ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第78話『PHASE-26『キラ1』』

 オーブに戻ってからというもの。

 アークエンジェルの事。

 モルゲンレーテで開発中のモビルスーツの事。

 オーブの事、世界の事、カガリの事、ギナの事、ウズミの事と、考える事が山ほどあり、キラは毎日頭を悩ませていたが、ふとした瞬間に、やる気がパッとなくなってしまうのだった。

 

「あー!」

「お姉ちゃん!?」

「もう! 駄目だー!!」

「お姉ちゃん! シッカリして下さい! お姉ちゃーん!」

 

「ふむ。限界だったか」

「どうやらその様ですね」

 

「冷静に分析している場合じゃないですよ! ギナさん! エリカさん!」

 

 セナは床に倒れてゴロゴロと転がっているキラを見やりながらコメントを残すギナとエリカにツッコミを入れつつ、キラを捕まえようと右往左往する。

 そんなセナとキラにギナは深いため息を吐いてから、最近キラと仲の良い少年を呼んだ。

 

「シン! シン・アスカ!」

「はい! なんでしょうか!」

「キラが限界を迎えた。外で気分転換をさせる。お前には護衛を任せたい」

「分かりました! 精一杯やらせていただきます!!」

 

 最近軍人と話す事も多いからか、敬礼の真似事をしながらシンはギナの命令に応え、キラの元へ向かった。

 そして、レイを呼んで、二人でキラをエレカに乗せてモルゲンレーテの秘密工場から連れ出すのだった。

 

「……よろしかったのですか? あの子達に任せて」

「問題はない。オーブ国内でキラやセナを害そうとする者はいないからな。それに……あの小僧が何かのキッカケとなるかもしれん」

「キッカケというのは?」

「オーブの姫としての立場を思い出すという事だ。今の奴は世界ばかりを見ているからな」

「ははぁ。なるほど。キラ様にアークエンジェルと共に行かず、オーブに留まって欲しいのですね。そうならそうと素直に仰れば良いのに」

「我は別にその様な事を望んでおらん」

「左様でございますか。まあ、私はキラ様には危険な場所へなど行かず、このままオーブに留まって欲しいですが」

「……まぁ、そうだな。民がそう望んでいるのであれば、応えるのが王族であると我も思う。だから……そうだな。その様にキラへは働きかけよう」

「ありがとうございます」

 

 エリカは仕方のない人だという様な言葉を飲み込んで、恭しく頭を下げた。

 そして、シンとレイがキラをオーブに繋ぎとめる為の存在になって欲しいと静かに願うのだった。

 

 

 そんなギナやエリカの思惑はともかく、シンは純粋にキラの体長を気遣って、気分転換が出来る場所をとエレカを走らせ、何故かハンバーガー屋に来ていた。

 

「キラさん! お店に着きましたよ!」

「う、うぅーん。ありがとう」

「とりあえず俺注文してくるので! レイ! キラさんを任せた!」

「あぁ」

「悪いねぇ……シン君。レイ君」

「いえ。この程度、何も問題はありませんよ」

 

 レイはキラの言葉にサラッと返しながら、肩を貸しつつ店の中に入る。

 そして、驚く店員の視線をさらりとかわしながら奥へと進もうとした。

 しかし、慌てて駆け寄ってきた店員によって足を止めてしまう。

 

「も、ももも、申し訳ございません! お客様」

「……何か?」

 

 足を止められたことで不機嫌な顔をしたレイは、ジロッと店員を睨みつける。

 が、店員も流石に子供の目線程度で止まる事など出来ず、レイが連れているキラをチラッと見てから改めてレイに話しかけた。

 

「こちらのお客様は、……もしやキラ様では」

「えぇ」

 

 ボソッとレイにだけ聞こえるような声で囁いた店員に、レイは当たり前だろうとばかりに頷く。

 この瞬間、店員は今すぐにでも意識を旅立たせたい様な気になったが、何とか踏みとどまってレイに再び語り掛けた。

 

「ただいまお席をご用意いたしますので、少々お待ちください」

「しかし……」

「少々! お待ちください!」

「……分かりました」

 

 店員の勢いに押され、レイはやや引きながら頷き、レイの陰に隠れていたセナは店員に小さく頭を下げた。

 

「申し訳ございません。お手数をお掛けします」

「せ、せせせ、セナ様もご一緒でしたか! 申し訳ございません! すぐにご用意いたしますので! 少々! ほんの少々お待ちいただけますと幸いでございます!!!」

「本当に、申し訳ございません」

「いえ! 何もお気になさらず! 当店最高のバーガーをお楽しみください!!」

 

 店員は急いで厨房に戻ると、叫びながら他の店員に指示を飛ばす。

 どうやらあの店員は店長であったらしいとセナは納得するのだった。

 

「本物だ! VIP席があっただろう! あそこを開けろ! 急げ! 超特急だ!」

「なんだ!? この肉は! こんなものを姫様方に食べさせられるものか! 今すぐ最高級の肉を買ってこい! 金だ!」

「いや、でも店長。俺ら料理なんて出来ませんよ?」

「大丈夫だ。俺は出来る。最高級食材で……いや、待て。食材は俺が見極める。とにかく姫様をご案内しなきゃならん! メアリー! お前が行け! 姫様方を不快にさせるなよ!」

「えぇー!? アタシですかぁー!?」

「この中じゃお前が一番マシだ! さっさと行け! 粗相をするなよ! したら死刑だぞ!」

「そんなぁー」

 

 店の奥から聞こえてくる怒声に、セナは大丈夫かなと心配だったが、とりあえずシンと店員さん……おそらくはメアリーが来たことでセナはそちらに意識を移す事にした。

 

「何か作るのに時間が掛かるってさ。飲み物でも飲んで待っててくれっていうからさ。適当に選んできた」

「お、おお、お客様!? 本当にジュースでよろしかったですか!? 最高級の紅茶ではなく!?」

「大丈夫ですよ。私もお姉ちゃんもジュース好きなので。後、ハンバーガーもお店の物で良いと店長さんにお伝えください」

「かしこまりましたぁ!!」

 

「店長! てんちょー!? 姫様が! バーガー普通ので良いって!」

「何ィー!? ま、まさか、ウチの店が気になって来てくださったのか! 分かったぁ! あくまで店のバーガーを最高級食材で再現する!! これが正解なんだな!?」

「わかんないけど。多分オッケーだと思います!」

「分かったぁ!! 少し待ってろ!」

 

 セナは普通で良いんだけどなぁ。と思いつつ、超速で帰ってきた汗だくの店員にごめんなさいと言って、バーガー屋のVIP席へと向かうのだった。

 

 そこは、ふわふわのソファーとやけに大きなテーブルが置かれた個室で、初めて入る場所にシンはやや興奮気味に笑う。

 

「おーすげー。こんな部屋があったんだなぁ。キラさん。すげぇ。ふかふかだ!」

「それは良かったねぇ。じゃあ僕もお邪魔して」

「ほい。ジュース」

「ありがとうねぇ。ズゥー」

 

 キラはシンに運ばれてソファーの上に座り、テーブルに置かれたジュースをストローで飲む。

 それは完全な駄目人間の姿であったが、気にする人間はここにはいない為、特に気にされずキラはグダグダと過ごすのだった。

 

 そして、疲れ切ったキラにシンが励ます様に言葉を重ねた。

 

「ここのバーガー食べたらキラさんも絶対に元気になるからさ!」

「そんなに美味しいんですか?」

「あぁ。この辺りじゃ一番うまい。安いしな!」

「あぁ、そうだな。安くてうまい。それは確かだ」

「そうなんだー。それは楽しみだねぇ」

 

 キラは嬉しそうにハンバーガーの味と値段について語る少年たちに、お姉さんの顔をしながら微笑んで見守る。

 実に可愛らしい事だと。

 

「お待たせしましたぁ!」

「お、来た来た」

「わぁ、すごい。大盛だねぇ」

 

 そしてシン達が話をしている間に、トレー二つにハンバーガーの山が乗せられ、キラ達のテーブルにやってくるのだった。

 それと同時に、キラ達へは特に注文していないジュースの補充がされる。

 

「こちらはサービスとなっております」

「まぁ、それはありがとうございます」

「いえ! この程度は何も問題ありません!」

「それは良かった」

 

 キラは店員に微笑み、礼を言ってからシン達に食べようかと笑いかけるのだった。

 が、大量の食事に驚きつつ、嬉しそうに早速ハンバーガーを食べ始めているシンを見てキラは少し疲れが消えた様な気がした。

 そして、両腕を伸ばしながら、んー! と声を上げて良しっと掛け声を上げる。

 

「僕も食べるぞー!」

「とりあえずキラさん。最初はコレがオススメっす!」

「あら。そうなの? じゃあこれから食べようかな。っと、その前にー」

 

 キラは懐から携帯端末を取り出すと、ハンバーガーを片手で持ちながらニコッと笑って自分を撮った。

 そして、タタタっと驚異的な速さで文字を打ち込み、SNSへの投稿を行う。

 

「何してんすか? キラさん」

「お姫様活動の一環。こういう私生活みたいのを呟くとみんなが喜ぶからさ。たまにやってるんだ」

「ふぅーん。お姫様も大変っスねぇ」

「まぁねぇ。でも、これで喜んでくれる人たちが居るのなら良いかなって」

 

 キラはニコッと笑いながら丁寧にハンバーガーの包装を開いて、パクっとかぶりつく。

 そして小さな口でもぐもぐと食べて、美味しいね。と頷くのだった。

 

「……」

「……」

「ん? どうしたの? シン君もレイ君も。そんなポカーンとして。僕何かおかしかった?」

「いや……なぁ? キラさんもハンバーガーとか食べるんだなぁって思って」

「君が連れてきたんでしょうが!」

 

 とキラはハンバーガーの端におまけの様に置かれていたポテトを拾い、ズビシっ! とシンを指して笑う。

 

「あ、いや、そうなんですけど! 食べ方とか分からないかな! って思ってたんっすよ。ほら、キラさんってお姫様だし」

「まぁー。そうだねぇ。確かにオーブで食べるのは初めてだけど。色々な国に行ったからね。何だかんだ色々なご飯は食べたよ」

「そうなんですねぇー。なんかいいなぁー」

「シン君も色々な物を食べてみたい?」

「そうじゃなくて! そういう事じゃなくて! なんていうか。俺、このままで良いのかなぁって思うことがあって」

「うんうん」

「キラさんとか、セナも小さいのに、世界の為ーとかオーブの為ーってすげぇ頑張ってるじゃないっすか! だから、俺も何かしなきゃいけないんじゃないかって思っちゃって」

「そう思うのは大事だけどさ。シン君はまだまだ子供なんだから。無理しなくても良いんだよ」

「子供って二つしか変わらないじゃ無いっすか」

「その二つが大きいんだなぁ。シン君はまだまだ子供だよ」

 

 キラがジュースを飲みながら言った言葉に、シンは酷く不満そうな顔をしながらハンバーガーにかぶりつく。

 そんなシンにセナは小さく笑みを作りながら言葉を掛けるのだった。

 

「大丈夫ですよ。シン君にもその時は必ず来ます。世界がシン君を求める時が」

「本当に?」

「えぇ。嘘は言いません。ですが、おそらくそれは今では無いのでしょう。だからその時が来たら迷わず進んでください。それがきっとシン君の為にも。シン君の大切な人の為にもなります」

「そうだね。僕もそう思うよ。いつか僕もシン君の力を借りる時が来るからさ」

「……わかった。じゃあ今は、うん」

「そんなに落ち込まないの! シン君が必要ないって言ってる訳じゃないんだ。ただね。お姉さんとしてはシン君が傷つくところを見たくないの」

「でも、キラさんも、セナも傷つくかもしれないんだろ!? だったら」

「自分が傷つく方が良いって? でもそれじゃ僕は悲しいな。僕はシン君にそんな生き方はして欲しくないよ」

「だったら……どうすれば良いんっすか?」

「全部守ってみなよ。少年」

「……ぜんぶ」

 

 キラの挑発する様な言葉と笑顔に、シンは小さく呟いた。

 そして、そんなシンの頭を撫でながらキラは微笑みを重ねる。

 

「今は無理でも、シン君ならいつか出来るよ。君の守りたい物。君自身を含めてさ。全部守れるようになった! ってなったら、僕も遠慮なく君に全部任せるから」

「……ぜんぶ。全部! はい! 分かりました! 俺、頑張ります!」

「うんうん。いい返事だ。いつかそんな時が来たら、一緒に戦おう。まぁ、その時には平和になってるかもしれないけどさ! あっはっは」

 

 キラはシンの背中を叩き、ひとしきり笑ってから再びハンバーガーを食べ始めるのだった。

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