ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第63話『PHASE-14『それぞれの孤独』』

 地球へ向かって落ちてゆくストライクとストライクセイバーを見て、アークエンジェルのブリッジでは悲鳴の様な声が飛び交っていた。

 

「ストライクとセイバーはどうなってるの!? 戻れないの!?」

「本艦とストライク、セイバーの突入角に差異! このままでは降下地点が大きくずれます!」

「そんな!」

「キラ! キラ! 戻れないの? 艦に戻って!」

 

「無理だ! ストライクの推力では……もう……! アンカーか何か無いのか!?」

「艦を寄せて! アークエンジェルのスラスラーならまだ……!」

「しかし! それでは艦も降下地点が!」

「二人を失ったら何の意味も無いでしょう! 急いで!」

「っ! 了解!」

 

 そして、何とかストライクとセイバーの下に移動したアークエンジェルは二人を乗せ、ひとまず安堵の息を零すのだった。

 しかし、そんな僅かな幸運を得る代わりに、アークエンジェルは大きな災厄と向き合う事になる。

 

 

 無事……とは言い難いが地上へと降り立ったアークエンジェルでは、まず艦上に着艦していたメビウス・ゼロ、ストライク、ストライクセイバーの機体格納及び、パイロットの救助に向かおうとしていた。

 その為、まずはキラとセナに通信を繋げて、可能であればストライクかストライクセイバーにメビウス・ゼロを運んでもらおうとしていた。

 しかし……。

 

「駄目です。ストライク及び、ストライクセイバーからの返答ありません」

「分かったわ。じゃあフラガ少佐にお願いして、先に救助を……」

「っ!? セイバーとの通信、繋がりました!」

「え!?」

 

『おい! 通信聞こえてんだろ!?』

 

「何? この声?」

「セイバーからの通信です。ブリッジに直接繋がっている様です」

 

『早く医者を寄越せ! このガキ、死んじまうぞ!』

 

「医務室に連絡急いで! それと艦上に人を向かわせて! 早く!」

「おい! お前! 何者だ! 何故セイバーのコックピットに乗っている!」

 

 マリューが艦内に指示を出し、ナタルが通信から聞こえてくる声に言葉を返す。

 

『俺の事はどうでも良い! 早くしろって! てか、なんでこのコックピットは開かねぇんだ!』

 

「いったい、何なの……?」

「艦長。私はセナ様の救出に行きます!」

「え、えぇ。お願いね」

 

 気合を入れながら銃を片手にブリッジを飛び出して行ったナタルを見送りながら、マリューは艦上の監視カメラでストライクセイバーの様子を伺うのだった。

 

 

 まだ日が昇っておらず、薄暗いアークエンジェルの艦上を多くの兵が自動小銃を持ちながら動き回っていた。

 その中にはブリッジからとんで来たナタルや、先ほどまで戦闘をしていたムウ、そしてセナにハメられ医務室に閉じ込められていたオルフェの姿もあった。

 

「まずはストライクのコックピットを開きましょう。キラを救出した後は僕が乗ってイザという時に備えます」

「分かった」

「頼むぜ。坊主」

 

 ナタルとムウはオルフェの提案に頷き、ストライクのコックピットハッチを強制開放して、まずは意識を失ってぐったりとしているキラを救出した。

 すぐにヘリオポリスの学生たちが駆け寄ってきて、キラを医務室へと運ぶのだった。

 

 そんな彼らを見送りながらオルフェはすぐにストライクのコックピットへ飛び込んで、ストライクを起動させる。

 

「こちらの準備は良いですよ」

 

「了解だ。曹長。開けてくれ」

「分かりやした。開けますぜ!」

 

 オルフェがストライクを動かし、軽くストライクセイバーを固定した後、ナタルはコジロー・マードック曹長に指示を出し、ストライクセイバーのコックピットハッチを強制開放する。

 そして、周囲に居た軍人たちは皆、一斉に自動小銃をコックピットへ向けて構えるのだった。

 

 開かれたコックピットの中には、キラと同じ様にグッタリとして意識を失っている少女セナと……そんなセナを抱きかかえている長い黒髪の少年が一人。

 着ている服から、その少年がZAFTのパイロットであるとすぐに判明した。

 

「わー! 待て待て! 嬢ちゃんに当たるだろ!? 銃なんか向けるな!」

「貴様! 何者だ!」

「何者だ、って言われても困るけどよ。俺はカナード・パルス。さっきまでアンタらと戦ってたジンのパイロットだよ」

「ジンだと……!?」

「そう。この機体を落とそうとしたんだがな……逆に助けられちまった」

 

 銃を構えたナタルに問われ、少年はため息と共に答える。

 そして、両手でセナを抱えたままコックピットを飛び出して艦上に降りると、セナをグイっとムウに向けて突き出すのだった。

 

「アンタ。ラウと同じ匂いがするな! アンタなら信用できる。こいつを頼む!」

「ラウって、お前……まさか、ラウ・ル・クルーゼの関係者か?」

「あぁ。そうだ。俺はラウの弟だ! ふふん」

「そうかい……」

 

 ムウは面倒ごとがまた増えたなと深いため息を吐きながら、セナを医務室へと急いで連れてゆくのだった。

 それからカナード・パルスは特に抵抗することなく拘束され、独房へと連行される事になり。

 そんな一部始終を見ていたマリューは深い深いため息を吐き、天を仰ぐのだった。

 

 

 セナを医務室まで運んだムウは、現状を確認する為にブリッジへとやってきて、はぁとため息を吐いた。

 状況は彼が思っているよりも最悪で……平和や安全という名前からだいぶ遠い場所にあったからだ。

 

「しかし……嫌なところに降りちまったねぇ。アラスカからだいぶ外れて……見事にZAFTの勢力圏とは」

「仕方ありません。あのままキラちゃんとセナちゃんを失う訳にはいかなかったのですから」

「まぁ、そうだな。判断に間違いは無かったと思うぜ? ただ……」

「ここからの脱出は、かなり難しいですわね」

「そうだな。よりにもよって、あの虎の勢力圏に落ちちまうってのは、何というか……難しいね」

「……ふー。どちらにしても。キラちゃん達が動けない事には私たちも動けません。今は静かに時を待つ事しか出来ないでしょう」

「まぁ、周囲には良い感じに岩とかがあるし。上手く隠れられれば良いと思うが……どうかな」

「軌道上での戦闘は地上でも観測していたでしょうから。捜索される可能性は十分にありますわ。油断は出来ないでしょう」

 

「最悪は、俺が一人で何とかするしかない……か」

「例の新型はどうですか?」

「まだ何も。今急いで調整してくれてるけど。俺も飛ぶのは初めてだ。何とも言えないな」

「そう……ですか」

 

 マリューはムウの返事にため息を吐きながら、それでも気丈に言葉を続けた。

 

「しかし、どんな状況であろうと……本艦の目的、目的地に変更はありません」

「大丈夫か?」

「えぇ」

「副長さんとも?」

 

 ムウが真剣な眼差しで問うたことに、マリューは少し前にブリッジでまた衝突した事を思い出したが……ムウにする様な話ではないと飲み込む。

 そして、深呼吸をしてから、言葉を返した。

 

「……大丈夫よ」

「なら、オッケーだ。さてと、ちょっと嬢ちゃん達の様子を聞いて、俺は寝るよ。あんたももう寝な。艦長がそんなにクタクタのボロボロじゃあ、どうにもならないぜ。どこかで休めよ」

「えぇ。ありがとう」

 

 ムウはマリューの返事に手を振りながら応え、そのままブリッジを出て行った。

 そして医務室へと向かったのだが……。

 医務室の外では心配そうなヘリオポリスの民間人たちが両手を握り合わせながら祈りを捧げており、その間を何とか抜けながらムウは医務室の中へと足を踏み入れるのだった。

 

「よぅ。様子はどうだい?」

「ここは医務室です。声を抑えて下さい」

「うぉ。中尉。ここに居たのか」

「少し様子を見に来ただけです。すぐに寝ますよ。お二人にばかり頼る事は出来ませんから」

「んー。中尉も。あんまり肩肘張らないでさ。少しは余裕を持ちなって。あんまり張りつめてても良くないぜ?」

「……言っておきますが、大丈夫だろう。という気の緩みが、今回の事件を招いたのです。厳しくしても緩くする事はありません!」

 

 キッとムウを睨みつけて、ナタルは医務室から出て行った。

 その様子にムウは額に手を当てながら、失敗したかと呟くのだった。

 

 

 そして、奥へと進み、大粒の汗を流しながら苦しそうにしているキラと……同じ様に大粒の汗を流しつつも、死んだ様に動かないセナを見る。

 思っていたよりも重症なようだ。

 

「あ、少佐。すみません。ブリッジを離れたままで」

「いいさ。お前さん達はオーブの軍人だからな。お姫様の面倒を優先してくれ。こっちの事はこっちでやるよ」

「……ありがとうございます」

「まぁ、それでも、大人として一つ忠告するなら、だ」

「はい?」

「適当な所で休めよ。二人も自分たちのせいで、お前さん達が倒れたなんて聞いたらショックを受けるだろうしな」

「はい……! ありがとうございます」

 

 なんてヘリオポリスの学生たちと軽く話をしていたムウは、ふと小さな違和感に気づいた。

 

「そういえば、赤髪の嬢ちゃんはどうしたんだ? 寝てんのか?」

「いや、フレイなら格納庫に居ますよ」

「格納庫ォ?」

「はい。スカイグラスパー、でしたっけ。新しい戦闘機のシミュレーターで訓練してるみたいで」

「まさか、乗る気なのか?」

「いや、まさかそんな事は無いと思うんですけど」

 

 サイの戸惑った様な言葉に、ムウは何ともいえない複雑な顔で分かったとだけ頷くのだった。

 どちらにせよ、戦闘が終わって疲れているムウに出来る事は少ない。

 

 様子を見るにしても起きてからにしようと、ムウはシャワーを浴びて自室へと飛び込んだ。

 

 幸い、ムウが自然と目覚めるまでアークエンジェルの中は静まりかえっており。敵の勢力圏でありながらもムウは久しぶりにゆっくりとした休息を取る事が出来たのだった。

 

 

 そして、それから約一日キラの熱は下がらず、ようやく下がって動ける様になった頃、一つの事件がアークエンジェルを襲う事となった。

 

「え? 僕に会いたい人が居る……ですか?」

「えぇ、そうなの……」

「もしかして、オーブの?」

「いえ。オーブの関係者ではなく……向こうは『明けの砂漠』って名乗っているみたいで……北アフリカのレジスタンス組織みたいなの」

「……わかりました。では会ってみましょうか」

 

 キラは聞いたことのない名前だなと思いながらも頷き、マリューと共に医務室を出て、『明けの砂漠』という組織の人々の元へ向かうのだった。

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