ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第30話『久しぶりだね。ラクス。元気だった?』

 C.E.(コズミック・イラ)70年1月1日

 

 予定調和とでも言うべきか。

 プラントからの要求は回答が無いまま期日を迎えた。

 その為、プラントは物資の輸出を停止し、その結果、生産のほとんどをプラントに頼っていた理事国家群は窮乏する事になる。

 

 しかし、理事国側はこれも全て予定調和という様に、民の生活を圧迫したのはプラントだ、と国民に訴え、さらに世界にプラントやコーディネーターの悪行を訴え続けた。

 これにより地球の人々の中に反プラント、反コーディネイター意識が強烈に植え込まれていく事になる。

 

『ご覧ください。街では今日も飢えた国民が、何も食べられず政府の配給を待っています。これも全てはプラントがナチュラルなど飢えてしまえと自分たちの利益の為に食料を独占した結果なのです!』

 

「アズラエルさん! どうしてこんな報道をするんですか!?」

「テレビが勝手に言ってるだけの事さ。僕に言われても困るよ。それに事実だろう?」

「それは、そうかもしれないですが! でも、抑える事だって出来るじゃないですか! こんな、こんな風に、コーディネーターやプラントが一方的に悪いみたいに!」

「そんなに気にしなくても。世界平和のために活動するオーブのお姫様達は別さ。ほら、テレビでも言ってるじゃないか」

『何故、プラントは理事国と共に歩もうとしないのでしょうか。オーブの姫キラ様と、セナ様は平和を訴えているというのに! 彼らは自分達の利益を考えるばかりで! 同胞の声すら聞こうとしないのです!』

『信じられませんよ。同じ人間とは思えない。キラ様やセナ様が特別なコーディネーターなのでは無いでしょうか』

『2月には月面にて、国連首脳陣が理事国代表としてプラントとの交渉を行う様です。この状況が変わる様にと祈るばかりです!』

 

「こうじゃなくて! そうじゃなくて!」

「まったく。君はワガママですねぇ。我が国、大西洋連邦には報道の自由という奴がありますからね。僕や政府はどうも出来ませんよ」

「っ!」

「それに、心配しなくても交渉の場はあるでしょう? 2月に。月面で」

「……でも、アズラエルさん達はプラントに一切譲歩しないのでしょう?」

 

 キラのジッと訴える様な視線を受けて、アズラエルはフッと笑いながら肩をすくめた。

 そして、キラが予想もしていなかった言葉を発する。

 

「残念ながら。僕らは今回、かなり譲歩するつもりなんですよ」

「え!? 本当に!?」

「疑り深い子ですねぇ。本当の事ですよ。気になるのなら、国連の事務総長にでも聞いてみれば良いでしょう。同じ事を言う筈ですから」

「……っ! ありがとうございます! アズラエルさん!」

「えぇ、えぇ。本当によく感謝して欲しい物です。これで理事国は大きな利益を失うんですから」

「はい! そういう事なら、僕やセナも色々協力しますから! 戦争とか争い以外の方法でお金稼ぎしましょうね! はい!」

「まったく君は。お気楽な物ですね。金稼ぎはそんなに単純じゃないんですよ?」

「それは分かってますけど! 僕らならいくらでも出来そうじゃないですか!? えへへ!」

「まぁ、そうですね。では、『平和』になったら君には色々と協力して貰いましょうか」

「はい!!」

「そういう事ですから。貴女は国民にこの幸せなニュースを伝えて来ると良い。ここで騒がれても迷惑ですから」

「分かりました!」

 

 キラは満面の笑みでアズラエルの私室から飛び出して、大西洋連邦のテレビ局へと向かっていった。

 既にブルーコスモスの対象から外され、要保護対象となっているキラは自由に街の中を走り、街で困窮する人たちにも支援を約束しながら、状況が良くなりそうですと告げて笑う。

 

 そして、アズラエルからの伝手でテレビ局へ入ったキラは緊急でニュース番組に出して貰い、理事国の方針をテレビで訴える事とした。

 

「はじめまして! 私はキラ。キラ・ユラ・アスハと申します! プラントと、理事国の問題について、以前より各国で活動しておりました。しかし、両者の関係は変わらないまま戦争が始まる一歩手前まで来ておりました」

「しかし! この様な事態に国連の事務総長さんが立ち上がってくれ、交渉の場を用意してくれました!」

「さらに、理事国側も、プラントの要求を全ては難しいと思いますが、かなり譲歩して下さるとの事で! 世界は平和に向かって進み始めています! すぐに状況が改善されるような事はないかと思いますが、オーブからも困窮する人々への支援は行います! どうか! どうか! 憎しみではなく、信頼で。銃ではなく、手を取り合って、苦しい時代を乗り越えてゆきましょう! 悲しいすれ違いはありましたが、私たちは同じ人間として歩んでゆく事が出来るのですから!」

「僕も月へと向かいます。そして、必ずや、皆さんの元に平和を取り戻してみせます!」

 

 キラの言葉は、大西洋連邦だけでなく世界中に向けて放たれた。

 非理事国も、オーブも。そして月面都市にも、プラントにもキラの願いは向けられる。

 

 

 キラの放送を聞いていたプラントの歌姫はその放送を目にして、父であるシーゲルに面会を申し入れた。

 

「申し訳ございません。お父様。忙しい時期に」

「いや。構わないよ。キラ君の件だろう?」

「はい。私も月へ向かい、キラと共に平和を訴えます」

「……そうか。分かった。しかし、コペルニクスに降りるのは危険だ。ブルーコスモスもいるからね。ラクスは月面軌道上でキラ君と話すと良い。プラントの軍艦で話す事にはなるだろうが……キラ君は納得してくれるだろう」

「はい!」

 

 シーゲル・クラインの娘、ラクス・クラインは長くプラントで平和的な手段での交渉を訴え続けてきたが、ようやくその芽が生まれた事に、心からの喜びを感じながら遠い宇宙の向こうにいるキラを想う。

 ラクスの記憶にある前世の世界では、キラとラクスは平和を訴えながら銃を取り、多くの命を奪いながら平和を維持してきた。

 それしか無いのだと。

 この憎しみの目と心と引き金を引く指しか持たぬ者たちの世界では、それしか手段はないのだと、そう考えてきた。

 

 しかし、キラとセナは成したのだ。

 世界全てを巻き込むような戦争が起きる前に、その憎しみを抑える事が出来たのだ。

 

 無論、これは始まりの一歩でしかない。

 あくまで交渉が再開されただけだ。

 理事国も譲歩すると言いながら、大した譲歩はしないかもしれない。

 

 しかし、一度武器を手に取った人々が再び話し合いのテーブルに座る。

 これがどれほど大変か。

 ラクスは前の世界でそれを知っていたからこそ、キラとセナの頑張りに敬意を向ける。

 そして、自分も彼女たちと共に、プラントの中から変えていこうと強く決意するのだった。

 

 

 それから時は流れて……。

 C.E.(コズミック・イラ)70年2月5日

 

 月面軌道上にて、キラは大西洋連邦の軍人と共にZAFTの軍艦『ローラシア級:マルピーギ』に足を踏み入れていた。

 そして、キラと同じ様にZAFTの軍人に囲まれたラクスへと視線を向ける。

 

「ラクス!」

「キラ様! 危険です!」

「大丈夫です! 彼女は私の親友なんですから!」

 

「キラ!」

「ラクス!」

 

 二人はちょうど睨み合うZAFTと大西洋連邦の軍人たちの中心で再会を喜びながら抱き合った。

 一瞬だけ、アスランとの事が思い出されたが、アスランも最後まで自分を無理矢理連れていこうとはしなかった。

 ラクスも自分に対して害意を持つ人ではない。

 

 それに、ラクス達は月まで平和を作る為に来たのだ。何か争いが起こるとは考えにくかった。

 

「久しぶりだね。ラクス。元気だった?」

「はい。私は何も変わっておりませんわ。少しだけ背が伸びたくらいでしょうか」

「あ。ホントだ。でも、僕も伸びたから、僕の方がちょっとだけ背が高いかな」

「ふふ。そうですわね。キラもお変わり無いようで。安心しましたわ」

「急に居なくなっちゃって。心配かけたよね。ごめん」

「仕方ありませんわ。情勢が情勢ですもの。それに、また平和となれば共に過ごせるでしょう?」

「そうだね。そうなれば、また一緒に遊べる。あ、そうだ。僕、今オーブっていう国にいるんだけどさ……「キラ様!」え?」

 

 キラとラクスが抱き合いながら言葉を交わしている刹那。

 キラは後ろから聞こえてきた大西洋連邦の軍人の焦った様な声に振り向いた。

 しかし、次の瞬間、艦内に鳴り響いた物々しい警報と焦った様な声に、凍り付く。

 

『コンディションレッド発令! コンディションレッド発令! コペルニクスの会議会場が何者かに爆破された! クライン議長の無事は確認されているが、理事国が仕掛けてくる可能性がある! 総員直ちに持ち場につけ!!』

 

「ば、くは……!? そんな!」

「ラクス様! キラ様! お下がりを! 艦内より敵を排除します!」

「っ! 止めなさい! まずは状況を冷静に!」

 

「おのれ! コーディネーター共! 我らを謀ったな!! キラ様を奪う作戦だったのか!?」

「止めて! 銃を向けないで! 話し合いをするために、僕たちは!」

 

 キラもラクスもそれぞれ自分達と共にあった者たちへ叫んだ。

 しかし、彼らの暴走は止まらず銃撃戦が始まってしまう。

 

 このままでは駄目だとキラはラクスをZAFTの軍人が居る方へ押し出しながら、銃弾の雨の中を大西洋連邦の軍人がいる方へ向かう。

 無重力の中で走ることが出来ないのが気持ちを焦らせるが、そんな事を気にしている様子は無かった!

 

「や、やめろ! 撃つな! キラ様に当たる!」

「脱出します! 皆さん、急いでシャトルへ!」

「キラ!!」

「ラクス! ごめん! 今は……ごめん!!」

 

 キラは無理矢理大西洋連邦の軍人たちの背を押して、シャトルへと向かい、無理矢理に軍艦から外へと飛び出した。

 撃ち落される可能性もあったが、マルピーギは沈黙しており、キラたちは無事、理事国の宇宙母艦『アガメムノン級宇宙母艦:メネラオス』へと帰還した。

 

「キラ君。無事だったか! 不幸中の幸いという奴だな!」

「何が起きたんですか!? ハルバートンさん!」

「詳細は分からない。だが、何者かに会場が爆破されたらしい。月面会議に参加する予定だった国連総長以下、国連首脳陣は全滅との報告を受けた」

「そんな……!」

「交渉は決裂した! 敵が撃ってくるぞ! 全艦回頭! この宙域から離脱する!」

 

 キラは軍人たちが慌ただしく動き回る艦橋の中で、一人どうしてこうなってしまったのかと頭を抱えているのだった。

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