ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第69話『PHASE-19『おだやかな日に1』』

 キラやカガリたちが買い出しに出ている頃。

 アークエンジェルでは一つの事件が発生していた。

 

「な、なんだ? うわぁぁ!」

 

 そう。

 格納庫に固定されていたストライクが急に動き始めたのだ。

 

 整備員たちは、動き始めたストライクから逃げ回り、何事かと叫び声を上げる。

 その声は、当然スカイグラスパーを整備していたムウや、シミュレーターを動かしていたフレイにも伝わり、すぐに艦長へと連絡が向かった。

 

「おいなんだってんだよ! まだ嬢ちゃんは戻ってきてねぇだろう!」

「なんだ! 何でストライクが動いてる!?」

「何が起きてるの!?」

 

「おい止めろ! バカ! 誰だ!」

「ヤバイやばい! 倒れるぞ!」

「総員退避ー!!」

 

 そしてストライクは整備員たちに注視される中、数歩歩いてバランスを崩し、両手を付けたまま床に両手を付いて倒れてしまった。

 その衝撃に、周囲に居た者たちは恐る恐るストライクを見つめる。

 

 何がどうなっているのか聞きたいが、誰も事情を知らない以上、どうすれば良いのか正しい判断を下す事が出来ない。

 

「何事です!」

「あぁ、艦長! それが急にストライクが動き出したんでさぁ」

「ストライクが!?」

 

 マリューは驚き、声を上げながらストライクを見るが、どうやらストライクはもう動く事は無いらしく沈黙している。

 しかし、コックピットハッチは閉じたままである為、誰が乗っているのかまでは分からなかった。

 

「どうしますか?」

「どうって、とりあえず開けてみるしかないでしょ。どこのバカが乗り込んだか分からんが、このままってワケにもいかないし」

「そうね。レジスタンスの誰か。とかじゃないと良いんだけど」

 

「皆さん! お騒がせしてすみません!!」

 

「セナちゃん?」

 

 マリューとムウが動かなくなったストライクに近づいて、どうするかと話している頃。

 マリューが来た廊下の先からセナが走ってきて、皆の前に立つ。

 そして、ストライクの前で両手を広げた。

 

「申し訳ございません。私がちょっとお手伝いをお願いしてまして」

「手伝い?」

「そ、そうです。その、新しいOSのテストと言いますか」

 

 わたわたと焦った様に言葉を重ねるセナに、この場に居る全員がセナの嘘を見破っていた。

 だが、そうだとしても、証拠もないのに嘘とは言えないのだ。

 

「じゃあ、協力したのは誰なんだ? 嬢ちゃん」

「そ、それは……」

「それは?」

「その……どうしても言わなくてはいけませんか?」

「えぇ。これは艦内の保安に関する事でもあるから」

「う、うぅ……その、サイさんです」

 

 サイの名前が出た事で、ムウとマリューはやや驚きを感じながら、そう、と小さく頷き、少し離れた所でセナ達のやり取りを見ていたフレイは、その名前に目を見開いた。

 しかし、だとしても誰も動く事はできない。

 

「それで! その! サイさんは、まだちょっと中でやる事がありまして! もう少しだけ、このままでお願いします!」

 

 そして周囲の混乱をそのままに、セナは勢いよく頭を下げると、マリューに、ムウに、マードックにお願いをするのだった。

 

 

 それから。

 セナの希望が叶い、ストライクはそのままで放置となった。

 さらにストライクの近くからは人が消え、セナはストライクの近くで座りながらジッとその時を待つ。

 

 そして、しばらくしてからストライクのコックピットハッチが開き、落ちる様に出てきたサイをセナが支え、共に部屋へ向かうのだった。

 

 そんな光景を遠くから見ていたマードックは、ストライクを元の状態に戻すべく作業をはじめ、格納庫の上階からセナ達の行動を見ていたマリューとムウは深いため息を吐いた。

 

「どう思います?」

「どうと言われてもね。オルフェの坊主に聞いた話じゃあ、昨日フレイの嬢ちゃんとサイって奴がトラブってたんだろ? 嬢ちゃんがスカイグラスパーに乗るから、どうのって言い争ってたらしいぜ」

「……まぁ、友達としては心配ですよね」

「軍艦に乗っていて、今更……。みたいな話はあるが、まだ子供なんだもんな」

「そう。しかも良い子達ばかりですよね。まぁキラちゃん達のお友達って事を考えれば普通かもしれませんが」

「そうだなぁ……どうすれば良いかな。艦長殿」

「私に聞かれても困ります。彼らは連合の軍人という訳でも無いんですから」

「そうだなぁ。そこも難しいんだよな」

「結局、我々はキラちゃん達に協力して貰っているだけの立場ですからね。どんな顔をして何を言えば良いのか。という感じです」

 

 マリューとムウは再びため息を吐いて、セナ達が消えていった方を見据える。

 大人としては情けない限りであるが、立場を考えると手が出しにくい問題なのだ。

 オーブは中立の国であるし、表向きは連合の一員でも仲間でも無いのだから。

 

 ここで今、起こっている事は表沙汰に出来ない『なかったこと』になる出来事である。

 

「坊主たちの事も難しいが……やっぱり一番の問題はキラとセナの嬢ちゃんに思えるな」

「少佐も……気づいていましたか」

「そりゃ気づくでしょ。上手く隠してはいるけどさ。だいぶ無理をしてるのは分かるよ」

「どうにかなりませんかね。少佐はこういう時、どうやって気持ちを切り替えるんですか? 何か解消法に心当たりは? 先輩でしょ?」

「いやぁー。無い事も無いけど。参考にはならないかな」

 

 などと、マリューの体を上から下まで見た後に、情けない声で発したムウにマリューは深いため息を吐きながら蔑んだ目を向けた。

 軍に居る男などこんなモノと言えば、こんなモノだが、こういう話をしている時には気を付けて欲しい物だとマリューは心の中で強く思う。

 

「そういう目をキラちゃんやセナちゃんに向けたらオーブに密告しますからね!」

「ちょ! 勘弁してくれよ! あの国に知られたら命が何個あっても足りないぜ!」

「知りませんよ! まったく!」

 

 マリューは怒りながら足を鳴らしてブリッジの方へと向かって行った。

 そんなマリューの背を見ながらムウは頭をガシガシと掻いて、セナが消えた方にチラリと視線を向ける。

 

「息抜きの方法、ねぇ……仕方ない。少しばかりお兄さんが頑張ってみるかぁ」

 

 

 そんな会話が行われている事など知らず、ストライクから出てきたサイはセナと共にセナの私室へと向かい、セナに言われるまま椅子に座って小さくなっていた。

 

「お茶でも飲みますか?」

「……いや、大丈夫」

「ではご飯とか」

「お腹も、空いてないから……」

「では、少しお話をしましょうか」

 

 憔悴しているサイに、セナは微笑みを浮かべたまま正面に座る。

 そして、どう話した物かと考えながら、少しずつ言葉を向けてゆくのだった。

 

「サイさん。何か悩みがあるのなら、聞かせては下さいませんか?」

「悩みとか……そんな。セナちゃん達に無理をさせてるのに、これ以上何か頼む事なんか無いよ」

「私、サイさんとは良いお友達だと思っていたんですが、相談する相手としては相応しくありませんか?」

「そんな! 相応しくないとか! そういうのは無くて!」

「なくて?」

「ただ……俺、自分が情けないんだ。何も、出来なくて……キラにも無理をさせてるのに、結局守られてるばかりで」

「そんな事は無いと思いますが」

 

 セナはふむ。と考える様に視線を天井に向けた。

 そして、しばし考えてから再び視線を下ろす。

 

「元々、私とお姉ちゃんはアークエンジェルと一緒にアラスカか月基地へ行く必要がありました」

「……」

「それでも、やはりZAFTの皆さんに私達は襲われたでしょう。しかし、兵器を守る為に戦うというのは何よりも、お姉ちゃんにとって辛い事です」

 

 セナの言葉にサイが顔を上げて、ジッとセナを見つめる。

 

「しかし、言い方は悪いですが、皆さんが居たからこそ。お姉ちゃんはオーブの人を守る。という目的でモビルスーツに乗る事が出来ました。これが無ければ、お姉ちゃんは戦う事が辛くて、自ら命を絶つ道を選んでいたかもしれません。だから、サイさん達がいてくれたことは何よりもお姉ちゃんにとって嬉しい事だったのですよ。申し訳ない話ではあるんですけどね」

「俺も……何か役に立てているの、かな」

「えぇ。お姉ちゃんとお話をして、姫ではなく友として接して下さる。これだけでもお姉ちゃんにとっては何よりも救いです」

「フレイみたいに、戦場に向かわなくても?」

「フレイさんの件は……そうですね。難しいですが、フレイさんにしか出来ない事ではあると思うんです。それに……フレイさんは少し危険な状態なので」

「危険って……やっぱり戦場に行くことが!?」

「あー、いえ。違います。心が辛い現状に締め付けられているんです。このままアークエンジェルに居ても良い方向には行かないでしょう。そう考えると、スカイグラスパーに乗るのは、一種の気分転換になると言いますか。あまり良い事では無いんですが、目標を持つことは良い事だと思うんです」

「目標、か」

「はい。そして、その為に生きる、生き残る為の選択肢を取ってくれれば、それが何よりも最良かと思います」

「……うん」

 

「なので、フレイさんの心がどうしようもなくなってしまった時は、サイさんにお願いしたいです。支えるのは辛いかもしれませんが」

「それは! 勿論!」

「それは良かった。では、私からのお話は以上です。何か無くても、またお話をしましょうね」

 

 ホッとした顔で微笑みながら立ち上がるセナに、サイは強い違和感を覚えた。

 その違和感を言葉にすることは出来なかったが、何故かこのまま話を終わらせてセナを返してはいけない。という様な気持ちになっていた。

 

 そして、その気持ちのままセナの手を掴む。

 

「えと、何か?」

「あ、いや! なんだろうな。なんかよく分からないけど、掴んじゃった」

「いえいえ。構いませんよ。お話したいことがあればいくらでも」

「そういう訳じゃないんだ。ホントに、ごめん」

 

 サイは酷く嫌な感覚を覚えながらセナから手を離し、笑う。

 サイの中にある本能は、絶対に放すなと叫んでいたが、それがどういう意味を生むのか。それが分からず、手放してしまうのだった。

 

 そして、セナは扉を開けてサイを外へと導く。

 サイはその扉から外へ出て、自室へと向かう途中に振り返るが……既に扉は固く閉ざされているのだった。

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