ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第50話『PHASE-5『フェイズシフトダウン』』

 軍事要塞アルテミスへ向かう事が決定したアークエンジェルは、ヘリオポリスの残骸に紛れながら、ZAFTからの追撃をかわすべく、一度だけメインエンジンの噴射を行い、以降慣性航行にてアルテミスを目指した。

 静寂に包まれた艦内で、ブリッジの緊張も高まってゆくが……オペレーターの報告で緊張は最悪へと変わった。

 

「大型の熱量感知。戦艦のエンジンと思われます。距離200、イエロー3317、マーク02、チャーリー、進路、0シフト0」

「横か!?同方向へ向かっている」

「気づかれたの!?」

「いや……だいぶ遠い」

 

「目標、本艦を追い抜きます。艦特定、ナスカ級です」

「チィ!先回りして、こっちの頭を抑えるつもりだぞ!」

「ローラシア級は?」

「待って下さい。……本艦の後方300に進行する熱源!……いつの間に」

 

 混乱するブリッジの中で、ムウは緊急事態であると分かりやすくブリッジクルーへと伝えた。

 

「このままでは、いづれ、ローラシア級に追いつかれるか、逃げようとエンジンを使えば、あっという間にナスカ級が転進してくるぞ。おい!2番のデータと、宙域図、こっちに出してくれ」

「なにか策が?」

「それは、これから考えるんだよ」

 

 そして、ムウは宙域図を睨みながら、この状況を打開する作戦を考え、それをブリッジへ。

 そしてパイロットへと伝えてゆく。

 

 格納庫で、キラとセナ……そしてオルフェはムウの話を聞きながら難しい顔をしていた。

 

「状況は考える限りの最悪ですね」

「あぁ。しかし、完全に終わりという訳じゃない。どうにか生き残る事を考えろ。嬢ちゃんたちも、坊主も、な」

「はい。ムウさんもお気をつけて」

「あぁ」

 

 そして、一人、また一人と出撃してゆく。

 

『メビウスゼロ式、フラガ機、リニアカタパルトへ!』

「ムウ・ラ・フラガ、出る! 戻ってくるまで沈むなよ!」

 

『キラ!』

「ミリィ!」

『以後、私がモビルスーツ及びモビルアーマーの戦闘管制となります。よろしくね!』

『よろしくお願いします! だ!』

「……ありがとう。ミリィ。じゃあ、装備はエールを頼むよ」

『了解! エールストライク、カタパルトへ!』

「キラ・ユラ・アスハ。ストライク行きます!!」

 

『セナさん。どうかご無理はなさらず』

「はい。ナタルさんもお気をつけて」

『少年……セナさんを任せたぞ』

「分かってますよ。では、ストライクセイバー。オルフェ」

「セナ。行きます!」

 

 三機はそれぞれメビウス・ゼロが宙域から外れ大回りに全貌のヴェサリウスへ。

 そして、ストライクとセイバーはアークエンジェルの護衛に入る。

 

『セナ。オルフェ君。無理はしないで。僕の後ろに居て』

『僕たちも戦える。背中は任せて貰おう!』

『はい! その通りです!』

『まったく、元気だね……来るよ!』

 

 キラは通信で、セナやオルフェと話しながら苦笑していたが、レーダーの反応を見て、叫んだ。

 そして、まずは出鼻をくじくべく、ビームライフルを放つ。

 

 キラが放った緑色の閃光は、アークエンジェルの後方より迫っていたバスターの肩に命中し、バランスを崩させた。

 

『うぉ!? マジか!? この距離で当てに来るのかよ! まだ目じゃ何も見えてねぇんだぞ!?』

『相手はキラだ。油断するなと言ったぞ!』

『プラントに居た時より強くなってんじゃねぇのォ!?』

『とにかく散開しましょう。固まっていては良い的です!』

『二コルの言う通りだ。散開するぞ! ディアッカ!』

『へいへい! うぉ!! って、また俺かよ!? 何か俺、キラちゃんに嫌われる事したかぁ!?』

『しただろ。ヘリオポリスを崩壊させた』

『多分相当怒ってるでしょうねぇ』

『俺だけじゃねぇだろ! って、うぉ! くそっ、このままじゃ駄目だ! 俺は上から行くぞ!』

『了解。では僕は下から』

『何ィ!? お前たち! ふざけるな!』

『はいはい。自称エースのイザークさんは正面からお願いします』

『ちっ、くそぉぉぉおおお!!』

 

 三機はそれぞれ通信で悪態をつきあいながら、散開し、それぞれの方向から攻めて来る様だった。

 それを確認したキラは、スラスターを吹かせて、まずは正面から来た敵へと向かう。

 

『うーん。まずは火力の高いバスターを落としたかったんだけど。向こうも良い動きをするね。でも、散開したのなら、仕方ない。一機ずつ、落とすよ!』

 

 囲まれる前に、倒すつもりなのだ。

 

 しかし、そんなキラの思惑を分かっていたとでもいう様に、高速で近づいてくる赤い影が急接近する。

 

『っ! アラート!? イージス! って事は! アスランか!』

『キラ!』

『しつこいね! キミも!!』

 

 モビルアーマー形態に変形していたイージスはキラに接近しながらモビルスーツ形態となり、ビームサーベルを振り上げながらキラに切りかかる。

 傷つけるつもりはない。武装を破壊するだけだ。

 しかし、キラは容易く左腕のシールドでビームサーベルを受け止めると、ビームライフルを手放して、ビームサーベルを振り上げながら突っ込んできたデュエルの腕を掴む。

 

『何ィ!?』

『フェイズシフトが無きゃ、こんな無茶出来ないけどさ。やれるもんだね!』

『二人がかりで、こうも容易く! くそっ! キラ! 話を聞いてくれ! キラ!』

 

『セナ! オルフェ君。ごめんだけど、そっちの機体はお願い!』

『分かりました!』

『キラも無理はするなよ!』

『分かってるよ!』

 

 キラはスラスターを吹かせて腕を中心にして回転しながら、二機の上を取り、頭部バルカン『75mm対空自動バルカン砲塔システム イーゲルシュテルン』を二機の腕に付いているビームサーベルに向けて放つ。

 ビームサーベルを外れた弾は二機のフェイズシフトによって阻まれるが、ビームサーベルは無数の弾丸を受けて爆発してしまうのだった。

 

 そしてビームの熱が起こした爆風で二機が離れた瞬間に、再びスラスターを吹かせて正面にあるビームライフルを拾い、アークエンジェルの下部へと向かおうとしていたブリッツの右腕を狙撃する。

 フェイズシフト装甲により完全に破壊する事は出来なかったが、ブリッツは姿勢を崩して、アークエンジェルから向けられたミサイルを全身に浴びてしまうのだった。

 

『うわぁぁあああ!!』

『二コル!』

『ぼ、僕は無事です! それよりも、そちらは!』

『こっちは無事だ! ビームサーベルをやられただけだ』

『しかし、今のはどういう曲芸だ! まったく! ふざけているのか!』

 

 怒るイザークと、深く息を吐きながら緊張の汗を流すアスランに、二コルはひとまず二人が無事である事に安堵し、アークエンジェルから距離を取った。

 四対二と言えばそれなりの様に思えるが、ストライクセイバーはバスターの相手で精一杯であり、実質三対一の戦場である。

 しかも、ストライクを鹵獲する事が目的とは言え、アスランもイザークも本気で戦っているのだ。

 本気で戦ってなお、ストライクに傷一つ与えられない。

 

『しかし、作戦通りだ』

『っ!? 増援!?』

 

 だが、そんな状況もアスラン達にとっては既に想定の範囲内であった。

 キラは強い。

 そんな事はプラントでジンの開発をしていた時から分かっている事なのだ。

 

 だから……。

 

『ここで俺の出番ってワケだ!!』

『あんまり前に出過ぎるなよ! カナード!』

『前に出なきゃ勝てねぇだろうがー!』

 

 暗い宇宙の向こうから飛び出して来た白とオレンジ色のジンが交差し合いながら超高速でキラの駆るストライクへと迫る。

 キラは一瞬の驚きもすぐに追い越して、スラスターを吹かしながら後方に飛んで冷静にビームライフルを構えるが……今までの正確な射撃はどこへ行ったのか、機体の付近を緑色の閃光が走るばかりで機体には掠りもしなかった。

 

『……やはり。隊長の読みは当たっていたな』

『こんな勝ち方は気に入らんが! 今はキラの確保が優先だ! 俺たちも行くぞ! アスラン!』

『あぁ!』

 

 装備できるだけの爆薬を全身に装備しながら宇宙を駆けるジンは、宇宙を飛ぶ火薬庫と何も変わらない。

 もし搭載している装備が誘爆すれば、まず間違いなくパイロットは助からないだろう。

 武装だけを破壊してパイロットだけを生かす等という戦闘は成り立たない。

 殺す覚悟が必要なのだ。

 

『この……!』

 

 そして、キラの迷いはストライクの動きを鈍らせ、左右をイージスとデュエルに囲まれてしまう。

 

『終わりだ! キラ!』

『大人しく俺達の所へ戻ってこい!』

 

 イージスとデュエルの存在により動きが制限されたキラは、カナードとミゲルの駆るジンからの攻撃を受けてしまう。

 ジンの攻撃は全て実体弾である為、ストライクを傷つける事は無いが、攻撃を受ける度に、エネルギーは損耗してしまうのだった。

 

『このやり方……! フェイズシフトを落とすつもり!? どうにかしないと!』

 

 キラはアスラン達の作戦を見抜き、囲まれている状況を脱しようとするが、四人のエース相手にそうそう容易く抜け出す事は出来ず、状況は時間と共に悪化してゆく。

 しかし、そんな状況でもキラはどうにか包囲網を抜けようと、イージスとデュエルにビームライフルを向けるのだった。

 

 だが、アスランもイザークも、そんなキラの動きは想定済みである。

 防御に徹し、守りに意識を割き続けながら、ただひたすらにストライクのフェイズシフトダウンを待つのだった。

 

 そして……待ち続けた時は、来た!

 

『うおりゃぁぁ!!』

 

『っ!? 機関最大!艦首下げ!ピッチ角60!』

『は?』

『本艦底部より接近する熱源、モビルアーマーです!』

『ええい! CIWS作動! 機関最大! 艦首下げ! ピッチ角60!』

 

 そう。

 戦場から外れ、静かな宇宙の暗闇を飛び続けていたメビウス・ゼロがアークエンジェルの前に立ち塞がっていたヴェサリウスを強襲したのだ。

 この攻撃により、ヴェサリウスは損傷、ムウはそれを確認して、ヴェサリウスにアンカーを打ち込み、急旋回してアークエンジェルが居る戦場へと帰還するのだった。

 

『機関損傷大! 艦の推力低下!』

『敵モビルアーマー離脱!』

『撃ち落とせぇぇ!!』

『第5ナトリウム壁損傷、火災発生、ダメージコントロール、隔壁閉鎖!』

 

『ここまでか……離脱する! アデス! ガモフに打電!』

 

 苛立たし気に、クルーゼはヴェサリウスの艦長であるアデスに伝え、ヴェサリウスが襲撃されたという報は即時、モビルスーツのパイロット達へも伝えられた。

 

『ヴェサリウスが被弾!?』

『何故!?』

『俺達にも撤退命令!?』

 

『しまった!?』

 

 そして、パイロットたちがヴェサリウスの情報に動揺した隙を見計らって、キラは即座にストライクをアークエンジェルへと向かわせる。

 同時に、マリューは状況を脱する為の最善手を打っていた。

 

『フラガ大尉より入電、作戦成功、これより帰投する!』

『機を逃さず、前方ナスカ級を討ちます!』

『ローエングリン、1番2番、斉射用意!』

『フラガ大尉に空域離脱を打電! ストライクとセイバーにも射線上から離れるように言って!』

 

 この一撃によりヴェサリウスの左舷がローエングリンの影響を受け、誘爆。

 ヴェサリウスは戦線より離脱する事となった。

 

『マリューさん! ランチャーストライクの装備を射出してください!』

『えぇ!? 何をするつもりなの!?』

『ストライクのエネルギーが危険域です! カタパルトの射線上で装備を換装します!』

『そんな無茶な!?』

『私がシステムサポートします! オルフェさん。少しの時間ですが、ZAFTの皆さんの注意を引けますか!?』

『やってみせよう!』

 

 そして、キラの願いに従ってアークエンジェルはランチャーストライクの装備をカタパルトに乗せ、マリューの指示でナタルが発射タイミングを握る。

 

『バジルール少尉、タイミングは任せます!』

『了解! 艦のコントロール、こちらへ! レーザーデジネーター、オンライン! ストライクとの相対速度合わせ。カタパルトの射出モーメント制御を、ストライクセイバーのセナさんに渡せ!』

 

 キラは追撃してきたカナードのジンによりフェイズシフトをダウンさせられるが、そのまま装備を切り離し誘爆させてさらにストライクを加速させた。

 

『間に合え!!』

『大人しく兄に敗北しろ! 妹ォ!』

 

 オルフェはカナードのジンの後方から追撃していたイージスやデュエルの前に立ちふさがり、ストライクへの道を塞ぐ。

 

『ここから先は通すものか!』

『コイツ! 邪魔をするな!』

『キラ! この!』

 

 僅かなミスも許されないギリギリの攻防の中で、キラのストライクはカタパルトの射線に……乗った。

 

『ストライク、軸線に乗りました!』

『カタパルト、射出!』

 

『手足を落として、おとなしくなれ!!』

 

『来た! セナ! お願い! この!』

『分かりました!』

 

 そして……!

 カナードのジンが腰から重斬刀を抜き、流星の様な速度でキラのストライクへと迫った。

 

 が、一瞬の差でランチャーストライクの装備へと換装したキラは振り返りながらカナードのジンを蹴りつける。

 

『なにぃー!?』

『接近戦なら! 誘爆はしないだろ!?』

 

 ジンはストライクに殴りつけられ、戦場から離れた場所へと飛ばされてゆく。

 そしてキラはランチャーストライクの主装備である『320mm超高インパルス砲:アグニ』を構え、こちらへと迫るデュエル、イージスへとその大型ビームを放つのだった。

 

 その正確な射撃により、片腕を破壊されたデュエルとイージスはストライクセイバーからの攻撃もあり、これ以上の戦闘は不可能と、撤退していった。

 

『敵、モビルスーツ群、離脱しました!』

『ふぅ……帰還信号。全機帰投後アークエンジェルはこのまま最大戦速で、アルテミスへ向かいます』

 

 キラは撤退してゆくZAFT軍を見ながら深いため息を吐いて、アークエンジェルへと向かい移動を始めた。

 このまま大人しく見逃して欲しいとキラは願うが、この程度で彼らが見逃してくれるとも思えなかった。

 

 争いが早く終わる事をキラは願うばかりだった。

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