ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第66話『PHASE-17『ペイ バック』』

 第八艦隊及び、アークエンジェルと戦闘を行ったクルーゼ隊の面々は、降下ポッドの中で会話をしながら、その時を待っていた。

 降りる場所はジブラルタル基地である。

 

『しっかし、俺達だけで地上に降りるだなんてな』

『地球に足つきを逃がした件で、隊長は本国に呼び出されてしまいましたし。仕方ないですよ』

『……カナードも、落とされてしまったしな』

『アスラン……』

『結局俺たちは、カナードを犠牲にしても、足つきを落とせなかった。それは事実だ』

『アスラン。それは……』

『だったら俺達で落とせば良いだろう! 今度こそ、あいつを……!』

『イザーク……!』

 

 イライラとしながら言葉を荒げるイザークと、落ち込みどこかへ飛んでいきそうな言葉を投げるアスランに、二コルは声をかけるが、二人の反応は今一つであった。

 ディアッカは初めから二人の事は諦めており、二コルに丸投げしていたのだが……二コルも限界を感じ、小さくため息をついてから無言になった。

 

 クルーゼの命令で、これからアスランを隊長として、地上で足つきを追う事になったのだが、これでは先が思いやられると二コルは天を仰ぐ。

 

 昔から何だかんだと個性の強かったアスランとイザークであるが、ここ最近は以前にも増して酷い状態であり。

 二コルはコミュニケーション能力の限界を感じて、キラに会いたいと心で呟いてしまうのだった。

 

 しかし、流石に沈黙は辛かったのか、ディアッカが少しは話が出来そうな二コルへと言葉をかけた。

 

『そういえば、俺たちが行く場所……あー、なんて言ったっけ』

『バナディーヤですね。砂漠の真ん中にある町らしいですよ』

『そうそう。そのバナディーヤではさ。ケバブっていう飯があるらしいぜ』

『あぁ。僕も聞きましたね。ヨーグルトソースとチリソースを選べるとか』

『そうそう。俺はそれが楽しみでさ! せっかくだから、町に居る間に両方食ってみようかって……『キラ……』『おのれ……ストライクセイバー……!』あー、思って、たりするんだよなー』

『あー。まぁ、僕も気になってたので、その時は一緒に行きますか』

『そうだな。アフリカにはセナも居るって話だし』

 

『なに!?』

『なんだと!? 本当なのか!? ディアッカ』

『うわっ! いきなり叫ぶなよ! ビックリするだろ?』

 

 先ほどまでは動く死体の様な状態であったというのに、突如として息を吹き返した二人にディアッカは叫び声を上げるが、二人は何も気にした様子は見せず、叫ぶ。

 

『それは確かな情報なんだろうな!?』

『貴様! 勘違いだったらただでは済まさんぞ!!』

『噂だよ! 噂! 俺も詳しくは知らねぇって! お前らと一緒に足つきを追ってたんだからさ!』

『なら最初からそう言えば良いだろう! 何故勘違いさせる様な事を言うんだ!』

『まったく。貴様は! そうやってフラフラとしているからいつまで経っても浮ついていると言われるんだ!』

 

『ひでぇ扱い……!』

 

 ディアッカは呆れた様な声を上げながらバスターのコックピットではぁ、と深いため息を吐いた。

 せっかく場を盛り上げようとしたらこれである。

 早くクルーゼ隊長が帰ってこないかなぁ。なんて考えながらディアッカは地球に降りる時を待ちわびるのだった。

 

 

 そして、ディアッカの願いが叶ったワケでは無いが……降下の時間が来て、アスラン達はザラ隊として初の任務である地球降下を無事に成功させた。

 ジブラルタルまで何の問題もなく到着し、受け入れを行ってから、バナディーヤへ向けて移動する為の手続きを行った。

 

 アスラン達がジブラルタルに到着してから約二日程経ってから、アスラン達はバナディーヤへと到着し、レセップスの主である砂漠の虎こと『アンドリュー・バルトフェルド』に面会を申し入れるのだった。

 

「ザラ隊、四名! 到着しました!」

「ようこそレセップスへ。指揮官のアンドリュー・バルトフェルドだ」

「ザラ隊、アスラン・ザラです!」

「同じく、ニコル・アマルフィです」

「同じくディアッカ・エルスマンです」

「同じく……イザーク・ジュールです」

 

「宇宙から大変だったなぁ。歓迎するよ。部屋は指定された場所を使ってくれ。以上だ」

「ハッ!」

「バルトフェルド隊長!」

「んー? 何かな。イザーク・ジュール」

「我々への出撃命令は!」

「まだ何も起こっていない。現状は待機だな」

「しかし! こちらに足つきが降りてきたのでしょう!?」

「あの船なら、ここから南東へ180kmの地点、レジスタンスの基地にいるよ。無人偵察機を飛ばしてある。映像を見るかね?」

 

「居場所が分かっているのなら! 何故攻撃をしないのです!」

「その必要を感じないから。という答えでは不満かね?」

「……!」

「んー。実に不満そうな顔だなぁ。その顔の傷が原因かい?」

「っ!」

「戦士が消せる傷を消さないのは、それに誓ったものがあるからだ、と思うがね」

「くっ!」

「そう言われて顔を背けるのは屈辱の印、とでも言うところかな?」

「そんな事よりも! 足つきへの攻撃は!」

 

「うーん。難しい話だねぇ。君たちはどうするべきだと思うかな?」

「本国からの命令では、足つきとストライクセイバーは破壊。ストライクは捕獲の命令が出ています」

「優秀な答えだ。実にね。兵士として一流だと思うよ。アスラン・ザラ。しかし、僕が聞いたのは君の気持ちだ」

「私の、気持ち……?」

「そう。君たちは全員が『キラ』と『セナ』の友人であったのだろう?」

「っ! それは、そうですが」

「このバナディーヤには、二人に命を救われた者は多い。そんな彼らが、『キラ』のいる艦を攻撃する我々を許すと思うかね?」

「それは……! しかし、我々はキラを助ける為に!」

「それは見ているだけの者に伝えるのは困難さ。何せ、我々は明確に彼女へ攻撃をするワケだからね」

「……!」

「バナディーヤが今もこうして安定しているのは、彼女たちが住民たちを説得したから。という事も大きい。ここであの艦を攻撃すれば、我々は最悪の場合、アフリカ戦線の拠点を失う事になる。そうなればせっかく手に入れたジブラルタルも危ういな」

 

 バルトフェルドが語る攻撃できない理由に、アスランたちは何も言い返せないまま黙り込んでしまった。

 まだまだ青い少年たちに、バルトフェルドはフッと笑うと、言葉を続ける。

 

「どちらにせよ。まだあの艦は動かないようだ。君たちもノンビリすると良い。バナディーヤは飯も旨いしな」

「は……はい」

「という訳で、話は以上だ。退出して良いぞ」

 

 バルトフェルドはアスランたちを外へ追い出して、椅子に深く座りながら副官であるマーチン・ダコスタを呼んだ。

 優秀なバルトフェルドの部下であるダコスタは、アスラン達が部屋に入室する前に与えられていた命令の成果を伝えた。

 

「アークエンジェルに依然動きはありません」

「そうか……向こうはどうするつもりなのかねぇ。ダコスタ君はどう思う?」

「自分は……まだ何も」

「そうだよなぁ。あの艦には会ったばかりだもんなぁ。せめてキラ君とまた会えれば良いんだがなぁ」

「キラさんと、ですか?」

「あぁ。セナ君とは何度か話したが……結局キラ君と話した事はそこまで無かったからな。彼女の真意が気になる所さ」

「そうですね。キラさんが居た頃は、まだ連合軍の大戦車部隊が居ましたからね」

「月下の狂犬か。んー。懐かしい名前だ。確かに。彼が居なければもう少しこの場所も穏便に手に入れる事が出来ただろうなぁ。しかし、狂犬と虎が睨み合っていたからこそ、天使が舞い降りたという話もあるか」

「そうですね。あの頃は民間人にもかなりの被害が出ていましたから」

「ふむ。そう考えるのであれば、やはりキラ君も、セナ君と同じ平和を望む者……か。しかし、ならば何故彼女が地球軍と共にモビルスーツなんぞを開発する事になったのか。それが分からん」

「例の……クライン派で製造されているモビルスーツの様な物を作ろうとしたのでは? ラクス様が平和を導く機体だと言っていた」

「アレか……」

 

 バルトフェルドは嫌な事を思い出したと眉間に皺を寄せながら、顔をしかめた。

 血のバレンタインの時、核ミサイルを撃ち落とした白い機体と同じ様な白亜の機体を思いだし、ため息を吐く。

 

「ダコスタ君は、アレを動かせたのかい?」

「あ、いえ。自分はまるで駄目でした。うんともすんとも言わなくて」

「あぁ。そうか……それは幸せな事だな」

「幸せ、ですか?」

「あぁ。僕はアイシャと一緒に乗ってね。少しだが動いたんだ」

「本当ですか!? それは凄い! あの機体は誰も動かせなかったと聞きましたが」

「そりゃあそうさ。少しでも動かせた者は全員そう言うだろう」

「え?」

「僕も、あの機体は動かせなかったと、そう報告したんだよ」

「な、何故その様な……! あの機体は世界の希望となれる機体だと」

 

 ダコスタの言葉に、バルトフェルドはハッと笑う。

 アレが希望? その様な物のはずがないと。

 

「アレは、生み出してはいけなかった『力』だ。あの機体に乗った時に見えた虹は……おそらく、僕たち人類が見てはいけない物だよ」

「……いったい、隊長は何を見てしまったのですか?」

「さて、何だろうね……。世界の終わりか。地獄への入り口か。もしくは……人の業、かな」

 

 バルトフェルドの言っている言葉が理解出来ず、ダコスタは無言のままバルトフェルドを見つめた。

 そんなダコスタの視線を受けながら、バルトフェルドは深く息を吐いて、小さな声で呟く。

 

「……少し話し過ぎたな。コーヒーでも飲もうか。ダコスタ君も飲むかい?」

「は、はい。お願いします」

「オーケーだ。とっておきのブレンドを用意しよう」

 

 背筋が凍る様な怖い話もしてしまったしね。なんて笑い話の様に呟きながら、バルトフェルドはコーヒーの準備をするのだった。

 そして、豆を用意しながら頭の中に浮かんだ光景をため息と共に振り払った。

 

 『ジェネシス』と呼ばれる超兵器と『核ミサイル』が生み出す終末の光が、多くの人の命を奪いながらも、殺し合いを止めず、ただ憎しみだけを叫び続ける戦場を。

 バルトフェルドはただ、幻だと記憶の奥に追いやるのだった。

 決して消えない、震える様な恐怖と共に。

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