ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第33話『ラウ・ル・クルーゼだ。ジン。出るぞ!』

 C.E.(コズミック・イラ)70年2月19日

 『クライン議長による積極的中立勧告』により中立という立場を表明した南アメリカ合衆国に対し、連合軍は武力侵攻を行った。

 この戦いにより連合軍はパナマ宇宙港を軍事制圧。

 南米大陸を大西洋連合に併合する。

 

 翌、C.E.(コズミック・イラ)70年2月20日

 連合軍の中南米侵攻に対し、大洋州連合は連合軍を批判しつつプラント支援を表明し、『親プラント国家』となった。

 そんな大洋州連合に対しても地球連合は宣戦を布告する。

 

 

「地上は大混乱って感じだな」

「それはそうだろう。戦争など、実に60年ぶりの事だからな。皆、何が正しいかも分からず右往左往しているのさ」

「ふぅーん。そういうモンか」

 

 L1宙域へと向かう多数のZAFT艦隊の一艦で、地上から届いたニュースを見ながら言葉をかわす赤服にサングラスを付けた男と、まだ若い赤服を纏った長い黒髪の少年に、周囲から視線が集まる。

 ZAFTという組織は義勇軍の集まりであり、階級などは存在せず、上下関係は存在しないとされているが。

 各部隊を指揮する人間は存在するし、アカデミーと呼ばれる士官学校では、成績上位者に『赤服』を渡す決まりもあった。

 

 つまり、ニュースを話している二人は、周囲の緑服を着た一般兵とは違い、エリートの軍人なのだ。

 

「しかし、プラントも地球連合も、宇宙が主戦場であると認識し、ここに戦力を集めている以上、忘れていても戦いの本能は残っているという事なのだろうな」

「まぁ、よく分かんねぇけどよ。要するに地球連合の連中を全部ぶっ潰せば良いんだろ?」

「そうだな。我らは軍人であるのだから、命令に従うのは正しい。そして、我らの敵は地球連合だ。故に、地球連合を全て倒すというのは間違いでは無いだろう」

「へっへ。腕が鳴るぜ! 前の戦いで活躍したからカスタム機も貰えたしな!」

 

 まるで子供の様にはしゃいでいる少年、カナードをサングラス越しに見ながらラウはフッと笑うと、プラントを出る前に貰っていたラウ用に用意された機体の詳細を見る。

 少々無理を言って、用意して貰った機体はラウの気持ちを何よりも昂らせるものであった。

 

「そういや、ラウはどんな機体用意して貰ったんだよ」

「私はコレだ」

「えーっと? スーパーライジングジンカスタムキラちゃん号? なんだこの機体。どういう名前だよ……って、なんだコレ!? 作った奴頭おかしいんじゃないのか!? こんなのちょっと何かにぶつかったら終わりだぜ!?」

「頭がおかしい、か。どうだろうな。彼女であれば、この様な機体も問題なく操れるだろう」

「彼女?」

「前にも話しただろう? 私の大切な妹の一人さ」

「あぁ、『キラ』か」

 

 カナードはかつてラウから聞かされた妹たちの話を思い出し、なるほどと手を叩いた。

 メンデルで研究をしていたというギルバート・デュランダルから聞いた話も思い出しつつ、機体のスペックを見て唸る。

 

「しっかし。最高のコーディネイターって奴は、こんな機体も動かせんのかよ」

「無論。まぁ、それが彼女にとって幸福かと聞かれれば、否と答えるだろうがな。キラもセナも望んだワケではない」

「ふぅん。まぁ、でも。人間そんなモンなんだろうぜ。俺だって、ラウだって、別に望んだワケじゃないしな」

「まぁ、そうだな」

「どうしようもねぇ事はある。が、それはそれとして、俺も『キラ』の兄貴分としては、この機体を使いこなしてみせるさ! 今すぐは無理だろうけどな!」

「……いつの間に、キラの兄になったのだ? お前は」

「そりゃお前。ラウが俺の兄貴分なんだから、ラウの妹は俺の妹みたいなモンだろう」

 

 あっけらかんと言い放ったカナードの言葉に、ラウはサングラスの向こうで目を丸くしながら、ハッハッハと笑った。

 二人だけが聞こえる声で何かを話していると思えば、急に大笑いをしているラウに周囲は怪訝そうな顔をするが、ラウは何も気にした様子はなく、カナードへと明るく声をかけた。

 

「そうか。なら、私が居なくなってからも安心だな」

「へっ、引退寸前のジジイみたいな事言ってんなよ。デュランダルの奴も、お前やレイが生き残る方法は探してんだろ? 諦めるには、まだ早すぎるぜ」

「そうだな……二人が幸せに生きられる場所を作るまでは……まだ、死ねんか」

 

 ラウが決意と共に呟き、立ち上がると同時に艦内に通信が入った。

 

『コンディションレッド発令! コンディションレッド発令! 総員所定の持ち場につけ! 繰り返す』

 

「さて、どうやら戦場に着いたようだ。準備をするぞカナード」

「おうよ!」

 

 そして、ラウとカナードはブリーフィングルームから、格納庫へと向かい、自分の機体で出撃を待つのだった。

 

 C.E.(コズミック・イラ)70年2月22日

 L1宙域にて、人類初の、大規模な宇宙戦が始まった――!

 

「カナード・パルス! ジン! 出す!」

「ラウ・ル・クルーゼだ。ジン。出るぞ!」

 

 後に『「世界樹」攻防戦』と呼ばれたこの戦いは、連合の月への橋頭堡(きょうとうほ)であるL1の「世界樹」を巡って行われた戦いである。

 世界樹とはC.E.(コズミック・イラ)11年に誕生した世界初の宇宙都市であり、L1に存在する地球連合軍の拠点である。

 L1とは地球と月を結ぶ直線上で、地球と月の間に位置するポイントであり、地球連合軍の地球・月を結ぶ補給基地として利用されていた。

 この拠点を失えば、地球から月への補給が難しくなり、地球連合軍の宇宙での活動は消極的になってゆく事となるだろう。

 さらに言えば、この拠点を手に入れる事で、月と地球を結ぶ航路を監視する事も出来るようになるのだ。

 

 ZAFTは世界樹を地球連合軍より奪取する為に、艦隊とモビルスーツ……そして、キラ達がその存在を知ってから危惧していた『ニュートロン・ジャマー』の試験投入を行った。

 『ニュートロン・ジャマー』により、核兵器は使用不能となり、誘導兵器や火器管制装置も使えず連合軍は一気に劣勢へと立たされる事となる。

 

 それでも圧倒的な物量で地球連合軍はZAFTへと攻撃を仕掛け、両者の戦いは激戦となった。

 

 結果。

 ZAFT、地球連合軍、双方に甚大な被害を与えながらも、『「世界樹」攻防戦』は世界樹の崩壊という最悪の結果だけを残して、終結する事となったのである。

 

 ただ、この戦闘でモビルアーマー40機、戦艦8隻を撃沈したラウ・ル・クルーゼは何とか撤退した地球連合軍の中で『白き鬼神』と呼ばれる様になり。

 プラントではネビュラ勲章を受章する事となった。

 

 

 そして、無事プラントへと帰還したラウは、カナードに休んでいる様に告げてからザラ邸へと向かう。

 今回の戦闘の報告と、秘密裏の話をするために。

 

「ご苦労だったな。クルーゼ」

「ハッ! ねぎらいの言葉、ありがとうございます」

「良い。楽にしろ。家の中では国防委員長と軍人である事は忘れろ」

「ありがとうございます。では、失礼します」

 

 ラウはパトリックに礼を言いながら座るように示されたソファーへと体を下ろし、テーブルの上に置かれたワイングラスを手に取った。

 『血のバレンタイン』以降、全身を怒りと憎しみで包んでいた男は、ようやく少しばかりの落ち着きを取り戻した様だった。

 

「レノアが、ようやく目を覚ました」

「それは、幸いでしたな」

「あぁ。しかし、長い時間起きている事は難しいし、ベッドからも起き上がれる状態では無いから、喜べるかどうかは難しい話だがな」

「……」

「しかし、それでも『血のバレンタイン』で唯一の生存者だ。贅沢は言えん」

「……はい」

 

「時に、だ。クルーゼ。貴様は、あの戦場で……核ミサイルを撃ち落としたという白いモビルスーツを見たな?」

「はい。確かに見ました」

「どう思う?」

「圧倒的な機動性、追撃するジンのマシンガンを容易く防いだ装甲、そして、小型化されたビームライフル。どれをとっても脅威でしょう。しかし……」

「パイロットがキラ君であれば、何も脅威にはならない。か?」

「……お気づきでしたか」

 

「無論だ。ナチュラル共にあの様なモビルスーツが作れるはずもない。おそらくアレはオーブの機体だろう」

「オーブにも、多数のコーディネーターがおりますからな」

「それに、キラ君やセナ君が居る。製造はそこまで難しくないはずだ」

「……ふむ」

 

「あの機体とパイロットを奪取して来いと命じたら、お前はどうする?」

「どうと言われましても。命令であれば従うだけです」

 

 パトリックはジッとラウを見据えながら二人にとって意味のない問いかけをした。

 そして、やはりと言うべきか。

 ラウはパトリックの予想通りに頷くだけだった。

 

 それが本心であるかどうか、パトリックには分からない。

 だが、それでもこの男を切り離す事が出来ないのは、彼がZAFTの中でもトップクラスに優秀だからか。

 もしくはラウがここに居る事で、キラやセナへの切り札となるからか。

 

「……冗談だ。忘れろ」

「はい」

「どの道、プラントとしてはオーブと正面から争う様な真似はしたくない。地球でキラ君やセナ君の人気は相当な物だからな。彼女たちとの敵対は、不必要な敵を増やすだけだ」

「そうですな」

「だからこそ。オーブとは友好的な関係を築く必要がある」

「はい」

 

「そこで貴様に問いたい。次にキラ君が動くとすれば、どこだ?」

「ふむ……」

 

 ラウはワインを軽く口に含ませてから腕を組んで思考する。

 プラントの軍事行動、そして地球連合軍の動き……。

 

「おそらくは、戦場での民間人への救護活動や支援活動でしょう」

「という事は、地上か」

「はい。キラは戦争を止めたいと考えるでしょうが、彼女一人で出来る事はもはやありません。既に核ミサイルはユニウスセブンに放たれてしまった」

「ならば、今できる事として、多くの戦争被害者を救いつつ、戦争を止める為に民意を集める……か」

「はい」

「分かった。では、地上部隊には通達をしておこう。オーブからの救護隊が発見された場合、これを支援せよ、とな」

「ありがとうございます」

 

 パトリックはテーブルに置かれていた端末に書かれた作戦書を承認し、深く息を吐いてからソファーにもたれかかった。

 疲れを滲ませた表情から、彼の苦悩がうかがえるが、ラウは特に気にした様子も見せぬまま作戦書へと視線を向け、目を細めるのだった。

 

 『ビクトリア攻略作戦』

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