いよいよ世界大統領選挙の第二段階に時代は突入する。
第一段階としてはまず出馬と自己アピールの時間となり、第二段階からは出馬が確定となり、自己アピールがより苛烈になってゆく。
そんな時代の移り変わりの中で、キラはかつての友人に呼び出されて、選挙特番として用意された番組に出演する事となった。
『どーも! ミゲル・アイマンです! みんな知ってるかな!?』
『キラでーす』
かつてザフトに所属していたミゲルは輝く様な笑顔をカメラに向けながらキラと共に挨拶をする。
そして、キラはまず最初に気になっていたことをとミゲルに問うてみる事にした。
『そう言えばミゲルって最近有名なんでしょ?』
『有名なんてモンじゃないよ。キラちゃん。俺、今、スターだから』
『へー』
『うわー。興味無さそう。一発撮りの動画とか知らない? 再生数凄いよ?』
『ちゃんと興味ありますよ。ミゲルさーん。例の動画もちゃんと見たから』
『ま、キラちゃんがそう言うのなら良いか!』
ミゲルは焦った様な反応をするキラを流して、話をサクサクと先に進める。
自分勝手な様でありながら、キラの行動もちゃんと見ている進行に、カメラを回しているスタッフも安心しながら彼らを映していた。
『いやー。俺もさ。昔はザフトでモビルスーツ乗って、バンバンやってたワケよ』
『黄昏の魔弾っていってね。オレンジ色のモビルスーツでしょ?』
『そう! とにかく目立ちたかったからね。俺は。そんで戦って戦果を上げ続けてたワケよ』
『うんうん』
『それで最初の大戦を生き残った後は、プラントを守るために戦うぞーってやってたのに、気が付いたら俺達、デュランダル元議長の手下みたいになっててさ?』
『あー。そうだね。正規軍は気が付いたら、メサイア防衛とかしてたもんね』
『そう! あの時はデュランダル元議長が正義って感じだったからさぁ。俺もそっち側に組み込まれてたワケよ。そんで、軌道上で行われたキラちゃんとセナちゃんの戦いを見て、もうお兄さん。泣いちゃったわけ!』
『泣いちゃったの!?』
『もうボロボロよ。俺たちは平和の為に戦ってたのに、どうしてキラちゃん達が戦わなきゃいけないんだー! ってなモンでさ。そこで世界の理不尽に気づいたってワケね』
『理不尽?』
『そう理不尽! 俺は戦ったら結構優秀でさ。生き残る事も出来たんだけど、戦う場所も相手も、自分じゃ選べないだろ? 勿論、俺達コーディネーターはプラントがやられたら終わりだから必死に戦ってたけどさ。キラちゃん達がコンパスを始めてからは世界はちょっとずつ平和になっていって。物資とかもちゃんと市民に配られる様になったワケじゃん?』
『その説は様々な方に感謝いております』
『おー! なんと、姿勢が低い。っと! 俺も感謝しておりますーひらにー!』
ミゲルは頭をゆっくりと下げたキラに続いて、自分も頭を下げる。
そして少しの間感謝を告げてから顔を上げる。
『それで、物資を用意してくれた人。配ってくれた人。って色々頑張ってくれた人がいたわけじゃん? これで、世界は平和になっていくんだろうなーって感じなんだけど、それって、本当にそうなの? ってのは俺の中に疑問としてある訳よ』
『ほうほう。どういう所が疑問ですかな?』
『んー。そうだなぁー。まぁ、まずは秘密主義だな! プラントのジェネシスに連合のレクイエム! どっちも突然出てきて、ドバーっと撃って大量破壊よ。いくら戦争とはいえさ。やっていい事と悪いことはあるじゃん』
『それは間違いない』
『だから、俺は何か大きな事やるんなら色々教えて欲しいって思ったよ。別に死ぬのが怖いとか、戦うのが嫌だって事はねぇけどさ。理由も分からないまま利用されて死ぬのはゴメンなんだよ』
『うん』
ミゲルの訴えに、彼らを映していたスタッフたち。
そして、配信を見ていた主張者たちは小さく頷きながらミゲルの話に同調してゆく。
『だからさ。キラちゃんが世界大統領を決めるぞ! って言った時には、コレだ! って思ったんだよね』
『そうなの?』
『そーなの。だって、今までの戦争はコーディネーターとナチュラルで指導者が違って、互いに争っていて、考え方が違って、ぶつかり合ってって、基本的には指導者の考えだったじゃん。俺のダチのナチュラルは良い奴なんだよなぁーって思ってても、指導者が戦えって言ったら、戦わなきゃいけないワケよ』
ミゲルの言葉に、オーブで配信を見ていた、ヴァレンティーナ・ビノンは騙し討ち部隊として戦っていた過去を思い出しながら少し俯いて話を聞く。
今ではオーブの代表カガリ・ユラ・アスハの近衛として動いているが、当時は連合にもザフトにも味方は居なかったのだ。
その過去が、ミゲルの言葉に同調を示してゆく。
『でもさ。もう戦いは止めようって、みんなで決めただろう? このまま戦い続けてもセナちゃんがデスティニープランで苦しい想いをするだけだし。セナちゃんの想いを受け継いで、ファウンデーション王国とプラントを巻き込みながら戦いも起こった。みんな、セナちゃんが大好きだったから、テロを起こしてでも、セナちゃんを利用する様な奴らは許せない! って立ち上がった訳よ』
かつて現政府に対してテロを行っていた者達は、神の様に崇めている小型端末のセナへと視線を送りながら静かに頷く。
実際に聞いた話ではセナはテロ等望んでいなかったが、それでもあの戦いが無駄であったとは思わない。
『それを見てると、やっぱりもう政府とか国とかで人々をまとめるのは無理なんだなって俺も思ったよ。みんなの為に叫び続けて来たキラちゃんやセナちゃん。それに平和を訴えて、反戦を唱え続けて、戦い続けて来た人たち。俺たちは一つになるべきなんだ。コーディネーターだからって殺し合いたい人はいない。ナチュラルだからって、排斥したい人は居ないって。昔の戦争の時には差別感情もあったんだろうが、今は同じ人類だと思ってる。それは、やっぱり色々な人と繋がって、人種じゃない違いって奴を見つけたからかもしれないな』
『……そっか』
『まぁ、良い事だと俺は思うけどな。俺のライブだって、色々な奴が来るんだぜ? そこに人種だとか性別だとか、国家だとか持ち込むのが間違いってモンよ。みんなで楽しく騒ぐ。それが一番だって事だな』
『ミゲルは良い事言うねぇ』
『当然だろ? 俺はキラちゃんよりも年上のお兄さんなんだぜ?』
『もうお兄さんなんて年齢じゃないよ。ミゲルおじさん!』
『かー! キラちゃんは今日もきついなー!』
ミゲルはふざけた様に笑いながら話を綺麗に流してゆく。
そして、変わっていく世界の感情、風景、人々の在り方を訴えてからこれから彼らが行うべき大きな選択について話をしていった。
『と、言う訳で! 今回の選挙はある意味大きな意味を持っているワケだな!』
『うん。そうだね』
『例えば、コーディネーターの代表を選んで、コーディネーターの代表がコーディネーターばかりを盛り上げる政策を打てば、次回の選挙じゃあとんでもないことになるし。過激なテロリストが世界中に居る事を考えると、突然殺されるかもしれないぜ』
『同じ様に、ナチュラルの代表さんがナチュラルばかりを持ち上げると、それはそれで、テロ事件とかが起きるかもしれないね』
『そういう事! 大事な事はこれも必要な事なんだって黙らない事だ! みんな! みんなの近くにはセナちゃんがいるだろ!? 不満はセナちゃんにしっかり話すんだぜ? そうしなきゃ、みんな受け入れてるって思われちまう』
『勿論、全員が全員受け入れる人なんて居ないだろうけどね。どう思われてるのかなって客観的に知るのは大事だと思うよ』
『というワケで! みんな。選んだからって従う必要はない。けれど、世界の未来を幸せに導いてくれそうな奴を選ぼう!!』
ミゲルはキラに軽く相槌をして、これから喋る事をキラに共有する。
そして、キラもミゲルの合図を受け取って、すぅと息を吸い込んだ。
『『世界大統領選挙! 立候補者共有放送~!!』』
タイトルが読み上げられ、多くのスタッフから拍手が起こる。
そして、拍手が送られている状況の中、キラとミゲルは一人ずつ視聴者に紹介をしてゆくのだった。
『じゃあ、立候補順に紹介していこうか』
『そうだね。それが良いかも』
それから、キラ達は一人ずつ立候補者を紹介し、どこの誰なのか。
どういう組織の人間なのか。
何を重要視しているのか。
立候補者本人に通話が繋がるのなら、通話を持って色々な質問をする。
視聴者より届けられた質問を立候補者にぶつけ、その回答を聞く。
等を繰り返して一人ずつ紹介していった。
それは普通の政見放送よりも面白く、視聴者は次から次へと増えて行って、同時視聴者数は一千万人を超えた。
『ありがとうございました~』
『中々、骨のありそうな奴だったな』
『そうだね。応えきれなかった質問は、答えが出たら配信でみんなに伝えてくれると嬉しいです』
『別にやらなくても良いけど、答えから逃げた奴って思われると不利だぞ!』
ミゲルがズビシっと、先ほどまで繋いでいた立候補者に告げて、キラは笑顔でよろしくお願いしまーす! と言葉を続ける。
明るく笑顔で続けられている様な物であるが、中々にハードであり、立候補者にとっては一筋縄ではいかない圧もあった。
『さてーお次は』
『えー。オーブ連合首長国より、現代表首長のカガリ・ユラ・アスハさんですね』
『妙に他人事だなー。姉じゃないの?』
『お姉ちゃんだよ? お姉ちゃんだけど、今回の選挙では他人。という事になっているので』
『へーお堅いなぁ』
『ま、そういう事もあるって事でね。まぁ、良いや。とりあえず色々な情報を喋りたかったですが、本人とすぐに繋げられる様なので、すぐに繋げてみましょうか!』
『おー。いらっしゃーい』
『カガリさーん? カガリ・ユラ・アスハさーん? 聞こえていますかー?』
キラがどこかに呼びかけると、カガリの映像が配信に移って、ピシッとした姿勢のままキラの言葉に応じるカガリが映し出された。
『キラさん。ミゲルさん。初めまして。私はオーブ連合首長国代表首長カガリ・ユラ・アスハです』
そうしてカガリの話を聞く会議が静かに始まったのであった。