ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第65話『PHASE-16『燃える砂塵』』

 アークエンジェルが明けの砂漠のアジトに移動した事で、ヘリオポリスからの避難民も外へ出る出ないで連合軍の軍人ともめ始めていた。

 無論、連合軍としては別に避難民を拘束している意図も無いため、外出するのなら好きにすれば良いと思う訳だが。

 ここがZAFTの勢力圏である以上、アークエンジェルの関係者だと分かれば、拘束される可能性もあるし、行動には慎重な判断が必要であった。

 故に、艦長たちが帰ってくるまでは! と繰り返して避難民をなだめているのだった。

 

 そんな……暴動とまではいかないが、ドタバタと騒がしくなったアークエンジェルの艦内で、セナは医務室のベッドから起き上がり、ペタペタと素足で艦内を歩いていた。

 目的地は独房である。

 

 地球に降りてからようやく訪れた一人になるチャンスに、セナは慎重に艦内を動き回る。

 

 そして、誰にも見つかる事なく独房にたどり着いたセナはそっと音を立てない様に気を付けながら中に入り、一番奥の牢へと顔を向けた。

 そこに居たのは長い黒髪の少年が一人。

 やる事もないのか。簡易ベッドの上で横になっていた。

 

「こんにちは」

「うぉ!! なんだ!? あ、あぁ。お前か……生きてたんだな」

「はい。カナードさんのお陰で助かりました」

「そりゃ良かったよ。って、なんで俺の名前知ってるんだ?」

 

 カナードがベッドの上にあぐらをかきながら、軽い調子で問うた質問に、セナはいつもの笑顔を浮かべたまま答えた。

 

「あなたの後ろに居る方に教えていただきました」

「俺の後ろ? は?」

 

 カナードは不思議そうな顔をしながら後ろに振り向くが、ここが独房である以上、カナードの後ろに人などいる訳がない。

 だから、すぐに前に向き直って、セナへとやや乱暴に言葉を投げた。

 

「誰も居ねぇぞ。お前、まだ病気なんだろ。ベッドで寝てろって……」

「プレア・レヴェリー」

「っ!」

「貴方も、聞いた事がある名前、ですよね?」

「……なんでお前がプレアの事を知ってる! ラウにだって、言った事はねぇんだぞ」

 

「……大気圏に突入する時に、お話させていただきました」

「あの時か……だが、何故だ。お前はどうやってアイツと話をした。アイツは俺以外とは会話が出来ないと言っていたぞ」

「んー。お話出来た理由は色々とあるんですが……今、現在。この地球圏において、私だけが扉の向こう側に立っているから。みたいな言い方が一番近いかもしれませんね」

「扉……?」

「そう。世界の過去と未来が重なる時の果て。かつての世界と、これからの世界が交わる場所です」

「意味が分からないんだが」

「そうですよね。私も説明が難しくて……。一度死んでみると見えたりするのですが……それもまた体験するのは難しそうですね」

「死んでみると……って」

 

「あれから。あの日から。何度か私は『未来』を見ました。このままでは、また前と同じ様に滅んでしまう世界の果てを……だから、私は変える事にしたんです」

「っ! おい! どういう事だ!」

「……?」

「今、プレアが俺に教えてくれた。お前、死ぬつもりなのか?」

 

 カナードが頬に一筋の汗を流しながら、問うた言葉に、セナはスッと目を細めた。

 そして、先ほどよりもやや冷たい言葉を放つ。

 

「やはり、あなたを捕虜に出来た事は最良でした」

「おい! 質問に答えろ!」

「あなたがZAFTに居たままでは、最悪私が動けなくなる可能性がありましたからね。アークエンジェルの中に居れば安心です。あなたの言葉はどこにも届かない。ここはあなたにとって敵地ですから」

「どういう事だ! お前は、ラウの妹なんだろ! ラウが、死ぬ気で作ろうとしている平和な世界で、笑ってないといけない奴なんだろ!?」

 

「平和なら作りますよ。ただし。私が……ですが」

「なに!?」

「カナードさん。それに、プレアさん。お二人はコズミックイラがどうやって始まったか知っていますか?」

「知るか!」

「そう。その通りです。プレアさん。コズミックイラは人類が自らの愚かさを理解し、手を取り合う未来。新しい時代を作る為に生まれました。あの時、確かに世界は平和への道を歩み始めたんです」

「……なに?」

「やはりプレアさんは素晴らしい人ですね。そう。あなたの想像通りですよ」

「お前……」

 

「セナ・ユラ・アスハは悲劇の中で死ぬんです。憎しみをぶつけ合う連合とZAFT。コーディネーターとナチュラルの間で。最後の瞬間まで平和を訴えて、その上で、命を落とす。その時初めて人類はその愚かさを知るでしょう。そして、私が消えた後は、キラお姉ちゃん達が世界を導いてくれる。そのための象徴も、プラントで既に生まれています。自由と正義の輝きが」

 

「それで誰が喜ぶっていうんだ!」

「さぁ。私には分かりません。ですが、世界が平和になります」

「平和、ってお前……お前はそれで、良いのかよ」

「はい」

 

 ハッキリと、何の迷いも後悔もなくセナが発した言葉に、カナードは思わず唇を噛みしめてしまった。

 怒りか、悲しみか、分からない。

 が、強い、暴れだす様な感情がカナードの中にはあった。

 

「なんで、お前は」

「カナードさん。プレアさん。私は、生まれるべきじゃなかったんですよ。私が居るだけで災いを呼んでしまう」

「そんな人間いる訳ねぇだろ! どんな生まれだとか関係ねぇ! この世界で生まれて、誰かと一緒に生きて、そこに意味が生まれるんだろ! お前を愛してる人間が居るのに、生まれるべきじゃなかったなんて、言うんじゃねぇよ!」

「……そうですね。これは失言でした」

 

 セナは素直にペコリと頭を下げて謝罪し、入ってきた時の様な笑顔になると独房から外へ向かって歩き出した。

 

「お話に付き合って下さってありがとうございます。全てが終わった後、キラお姉ちゃん達に事情を説明する必要があったので、カナードさんにお伝え出来て良かったです」

「おい! 待て! セナ! おい! 聞いてんのか!」

「では。さようなら。カナードさん。プレアさん」

 

 セナは最後に牢から手を伸ばしているカナードに振り返り、微笑みを一つ送ってから外へと出て行った。

 そして、独房の外で壁に寄り掛かりながら、ふーと軽く息を吐いて廊下の向こうから人が来るのを待って……その人に向かって飛び込んだ。

 

「きゃっ」

「わっ! 危ないだろう! って、セナ様! 申し訳ございません!」

「い、いえ。申し訳ございません。前を見ていなくて」

「何かあったのですか?」

「いえ……何か、という事は無いのですが」

 

 セナはぶつかった地球軍兵士と話しながら、チラリと独房の方へと視線を向けた。

 そして、僅かに怯えた様な姿を見せながら目を伏せる。

 

 その姿を見て、セナとぶつかった兵士は事情を『察した』

 

「セナ様。もしや、あの捕虜に何かをされたのですか?」

「いえ! その様な事は……!」

「……」

 

 焦った様に否定するセナに、兵士は全てを理解した顔で頷き、セナに言葉を向ける。

 

「セナ様。セナ様がお優しいのは分かりますが、コーディネーターは非常に危険なのです。捕虜に情けをかけてはいけません」

「しかし……!」

「駄目です! 何かあってからでは遅いのです。申し訳ございませんが、今後、この場所に立ち入られませんよう! 無論、キラ様も同様ですよ!」

「そんな……!」

「申し訳ございませんが、この話は艦長にもさせていただきます! では、お引き取りを!」

 

 セナは落ち込んだ様な姿で、独房の前に立つ兵士の傍から立ち去った。

 何度か振り返っていたため、兵士はより強固に独房を守ろうとするだろう。

 キラも、ここには近づけない。

 

 無論、兵士が怒りのままにカナードを殺す可能性もあるが、マリューやナタルが居る限り、そんな横暴は許されない。

 彼らもキラやセナの不興を買う様な事も出来ないだろうし。

 カナードは全てが終わるまで無事という訳だ。

 

 そしてカナードと話をする機会は、全てが終わった後になるだろう。

 セナは小さく笑みを作りながら独房から離れてゆくのだった。

 

 

 それからセナは、次にストライクセイバーの元へ向かおうとしたのだが、ここで予想外な人物と格納庫で出会ってしまう。

 

「アンタ! 何やってんのよ!」

「フレイさん!? フレイさんこそ、何を」

「何をって、スカイグラスパーのシミュレーター」

「スカイグラスパー!? な、なぜ」

「何故って。乗って、コーディネーター共を殺す為に決まってんでしょ。他にどんな意味があるって言うのよ」

「え、いや、え……?」

 

 フレイが当たり前でしょ。とでもいう様な顔で告げた言葉にセナは完全に混乱したまま、ただ流されるままに話をしていた。

 しかし、そんな事よりも、フレイはセナがフラフラと出歩いている事に怒りを示している。

 

「私の事よりも、セナ。誰に許可をとって、出歩いてんのよ」

「え、あー、えっと……その」

「その。なに?」

「えと、その……ストライクセイバーが気になってしまいまして」

 

 セナが呟いた瞬間、フレイの額に青筋が浮かんだ。

 明らかに怒りを示しているその姿にセナは焦ったような表情を浮かべるが、全ては遅かった。

 フレイはセナを逃がさんとばかりに両手でセナの両腕を捕獲し、いつもの説教をぶつけようとした。

 

 しかし。

 そんなフレイの言葉は、突如として遠くからやってきた金色の嵐によってかき消された。

 

「アンタは! っ!?」

「セナァァアアア!!」

「わ、カガリお姉様!?」

 

「久しぶりだな! セナ! ヘリオポリスに居て、巻き込まれたんだって!? キラに聞いたぞ! 本当にキラは駄目なお姉様だ! こんなにも小さな妹を傷つけて!」

 

 セナを抱きしめてそのまま走り去る様な勢いで攫ったカガリは再会した喜びを全力でセナにぶつける。

 が、そんなモノを見せられて、フレイの怒りが消えるワケもなく。

 カガリの後に付いて息を切らせながら走ってきたキラを睨みつける。

 

 そして、キラの足を軽く蹴ってから、文句を言った。

 

「何よ! アレ!」

「いだっ! あ、あぁ……僕の双子の妹でセナの姉。って言えば分かる?」

「分かんないわよ! バカ!」

「いだっ! 痛いって、フレイ。足蹴らないでよ」

「チッ!」

 

「なんでまた、そんなに不機嫌になってるの」

「アンタには関係ないでしょ!」

「いだっ! えぇー? なんで、こんな理不尽」

 

 キラはカガリに殴られ、フレイに蹴られ。踏んだり蹴ったりだなぁ。なんて言いながら、勝手に出歩いていたセナにはお説教かなとカガリに抱きしめられているセナを見ながら思うのだった。。

 そして、フレイのイライラは解消される事の無いまま、燃え上がる砂漠の様に、噴き上がっていた。

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