ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第42話『PHASE-1『偽りの平和2』』

 C.E.(コズミック・イラ)71年1月25日

 

 オーブ連合首長国代表首長の娘、カガリ・ユラ・アスハは怒り狂っていた。

 妹であるキラとセナが何かをコソコソやっているなという事は気づいていた。

 しかし、きっと最愛の姉である自分へのプレゼントを用意しているのだろうと考えていた。

 

 だが、サハクの人間と共にモルゲンレーテへ行き来している辺りから、おかしいなと思い始め。

 遂にはキラたちがヘリオポリスへ行った辺りから、自分へのプレゼントではない! と確信した。

 

 自分には何の話も無かったし。何か怪しい事をやっているに違いない。

 そう、カガリは考えて父であるウズミを問い詰めようとしたが、お前が知る必要はない。の一点張り。

 最近何かと話をするキオウ家のミヤビにも聞いてみたが、明らかに何かを隠している様子で、何も話そうとはしなかった。

 

 怪しい。

 カガリは疑念を確信に変え、真実を確かめるべく、変装してオーブを離れ、ヘリオポリスへと向かう事にした。

 

 そして、キラが宿泊しているというアーガイルという少年の家に押しかけて、チャイムを鳴らすのだった。

 

「はーい! どちら様……っ!? カッ」

 

 深くかぶっていた帽子を取り、金色の輝く髪と、太陽の様に燃え滾るオレンジの瞳を輝かせて、玄関の扉から家の家主であるサイ少年を真っすぐに見据えた。

 

「この家に、キラ・ユラ・アスハとセナ・ユラ・アスハが居るな?」

「か、カガリ様! いや、そんな事は……!」

「隠しても無駄だ!! おい! キラ! セナ! 居るんだろう! 出てこい!」

 

 カガリはサイをグイっと左手でどかすと、中に向かって大声で叫ぶ。

 そして、その声に反応してキラが、ため息を吐きながら奥の部屋から出てくるのだった。

 

「カガリ……何をしに来たの?」

「何しにきたか、だと!? 分かっているんだぞ! モルゲンレーテで!!」

「わーわー! 分かったから! ココじゃマズいから! カトウさんの所に行こう! ね!」

「フン! 逃げられると思うなよ? キラ」

「……まったくもう。ホント。勘弁してよ」

 

 呆れた様な、困った様な声を出しながらキラは、終わったらまた戻ってくるから。とサイたちに伝言を残しモルゲンレーテへと向かう。

 キラと二人乗りのエレカで、カガリは双子の妹であるキラをジィーッと見つめながら、掴んできた情報を口にするのだった。

 

「私はな。全てを知っているんだ」

「へー。そりゃ凄い」

「誤魔化しても無駄だぞ」

「別に誤魔化してはいないけどね」

「……正直に言えば、許してやらんでもない」

「カガリ。実は何も知らないんじゃないの?」

「知っている! お前とセナがモルゲンレーテでコソコソやっているのも! 『ガンダム』の事も!」

「絶妙な言い方だなぁ……」

「とにかく! 私を仲間外れにするな!」

 

 カガリはフンと鼻を鳴らしながら、エレカのシートに深くもたれかかった。

 そんなカガリを見ながら、キラは心の中でため息を吐く。

 

 おそらく、だが……カガリは『ガンダム』が何のことを言っているのか知らないだろうし。

 キラたちが何をやっているのかも知らないはずだ。

 知っていれば、この程度で済むワケがない。

 

 もし、カガリがオーブが連合の技術を流用しながら独自のモビルスーツを開発しているという事を知れば、烈火の如く怒るだろう。

 少なくとも双子の姉妹であるキラには拳の一つや二つくらいは飛んでくる。

 そう。カガリは潔癖なのだ。

 

 しかし、同時に無知でもあった。

 

 オーブから一度も外の世界に出た事のないカガリは、何も知らないのだ。

 世界が今どうなっているのか、テレビのニュースでしか知らず、キラやセナが平和を訴えて世界各国を巡っている事も、慈善活動の一環くらいにしか思っていないだろう。

 

 世界で今、どれだけの人が殺されていて。

 親を失った子の怒りが、子を奪われた親の憎しみが。

 家族や友を撃たれた者の叫びが、世界にどれほど広がっているのかを、知らない。

 

 だから、オーブは中立だから、と部外者の様な顔をしていられるのだ。

 潔癖のまま、オーブが武器を持つべきじゃない。みたいな理想を語る事が出来る。

 既に憎しみの渦はオーブのすぐ近くまで迫ってきているというのに。

 

 しかし、そんな双子の妹、カガリの事をキラは愛おしく思っていた。

 このまま、純粋で綺麗なお姫様としてオーブの国民の太陽で居て欲しいと思っていた。

 オーブの闇は、自分が引き受けるから……と。

 

 だが、カガリは踏み込んでしまった。

 興味本位か、正義感か。

 カガリの原動力をキラが知る事は無かったが、それでも、光溢れる世界から、後ろへ振り返り、光の当たらない場所を見ようと手を伸ばしてきた。

 

 そうならなければ良いと、ずっと思ってきたのに。

 何故か嬉しいという様な気持ちもキラは感じていて……フッと笑みを零してしまうのだった。

 

「何。笑ってるんだ。私は本気で怒ってるんだぞ」

「分かってるよ。殴られる覚悟だってしてる。でも、まぁ……色々あるんだよ。僕にもさ」

「キラ?」

 

「さて。そろそろ着くよ。心の準備は良いかな?」

「あぁ! 勿論だ! 見せて貰おうじゃないか! お前たちが隠してきた事を」

 

 キラはモルゲンレーテの最深部にある工場地区でエレカを止めて、カガリに笑いかけた。

 そんなキラにカガリはようやくか。と息を吐きながら自信満々に笑う。

 

 そして、順番に倉庫を回って機体を見せようとキラが歩き出そうとした瞬間……それは起こった。

 

「っ!? 何!?」

「なんだ、この揺れは……? 地震か!?」

「ここは宇宙コロニーだよ!? 地震なんてあるわけがない。これは……! 爆発だ!」

「爆発!?」

 

「キラちゃん! 良かった! 工場区に居たのね!」

「マリューさん! 何があったんですか!?」

「詳細は分からないわ。ただ、さっき入港した艦からの情報じゃ、ZAFTの襲撃だって!」

「っ! ジンが来ます! Gをアークエンジェルに! それとストライクの起動準備を!」

「キラちゃん!? 何をするつもり!?」

「このままじゃ戦闘になる! ジンを撃退します! 状況がどうなるか分からない。変化に対応しやすいストライクで対応します! ストライカーパックの準備もお願いします!」

「……分かったわ! こっちに運んでくるから! 」

 

 マリューとの会話をすぐに終わらせたキラは険しい顔で空を見上げた。

 先ほどの爆発以降、未だ何も起こっていないが……それも時間の問題だろう。

 

 強引に突破しようと思えばコロニーの外壁を破壊して入る事だって出来るのだ。

 

「おい! キラ! どういう事だ! ZAFTが攻めて来るって!」

「本当はゆっくり話そうと思ったんだけどね! その余裕はないみたいだ」

「なにを……」

「良いかい? カガリ。僕たちは地球連合軍と秘密裏に手を組んで、モビルスーツの開発をしていた。進めたのは僕だ。責任は僕にある」

「なん……はぁ!?」

「そして、モビルスーツは完成したんだけど、どこからかZAFTに情報が漏れてたらしい。今、ヘリオポリスに攻撃を仕掛けて来てるんだよ」

「いや、待て! 何を言ってるんだ。お前!」

「アストレイの方は、ギナさんが上手い事やってくれるだろうけど、地球連合軍のモビルスーツは僕が守らなきゃいけない。そういう約束だからね。だから、僕はこのままヘリオポリスに残る。君は脱出しろ!」

「待て! 待てって! ヘリオポリスが攻撃されてるんだろ!? なら、お前も逃げなきゃ!」

「民を置いて、逃げられるワケないだろ? 君は逃げろ。誰か! お願いします! この子をシェルターに!」

「ハッ! 承知いたしました! キラ様!」

「忙しい所、申し訳ございません。ありがとうございます」

「いえ! カガリ様の事はお任せ下さい!」

 

 近くに居たオーブ軍人を見つけ、キラはカガリを託し、気合を入れる。

 これから戦争を始めるのだ。

 

 シミュレーションじゃない。本当の戦争を。

 

「おい! キラ! 民を守るのなら、私も残る! キラ!!」

 

 オーブ軍人に抱きかかえられながら暴れるカガリであったが、鍛えられた軍人に勝てるワケもなく、そのままシェルターの方へと運ばれて行った。

 もしかしたら人生最期の別れかもしれないのに、こんな別れ方しか出来なかった事を申し訳なく思い、ポツリとキラは呟いた。

 

「ごめんね。カガリ。でも、君には生きていて欲しいから」

「キラ様。我らは」

「皆さんは国民の避難を優先してください。地球連合軍とZAFTの事は私が対応します。それと、皆さんも限界前にシェルターへ。無駄死には許しません。あなた達もオーブの民。それを忘れぬ様、一人でも多くの民の避難を!」

「「ハッ! 承知いたしました!」」

 

 モルゲンレーテにいた多くのオーブ軍人へ指示を出しつつ、キラはマリューが運んできたモビルスーツのトラックに向けて走った。

 何故かストライクだけでなく、イージスまで持ってきているが、今は細かい事を気にしている状況ではない。

 急いでトラックに飛び乗ってコックピットを目指した。

 だが、そんなキラの元へ、自動小銃を構えた赤いパイロットスーツの兵士が舞い降りてきて……。

 

「ZAFT兵!?」

「キラ……?」

「あす、らん……?」

 

 その兵士が……その少年がキラの名前を呟いた事で、キラはその少年の顔を目撃してしまう。

 ヘルメットの向こうに見えた顔は……月の幼年学校で共に過ごし、プラントで、月で……どうしようもない現実の中で別れてしまった……かつての親友アスラン・ザラであった。

 

 驚愕に染まった顔で、固まってしまったキラへと手を伸ばそうとしていたアスランであったが、その手がキラを掴む事は無かった。

 

「キラちゃん! この! キラちゃんから離れろ!」

「っ! チッ! キラ……!」

 

 マリューが放った銃弾でアスランは大きく背後へ飛びながら、遠ざかって行く。

 しかし、離れる時に聞こえた絞り出す様なアスランの声がキラの耳には届き、キラはビクッと体が無意識の内に震えるのを感じた。

 しかし、感情がどれだけキラの心を縛っていたとしても、頭が……オーブの姫として、活動してきたキラの思考が体を動かしてゆく。

 

「キラちゃん! コックピットの中へ! ZAFTが来たわ! そこなら安全だから!」

「わ、わかりました」

 

 キラは震える体を抱きしめたまま、ストライクのコックピットに飛び込んで、コックピットハッチを閉じる。

 荒い呼吸を繰り返しながら、自分の体を強く抱きしめて、吐き出しそうな気持ちのまま、言葉を落とした。

 

「……これは、罰なのかな。君たちの手を振り払った、僕の」

 

 一人呟いた言葉に返ってくる物は何もない。

 そして、溢れた涙を拭ったキラは、現れたジンの攻撃で燃えるヘリオポリスを見て、唇を強く噛みしめながらストライクを起動する。

 

「止めなきゃ……例え、君たちと戦わけなきゃ、いけないんだとしても……! オーブの姫として!」

 

 フェイズシフト装甲を展開しながら、起動した『GAT-X105 ストライク』を真っすぐに立たせ……キラは暴れるジンを涙で歪んだ視界の中に、捉えた。

 

「キラ・ユラ・アスハ。ストライク……! 行きます!」

 

 オーブで始まってしまった戦争を、止める為に。

 白と青の機体、『ガンダム』を継ぐ『ストライク』は戦場へ飛び込んでゆく。

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