ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第32話『血のバレンタイン』

 C.E.(コズミック・イラ)70年2月14日

 

 プラントのコロニーが並ぶ宙域のすぐ近くで始まった戦闘は、地球連合軍、ZAFT共に相当数の戦力であり、一瞬の間に多くの命が宇宙に散ってゆく。

 

「酷い。こんなの……どうして戦争なんて始めてしまうんだ」

 

 キラはガンダムのコックピットで操縦桿を握りしめながら、宙域で瞬いては消えてゆく光を見て、悔しそうに呟く。

 そんなキラの膝に乗りながら、キラの手に自身の手を重ねるセナは、キラ同様に悔しそうな、悲しそうな顔をしながらも、キラの気持ちを落ち着かせるために言葉をかけた。

 

「お姉ちゃん。まだ、止められます。この戦いを最後の戦いにしましょう」

「っ、そうだね。例の核ミサイルを探さなきゃ」

 

 キラはセナの言葉に頷いて、スラスターを全開にし、宇宙の暗闇を切り裂きながら戦闘宙域に突入していった。

 そして、近づいてくる機体の攻撃を避けながら加速し続けて、目標を探す。

 

『な、なんだアレは!? アレもプラントのモビルスーツって奴なのか!?』

『連合のモビルスーツか!? しかし、早い!』

『まるで白い流星じゃないか……!』

『所属不明機接近! 回避!!』

『なんだ!? あの機体は! 奴が来る前にミサイルを放て!』

 

「お姉ちゃん! 見つけました!」

「っ!? アレか!」

 

 『ガンダム』に乗った時から、セナは戦場の『声』を頭の中で直接捉えていて。

 その感覚で捕まえた核ミサイルをキラに言葉ではなく、意識を直接繋げる事で共有する。

 

 キラは、戦場の景色と重なるように見えた、セナの超感覚でとらえた景色に真っすぐ機体を向けて加速させた。

 

 そして、ビームライフルを構えながら、今まさにモビルアーマー空母『ルーズベルト』から出撃した核ミサイル搭載のモビルアーマーへと迫る。

 

『な、なんだ!? あの機体は! えぇい! 行け! ミサイル発射! 消えろ! 宇宙の化け物!』

 

 しかし、キラが近づく前に核ミサイルを搭載したモビルアーマーは、核ミサイルを発射しており、キラはモビルアーマーから核ミサイルに目標を切り替えて、さらにスラスターを踏み込む。

 その速さは、もはや戦場の誰も追いつけない物となっており、黒い宇宙を切り裂く白い流星のようになって核ミサイルへと迫った。

 

「っ! そこだ!! 当たれー!!」

 

 そして、キラはビームライフルを核ミサイルに向かって三発連射で放ち、その内の一発が核ミサイルに命中して宇宙を閃光で染め上げた。

 その衝撃に、『ガンダム』は体勢を崩すが、バーニャを吹かせて、姿勢を直してから、核の衝撃で完全に停止した戦場を見つめるのだった。

 

「と、止まった?」

「はい。核ミサイルの狙撃に成功。ユニウスセブンは無事です!」

「っ! よ、良かった……!」

 

 核ミサイルが離れた事で、ZAFTも連合も先ほどまでの戦いを止め、呆然とその光を見つめていた。

 そして、核ミサイルを食い止めた、一機の白いモビルスーツを。

 

 静寂が、戦場を包み、キラは戦場が止まった隙に脱出しようかと考えていたが、膝の上に座っていたセナが勢いよく顔を上げた。

 驚愕に染まった顔で。

 

「まだ、ある!?」

「え? どうしたの? セナ」

「お姉ちゃん! 核ミサイルは、もう一発あります!」

「そんな!?」

 

 驚くキラがモニターに目をやれば、そこには核ミサイルを抱えたままプラントへ向けて飛ぶ地球連合軍のモビルアーマー『メビウス』があった。

 キラはその姿を見て、すぐにスラスターを吹かせて『メビウス』に接近する。

 核ミサイルを放った瞬間に狙撃できる様にと。

 

 しかし、『メビウス』はどれだけプラントへ接近しても、核ミサイルを放たず、直進を続けていたのだった。

 

「ギリギリまで接近するつもり!?」

「お姉ちゃん!」

「なら、足を止めれば!!」

 

 キラは慎重にビームライフルを構えて、メビウスの推進装置を狙った。

 

「これで!」

 

 しかし、推進装置にビームライフルが直撃し、小爆発を繰り返しながらも、メビウスは進み続ける。

 生きて帰るつもりなど、一切無いのだと言う様に。

 

『……信管、起動を確認! ようやくお前たちの所へ行ける』

「お姉ちゃん! 彼は、特攻するつもりです!」

「特攻!?」

 

 キラはセナの言葉に強い衝撃を受けながら、ビームライフルを真っすぐにメビウスへ構えて、引き金に手をかけた。

 

 撃ち落とさなければ……!

 撃ち落とさなければ、プラントは!!

 

 キラは心の中で叫びながら、ビームライフルの引き金を引いて、メビウスを撃ち落とそうとした。

 しかし、『ガンダム』とメビウスの間に、地球連合軍のメビウスが入り込んだ事で、メビウスを狙撃する事が出来ず……メビウスはユニウスセブンの中心核に向けて機体ごと飛び込んでしまうのだった。

 

 瞬間、世界は光に包まれる。

 

『ミーファ、リーゼ。父さん。今、そっちに行くからな……』

「っ!!? あぁっ! 駄目ッ!!」

「くそっ! 止められなかった!?」

 

 核ミサイルを抱えた『メビウス』が天秤型コロニーであるプラントの中心核にぶつかり、激しい光と衝撃を生み出しながら、ユニウスセブンを崩壊させてゆく。

 宇宙に作られたコーディネーターが生きる大地は引き裂かれ、崩壊してゆくユニウスセブンの中から多くの命が宇宙へと流され、消えていった。

 

 そして、多くの命が消えていく感覚に、セナは自身の胸を掻きむしりながら、叫び声を上げた。

 

「うぅぁあぁぁ! い、のちが……消えていく」

「セナ!? セナ! しっかりして!」

「こんな……こと! どうして!」

「セナ! セナ!! くそっ、このままじゃ、僕たちも脱出できなくなる! 逃げるよ! セナ!」

 

 怒りと憎悪。

 守るはずだった市民が無残にも殺され、核を放った地球連合に対し、プラントはその強い感情のままに全機体を地球連合軍艦隊へと向けた。

 一機たりとも逃がさないと。

 父を、母を、兄弟を、姉妹を、子供を奪われた者たちの嘆きが宇宙に広がりながら、傷ついた心を癒すために、全ての憎しみを『ナチュラル』へ向けて、放つ。

 

 キラは、放たれるZAFTの銃口から逃れる様に機体を加速させ、戦場をから離れてゆく。

 膝の上では、大きすぎる苦しみから意識を失ってしまったセナがぐったりとしており、キラは自身のパイロットスーツからメットを外し、セナの物も外して、セナの目から涙を拭った。

 

 そして、強く拳を握りしめながら苛立ちを口にするのだった。

 

「結局僕は……何も出来なかった」

 

 キラは、乱暴にメットをどかすと、通信をクサナギに繋げて、急ぎこの宙域から離れる事にした。

 もし万が一、オーブの介入がプラントや連合にバレてしまえば非常に面倒な事になるからだ。

 そして、キラたちを収容したクサナギはZAFTの追撃が来る前に戦場を離れ、オーブへと帰還した。

 何も出来なかったと嘆くキラ。

 強い精神的なショックにより、意識を失ってしまったセナを抱えながら。

 

 

 C.E.(コズミック・イラ)70年2月18日

 プラント最高評議会議長であるシーゲル・クラインは、先の戦闘で行われた蛮行について、世界に対し一つの声明を行った。

 黒い喪服を着て、『血のバレンタイン』で失った多くの犠牲者を弔いながら、強い怒りを示した顔で、語る。

 

『我々は、長い間理事国からの圧政に耐え、多くの苦しみの中で生きる術を探してきました』

『何度も話し合いを申し込み、平和的な道を模索してきたのは、地球に住まう方々と同じです』

『しかし、地球連合より一方的に告げられた宣戦布告! そして、多くの民間人が住まう、軍事基地では無いユニウスセブンへ向けて放たれた核!』

『この様な行為を行う地球連合のどこに正義がありましょう』

『あくまで平和的な手段で問題を解決しようとする我らに対し、この様な蛮行を行う地球連合を我らは決して許す事は出来ません!』

『もはや我らは暴力に怯えるだけの存在ではない!!』

『我らプラントは、一つの独立した国家として! 地球連合に対して、徹底抗戦する事を、ここに宣言します!!』

 

 ユニウスセブンへ向けて放たれた核。

 24万3720名の犠牲を出した『血のバレンタイン』により、プラントは、より一層戦力を増やし、地球連合との戦争に飛び込んでゆく。

 

 そして、プラントから世界へ向けられたシーゲル・クラインの演説を聞いていたキラは、ウズミの部屋で大きなため息を吐いた。

 

「……結局、僕のやっていた事に、意味なんか無いのかな」

「キラ……」

「戦争も、核も、何も止められなかった。戦争は始まってしまった」

 

 ソファーの上で膝を抱えながら涙を流すキラに、ウズミは小さく息を吐いて椅子から立ち上がると、テーブルの引き出しから二つの書類を取り出して、キラの座っているソファーの前にあるテーブルへと置いた。

 テーブルに置かれた2枚の紙を見て、キラは首を傾げる。

 

「……これは?」

「プラントと、地球連合からの同盟の打診だ」

「同盟って……」

「地球連合の蛮行が許せぬというのなら、プラントと手を取り合い、戦うという道もある」

「……」

「もしくは地球にある一つの国家として地球連合に参加するか。お前はどの道を進むべきだと思う?」

「僕は……」

 

 キラはキュッと唇をかみしめて、ウズミを見据える。

 拳を握りしめながら、未だ目覚めない病院で眠り続けるセナを思って、口を開いた。

 

「僕は、戦いなんて、したくない。戦争を止めたいです」

「……」

「だから、プラントとも、連合とも手は組まない。オーブはあくまで中立として、中立のまま、戦争を止めるために声を上げ続ける。そうあるべきだと思います」

「そうか」

 

 ウズミは微笑みながらキラの頭を撫でると、普段よりも柔らかい口調で語り掛ける。

 

「お前の父になれて良かった。どれほどの力を持っていたとしても、お前なら正しく使って行けるだろう」

「お父様……」

「これから世界は争いに巻き込まれてゆく事になる。だが、それでも、今の気持ちを忘れてはならぬぞ」

「はい……!」

 

 キラの火が灯った瞳を見て、ウズミは満足そうに頷くと再び自席へと戻って行った。

 そして、いつもの様に、元気いっぱいという様な顔で、部屋を飛び出してゆくのだった。

 

 残されたウズミはテレビで流れ続けているシーゲルの演説を聞き、眉間に皺を寄せる。

 

「アストレイの開発……急がねばならんかもしれんな」

 

『我らは地球に住まう全ての者と戦うつもりはない!』

『むしろ、蛮行を良しとする地球連合のみを敵として考えている! だからこそ、地球連合には参加せず、中立を保つという事であれば、我らは優先的に物資を提供すると約束しよう!』

『この様な事態になろうとも! 我らは平和を変わらず望んでいるのだ!』

 

 そして、プラントから向けられた『クライン議長による積極的中立勧告』により、非プラント理事国である大洋州連合、南アメリカ合衆国がこの勧告を受諾。

 これがまた新たな戦いを起こしてゆく事になる。

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