ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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こちらの話。
一度投稿したのですが、修正前のバージョンを投稿していたので、修正版を投稿しました。
後半部分に色々展開を追加しております。
m(__)m


第60話『PHASE-12『フレイの選択1』』

 無事……とは言い難いが、第八艦隊に合流したアークエンジェルは艦隊の中へと加わった。

 

「180度回頭。減速。更に20%、相対速度合わせ」

「しかし、いいんですかねぇ。メネラオスの横っ面になんか着けて……」

「ハルバートン提督が、艦をよく御覧になりたいんでしょう。後ほど、自らも御出になるということだしね……あー、ごめんなさい。ちょっと外すわね。後はお願い」

「艦長!」

 

 マリューはブリッジクルーに言葉を残し、ブリッジを出て行ったが、その後にナタルも付き、ブリッジから飛び出す。

 そして、ナタルは深刻そうな顔で声を抑えながらマリューに言葉を向けるのだった。

 

「キラさんとセナさんの事。どうされるおつもりですか?」

「どうって……避難民と一緒にオーブへ降りてもらうべきだと思っているわ。勿論ブリッジの子達も一緒にね」

「私は、オーブという国を信用できません」

「……」

「ヘリオポリスの襲撃は、明らかに何者かがプラントへ情報を流していました! それが出来たのは!」

「オーブだって言いたいの? でも、残念だけど、連合の人間だって同じ様に情報を流す事は出来たわ」

「大西洋連邦に、その様な愚か者は居ないと私は考えております。この騒動で大西洋連邦にどの様な利があったと言うのですか!」

「……分からないわ。でも、キラちゃんの信じるオーブを、私も疑いたくはないの」

「艦長! お二人は大西洋連邦で保護すべきです!」

「保護って言っても……二人を連れて行くのならアークエンジェルで、という事になるわ。まだ二人を戦わせるつもり?」

「それは……このまま第八艦隊と共に月本部へ向かえば!」

「その道中で戦闘があれば、あの子達は無理をしてでも戦うわ。それはこれまでの戦いで見て来たでしょう?」

「……っ!」

「もう見たくないのよ。あんな姿」

 

 マリューが吐き捨てる様に言った言葉でナタルはそれ以上何もいう事が出来ず、呼び止めた事を謝罪して再びブリッジへと戻るのだった。

 

 そして、ナタルと別れたマリューはアークエンジェルの内部を進み、医務室へと到着した。

 

「失礼するわね」

「ほら! ちゃんと食べなさいって! 口を開けなさい!」

「自分で食べられますから……!」

 

 先ほどまでのモヤモヤとする気持ちはどこへやら。

 マリューは医務室の中で行われていたフレイとセナのやり取りを見て微笑みを浮かべる。

 ベッドの上で上半身を起こしているセナのすぐ隣で、フレイはおかゆをスプーンに乗せながらセナに食べる様に迫っていた。

 姉妹の様にも見えるし、親友の様にも見える。

 

 そして、セナの保護者の様な顔をしたフレイは、マリューが入ってきた事で顔をしかめたが、セナがフレイの手を握る事で、はぁと小さくため息を吐いた。

 

「分かったわ。私は外に出てるから。何かあったら呼びなさいよ」

「はい」

 

 フレイはセナに手を振りながら医務室から出て行って、医務室の中はマリューとセナの二人だけの空間となった。

 マリューはフレイが先ほどまで座っていた椅子に座り、セナに微笑みかける。

 

「セナちゃん。先ほど第八艦隊と無事合流出来たわ」

「……それは良かったです」

「えぇ。これでようやく一息つけるわ。私もこれで艦長から降りて、一人の技術士官に戻れそう」

「それは残念ですね」

 

 ホッとした顔で笑うマリューに、セナは微笑みながら言葉を返した。

 

「勘弁して頂戴。私はもう二度とやりたくないわ」

「もしかしたら歴史に残る名艦長になれるかもしれませんよ?」

「残念だけど私には向いてないわ。それに、今度こそセナちゃんとキラちゃんの理想の機体を作りたいから……地上か月で開発かしらね」

「……マリューさん」

「私はね。これで終わりだと思ってないの。希望は繋がってる」

「……」

 

「元々フェイズシフトはコストが高いから量産には向かないし。今回の開発で色々と思いついた事もあるのよ。モビルスーツ自体はやっぱりナチュラルだと操縦が難しいから、大型のモビルアーマーを作って、複数人で操縦するとか」

「でも、それだと機動力に不安が残りませんか?」

「まぁそうね。でも、地上でというより宇宙での使用をメインで考えるから、スラスターを増設して……火力よりも防御力を上げれば、ある程度遅くても対処出来るでしょ? 硬いモビルアーマーで前線を固めれば、帰還率も上がるし。千日手になればプラントだって強行的な姿勢を続ける事は難しいわ。戦争は続けば続くほど苦しくなるからね」

「限りなく消極的な停戦へのプランでしょうか。確かに私とお姉ちゃんの理想が詰まってますね。流石はマリューさんです」

「まぁ、本職だからね」

 

 マリューはセナに褒められて、笑顔を浮かべながら頷いた。

 ヘリオポリスに居た時も、こうやって機体の設計をしていたなと、マリューは少し前の事を想い、懐かしくなってしまうのだった。

 

「だから……」

「はい」

「もう一度だけ。私たちに手を貸して欲しいの。セナちゃん」

「……」

「オーブは、もうあなた達を手放さないかもしれない。だから、セナちゃんにお願いするのは違うのかもしれないけど。もう一度だけ。私達を信じて欲しい。平和を、取り戻す為に」

「マリューさん」

「……えぇ」

「それはむしろ、私達からお願いする事ですよ。こちらこそ。お願いしたいです」

「セナちゃん……!」

「今度こそ、私達でやりましょう……!」

「そうね!」

 

 セナとマリューが手を握り合いながら言葉を交わしていた二人きりの医務室で、扉が開く音と共に数人の軍人が入り込んできた。

 

「中々面白い話をしているなぁ! セナ君。それにラミアス大尉」

「か、閣下!!? この様な所で!」

「よいよい。楽にしてくれ。姫君が怪我で動けぬとあれば、我らが出向く方が良かろう」

 

 数人の部下を連れ、医務室へ入ってきたハルバートンは、一緒にやってきたキラも室内に招き入れて、二人に敬礼をした。

 

「ヘリオポリス崩壊の知らせを受けた時は、もう駄目かと思ったが、よくぞここまで艦を連れてきてくれた。感謝している。キラ嬢。セナ嬢」

「いえ。僕はストライクをお借りしていただけなので、艦の事は全てマリューさんが」

「おぉ、そうだったな! ラミアス大尉。君に艦長の素質があったとは思わなかったぞ!」

「い、いえ。無我夢中で指示を出していただけですので……艦のクルーがよくやってくれました」

「そうかそうか。では、クルーにも改めて礼を言っておかんといかんな。姫君をここまで守り切った。英雄だ」

 

「まぁ、その姫君を失いかけたという話では、誇りにもならんでしょうが」

「仕方あるまい。ZAFTに四機もGを奪われたのだ。数的不利な状況でよくやっている」

「そのG強奪についても、私は未だにオーブとZAFTの繋がりを疑っていますがね。あまりにも襲撃が完璧すぎる」

「それは……」

「キラ嬢とセナ嬢を攻めてどうなる」

「別にお二人を責めたつもりはありませんが……このままお二人をオーブへ、というのは疑問が残りますな」

「ふむ……しかし、このままアラスカへ行くという訳にもいかんだろう」

 

「アラスカ……! でありますか?」

「そうだ。軍本部より、アークエンジェルは現在の人員のまま地球連合本部アラスカ基地へと降りる様に正式な命令が下った。サザーランドめ。増援も寄越さず無茶ばかり言いおって」

「しかし、それではキラ様たちは……」

「無論メネラオスのシャトルで他の避難民と一緒にオーブへと直接下ろすつもりであるが……「私は反対です」」

「セナ?」

 

 ハルバートンの話に割り込んで、セナが軽く右手を上げながら言葉を重ねた。

 その言葉にキラは驚きで目を見開く。

 

「理由を聞いても良いかな?」

「はい。地球へ降りるという事になれば、ZAFTが襲撃を仕掛けてくるからです」

「なっ!?」

「まさか。地球軌道上か!」

「はい。可能性は非常に高いです。現在我々は、ナスカ級とローラシア級。そして、Gが4機にエース機のジン2機に追撃されています。しかもその追撃は執拗です。何かしらアークエンジェルを沈めなくてはいけない理由があるのでしょう」

「ふむ」

「その上で、彼らがクルーゼ隊と呼ばれるエース部隊であるならば、多少の危険があっても、軌道上で仕掛ける可能性は高いです。モビルアーマーは行動が制限されますし。Gは全て単機での大気圏突入が出来ますから」

「……なるほどな。あり得る話だ。しかし、仕掛けてこない可能性もあるだろう?」

「その時は、申し訳ございませんが、アラスカから船を一つお借りできればと思います。避難民を国へ返す為に」

「しかし、アラスカへ行けば、君たちはもうオーブへ帰れない可能性が高いぞ」

「それでも。オーブの民が、傷つかない選択を取るべきだと私は考えます」

 

 真っすぐにハルバートンを見据えながら向けられた言葉に、ハルバートンは何とも言えない複雑な表情をしてから、分かったと呟いた。

 そして、キラへと視線を向ける。

 

「キラ嬢はどうかな? 先ほどの話は」

「僕もセナと同じ考えですよ。アークエンジェルに居るのなら、僕が守りますが……メネラオスは最悪の場合、月まで退避していただく事になりますし。それだとオーブの子達と離れ離れになってしまうので」

「そうか……。まったく、君たちは子供だというのに、色々と背負い過ぎだ」

「……申し訳ございません」

「良い良い。年寄りは色々と思う所があるがな。自由に生きてこそ若者でもある。我らはまた君たちに希望を託すとしよう」

「はい!」

「しかし、君たちの様な若者に、そこまでの覚悟をさせて、私がこのままという訳にもいかんか」

「……では閣下!」

「あぁ。連合各国の首脳陣を説き伏せて、一度プラントと交渉の打診をしよう。これ以上の戦いは……誰の為にもならんよ」

「ハルバートンさん……!」

 

 覚悟を決めたハルバートンの顔にキラは涙が溢れそうになるのを必死に堪えて……。

 それでも流れてしまった涙を拭い、何度も頷く。

 

「しかし、プラントが頷きますかな?」

「どの道連中にもGを解析する時間は欲しいだろうからな。停戦という事なら頷くだろう。時間が欲しいのは向こうも同じだからな」

「しかし、そうなれば再び争いが始まった時、我らが不利になるのでは?」

「フン。この様な戦争を一度体験すれば、もう一度やりたい等という者は居ない。民意は得られんよ。それに、平和を願う姫君は居るのだ。必ず止められる。私はそう信じておるよ。なぁ、そうだろう? キラ君。セナ君」

「はい! 必ずや!」

「私も同じ願いです」

 

 そして、キラはセナと共にハルバートンへ慣れない敬礼を行い。

 ハルバートンとハルバートンの補佐である者達も敬礼を返した。

 

「しかし、これから戦いになるという事であれば、やるべき事をさっさと終わらせる必要があるな。ラミアス大尉。主だったクルーを集めてくれ。話がしたい」

「ハッ! 承知いたしました!」

「では、また会おう。キラ君。セナ君」

「はい!」

「また、必ず!」

「あぁ。次は平和への道が今よりも見えていると良いな」

 

 それから、ハルバートンの居なくなった医務室で、キラはセナを手を握りながら笑いかけた。

 

「セナ」

「はい。なんでしょうか?」

「セナは僕が守るからね。もう無理はしないで」

「分かってます」

「うん。お願い」

 

 キラは祈る様な気持ちでセナの小さな手を両手で包み込むのだった。

 

 

そして、キラたちがハルバートンと話をしている頃。

フレイもまた父と、これからについての話をしていた。

 

「本当にこのままアークエンジェルに乗っていくつもりなのかい? フレイ」

「えぇ。キラ達も降りないだろうし。私も付いていくわ」

「しかし、カモフラージュはもう必要ないし、フレイが頑張る必要は無いだろう? このまま家に帰ってくれば良いじゃないか」

「ごめんなさい。パパ。私、あの子達の親友だから。見捨てられないのよ」

「……」

「それに。アークエンジェルはこのままアラスカに降りるんでしょ? なら危ない事なんか何も無いわ」

「しかし、一度アラスカへ行けば、次に帰れるのはいつになるか分からないんだよ?」

「しょうがないわよ。戦争をしているんだもの。私だって当事者の一人だわ。このまま私だけ逃げるなんて出来ない。あの子達と一緒に戦うわ」

 

フレイの真っすぐな目を見て、ジョージ・アルスターは小さく息を吐いた。

諦めと、僅かな喜び。

 

「そうか。フレイももう、大人になっていたんだな」

「そうよ。私だっていつまでも子供じゃないわ」

「それでも。フレイは私の子供だ。何かあればすぐに連絡をくれ。どこへでも駆けつけるから」

「ふふ。ありがとう。でも、パパも気を付けてね? シャトルで大西洋連邦に降りるんでしょ?」

「あぁ。だが、民間シャトルだ。何も起きないさ」

「うん。じゃあ、パパ。また会いましょう?」

「分かったよ。フレイも無事で」

 

フレイは父と抱擁を交わし、いつもの様に軽く別れの言葉を交わした。

自分達が居るのは戦場である。

だから、いつ命を落としてもおかしくはないが、だからこそ重苦しい別れをするべきではないと考えたのだ。

 

あくまで日常の様に。

二人はそれぞれの道を進んでゆく。

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