ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第90話『PHASE-33『舞い降りる剣2』』

 オーブ艦隊に助けられ、アークエンジェルは無事オーブに到着する事が出来た。

 そして、連合軍の艦である為、諸外国から怪しまれぬ様にと、オーブの秘密ドックへと案内されたのだが……そこには既に別の連合軍艦がいるのだった。

 

「艦長、あれは……?」

「何かしら……? まさかオーブの艦では無いと思うけど」

 

「アラスカから来た艦だよ」

 

 ナタルとマリューが連合軍の艦を見ながら疑問を零すと、ブリッジに入って来たカガリが二人の疑問に答えた。

 そして、そのままブリッジの奥まで進み、艦長席の隣まで来ると、マリューとナタルを見ながら言葉を続ける。

 

「そういえば、アークエンジェルの皆は知らなかったんだったな」

「何がでしょうか……」

「地球連合軍本部アラスカ JOSH-Aは先日完全に消失した」

「「なっ!?」」

 

 その、カガリの衝撃的な言葉にマリューとナタルは完全に言葉を失ってしまった。

 続けてカガリは、マリューに小型端末を手渡して、アークエンジェルの機器に接続して貰う。

 そして、メインモニターにアークエンジェルが知らないであろう最新の情報をいくつか流すのだった。

 

「JOSH-Aが消滅したのは数日前だ。生き残った連合兵とZAFT兵の情報では、アラスカはサイクロプスというシステムで自爆したらしい」

「サイクロプスだって!?」

 

 カガリの言葉に反応して、ちょうどブリッジに来ていたムウが大きな声を上げる。

 そして強張った顔のままカガリをジッと見据えた。

 

「なんだ。アンタは知っていたのか」

「あぁ。昔な。月のグリマルディ戦線の……エンデュミオン・クレーターでの攻防戦で、地球軍が使ったんだよ。味方を巻き込みながらな……」

「少佐……」

「あんなモンが! また使われたってんのか!」

 

 ムウはかつて月で共に戦っていた友の事を思い出し、拳を強く握りしめる。

 憎しみはない。ただ、強い怒りがあった。

 

 エンデュミオンの鷹という名に刻まれた痛みを、また思い出したのだ。

 

「あぁ。確かな情報だ。何せ、この情報は……セナからもたらされた情報だからな」

「セナ様!?」

「セナさんも……生きて、いたのね」

「そうか……嬢ちゃんも、生きていたのか」

 

 ブリッジに居た者達は皆、涙を流しながら安堵の息を落とした。

 そして、既に生きていると聞いていたキラとセナに会いたいとカガリに詰め寄った。

 

 多く、語りたい事があった。

 直接その姿を見て、抱きしめたい。体温を感じたいと思った。

 生きている実感を持ちたいから。

 

 そして、喜んで、怒って、泣いて、また共に。

 そう考えていたのだが。

 

「残念だが、キラもセナもここには居ない」

「オーブに居ないってのなら、どこに居るんだ?」

「私にも分からないんだ。キラは、通信で話しただけだし。セナはアラスカで生き残った地球軍の連中から聞いただけでな」

「まさか、アラスカのサイクロプスに巻き込まれたんじゃあ!?」

「いや、無事に脱出したみたいだ。ただ、やることがあると言って見た事のないモビルスーツで飛び去ったと言っていたよ。まったく。キラもセナもどうしようもない妹だ。あっちへこっちへと、こちらの気も知らないで!」

 

 カガリは、ため息を吐きながらも、どこか嬉しそうな顔で言葉を漏らす。

 そして、話は終わりだとアークエンジェルを出てゆくのだった。

 

 カガリが出て行ってからアークエンジェルの面々はこの嬉しい話を艦内の人間に伝え、これからどうするべきか話し合う事となったのであった。

 

 

 艦長の私室に集まったマリュー、ナタル、ムウの三人は、アークエンジェルの方針について言葉を交わし合う事にした。

 

「私は地球軍連合軍の基地へ向かうべきだと思います。そして、セナ様とキラ様のご無事を伝え、プラント本国への総攻撃を止めるべきです」

「そうは言ってもよ。地上の部隊がどこに居るか分からないぜ? アラスカもパナマも消えちまったんだからな」

「ならば、ワシントンへ行けば……! 少なくとも上層部と連絡が取れると思いますが」

「しかしなぁ……」

「フラガ少佐は何がご不満なのです!」

「プラント本国に核ミサイルを撃つとか、味方ごとサイクロプスで吹っ飛ばす連合軍が、さ」

「っ! それは……!」

「このまま戻ったって、やらされるのは核攻撃する部隊の護衛とかだろ? 俺はそんなモンに付き合いたか無いぜ?」

「しかし、我々は軍人です。個人の思想で武器を持つ事は出来ません」

「それ、言っちゃう?」

「何がですか」

 

 少々怒った様なナタルに、ムウは微かに笑いながら言葉を投げた。

 今まで気づいてなかったのかとでも言う様な空気で。

 

「俺たちは元々、キラやセナの嬢ちゃんの理想で戦ってたんだろ? 平和にしたいっていうあの子達個人の思想でさ」

「……!」

「今更だよ。全部な。それで、それだけを持ってここまで来ちまった。艦の連中だってさ。二人の理想を信じて、今日まで戦ってきたんだろ? それをいきなり変えるのは難しいんじゃ無いか?」

 

「少佐……」

「艦長は、艦長はどの様にお考えなのですか?」

「私、ですか? 私は……正直、月基地に着いたら、第八艦隊の生き残りの方々に相談して独立部隊として動こうと考えてましたから」

「な……!?」

「ひゅー! やるねぇ。流石はあのハルバートン提督の教え子って感じか?」

「からかわないで下さい! 私は、ただ……ハルバートン提督も、共に戦った彼らも、この様な戦いを望まないと考えていただけですから」

 

「なら、どうする?」

「……私は、バジルール中尉の考えも、フラガ少佐の考えも分かります。その上で……私の意見を言うのであれば、キラちゃんとセナちゃんを探すべきだと思います」

「……」

「二人は……きっと以前と変わらず世界に立ち向かってゆくのでしょう。ですが、それは以前よりもきっと厳しい戦いになると思います」

「そうだな。地球連合軍は核で総攻撃するだろうし」

「ZAFTも隕石落としという攻撃に出た以上、より激しい攻撃をしてくる可能性があります」

 

 ムウとナタルはマリューの言葉に応えて、この短期間に見た恐ろしい戦いと、これから使われるであろう兵器を返した。

 その言葉にマリューは頷く。

 

「そう。だからこそ。あの子達をこのまま放置したら、今度こそ……」

「まぁ、そうだな。どれだけ頭が良かろうが、強かろうが、二人はまだまだ子供だ。大人が守ってやらなきゃ、だな」

「……それで、軍を抜ける事になったとしても、お二人は良いのでしょうか?」

「あぁ」

「えぇ」

 

 ナタルは何かを言いたそうな顔で苦し気に自分の胸の前で拳を作りながら、それでも言葉に出来ず、呻くように声を漏らした。

 確かに二人の言う事は正しい。

 自分だって、このまま命令に従って、キラやセナが悲しむ事はしたくない。

 

 だが、それでも。

 ナタルは軍人であったからこそ、武器を手に出来たのだ。

 軍人であったからこそ、矜持を持つ事が出来た。

 正しくある事が出来たのだ。

 

 それを、捨てることが本当に正しい事なのか。

 ナタルは答えが出せないまま、唇を噛みしめる。

 

 そんなナタルにマリューは微笑みを浮かべると肩を軽く叩いた。

 

「急いで答えを出す必要は無いわ。どの道、アークエンジェルはまだ修理が終わっていないし。これから情勢も色々と変わっていくでしょうから」

「あぁ、そうだな。それに案外キラとセナもひょっこりオーブに来るかもしれないしな」

 

 マリューとムウの明るい声に、ナタルは僅かな救いを得ながら、小さく頷いた。

 この悩みを解決するにはまだまだ時間が掛かる。

 

 きっと、この決断はナタルの……いや、世界の運命を大きく変えてしまうものだから。

 ナタルは自室に帰ってからも、悩み続けるのだった。

 

 

 そして、ナタルがこれからの道に悩んでいる頃……オーブでは長い眠りの中に居た少年がようやく目を覚ましていた。

 腹部に負った酷い傷と、長く雨に打たれていた事で一時は生死の境を彷徨っていた少年だ。

 

「う……うぅ……」

 

 少年。オルフェ・ラム・タオは真っ白な壁に囲まれ、窓から差し込む陽光が柔らかく部屋を温めている場所で、静かに目を覚ました。

 重く、閉じられていた瞼をゆっくりと開いて、世界を確認する為に視線をさ迷わせる。

 

「先生! 先生! オルフェさんが目を覚ましましたよ!」

「……ここ、は?」

「ココはオーブですよ。オルフェさん。貴方は大きな怪我をしていて、この病院に運び込まれたのです」

 

 ベッドのすぐ隣にいた看護師にそう伝えられ、オルフェは深い息を吐きながら現状を少しずつ飲み込んでゆく。

 あの小島であった事。

 セナが……殺された事。

 

「っ! セナ、を」

「あぁ! 駄目ですよ。無理をしては。何日も意識を失っていたのですよ!」

「私は、キラに会わねばならないのだ。セナにも!」

「こちらには貴方しか居ませんよ。それに今大事なのは、体を休ませる事です」

「っ!」

 

 オルフェは看護師に強く押さえつけられ、起き上がろうとしていた体がベッドに押し戻される。

 そして、傷に激しい痛みを感じながら、忌々しい物を見る様に天井を見上げる。

 

「……私は、生き残ってしまったのか。セナを、犠牲にして……それに、キラは、どうなったのか」

「これから……どうすれば……」

「私はどうあるべきなのだろうか……」

 

 涙を溢れさせながら、オルフェは窓から見える青空に視線を向けた。

 あの嵐の様な豪雨は何処にもなく、あるのは突き抜ける様な青空だけだ。

 

 悔しさと、悲しさと、無力感が体を包み……オルフェは再び意識を闇に落としてしまうのだった。

 

 

 そして――。

 オーブから遠く離れた宇宙の彼方。

 L5宙域にある防衛要塞ボアズに一つのシャトルが近づいていた。

 

「聞こえますか? こちらはオーブ連合首長国代表首長ウズミ・ナラ・アスハが娘。キラ・ユラ・アスハ。お話があり、こちらに来させていただきました。最高評議会の方とお話をさせていただきたいです」

 

 その通信はボアズに司令官に即時報告され、司令官は急ぎキラをボアズへと迎え入れた。

 そして、キラの為にナスカ級1隻とゲイツを1個小隊用意し、プラントまで送り届ける事にするのだった。

 

 それから。

 想像していたよりも早くプラントへたどり着いたキラは、異例な速さで面会の約束を取り付ける事に成功し……酷く懐かしい人と再会した。

 

「……お久しぶりです。パトリックおじ様……いえ。ザラ議長閣下とお呼びした方が良いでしょうか?」

「いや、構わないさ。私と君の仲だ。昔の様にパトリックと呼んでくれ」

 

 キラはにこやかな笑顔の仮面を被り、地球を守る為の交渉に挑むのだった。

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