ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第62話『PHASE-13『宇宙に降る星』』

 ZAFTのモビルスーツ発進を即座にキャッチした第八艦隊では、驚異的な速さで迎撃の準備が行われていた。

 これも全て事前に襲撃が予測されていたからである。

 

『ナスカ級1、ローラシア級2、グリーン18、距離500。会敵予測、15分後です』

『セナ君の予想通りとなったか。全艦、密集陣形にて、迎撃体勢! アークエンジェルは動くな! そのまま本艦に付け!』

『ワルキューレワン、ワルキューレツー、発進! Nジャマー、展開! アンチビーム爆雷、用意!』

 

 そして、ハルバートンの指示に合わせてアークエンジェルも動き始めていた。

 メネラオスの隣で各武装を展開し、迎撃の準備を進めてゆく。

 

『イーゲルシュテルン、起動! コリントス、装填! ゴットフリート、ローエングリン、発射準備!』

 

 ナタルの指示により、武装は展開され、遠くに見えるモビルスーツへ向けて砲撃を繰り返す。

 しかし、ZAFTの戦士たちは、それらの砲撃に当たる事はなく、艦隊の中に飛び込んで、一機、また一機とモビルアーマーを沈め、戦艦すらも沈めてゆくのだった。

 

『えぇい! イージス、バスター、ブリッツか!』

『確かに……見事なモビルスーツですな。が、敵ではやっかいなだけだ。あの3機、なんとしても落とせよ!』

『状況はどうか!?』

 

『セレウコス、被弾、戦闘不能!』

『カサンドロス、沈黙!』

『アンティゴノス、プトレマイオス、撃沈!』

『なんだと!? 戦闘開始たった6分で、4艦をか!』

 

『敵モビルスーツ!』

『セレウコス、カサンドロスに接近します!』

『ぬぅ!?』

 

 シグーを駆るクルーゼは離脱中の艦に近づくとブリッジを潰し、エンジン部に銃弾を叩き込んで誘爆させる。

 そして、シグーの手により二つの艦は爆発を起こしながら宇宙のゴミになってしまうのだった。

 

『アスランとニコルは甘いな。人を残せば、そいつはまた新たな武器を手に、来るぞ!』

 

『離脱中の艦を……おのれクルーゼ!』

 

『フン。しかし、ハルバートンめ。どうあっても足つきを地球に降ろす気か。大事に奥に仕舞い込んで何もさせんとは。ディアッカ。足つきを狙えるか?』

『了解!』

 

 クルーゼの指示により、ディアッカは超遠距離狙撃を行い、アークエンジェルのエンジン部を狙う。

 このまま撃沈させる気はないが、危機感を煽る事でキラを出撃させようと考えているのだ。

 

『ぬぅ……! このままでは!』

 

 そして、クルーゼの策は見事に沈黙していた戦艦を動かした。

 

『アークエンジェルより、リアルタイム回線!』

『なんだ!?』

 

 ハルバートンの指示で、モニターに映し出されたマリューは、焦りを感じさせない落ち着いた口調でハルバートンに訴える。

 

『本艦は、艦隊を離脱し、直ちに、降下シークエンスに入りたいと思います。許可を!』

『なんだと!?』

『このままでは艦隊が全滅します! どうか! 許可を!』

『しかし……!』

 

『アラスカは無理ですが、この位置なら、地球軍制空権内へ降りられます! 突入限界点まで持ち堪えれば、ジンとザフト艦は振り切れます。閣下! 目標がこちらへと移れば艦隊の退避も可能です!』

『ぬぅ……マリュー・ラミアス。相変わらず無茶な奴だな』

『部下は、上官に習うものですから……』

『いいだろう。アークエンジェルは直ちに降下準備に入れ。限界点まではきっちり送ってやる。送り狼は、1機も通さんぞ!』

『閣下もどうかご無事で!』

 

 そして……マリューとハルバートンは短い言葉を交わした後、アークエンジェルは地球へ向けて降下を開始した。

 

 

『総員、大気圏突入準備作業を開始せよ』

「降りるぅ? この状況でか!?」

「俺に怒鳴ったって、しゃーねぇでしょう! まぁこのまんまズルズルよりかはいいんじゃねぇですか?」

「いや……けどさぁ」

 

 ムウとマードックが怒鳴り合っている格納庫で、キラはクスっと笑いながら無重力の中を泳ぎ、近づいてゆく。

 

「ザフト艦とジンは振り切れても。あの4機が問題ですね。Gは単独で大気圏に突入する事が可能ですから」

「嬢ちゃん! セナの嬢ちゃんは良いのか?」

「はい。自分も出撃するって騒いでましたけど、オルフェ君にお願いしてきました」

「自分もって……」

「はい。僕は今から出撃するつもりです」

「んな!? この状況で出るってんのか!?」

「はい。おそらく第八艦隊だけでは抑えられません。それに、ハルバートン提督が逃げられるだけの時間も稼がないといけませんし」

 

 真剣な眼差しでそんな事を言うキラにムウは、だー! と言いながら頭をかき回した。

 苛立ちという訳ではないのだろうが、憤る様な気持ちがムウの中にはあった。

 

「キラ!」

「は、はい!」

「そうやって、何もかもを背負おうとすんな! オーブのお姫様だろうが! 地球の救世主だろうが! お前はまだ16の子供なんだ!」

「で、でも……」

「もっと俺達大人を頼れ。頼りねぇかもしんねぇけど! お前みたいに上手くは出来ないかもしんねぇけど! それでも大人ってのは子供に頼られる為に居るんだよ!」

「……はい」

「だから、お前が出るんなら。俺も出る。良いな? ちょっと艦長に言ってくるから待ってろ! 一人で出撃すんなよ!」

 

 ムウに怒鳴られて、キラは驚きながらもどこか嬉しそうにして笑みを零した。

 そして、小さく頷いて、大人しくムウが帰ってくるのを待つ。

 

 ムウは格納庫にある通信機を使ってブリッジへと連絡を取るのだった。

 

「艦長! ギリギリまで俺達を出せ! 何分ある?」

『はぁ!? そんなバカな! 許可できません!』

「このままじゃメネラオスも沈む! 第八艦隊は全滅だ! 少しでも戦力を足して、生き残らせる奴を増やせ! 平和の為に、必要なんだろ!? ハルバートン提督は!」

『分かりました。では、出撃をお願いします。フラガ少佐。キラさん』

『バジルール少尉!!』

 

『ここで第八艦隊が全滅し、本艦も落ちれば、ここまでの全てが無駄になります!』

『くっ……!』

「わりぃな。艦長さん。じゃ、誘導頼むぜ! 中尉!」

 

 ムウはナタルに礼を言い、険悪な雰囲気になっているブリッジへの通信を切った。

 そして、キラに合図をしてそれぞれの機体へと向かう。

 

『こんな状況で出るのは初めてだが……やるしかねぇな。出るぞ!』

『ムウさんもどうかご無事で……。エールストライク。キラ・ユラ・アスハ。行きます!』

 

 

 アークエンジェルが降下準備を始めた事に気づいたクルーゼは、全機に通信を送りながら自身も艦隊の奥へと向かう。

 

『足つきが動く!? チィ! ハルバートンめ! 第8艦隊を盾にしても、足つきを降ろすつもりか!』

 

『足つきが!?』

『降りる!?』

『くっ!』

『させるかよ!』

 

 しかし、そんな彼らの前に現れたのは酷く見慣れたオレンジ色のモビルアーマーと、青と白と赤の機体。

 エールストライクであった。

 

『ストライク! キラか! もう一機は!』

『構うなアスラン! ストライクが出た以上! 後は足つきを落とせば良い!』

 

 ストライクの発進を目撃したクルーゼは、アークエンジェルを落とせと全機に命令し、その指示に従って、4機のGとジンがアークエンジェルへと向かう。

 だが、アークエンジェルの前に立ちふさがったキラは、いつもの様な正確な射撃で近づいてくるジンや、アスラン達の機体を無力化しようとビームライフルを放つのだった。

 

 しかし、流石のキラであっても、4機のGとカスタムジンに多数のジンを相手にするのは分が悪すぎる。

 ムウの駆るメビウス・ゼロも居るが、クルーゼの相手をしている以上、どうにも戦力が足りなかった。

 

 足りない部分を周囲に居る第八艦隊の機体や艦が補ってくれるが、それでも時間と共に戦力差は絶望的に開いてゆく。

 

 だから……その出撃は必然であったのかもしれない。

 何故なら、キラがハルバートンを守る為に出撃する必要があると感じた様に……彼女もまた、その必要性を感じていたのだから。

 

『ハッチが開かれます!』

『え!?』

 

「申し訳ございません。歴史を変える為には……この機体が必要なんです」

 

『セナちゃん!?』

『急いでハッチを閉めろ! セナ様を出撃させるな!』

『駄目です! こちらの操作を受け付けません!』

 

『セナ・ユラ・アスハ。ストライクセイバー。出撃します』

 

 大気圏との摩擦熱で真っ赤に焼かれているアークエンジェルから飛び出したその機体は、熱に焼かれながらも白亜の光を纏って戦場を駆ける。

 

 そして、アークエンジェルから少し離れた戦場で、いつかの様に背中のバックパックから金色に輝く円形の装置を頭上に展開し、両手を広げた。

 

『あれは!?』

『見つけたぞ! ストライクセイバーァァアアア!』

『駄目だ! イザーク! アレに近づくな!』

 

 アスランの警告も聞かず、イザークは怒りのままにストライクセイバーへと接近し、やはりあの時と同じ様にデュエルの動きが止まってしまう。

 それを遠目で見ながらアスランは悔し気に唇を嚙みしめるが、すぐにデュエルは何事も無かったかの様にスラスターを吹かせて移動を始めた。

 

『無事か! イザーク!』

『これはなんだ!? 何が起きている!』

『どうしたんだ! イザーク!』

『武装が使えない! 何も、何一つ!』

『何!?』

 

 アスランはイザークからの言葉を聞き、驚愕しながらも状況を全機に伝える。

 ストライクセイバーに近づくだけで、武装が使えなくなると。

 

『なんだそりゃ!? 無茶苦茶だな!』

『しかし、ストライクセイバーの近くだけなのでしょう!? こっちではまだ使えます!』

 

 キラと戦闘をしながら叫ぶディアッカと二コルに、アスランは眉間に皺を寄せながらストライクセイバーを睨みつけた。

 ようやく出てきたかと思えば、自分はアークエンジェルの近くで非戦闘区域を作るばかりで、肝心の戦闘はキラに丸投げ。

 その姿と、以前少しであったが会話をした男を思い出し、苛立ちのままにビームライフルをストライクセイバーに向かって放つ。

 

 だが、前回とは違い、今回はハッキングをしながらでも動けるようで、アスランの放ったビームライフルは容易く受け止められてしまうのだった。

 

 そして、ストライクセイバーは非戦闘区域を広げたまま、戦場を移動しアスラン達に迫ってくる為、アスラン達は後退するしか術が無かった。

 それにより、ZAFTとアークエンジェルとの距離は強制的に開かれ、戦闘は近接戦から遠距離の射撃戦へと移行する。

 こうなってはモビルスーツの強みを活かす事は難しかった。

 

 結果。

 アークエンジェルは時間と共に地球を目指して降りてゆき、第八艦隊も徐々に軌道上から離脱し始めていた。

 

『くっ! このままでは! 隊長!』

『どの道、このままではどうにも出来ん。撤退するか……もしくは、無駄と分かりつつも、砲撃を繰り返すか』

 

 クルーゼはストライクセイバーからある程度距離を取りながら、その機体を見据える。

 大気圏との摩擦熱で赤く機体を燃やしながらも、ストライクセイバーは静かにZAFTを見据えていた。

 そして、静かな睨み合いが続き……やがてメビウス・ゼロは戦線を離れてアークエンジェルへと戻っていった。

 

 ストライクも、牽制する様にビームライフルを数発放ちながら、アークエンジェルへと戻っていく。

 

『ここだ!』

『カナード!?』

 

 ストライクセイバーがアークエンジェルへ向けて移動を始めようとした瞬間、やや離れた位置にいたカナードがジンを急加速させてストライクセイバーへと迫った。

 当然の様にストライクセイバーはカナードのジンから武装のコントロールを全て奪う。

 しかし、だからどうしたとばかりに、そのままストライクセイバーへと体当たりをするのだった。

 

『コイツを無理矢理引き離せば! 武器が使えるんだろ!?』

『バカな真似は止めろ!』

『へ、へへ。短い間だったけどよ。アンタの弟で、楽しかったぜ。じゃあ、コイツは俺からの礼だ!! 妹を、助けろよ!』

『っ! カナード!!』

『うぉぉおおお!!』

 

 怒りとも悲しみともとれるクルーゼの叫びを気にせずカナードはストライクセイバーを掴んだまま大気圏に突入した。

 そしてカナードのジンは機体を摩擦熱で燃やしながら、まさに流星となって地球へと落ちてゆく。

 

 

 そんなカナードの特攻を見たキラは急いでストライクセイバーの元へと向かい、セナに通信を繋げる。

 

「セナ! セナ! 返事をして!」

 

 ストライクのコックピットで鳴り響くアラートを無視して、高熱と、焦りから溢れ出る汗も無視して、キラはストライクセイバーへと通信を繋げた。

 

『……おね、え、ちゃん……助け』

「っ! 分かった!」

 

 キラはストライクセイバーを掴んでいたジンにビームサーベルを突き刺してから蹴り飛ばし、爆発させてから、その爆発のエネルギーを乗せつつ、スラスターを全開にして、ストライクセイバーを掴みながらアークエンジェルを目指す。

 しかし、推力が足りず、どうにも届かない。

 

「届け!! 届けー!!」

『……ラ! ……ないの!?』

 

 マリュー達の声を聞きながら、どうにか出来ないかともがくキラであったが、ストライクの推力では地球の重力から逃れる事は出来ず、ただ機体は地表に向かって吸い寄せられていた。

 そして、もはや進む事も、戻る事も出来なくなったストライクに攻撃のアラートが鳴り響いた。

 

「攻撃!? まさか、アークエンジェルに!?」

 

 遥か遠方から、アークエンジェルに向かって幾多の砲火が放たれたのだ。

 そのどれもが、アークエンジェルに甚大な被害をもたらす物ばかりで……。

 大気圏突入中の無防備なアークエンジェルにはそれをどうにかする術はなかった。

 直撃すれば、どうやっても助からないだろう。

 

 キラは必死にストライクでアークエンジェルに手を伸ばすが……その攻撃がアークエンジェルに届く事は無かった。

 何故なら、砲火とアークエンジェルの間に一つの宇宙艦が割り込んだからだ。

 その艦の名前は……メネラオス。

 

「っ! なん、で……!」

『……キラ君。約束を守れなくてすまない。地球の未来を、頼む』

 

 爆発するメネラオスの中から確かにハルバートンの最期の言葉を聞いたキラは目じりの涙を浮かべながら絶叫した。

 

「ハルバートン提督ぅぅううう!!」

 

 確かにあったはずの平和への道が、また一つ……絶たれた。

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