。今の所、君を中心にコトは起こっているんだぞ」
「みたいだけど、僕もよくは分からないんだよね」
キラはリボンズの言葉に同意を示しながらお茶を飲んでいたが、不意に携帯が着信を告げ、それに出てみると、最近は色々と忙しいピンクの歌姫。
ラクス・クラインからの着信であった。
『キラ? 先ほど、キラの投稿された映像を拝見させていただきました』
「あ、そうなの!? えへへ。綺麗に映ってた?」
『はい。キラはとても可愛らしく、
「ねとる?」
「誤解だ!!」
リボンズは心外だとばかりにキラから携帯を奪って、ラクスと話をする。
自分はあくまで大統領選挙に出馬しただけで、誤解が誤解を読んで、勘違いが爆発しているのだと。
ラクスはリボンズの言葉を聞いて、何故かすぐに向かいますわと言ってから通話を切った。
リボンズは何やら嫌な予感を感じつつも、ラクスが来るらしいとキラに告げて話を終わらせる。
キラも、ふーん? とリボンズの言葉に返事をしてから、二人は穏やかな空気の中、思い思い、それぞれの本を読みながら日中を過ごしていたのだが。
不意にバラバラと空気をはじけさせる音と、爆風が付近に吹いて、一台のヘリがキラの家の近くに降りて来るのだった。
「な、なにー!?」
「キラ!」
「ラクス! どうして、ここに来たの!?」
「キラに会いたかったからですわ!」
「そうなの!?」
キラは砂浜を駆けだして来たラクスを抱きとめて、二人で抱擁を交わしながら想いを確かめ合う。
そして、突如としてやってきたラクスに胡乱な瞳を向けながら、リボンズは次なる波乱の予感に深いため息を吐くのだった。
それから……。
「皆さん。こんにちは。
ラクスの発言に用意されていたコメント欄では愛する。という単語に食らいついている人が多くおり、ラクスは微笑みながらその疑問に答える。
「キラを愛しているというのは、キラと恋人同士という事ですわ」
ふわりと微笑みながらラクスが放った言葉に世界は、かつての炎上程ではないが大きく沸き上がった。
平和を願い戦い続けて来た姫君同士の想い。
それはとても美しく、素晴らしい物であったからだ。
しかし、それで終わらないのがラクス・クラインという女である。
「ですから、
「わたくしと?」
「リボンズさん。
ふわりと微笑みながら、ナナメ後に居たリボンズにラクスは微笑み、コメント欄は燃え上がった。
全てを理解したからだ。
ラクスとキラの関係を知り、それを持ってキラに迫った。
それをラクスが自分の関係という情報を犠牲として、キラを開放する為に行動したのだ。
なんていじらしい。
「~~!! 貴様! ラクス・クライン!」
「クス」
カメラに映らない角度で笑みを浮かべ、ラクスはリボンズに微笑みかけた。
平和の歌姫としてではない。
慈愛の女神としてでもない。
キラを愛する一人の人間として、キラとの熱愛などを世界に向けて放った男への意趣返しであった。
無論、その意趣返しはあまりにも協力で、リボンズは炭になるまで燃え続ける事になる。
どんな言い訳をしても炎は消えず、どんな言葉にも意味がない。
ただ、リボンズは燃え続ける事となった。
そうなると思われた。
だが……。
『皆さん落ち着いてください』
『お姉ちゃんの傍にはいつも居ました』
『それは皆さんの傍にいつも私が居る事と同じです』
『私はリボンズさんの無実を訴えます』
真剣な眼差しで、セナがキラの動画で世界に訴えたため、リボンズ炎上の騒動はすぐさま鎮静化してゆく事となる。
そのあまりの早さにリボンズは胡乱な目をしながら、ロクな姉妹じゃないと愚痴を零していたが、それはそれとして、落ち着いて行った事は確かであった。
そして、この炎上により今まで無名だったリボンズは一気に有名な人間の一人となり、彼が語る政策、世界の方角、そしてあるべき姿など、政見放送を聞く人間も増え、リボンズを応援する為にキラも動画共有サイトにて、リボンズを応援する為の動画を投稿し続けたため、ゆっくりとではあるが、彼の人気は上がっていくのだった。
その上昇率は非常に高い物で、トップの辺りに居るカガリやフェアネス、アスランにも迫る物であったが、リボンズはそれを気にする様な事もなく、放送をしない日はキラと共に本を読んで静かな時間を過ごしていた。
それが日常の一ページであるかの様に。
その自然体な日々の過ごし方は急激に上がる彼の知名度にも踊らされる事なく、変動の激しい日々であっても心揺らされる事無く。
これもまた日常の一つと穏やかにそれを受け止める事が出来たのであった。
そして、彼が出馬してからそれなりに時間が経って、いよいよ世界大統領選挙に出馬する人間が全て登録された。
人々は投票する日までの間、様々な候補者を見つつ、日々の活動を確認しつつ、推している人の行動を見つめ続ける。
その人自身が発表している動画で。
または、その人の情報を切り抜いた情報展開サービスで。
良い所も悪い所も、同じ様に。
未来の地球を担う人を、静かに探し続けるのだった。