ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第75話『PHASE-24『平和の国へ』』

 無事カガリとスカイグラスパーを発見し、再びアラスカを目指して進み始めたアークエンジェルであったが。

 何の運命か、セイバーによる索敵のローテーションを始める前にZAFTからの襲撃を受けてしまう。

 

 しかもその襲撃はアークエンジェルとも因縁の深いG四機であった。

 彼らはグゥルというサブフライトユニットでモビルスーツを飛行させながらアークエンジェルを襲う。

 

『回避!』

『バリアント、ウォンバット、てぇ!』

 

『何をやっているディアッカ! さっさと船の足を止めろ!』

『分かっている!』

 

「くっ! この距離じゃあ!」

『キラ! マズいぞ! このままじゃ狙い撃ちだ!』

 

 エールストライクにせよ、ストライクセイバーにせよ。

 ある程度の飛行能力を持っているとは言え、完全な飛行が出来るわけじゃない。

 無理に近づこうとしても、その飛行中を狙い撃ちされてしまえばひとたまりもなかった。

 海上という場所で、キラたちはあまりにも無力であった。

 

 一応、ムウとフレイもスカイグラスパーで牽制はしているが、落とされない様に戦う事しか出来ず状況は好転しない。

 だが……。

 ここである一つの偶然がアークエンジェルの前に舞い降りた。

 

『接近中の地球軍艦艇、及び、ザフト軍に通告する。貴官等はオーブ連合首長国の領域に接近中である。速やかに進路を変更されたし。我が国は武装した船舶、及び、航空機、モビルスーツ等の、事前協議なき領域への侵入を一切認めない。速やかに転進せよ!』

 

 それはアークエンジェルの進行方向先にいるオーブ連合首長国の防衛艦から流れてきている放送であった。

 この放送に、戦闘を行っていた全員が、オーブ連合首長国に戦闘区域が近づいている事を察する。

 

『マズいわ! このままじゃ撃たれる! 取り舵15!』

『いや、艦長! 構わん! このまま進め!』

『カガリさん!? いや、でも! そんな事!』

「そうだよ! カガリ! このままじゃ、誰も騙せないでしょ!」

『え!? キラちゃん!?』

「セナ! ちょっと誤魔化すから! 協力して!」

『分かりました!』

 

「マリューさん! エンジンを撃ちます! 準備をお願いします!」

『え!? そ、総員! 衝撃に備えて! 少尉! アークエンジェルをオーブ連合首長国へ!』

『了解!』

 

「じゃあ、いきますよ!!」

 

 キラはエールストライクのスラスターを全開にし、アスラン達へと迫る。

 しかし、アスラン達もキラの接近は最も警戒している事であった為、グゥルを後退させながら威嚇射撃をした。

 その弾幕の中で、キラはセナから敵機の射撃予測を貰い、ストライクを躍らせながら、イージス達のビームに紛れさせて、エールストライクのビームをアークエンジェルのエンジン部に向かい五発のビームライフルをほぼ同時に放った。

 

『きゃあ!』

『1番2番エンジン被弾! 48から55ブロックまで隔壁閉鎖!』

『推力が落ちます! 高度、維持できません!』

 

『これでは、領海に落ちても仕方ないな』

『しかし、オーブ軍に……!』

『心配は要らん。第二護衛艦軍の砲手は優秀だ。上手くやるさ。オーブもストライクにキラ様が乗っているのは把握しているからな』

『……分かりました』

 

 そして、領海内に侵入したアークエンジェル及びZAFTに対して、オーブ軍から攻撃が放たれる。

 

『警告に従わない貴官等に対し、我が国は是より自衛権を行使するものとする』

 

 しかし、ZAFTへと放たれた砲弾とは違い、アークエンジェルに放たれた弾は全てアークエンジェルの近くギリギリで爆発するばかりで、アークエンジェルを傷つける事は無かったのである。

 

 

 そんなアークエンジェルとZAFT、オーブ軍の状況をモニターしていたモルゲンレーテでは黒髪の少年が興奮しながら隣にいる金髪の少年に語り掛けていた。

 

「見たか!? レイ!」

「あぁ。一瞬の間にZAFTの攻撃に紛れさせて同時に五発のビームを放った。人間業じゃないな」

「そう! キラさんは凄いんだぜ!?」

「凄い。の一言で片づけて良いものか分からないが……確かに凄まじいな」

 

「なーなー! エリカさん! キラさんはすぐにこっちに来るんだよな!?」

「うーん。どうかしら。一応アークエンジェルは連合の艦だからね。すぐにモルゲンレーテってワケにはいかないんじゃない?」

「えー? でも、キラさんはオーブの姫様だろ? なら、別に良いじゃん」

「そういう訳にもいかないのよ。あの人は、ちょっと難しい立場に居るから」

「ちぇー。面白くないの―」

 

「はいはい。モニターは終了。またテストパイロットの仕事に戻って頂戴。アルバイトさんたち」

「はーい」

「了解しました」

 

 モルゲンレーテのモビルスーツ開発設計主任を務めるコーディネーターの女性『エリカ・シモンズ』は最近雇い始めた優秀なモビルスーツのテストパイロットに仕事を与え、テレビモニターの前から動かした。

 そして、自身もシン達が先ほどまで見ていたモニターへと視線を向け、アークエンジェルを複雑な顔で見つめる。

 

「……姫様がご無事で本当に良かった」

 

 まだまだ十六歳という子供の身でありながら、世界を平和にしようと駆け回り、連合と交渉して、モビルスーツの開発を行い。

 オーブの剣であるアストレイへの技術転用も、結局どの勢力にもバレる事なく成し遂げた。

 

 そして、今見せた様な、圧倒的なモビルスーツの操縦技能で今日までアークエンジェルを守ってきたのだ。

 驚異的という言葉がよく似合うだろう。

 

 しかし、キラという少女をよく知るエリカにとっては、それほど喜ばしい事ではない。

 何せ彼女は家族や友と幸せな場所で生きていきたいと願っているだけの普通の少女なのだから。

 

 だから、争いが彼女へと手を伸ばしているという状況は非常に面白くない物であった。

 だが、面白く無かろうと、何も出来ないのが、エリカという女の立っている場所でもあった。

 

 

 そんなモルゲンレーテでのやり取りを知る事なく、キラは久しぶりに戻ったオーブで大歓迎を受けていた。

 良くも悪くも。という言葉がよく似合う、大歓迎である。

 

「キラ様! よくぞご無事で!

「この日を待ちわびておりました!」

 

「本当に皆さん。ご心配をおかけしまして……」

 

 アークエンジェルをオーブ軍の秘密ドッグへと導いた後、まずは軍人に礼をとアークエンジェルを降りたキラは、多くのオーブ軍兵士に囲まれて。多くの言葉をかけられていた。

 その勢いは自由を全身に宿したキラが動けなくなってしまう程で、握手をされたり、泣かれてしまったりと、まさに大混乱であった。

 

 そんな中、オーブ軍人の海を割ってキラの元へやってきた男が一人。

 

「キラ」

「……! お父様」

「よもやこの様な形で戻ってくるとは思っていなかったな」

「申し訳ございません。まずはヘリオポリスの避難民をオーブに返したかったものですから」

「避難民?」

「はい。トール」

「は、はい!!」

 

 キラの少し後ろに立っていたトールはキラに名を呼ばれ緊張した様子でアークエンジェルへと駆けて行った。

 そして、戸惑った様な姿で歩くヘリオポリスからの避難民を引き連れてキラの元へ戻る。

 

「お連れ、しましたぁ!」

「ありがとう。トール」

「……彼らは?」

「ヘリオポリスが崩壊した際に、故障していた救命ポッドに乗っていた方々です。ご家族の無事も分からず、長い旅に付き合わせてしまいました」

「そうか」

 

 ウズミはキラの言葉に頷いて、避難民へと顔を向けた。

 そして、厳しい獅子の顔のまま口を開く。

 

「まずはオーブの民たる皆さんをこの様な目に遭わせてしまい。謝罪させていただきたい」

「い、いえ!」

「ここまでキラ様とセナ様にお守りいただきましたから」

「何も不安な事などありませんでしたよ」

「そうでしたか……それは良かった。すぐに手続きをしましょう。すまない。誰か。彼らの案内を」

 

 そして、ウズミは避難民達を受け入れてから再びキラへと視線を戻す。

 

「先ほどからセナの姿が見えないが、セナはどうした?」

「セナは……その」

 

 キラがウズミとの会話で言葉を濁した瞬間、オーブ軍人の間でざわっとした気配が広がる。

 ヒソヒソと小声で言葉を交わしながら、膨れ上がった感情をよく見える形で示し始めていた。

 

「どうしたんだ?」

「まさか、ZAFTの連中に?」

「なんだと!?」

「すぐにでも出撃だ! セナ様を傷つけられて、このまま黙っていられるか!」

「すぐにでも報復にでるべきだ!」

 

「だー! お、落ち着いてください! セナは無事です! ただ、ちょっと、カガリの」

「カガリ?」

 

 キラから飛び出した少女の名前に、ウズミは怪訝そうな顔をしながらアークエンジェルへと視線を向けた。

 そこにはアークエンジェルの出入り口から顔を覗かせているキラとセナの姉妹にしてウズミの子。

 カガリ・ユラ・アスハの姿があったのである。

 

「……カガリ!」

 

「おぉー。あのお姿は確かにカガリ様!」

「勉学の旅に出られているという話であったが、まさかキラ様たちと共に戻るとは」

「どういう事だ?」

「分からんが、キラ様たちの危機に駆け付けたのかもしれん」

 

「そ、そう! その通りだ! 私は妹たちの危機に、駆け付け、こうしてオーブまで導いて……」

「カガリ」

「は、はい……! なんでしょうか。お父様」

「後でキラ、セナと共に行政府まで来なさい。詳しい話はそこで聞こう。お前の! 武勇伝を! たっぷりとな」

「は、はひぃ……」

 

 これは説教確定だな、とキラはカガリの未来に、想いを寄せた。

 が、まぁそれは全てカガリの行動が招いた自業自得である為、特にそれ以降気にすることはない。

 

 そして、最も重要であると思われる話をウズミへと振る。

 

「お父様」

「なにかな」

「アークエンジェルに関してはどうしましょうか」

「艦長以下、士官の方々を貴賓室へ招待しなさい。私が直接話をする」

「分かりました」

 

 キラはウズミの言葉に頷いて、そのままアークエンジェルへと戻ってゆくのだった。

 

 

 それから、マリュー、ナタル、ムウを連れたキラは貴賓室へと三人を案内して、頬を腫らせて涙目になっているカガリを慰めながら、懐かしいアスハ家へと向かうのだった。

 

 そして、貴賓室に残された三人はウズミと向き合いながら『これからの事』について交渉をする。

 

「御承知の通り、我がオーブは中立だ」

「はい」

「公式には貴艦は我が軍に追われ、領海から離脱したということになっておる」

「はい」

「助けて下さったのは、まさか、お嬢様が乗っていたから、ではないですよね?」

 

「国の命運と娘の命、秤に掛けるとお思いか?」

「失礼、致しました」

「と、言いたいところだがな……もはやあの子達の命はオーブよりも重くなっている。そう容易く見捨てる事は出来んよ。それは諸君も同じであろう?」

「……そう、ですね。少なくとも大西洋連邦は……キラさん達と友好的な関係を築いていきたいと考えております」

「ふ……友好か」

「何か?」

「いや。あの子の理想は、大西洋連邦『だけ』との友好ではないぞ。それでも君たちは構わないのかね?」

「はい。無論です。私たちはキラさんの理想を叶える為に、モビルスーツを開発したのですから」

「そうか」

 

 ウズミは少しだけ口元に笑みを作ってから再び口を開いた。

 

「諸君らの考えは分かった。だが、キラとセナはどうであれ、我らは中立だ。無条件で諸君の艦を直すというワケにはいかん」

「それは、承知しております」

「我が国はストライクセイバーに保管されている全ての戦闘データを希望する。アレが起動してから集め続けたGの戦闘データを全てだ」

「っ! それは!?」

「叶えば、こちらもかなりの便宜を、貴艦に図れることとなろう」

 

 ウズミの言葉は三人に重くのしかかり、少し時間が欲しいと言葉を残してから三人はアークエンジェルへと戻って行くのだった。

 

 そして、ブリッジでオーブの要求についての議論をする。

 

「私は反対です。この国は危険だ! セイバーの機密だってどこから知ったんです!?」

「まぁ、開発はヘリオポリスだからね。スパイをするならいくらでもタイミングはあっただろうさ」

「私たちも完全に油断していましたからね。まさかキラちゃん達がそんな事をする筈がないって」

「嬢ちゃん達が知ってたかどうかは、まぁ分からないけどさ」

「やっぱり、ヘリオポリスの襲撃はオーブに仕組まれた事だったのではないですか!? こうやって戦闘データを集めさせて!」

「それにしては運任せ過ぎるんじゃない? 自国の姫様を犠牲にしてまでやる事じゃないでしょ」

「分かりませんよ! キラ様が騙されている可能性だっていくらでもあります」

「まぁ、ねぇ……でも、そう言われたって。じゃどうする? ここで船降りて、みんなでアラスカまで泳ぐ?」

「そう言うことを言っているのではありません。修理に関しては代価をと」

「分かりますけどねぇ」

 

「どちらにせよ主導権はオーブだわ。敵か味方か。分からないけれど、私たちはオーブの巣に入ってしまったんですもの」

「……おそらく、キラもセナも帰ってこないだろうなぁ」

「そんな!? それでは我々は!」

「……見捨てられたって事になるのかしら」

「んな事は無いと思うけどさ。キラ達の意思はどうであれ、閉じ込めて、オレたちを追い出せば良い問題だからね。難しいもんだ」

「……でも、そう考えるのなら、この交渉受けてみるべきだと私は思います」

「艦長!?」

 

「どちらにせよアークエンジェルの修理には私たちかキラちゃんの知識が必要。そうなればある程度自由に動けるし。それで情報を集めるべきよ」

「最悪、キラ達は無理矢理連れていく事になりそうだけど」

「それしか手はない。という事ですね」

 

 一応三人の意見が一致し、マリュー達はオーブの要求を受ける事にするのだった。

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